リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第二十二話 彼はお節介焼きな邪神様

 メダルトリオの一角である榊原を一突きで気絶させた邪神は少々焦っていた。

 

 (やべー。あの時は恭也さんと一時的に共闘を申し込んだのはいいけど、勢い有りすぎたかな?)

 

 自らが施したWCCの効果を思い切り発揮したのは実はこの一戦が初めてである。そして、考えていた以上にそれは発揮された。

 あまりにも鋭く、早く、深い攻撃を放った後に、戦闘の興奮が冷めた裕は榊原君のお尻を心配していた。

 

 「ユウ、さっきのはなに?」

 

 榊原をどける為に恭也さんとは一時休戦状態の俺にフェイトが話しかけてくる。

 あれは榊原のバリアジャケットの一部に触った時にWCCを発動させて強制停止させた。その名も、

 

 「秘儀『よいではないか~』」

 

 バリアジャケットだろうと物であるにはかわらない。榊原が目の前であの鎧をセットアップとか言って装着した時にお前達が持っているデバイスと似たような物だと思った裕は厄介そうな榊原を先に潰そうと恭也と相談を持ちかけたのだ。

 

 「魔導師もバリアジャケットを取り除かれれば殆どただの人よね…。よくもまああの場で思いついたものね」

 

 まあ、前々から考えていたものだったんだけどね。

 フェイトに負けたあの日からいろいろ考えていた事。

 魔法とか言う不思議な力を持つ相手にはどうしたら勝てるか、と、考えた末に思い付いたのが相手の力を無効化する。もしくは阻害することで勝てると考えた。

 素の身体能力なら高町道場を通っている上にWCCでガチガチに固めた装備状態ならイケる。と、考えたのだ。

 

 「つまり、これは前々からフェイトをひん剥くために考え出された技なんだよ。キリッ」

 

 

 

 田神裕ですっ。新技をドヤ顔で決めたら、

 

 アリサの拳骨。

 すずかちゃんの目つぶし。

 なのはちゃんから両頬同時ビンタ。

 

 以上の三発です。

 じゃん、けん、ぽん。グー、チョキ、パー(×2)。

 来週もまた見てくださいね。

 うふふっ。

 

 

 

 という幼馴染トリオからのジェットストリームアタックを受けた。

 俺の頬ほどではないが顔を赤くして離れるフェイトと俺の視線から守るようにアルフさんが立つ。

 のたうちまわっている俺に毒気を抜かれたのか恭也さんは今日の所は決着をつけずに次回に回す。という事になった。

 皆、呆れた顔をしている中、母親であるプレシアとお母様だけは苦笑していた。

 

 「もーう、裕君。そう言う事はあまり言わない方がいいんですよ」

 

 「…ま、それが貴方なりの優しさなんでしょうね」

 

 母上はこつーん、と、緩く握った拳をおでこに当てて忠告をしている。

 プレシアはというとため息交じりにも見抜いているわよ。と言わんばかりの表情だ。

 ・・・ばれた?

 こうやって馬鹿をすればなのはちゃん達も俺とそんなに深く付き合っていこうとは思わないだろうと、時折、馬鹿な本音を言ってみたりするのだがプレシアと母上には見抜かれているようだ。

 管理局の暗部?という存在を聞かされてからは出来るだけ彼女達からは距離をとりたかったのだが…。

 さすがはお母さま。伊達に九年間俺の母親をやっていない。

 そして、さすがプレシア。実年齢●●歳以上、年の功!

 

 ズドオオォンッ!

 

 「…裕君、女の人の逆鱗は怖いのよ」

 

 「…次はないわよ」

 

 …おっかしいなー。口にしていないんだけど、ばれた。

 俺ってばそんなに顔に出ているだろうか?

 突如、俺の傍に落ちた紫の雷にびくつきながらも目の前の魔女に謝っておく。

 誠に申し訳ございませんでした。

 

 「…ところでユーノ君の意見を聞きたいんだけど、結局ジュエルシードをどうするつもりかしら?」

 

 「…僕としてはすぐにでも管理局に引き渡したい。…だけど、それで誰かが助かるのなら協力したいです」

 

 ジュエルシードが万能薬もどきになる事を知ったユーノはプレシアの言葉に嘘が無いと感じ取ったのか、少しだけ迷ったもののジュエルシードの譲渡を許してくれた。

 とりあえず、申請していたジュエルシードは21個。

 それの数を誤魔化すために月村の家から青い宝石を2個貰い、ジュエルシードに施された刻印をWCCで彫り上げてプレシアにほんの少しだけ魔力を注ぎ込んでもらった。

 そのお蔭でジュエルシードもどきが2個出来上がった。管理局には悪いがまだ見つかっていないジュエルシードとこれを合わせて21個受け取ってもらおう。

 

 「それにしてもフェイトも言ってくれれば、なのはもユーノも協力したかもしれないのにね」

 

 「…うん。私もまさか母さんが体を患っていた事なんて知らなくて、他にも治療したい人がいるなんて思わなくって…」

 

 「…言ってくれれば私達だって手伝ったのに。なのはにしろ、フェイトにしろ水臭いわね」

 

 「そうだよねー、水臭いよ二人共」

 

 「全くだぜ。ゲロ以下の匂いがプンプンするぜ」

 

 「そ、そんなに臭くないよ!お風呂に入ったばかりだからいい匂いだもんっ。というか、ユウも一緒に入ったからわかるでしょ!」

 

 その言葉になのはちゃん。すずかちゃん。アリサの三人が俺の方に視線を向ける。

 その視線に込められて意志を受け止めた俺は両頬に手を当てて、

 

 「きゃっ、恥ずかしい」

 

 と、思わず手で顔を隠すが、その実、三人の顔を見るのが怖い。

 異様な気配がじりじりと突き刺してくるんだもの。

 誰か、誰かこの状況を打破する方法をおせえて、おせえてーよぉおおお!

 

 月村邸の中心でSPW風に叫ぶ。

 

 がしっ。と組まれる左腕と右腕。

 なのはちゃんとすずかちゃんの両名に腕を組まれた状態で連行される。アリサにいたっては俺の胸ぐらをつかんでずるずると月村邸の屋敷に向かおうとしていく。

 い、いかん。このままではまた尋問室に連れて行かれてしまう。

 

 「まあまあ、落ち着いてください。御三方、別にやらしいことなんてしてませんから」

 

 「言い訳は独房で聞くわ」

 

 独房まであるのか、月村邸。

 てか、何故アリサがその事を知っている?

 

 「信用できないかもしれないが、俺にはこれと決めた人がいるからそんな事はしないって」

 

 「だ、誰っ」

 

 なのはちゃんが狼狽し始めて、すずかちゃんの締め付けが強くなる。

 ふむ、すずかちゃんの柔らかい何かが…、そして小指にワンダフルダメージ!煩悩退散。わかりましたからすずか様。小指を捻り上げるのはやめてください。

 

 「俺はこう見えても硬派なの、初めての人にはずっと付き合っていきたいと思っているんだ。つまり、初めて肌を見せた人には真剣につきあってほしいという願望もあるんだ」

 

 「え、それってつまり…」

 

 俺の言葉を聞いてその場にいた全員がフェイトの方に向く。

 だが、それは筋違いだぜ皆さん。

 

 「だから、俺と付き合ってください!…忍さん!」

 

 「ええ?!私!」

 

 幼馴染とのやりとりを微笑ましく見ていた忍さんが狼狽える。

 

 「だって、そうじゃないですか。眠った俺を薄暗い部屋に無理矢理連れ込んで、海の上では裸になることを強要して…。おれ、俺、もうお婿に行けない!」

 

 「忍君。君はそこの恭也君とお付き合いしていたのではないのかね?」

 

 「あ、あの、その…」

 

 俺の言葉を聞いてバニングスさんが忍さんに懐疑的な視線を送る。

 日本語っていいよね。意図的に言葉を抜けばあら不思議。面白おかしく伝わるのだから。

 

 「…裕君」

 

 隣にいたすずかちゃんと離れてみていた恭也さんが心配そうな目で見てきたので撹乱用にもう一言添える。

 

 「あ、でも、アリサには純潔を奪われちゃったし、アリサの方になるのか?」

 

 「はぁ?!」

 

 今度はアリサが驚き、俺の胸ぐらから手を放す。

 

 「だって、お前もいきなり俺を襲って俺に入れて来たじゃないか」

 

 「ちょっ?!何言っているのよ!」

 

 「あんなに血が沢山出たのにしらばっくれる気か」

 

 もちろん鼻フックした時に出た鼻血の事です。

 

 「…俺、汚れちゃった(鼻血で)」

 

 「…アリサちゃんって、あんなに可愛い顔して男の子だったなんて。しかも血が出るほどに太かったの?」

 

 「いや、細かったですよ。ただ長くて奥に突き刺してきたんですよ」

 

 「アリサ、パパはそんなふうにお前を育てた覚えはないぞ!」

 

 プレシアは引きつった顔でアリサを見て、父であるバニングスさんは娘の所業を叱り始める。

 ふと、思ったんだがそう言う話になると俺と恭也さんで榊原君の純潔、もとい穴奪ったことになるのか?

 やったね、榊原君。ハーレムで来たよ。ただし、女の子ではない。

 その場が混沌としてきた中、なのはちゃんが無言でレイジングハートを起動していた。

 俺を拘束していた腕も離して両手でその機械じみた杖の柄の部分を俺に向ける。

 え?俺に向ける?

 

 「…の」

 

 「はい?」

 

 「なのはも裕君の初めてを貰うのぉおおおお!」

 

 嫌な予感がした俺はすずかちゃんの拘束から逃れ、すぐその場を離れると、傍にいたはずのなのはちゃんが、いつの間にか俺が先程いた場所に回り込み、レイジングハートの柄を勢いよく突き出していた。

 

 

 

 なのはちゃんのあなをほる攻撃。

 しかし、攻撃は躱されてしまった。躱せてよかった。

 

 

 

 「私も、裕君を攫って、裸を見て、穴に入れて、純潔をもらうのー!仲間外れはいやなのー!」

 

 仲間外れ=一人ぼっちはいやだよね。

 だけど、願いを叶えないでよ!インキュベーダ―!

 しかし、我ながらロクな目に逢っていないな…。

 

 「裕君の、初めてを、貰うまで、突くのを、やめない!」

 

 このままだと、目の形がグルグルになったなのはちゃんに俺のあなをオラオラされてしまう。

 黒袴にかけたWCCの効果でこれまでにないほどの素早い身体能力を発揮している俺に対抗してか、魔力を全開にして襲い掛かってくるなのはちゃん。

 今のところ速さでいえばこちらが勝っているのだが、徐々に逃げ回る俺の後ろへ回り込むスピード増している気がする。このままだと、長くてかたいブツ(レイジングハート)が突き刺さってWRYYYYYYYYY!!してしまう。

 

 そんなのダメだドンドコドーン!!

 

 恭也さんに妹の蛮行を止めてもらおうと視線を向けたが、以前しでかした俺の誘拐騒動の事を問い詰めている母上と問い詰められている忍さんの仲介役をすずかちゃんと一緒に行っており、手が離せない。

 アリサは普段の素行について父のバニングスさんからお叱りを受けていた。

 ならば、プレシアはというと月村邸の猫と戯れるフェイトとアルフさんの様子に胸を抑えながら見ていた。

 ユーノ。なのはちゃんを抑え込もうと走り回るが、残念。速さが足りない!

 つまり、援軍は期待できない。

 こんな冷静な解説が出来るのもWCCを施した装備のおかげで解説風に自分の状況を把握できる。

 

 

 WCCは解説役(冷静さ)が必要だぜー!

 

 

 などと考えている間になのはちゃんの『あなをほる』攻撃が止む気配はない。

 

 「つーいて、つーいて、つきまくるのー!」

 

 なのはちゃん、何故君みたいな子どもがそのフレーズを知っている?!

 

 彼女のラッキーパンチを貰わないように周囲の動向にも気を配らなければならなくなった邪神は、恭也とフェイトがなのはを止めるまでお尻を守るために逃げ回るのであった。

 

 


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