鎮守府に変態が着任しました。   作:「旗戦士」

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バレンタインです。
チョコです。


バレンタイン鎮守府

<花のバレンタイン>

 

 

 「バレンタインだね、龍田君」

「そうですねぇ~」

 

「チョコ」

「嫌です」

 

人の言葉遮って断るとかどれだけ嫌なんだろうか。

私の頬に自然と涙が伝う。

 

「ひ、ひどい! 龍田君のシスコン! ドS! 鬼畜艦! 天龍型の怖くて最強な方! 」

「地味に気にする事言ってくるのね~。殺すわよぉ~? 」

 

「ヒィッケツ薙刀はもう勘弁! 」

「本音は? 」

 

「ウェルカム」

 

瞬間、鈍い音と共に私のケツに激痛が走る。

違うんだ龍田君、これは条件反射という奴なんだ。

 

「司令官、入りま――きゃあっ!? お尻に薙刀が……!? 」

「あ、ごめんねぇ吹雪ちゃん。今提督にお仕置きしてたのよ~」

 

「み、見れば分かりますけど……。新しい子と攻略海域の途中で遭遇したので連れてきましたから、司令官早く起きてください」

「ふぶきんのパンツ頭に被ったら起きるよ」

 

「おうクソ司令、その単装砲消し飛ぶのか起きるのか選べ」

「すいませんでした起きます」

 

ケツに薙刀が刺さったまま私は立ち上がる。

先程から切れ痔になったという話しをしているのにも関わらずケツを狙う龍田君はさすがだ。

 

「それでふぶきん、新しい子とは? 」

「私の姉妹艦なんです! 叢雲ー! 入ってきていいよー! 」

 

彼女の声が聞こえた瞬間、水色のロングヘアーを携え、気の強そうな女の子が執務室へと入ってくる。

手には槍のような艤装を手にし、私を見るなり敬礼をした。

 

「特型駆逐艦、五番艦の叢雲よ。この鎮守府に着任させて貰う事になったわ」

「うむ、叢雲君だね。早速だが君にお願いしたいことがある」

 

「何よ? 」

「この薙刀抜いてください」

 

「え、ちょっ、はぁっ!? なんでお尻に薙刀刺さってるのよ! しかもなんでアンタはピンピンしてんの!? 」

「この提督、異能生命体なのよ~」

 

心配そうに私のお尻を見つめる叢雲くん。

そんなに見られたら私……感じちゃうっ!!

 

「だ、大丈夫なの……? 」

「私も見た時は驚いたよ……」

 

「ま、まあとりあえず医務室に連れて行くわ! 龍田さん、この馬鹿借りてもいいかしら? 」

 

「えっ」

「えっ」

 

予想以上の優しい一面にふぶきんと龍田君は思わず唖然とした。

こういう反応が普通なんだよ!!

君たちがドSすぎるの!!

 

「ほら肩貸して。大丈夫? 立てる? 」

「ひぐゅっ……ふぐぅぅぅぅぅ……」

「いや、なんで泣いてるのよ気持ち悪い」

 

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<チョコ作成>

 

 

 「さっそくケツも完治した事だしチョコを造りたいと思う。今回手伝ってくれるのは鳳翔さんと響君だ」

「よろしくお願いします」

「すぱしーば」

 

エプロンと割烹着をそれぞれ身に付けた二人を見て私の股間も早速興奮しているようだ。

このまま夜の3分クッキングと洒落込みたいところである。

3分も持たないけど。

 

「ところで提督、チョコの作り方とかって分かるんですか? もし分からないのなら私が造るのですが……」

「いや、女の子を女体盛りする目的でお菓子作り始めてみたら趣味になっちゃった」

 

「動機が最低なんだけど」

「今すぐ全世界のパティシエたちに土下座させたいですね」

 

そう言いつつ私は既に溶かしたチョコを調理場の棚から取り出す。

チョコを貰えないのならば私があげてお返しを貰えばいいと悟った直後、私は昨日の夜からあらかじめ仕込みをしておいたのだ。

 

「そういえば司令、チョコと言っても多数の種類があるけど何を作るんだい? 」

「ガトーショコラさ。生クリームを湯煎して既に温度を保ってあるから、後はこの二つにグラニュー糖と卵黄を混ぜるだけだよ」

 

「ハラショー、本格的だね」

「紳士はやる時だと本気なのさ」

 

私はボウルに入った卵黄とグラニュー糖を泡立て器で混ぜ、白っぽくなったと同時にチョコを入れる。

よく混ざったか確認した後、先程の生クリームを入れて再び泡立て器を回した。

 

「あ、鳳翔さん。卵白とグラニュー糖混ぜてて貰ってもいい? グラニュー糖は2回から3回に分けて入れてね」「メレンゲですね。分かりました」

 

そう言うと鳳翔さんは分けておいた卵白とグラニュー糖を別のボウルに入れ、かき混ぜはじめる。

響君にはココアパウダーと薄力粉をお皿に出してもらい、私はチョコの入ったボウルを調理場のテーブルに置いた。

 

「出来ましたよ、提督。こんな感じでどうですか? 」

「いやもう流石だよ。ありがとう。響君も出しておいてくれてありがとうね」

 

「礼には及ばないよ。ところで、私も泡立て器でかき混ぜてみたいんだ、いいかな? 」

「もちろんさ。ほら、このボウルにメレンゲをちょっと入れて薄力粉とココアパウダーと一緒に混ぜて」

 

分かった、と響君は応えるとボウルを抱え込みながら泡立て器で混ぜはじめる。

ハラショー、ハラショーと言いながら目を輝かせている姿は天使そのものだ。

 

「けど提督、これって人数分ちゃんとあるんですか? 」

「ふっ、この私に抜かりはない。事前に昨日から作っておいたやつを冷蔵庫に入れてある」

 

「準備万端ですね、ふふっ。こういうの、逆チョコって言うんですよね? 私、結構楽しみです」

「ちなみにどれか一つに媚薬が入ってる」

 

直後、鳳翔さんのハリセンが俺の頭に炸裂する。

どこで買ったのそんなもの。

 

「鳳翔さん、どうしたんだい」

「何でもないわ、いつもの提督の奇行に突っ込んでたの」

 

「なるほど納得。それより混ぜ終わったよ、この後はどうすればいい? 」

「あ、あぁ。型に入れてオーブンで熱するよ。170度で20分、その後160度でまた20分焼くんだ」

 

「分かった。鳳翔さん、手伝ってもらっていい? 」

「もちろんですよ、響ちゃん」

 

調理場に備え付けられたオーブンの電源を点け、鳳翔さんは私が言った通りの温度を設定する。

円形の型に入れたガトーショコラを中に入れ、ボタンを押して調理を開始した。

 

「よし、これで後は出来上がるの待って冷ますだけだ。二人とも、ありがとう。助かったよ」

「いえいえ。その……び、媚薬入りのはきちんとご自分で処理しておいてくださいね」

 

「媚薬入り……それはないよ司令官」

「はっはっは。まあ出来上がるまで私が見ておくから、二人はゆっくりしておいで」

 

はーい、と言われるがまま二人は調理場を出て行く。

ぬかったな鳳翔さん、君たちがいなくなった間私はすべてのガトーショコラに媚薬を仕込む……!

 

「この明石君から貰った"艦娘エロエロ媚薬"で……」

「へぇ~。何をするつもりだったんですか、司令」

 

「あっ」

「スターキリシマッ!! 」

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<チョコ渡し>

 

 

 せっかくの私のイケメンフェイスがスターキリシマにより鋼入りのダンみたいな顔になってしまった挙句、明石君から3万で買った媚薬も取り上げられてしまった。

 

「んん~! 美味しいのです! これ、響ちゃんと鳳翔さんと司令官が作ったのですか? 」

「ほとんど提督のレシピですけどね。でも、喜んでもらえたようで良かったです」

 

「退いてください曙。私はその残ったガトーショコラを食べねばなりません」

「い、嫌よ! これは私のよ! 不知火には渡さないんだから! 」

 

「これこれ、まだまだ残りがあるから喧嘩すんなっつーの」

 

睨み合っていたぬいぬいと曙君に天龍ちゃんが二つのガトーショコラを渡すと、二人は目を輝かせながらそれを頬張る。

ふむ、なかなか好評のようだな。

 

「ねえ司令、今度これのレシピ教えてもらっていい? 」

「みんなに作ってあげたいんだけど……」

 

「いいよ、後で紙に書いて渡そう。それにしても叢雲君、早速なじんでるようだね」

「ま、吹雪姉さんとか深雪もいたしね。それよりもイムヤ、少し寂しいみたいよ。同じ潜水艦担当の子がいなくて」

 

「む、そうだったな。今度妖精さんに潜水艦の艤装開発をお願いしてみる」

 

イムヤと叢雲君が私の元へ来るなり、ガトーショコラのレシピを教えを聞きに来たようである。

そんな中、叢雲君はイムヤに聞こえないように私に耳打ちした。

なんと気が回る子なんだ、まだ若いのに立派だな。

 

「よお提督! これお前が作ったんだろ? すげーな、お前なんでもできるじゃんか」

「天龍ちゃんも喜んでいるようで何よりだわ~。これはちゃーんとお返ししなきゃね」

「そうですね。まさかここまでクオリティ高いとは思いませんでしたから」

 

加賀さんも納得の出来のようだ。

ふっ、男版間宮さんとはこの私のことよ。

 

「さあみんなまだまだ追加分はあるよ。食べていってね」

「はーい! 」

 

珍しく私のケツに薙刀が刺さる事はなかった。

このまま私の身が安泰な日が続けばいいな……。




オチが微妙。

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