テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
今回も繋ぎのお話しです。
あ、古田さんの言葉遣いに違和感があるかもしれません。
「えっと、こんばんは?」
「お、おう」
「あ、俺の名前はコウジュです。こっちは伊丹先輩」
「……よろしく」
「あー、オレはジゼルだ」
コウジュのマイルームで行われている三者面談。その雰囲気は、留年目前となった生徒を交えたモノの様に、決して良いとは言えないものとなっていた。
参加者はコウジュ、伊丹、そしてジゼルと名乗った深縹色(やや紫みを帯びた青)の肌に入れ墨をし、白いゴスロリ服を豊満な身体に無理矢理着ている女性。
コウジュと伊丹がマイルームを訪れた時には既にジゼルは起きており、コウジュが用意した食事を食べ終わった所だったのかまったりとしていた。
しかし、コウジュが入ると同時にジゼルは何故か見るからに警戒した面持ちとなり、若干の怯えすらも見て取れた。
それに対してコウジュは首を捻るも、突然訳の分からない部屋に連れて来られた所為なのだろうと無理矢理納得した。怯えられる理由がそれくらいしか思いつかなかったからだ。
まぁ当然ながらそんな理由ではない。
なにせジゼルは亜神だ。ロゥリィ・マーキュリーと同じ、人ではない不死の存在なのである。
亜神の中では最も若いとはいえ、既に400年の歳月を過ごし、それなりに多くの経験を経ている。
では何故ジゼルはコウジュに対して警戒しているのか?
その答えは至って簡単だ。
いつしかロゥリィがコウジュに対して感じた気配をジゼルもまたコウジュから感じているからである。
コウジュ本人は若干忘れているが、コウジュが目指している物は神化だ。
本人が望んでいるかはさておいて、着実に経験を増やしその道を順調に進みつつある。
そして既に、神化は始まっている。
文字にすれば(仮)が(見習い)になった程度だが、コウジュから滲み出る気配にはジゼルが主上と仰ぐものと似た気配が出ている。
空腹で倒れて意識を失い、気づけば見知らぬ部屋に居る上、何故かご丁寧にも食べて下さいと書かれたメモと共にあった大量の極上の料理たちを平らげて落ち着いたと思いきや直属の上司と同じ気配を醸し出す存在が部屋に入ってきた。
そんな状況の為、考えるよりも動くことが得意なジゼルは、とにかく何かあればすぐ動けるように表面上警戒しているが、コウジュがもしも敵性存在であれば詰みな状態の為に、ぶっちゃけて言えば内心で涙目となっている。
そんなジゼルに対して、コウジュもまた内心で涙目となっていた。
ファンタジーの代表的な存在達、その一角を占める竜人を見て少しばかりテンションが上がっていたのだが、当のジゼル本人があからさまに警戒していては素直に喜べない。
”にゃ”が語尾の猫耳メイドさんやエルフさん(モフられ過ぎてちょっと苦手意識が生まれてる)達に出会えて生前から持っていた衝動を刺激され、異世界最高と純粋に喜んでいたコウジュ。幾つもの悲劇には出会った物の、異世界そのものを否定する気には到底なれなかった。
そしてそこへ、久しぶりの新たな種族に出会えたことを喜んでいたのだが、浮足立っていた心は現在急降下中である。
転生系小説の転生先としてもよくあげられる竜人種。
マイルームへの移動中に伊丹から聞かされた亜神かもしれないという言葉で多少気を引き締めたが、改めて目にするとなんとも厨二心を擽られてしまった。
コウジュが生前よく見ていたweb小説サイトでは大体が通常の人間に尻尾と翼が生えただけだとか龍に変身出来るだとか人間からそれほど逸脱した見た目では無かった。
しかしジゼルは肌の色からして肌色ではない。
そのことに現代人の何割かは忌避感を示すかもしれないが、コウジュはただファンタジーすげぇ!と自分の事(厨二カラーである事など)を棚に上げて嬉しく思っていた。
しかし悲しいかな、御対面はどうやら失敗したらしい。
更に言えば、今更ではあるがコウジュの中身は男である。
そして、ジゼルは肌の色を抜きにしても美人と言えるくらいに容姿が整っていた。
白いゴスロリ服ではあるがその粗野な着こなしに些か野性味が溢れすぎている気がしないでもないが、美人なのである。
そんな美女に警戒されているのもまた、コウジュとしては悲しかった。
しかしだからといってそこで諦めるコウジュではない。
互いに切りだし辛くなっていたが、何かないかと視線の端で探し、そしてそれを見つけた。
「そういえば料理はどうでした? 満足してもらえましたか?」
その言葉に、今までの警戒は何だったのかとジゼルは目を輝かせた。
「おおあれか! めちゃくちゃ美味かった! 腹が減って死にそうだったんだが最高だったぜ!!」
「やった! 弓兵主夫に習って作ったやつとかなんですけど満足して貰えたようで良かった」
「あれはあんたが作ったやつだったのか! すげぇな!」
そこからは互いに料理に関して様々な話をし、気分が良くなったコウジュはアイテムボックスからとある弓兵お手製のお菓子等を取り出して更に話を盛り上げた。
そんな美女と美幼女の話し合いに入れなかった伊丹はボソリと呟いた。
「……同類だこの二人」
◆◆◆
いやー、警戒されてたけど料理話であそこまで盛り上がれるとは思わなかったよ。
それに俺が作った料理を美味しいと言ってくれるものだからついつい秘蔵のアチャ男菓子を出してしまった。あの世界に戻れない現状ではストックして置いたものにも限りがあるが、後悔はしていない。
あ、そういえばそのジゼルさん自体は保護しただけだったのでもう帰りました。
話の途中で微妙に引き攣った笑みを浮かべていたり、なんか用事を思い出したと言っていたけどどうしたんだろう。炎龍を退治した辺りの話だったと思うけど、それ関係で何かあるのだろうか?
それにしても、飢餓状態からの回復って結構時間を要するはずなんだけど、料理を食べたら治ったそうだ。やっぱりすごいなファンタジー。
いや亜神だからなのだろうか?
やはりというか、先輩の思っていた通りにジゼルさんって亜神だったわけだけど、割と居るんだね亜神ってさ。
しかも亜神って皆不老不死らしいし、Fate世界では不老不死なんて求めても容易く手に入るものでは無かったのに不老不死の大安売りだ。俺が言えることじゃないかもしれないが。
さておき、現在は皇室庭園で行われている園遊会に俺は陰ながら参加している。
参加していると言っても、メイドとしてだ。
メイド服を着ることに違和感が無くなってきた今日この頃だが、ガチメイドさん達が居る中でメイド服を着ることを恥ずかしいとは言えないのだから仕方ない。
それに、メイド服を着ているとはいえ、俺が今やっているのは調理の手伝いだ。
なにせメイド服を着る機会が増えたとはいえ所詮俺は紛い物。貴族を相手にした作法など知る由もない。
かと言って先輩がやっているような、講和派に対する牽制でもある自衛隊所有の武器に関しての説明やら演習やらの手伝いを俺が出来る由もない。
そんな中、特別顧問として無理矢理割り込んだのに何もしないというのも気が引けるので仕事を探した結果が調理の手伝いなのだ。
園遊会では、日本の事を知ってもらうと同時に日本に敵対しないようにするため牽制と講和を進めることで得られる利益を餌とするために様々なものを用意している。
先に言った武器の説明もそうだが、俺が手伝っている料理もまた餌の一つである。
日本は飽食国家と呼ばれるほどに地球有数の食文化が発達している国だ。
繊細な料理が多いと言われる和食もそうだが、各国の食文化も取り入れてきた日本には多くの美食が集っている。
そもそもの日本食というのも、料亭で出るような料理から家庭料理までで考えてもその幅は多岐にわたる。
そこへ各国の料理も混ざればレシピの種類は数千数万どころではない途方もない数だ。アレンジも加われば言わずもがな。
そして、言っては悪いが特地の食文化はまだまだ発展しているとは言い難い。
そもそもが保存一つとっても難しい特地において、味など二の次になってしまうのは無理もない。
貴族の食事情に関しては多少異なるが、聞けば豪勢な肉料理を贅沢に用意することで貴族の威を示すのが基本なのだそうだ。しかも調味料が限られているから、味付けにはそれほど幅が無いとか。それはそれで俺的には胃を刺激する内容だが、ジャパニーズソウル的には様々な味付けを楽しみたい。
まぁ俺の事は置いておいて、その日本の食文化というのもこの特地では大いなる剣となるのだ。
見れば、用意された料亭料理や特地受けしそうな数々の料理を講和派の貴族やその家族が食べて舌鼓を打っている。
さすがに料亭料理とか出来るわけがないので下拵えとかばかりだが、それでも作った料理に喜色満面の笑みを浮かべる人々を見るというのは嬉しいものがある。
とはいえ、俺がアチャ男に教えてもらったものや自分で勉強した料理は基本的に家庭料理なのだが、少しくらいは料亭料理とかを習っておくのだったとこの光景を見れば少し後悔しないでもない。
俺はチラリと横に居る人を見る。
古田均さん。階級は陸士長だったか。
古田さんは元板前で、開店資金を稼ぐために自衛隊に入隊したらしい。
そして先輩率いる第三偵察隊所属となったようだが、その経歴から食事関連の仕事が回されることが多いようだ。
まぁそれも仕方ないだろう。
俺がバイトをしている食堂でもそうだが、今回の事に関しての打ち合わせをする際にも俺は何度か古田さんの作ったものを食べたことがある。マジ最高でした。
アチャ男の料理や士郎、凛ちゃん、桜ちゃん、アインツベルン家で食べた食事、どれも美味しいものだったが、有名な料亭の料理長の元で修行してきたという古田さんの料理はまた別ベクトルの美味しさがあった。
食レポなんぞできる能力は無い為に言葉には言い表し辛いが、鋭い美味さがあった。いや何言ってるんだろう俺。
まぁ、そんな古田さんの横で大根の桂剥きやらをやっているのだが、所詮は家庭料理を作る程度の能力しかないので最初は戸惑ったものだ。
だが、これでもチートスペックを持つ者だ。
少しずつだが古田さんのやり方を真似たり古田さん直々にアドバイスを貰って少しずつ技術が上がるのを実感している。難しい顔をしながらも褒められるのが地味に嬉しいです、はい。
ただ、そんな俺でもここでは十分な戦力になるという現状は割と厳しいものがある。
というのも、そもそもが自衛隊員は料理を学ぶために自衛隊員なのではないからだ。
バイト先やフォルマル家からの助っ人があるとはいえ、多少の知識がある俺以上に不慣れな作業工程をしなければならないために、肝心な部分はほぼほぼ古田さんが関わらなければならない。
今日の園遊会では料理長は古田さんだ。
自衛隊員としてここに居るとはいえ、作る以上は妥協する訳には行かないと古田さんにはかなり負担がかかっている。
ばれない様に回復を俺がしているが、肉体的な疲労は回復しても精神的な疲労は回復することが出来ない。
見れば古田さんは自身も料理をしながら、各担当から求められる質問にもアドバイスを即座に返し、貴族たちの腹に消えて行く料理を追加していっている。
汗をかきながらも、決して集中を途切らせることなく、一つ一つの工程を丁寧に、そして素早くこなしている。
「大丈夫だよ」
覗き見しているのがばれたのか、視線を手元から反らさずに古田さんがそう言った。
「すいません、よそ見してました」
「気にすることは無いさ。心配してくれた子を怒鳴るほど狭量じゃないつもりだ」
その言葉に少しだけ引っかかりを覚えてしまい、即座に返せないでいると古田さんが不思議に思ったのか手を止めてこちらを見た。
「どうしたんだい?」
「いえ、あなたも俺を子ども扱いするんだなって。まぁ見た目があれなんで仕方がないんですけど」
俺の言葉に古田さんが苦笑した。
そして作業に戻りつつ、口を開く。
「子ども扱いというか、勝手に弟子の様な感覚で接しさせてもらっているよ。いつかは弟子を取ることもあるだろうしその予行演習って所か」
「うーん、弟子かぁ。俺じゃ力不足だと思うっすけどねぇ……」
そんな俺の言葉に、今度は笑みを零す。
「そんなことはないさ。恐らくだけど、誰かに師事したことがあるんじゃないか? 食材の切り方一つとっても、誰かに言われた注意を思い出しながら丁寧にやっているように感じたけど」
何この人エスパーか何かですか?
確かに俺はアチャ男さんに師事したことがある。
といっても基礎も基礎だけだし、やはり俺は食べる方が好きだからか気づけばアチャ男さんに作ってもらっては俺が食べていた。
しかしその間に教えてもらったアチャ男式主夫術の多くは俺に根付いている。
それがどうやら古田さんには俺の作業を通して見えたようだ。
「よく分かりましたね」
「独学じゃできない動きをしていれば自然とね。それに、食べる人に対してあれだけ優しい笑顔が出来るのなら、料理する者として一番大事なものを君は持っているよ」
「や、やさ……? 俺そんな顔してました?」
「ああ」
「マジですか」
そんな顔していたのか俺。
いやまぁ嬉しかったのは確かだけどさ。
というかこの人はサラッと何を言っているのだろうか。
顔が熱くなるようなことがよく自然と言えるものだ。
けど、料理する者としてのくだりを言った時に少しだけ眉が寄って難しい顔したのは何でだろうか?
先輩は色々あって自衛隊にって言っていたし、その辺りに何かあるのかもしれない。
だけど、さすがに聞けるわけもないか。
「一応、褒められていると取っていいんですかね?」
「良いんじゃないかな。本格的に弟子になるのならもっと言いたいこともあるけど、今はそんな場合じゃないしね」
「確かに」
庭園に集った人数もあって料理が減るスピードは伊達じゃない。
地味に泥人形すら出さずにこの身一つに集中して作業しているというのに減るスピードと同じくらいだ。
というかやっぱり料理人が少ないと思う。
比較的に作業の少ない料理を古田さんは選び、結構な量の下拵えを事前にしておいて運んできたが、正直に言ってこちらの人の胃袋を舐めていたと思う。
俺と同じくらいの幼女なのに結構食べてるんだよね。あ、俺も食うんだから俺と比べたら比較するのにおかしいか。
でも本当に大人から子供まで、それなりの量を食べている。
それだけ作った料理を評価してくれているともとれるが、食べてくれる人達の顔位ゆっくり見たいものだ。
と、そんな風に古田さんと共にたまに会話をしながらも料理を作り続けていると先輩から耳に付けていた無線に連絡が届いた。
《後輩、緊急事態が起こったから離脱する》
古田さんの物にもそれは届いたようで、二人して顔を見合わせる。
そして事前に決めていた通りに、無線では同時に相互通信出来ないためこちらからは俺が念話で返す。
俺と古田さんの耳元には俺が何とか習った認識阻害の魔術が掛かっており、受信機や俺のケモ耳も普通の耳に見えるようになっているが、それも注視されれば解けてしまう。
だから何事も無いように俺達は作業へと戻りながら、俺が先輩へと返す。
『俺もそっち行った方が良いですか?』
《いや、よく分からない騎馬隊が来たからVIPを逃がすだけだ。見る限りでは今すぐに抗戦するという訳でも無いが、いざとなったら決めてあったように古田と共に離脱しろ》
『了解っす』
先輩からの無線が切れたのを確認したと同時に念話も切り、古田さんへと静かに声を掛ける。
「お聞きの様に正体不明の騎馬隊が近づいてるようですけど、予定通りギリギリまで俺達はここで続行という事で」
「了解」
今回の園遊会を開くにあたり、この会場周囲には特戦群により警戒網が敷かれている。
勿論この世界の物とは比べようもないほどの距離を誇るもの故に、その騎馬隊とやらが到着するにもまだ少しの猶予があるだろう。
そんな状態で料理関係の中心から俺達が抜ければ振る舞われている料理に空きが出てしまう。
そうなれば貴族の園遊会としては見目悪く、招いた側としての風聞に関わる。
講和派への剣でもあり飴でもあるこの園遊会は何としても成功させる必要性がある。
出来れば先輩の方へついていきたいが、例の様に令呪があるし、何かがある前に逃げるのだから差し迫った危機は無いだろう。
むしろここに残る方が危険度としては高い。
そんな場所に古田さんを置いていくわけにもいかないし、離れた場所には外務省からの出向である菅原さんやピニャ皇女も居る。
最悪の場合は彼らの脱出に手を貸すのが俺の今回で一番重要な部分だ。
「どうやら来たみたいっすね」
「あれか。馬に乗っているとはいえごついな」
「確かに」
暫くするとチート耳に聞こえていた蹄の音も近くなり、丘の上に騎馬隊が見えた。
一番前に居るのは、古田さんの言う通りに豪奢な鎧にマントを付けた大男だ。乗っているのは立派な馬だがその大男が乗っていることで小さく見えてしまう。
俺の倍からあるんじゃなかろうか?
「物騒っすねぇ全く」
「コウジュちゃんは逃げてもよかったんだけど?」
辟易と、俺は思わず零してしまう。
そんな俺の様子を見て古田さんが言った。
俺は純粋に心配してくる古田さんにどう返したものか困ってしまいすぐに言葉を返せなかった。
だって、大男とはいえ尊大に近づいてくる件の男に斬り掛かられてもきっと俺は傷一つ付かない。
魔剣とかそういった類の物を持って居ればわからないが、それでもロゥリィさんクラスが出てこないと炎龍の鱗すらラーニングして防御力が上がった俺にはそうそう怪我というものは無い。
だから古田さんの心配には意味が無い。
でも心配されること自体は嬉しいものだ。
「……事前に決めたようにいざという時の脱出役ですってば。確かに古田さん達が逃げる訳には行かないけど、何があるかは分かりませんから」
一先ずそう返すと、古田さんは難しい顔をする。
「年齢は聞いているけど、それでも君みたいな子を矢面に立たせるのはどうにもまだ整理が付かないんだよ。それに隊長の大事な子が傷つくと隊長が何するかわからないし」
「ちょ、大事なってっ」
つい大声を出しそうになるが何とか抑える。
先輩の大事な子って何ですか!?
「だって隊長があれだけ気に掛けているんだからそうだろう? コウジュちゃんも隊長の傍を離れないし。契約どうこうは聞いたけど、契約っていうには近しいでしょ。だから基地の皆はコウジュちゃんが隊長の大事な人って認識だよ」
「何でさ……」
古田さんの言葉に俺は思わずどこぞの英雄志望みたいに零す。
何でそうなるのさ……。
確かに先輩とは仲良くさせてもらっているけど、どっちかというと家族とか仲間って感じで接しているつもりだった。
実際に先輩とは趣味仲間だ。もしくは心友。
なのに周りからはそう見えていたってことか。
気を付けた方が良いんだろうか……?
「え、何で落ち込んでるんだい?」
俺の様子を心配して少し焦った様子で古田さんが声を掛けてくる。
「いや、先輩はあくまで家族みたいな友達って感じなんですよ。というか先輩結婚してるし」
離婚状態だがどうせ元鞘だろうしそこは置いておく。
「隊長結婚してるの……?」
「してるんですっ。だから俺は違いますっ」
俺の発言に目を見開いて驚く古田さん。
俺もつい語気を強めに言ってしまう。
って、何で知らないのさ。
態々言いふらすことでも無いってのは分かるけど、俺とのことが噂になる前にそっちを噂にすべきでしょうが!
はぁ、これは基地に戻ったら色々と修正すべきだな。
「……帰ったらすることが出来ました」
「……程ほどにね」
そんな会話をしている内に、大男はピニャ皇女と話した後、部下と共に周囲にある料理へとむしゃぶりつく様に手を付け始めた。
えっと、ピニャ皇女の言葉を拾うにどうやらあの大男はピニャ皇女の兄のようだ。
似てない兄妹だこって。
それにしても、兄ってことはあの人は王族なわけだよな?
何というか料理の食べ方が偏見かもだけど野盗っぽい。めちゃくちゃ粗野だ。
少なくとも気品と言うものが感じられる食べ方ではない。
うんまぁ、ガツガツ美味しそうに食べてくれてるし、所作なんて俺も偉そうに言えるこっちゃないけど、もう少し落とさないように食べてくれると嬉しいかなぁ……なんて。
何とも言えない気持ちになりながらも俺は作業を続ける。
そのピニャ皇女のお兄さんと共に来た騎馬隊の人達が次々に料理を食べて行くものだから減る速度が速まった。
「どうやらピニャ皇女のお兄さんみたいですね」
「……ってことは皇子か。あまりそうは見えないけど」
「同感です」
見れば子どもたちが並んでいた、アイスクリームを出しているメイドさんの方に行き、子どもたちを散らしながら順番なぞ知らぬとアイスクリームを食べに行った。
「……」
「行っちゃだめだよ」
「さ、流石に行かないっすよ」
アイスクリームが気に入ったのか箱ごと持って行った皇子に一部の子どもが泣き出す。
貴族として躾けられているからか喚く様なことはないし、近くに居た親御さんが泣き止ませるために近づいたから何事も無かったが、ちょっとムカついた。
古田さんに止められたからではなく、流石にあのままあの皇子へと物申しに行くようなことはしないが、気分が良くないのは確かだ。
だからジッと見ないでください古田さん。
でもほんと、気に入ってくれるのは良いが子どもの分まで取るなっての。
ただ、それが王族故に当然の振る舞いだと言われてしまえば仕方がない。
王族として、誰かに気を使うようでは務まらないというのであればあの振る舞いこそが正しいのだろう。
けど、やはり納得できるものではないな。
そう理論で行くとピニャ皇女はあまり王族らしくないのだろうか?
だってピニャ皇女って先輩やら梨紗さんに色々“お願い”している姿をよく見るし。
うーん、でもそうなると俺個人で言えば目の前で繰り広げられているようなのが王族の姿だってなら勘弁だ。
それならピニャ皇女の方が断然いい。
ちょーっと最近BL本に傾倒しすぎな気もするし、俺経由で手に入れようとするのは勘弁してほしいが、まぁその分身近に感じる。
「む、今度はお菓子まで」
「コウジュちゃん」
「だから行かないですって……」
……よっぽどのことが無ければ。
その言葉は口に出さず置いておくことにした。
いかがだったでしょうか?
敬語じゃない古田さん、尚且つ子供に接する朴念仁という事でこのような言葉遣いとなったのですが、変じゃないでしょうか?
ひょっとすると修正するかもですね。
そういえば最初にジゼルとの初邂逅を入れた訳ですが、コウジュは未だジゼルが炎龍を嗾けたあたりの話を知らない状態です。
ジゼルの方は……、ナム(え
まぁ自分の上司みたいな力を持った存在が自分の嗾けた龍たちを退治したとなっては用事も思い出すかもしれましれませんよねw
さて、次回は地震の辺りの話になる予定です。
次会か次々回か、コウジュはあの人を見てどう反応するのか、私が書きたかった部分でもあるので、頑張りたいと思います。
ではでは!