テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

結局長くなったので分割してしまいました…。


『stage48:ハッピーエンド?』

 

 

 

 

「誠に申し訳ありませんでした…」

 

 そう言いながら土下座をする馬鹿が一匹、もとい一人。既に暴走状態から脱しているコウジュのことだ。

 この子は元マスターである私を中心に、周囲で満身創痍になっている他のサーヴァント達へと全力で謝ろうとして土下座を行っている。

 しかしながらそれでは私たちの気が収まらない。

 私とアーチャーで固有結界を再度形成、その中でキャスターによる魔力やその他諸々のバックアップがある状態で全員からの全力攻撃、それをこの子は防ぎ切った。

 正確には全身から爆発的に溢れ出させた魔力の壁でほとんどを弾き、ゲイ・ボルグのような必殺の一撃は食らった瞬間にその潤沢な魔力で以て超即再生をしやがったのだ。

 本人曰く“無敵状態でバ火力になるのは知ってたけどガチで暴走したことはまだ無いから知らなかった”とのことだったが、いくらなんでもあれはひどすぎる。

 殺しても消し飛ばしても次の瞬間にはそこに居るのだから堪ったものではない。

 小ギルガメッシュに無理矢理エアを使わせて固有結界ごと吹き飛ばしたのにまたそこに居たのだから冗談ではない。

 おかげであの美しかった柳洞寺の庭はもうどこにもない。白砂利が敷き詰められ、清流を幻想させる庭はどこにも…。

 周囲を覆っていた木々達でさえも全てが地面ごとなぎ払われ、土砂災害かと言わんばかりに掘り返されている。

 そして、柳洞寺の本堂やそのほかの建物は“そんなものは無かった”と言わざるをえない惨状。

 本当にそこに建物があったのか疑問を持ってしまう程にそこには建物を構成していたのであろう何かが少し残っているだけ。

 

「ちゃうねん。もう少し手前で止まる筈やってん」

 

「鬱陶しいから似非関西弁止めなさい」

 

「あい」

 

 私たちの殺気だった雰囲気に、つい言い訳しようとしたようだがその前に潰す。

 コウジュが変な話し方をする時は大体何かを誤魔化す時だ。短くも濃い付き合いの間にそれくらいは分かった。

 それにしても、どうやらまだ反省しきれていないらしい。

 

「で、でもほら! 想定より被害自体は少ないし!」

 

「あなた自体は好き勝手してたじゃない! 被害が抑えられたのはサーヴァント達の御陰でしょ!」

 

「あ、あはー…痛っ!?」

 

 目を反らしながら誤魔化し笑いをするコウジュを思わずはたく。

 確かに作戦上ではこうなる可能性があると言ってはいたが、ある意味運が良かっただけでしかない。

 なにせコウジュが持つ宝具の中には惑星を対象としたものがいくつかあるという。云わば対星宝具。

 本人が怖くて使えないと言っていたし、狂化中はまともに思考が働かないから武器を変えるなんて高度なことができない筈とのことだけど、それは所詮憶測でしかない。

 

「まぁそこまでにしておいてやりな、嬢ちゃん」

 

「ランサー…、あなたこの子になんだか甘くないかしら?」

 

「そんなこたぁ無ぇよ。この寺には悪いが予想の範囲内の被害だったんだからそれで良いじゃねぇか。元々いざという時の被害を抑えるのが俺達の仕事だ」

 

 そう言うランサーにジト目を向けるも開豁に笑うのみ。他の皆も同じ気持ちのようだ。

 そんな姿を見てしまえば、自分一人が言い続けるのも大人気ない。

 はぁ、と溜息一つ。コウジュに手を伸ばし彼女を立たせてあげる。

 

「もう良いのか?」

 

「良くは無いけど仕方がないわ。まだやることもあるしね」

 

 若干涙目のコウジュを見ると前言撤回をして続きをしたくなるがさておき、立たせたコウジュは私の言葉に思い出したかのようにハッとした表情をする。

 忘れてた訳じゃないでしょうね…。

 まぁでもそれについてまた話し始めると長いし、さっさと終わらせてしまいましょう。

 

「――――――っ」

 

 今の今まで黙っていた外道神父が、私が目を向けたことに気付き目を合わせてくる。

 聖杯の泥に塗れて人外になっていたこの神父だけど、コウジュにズタズタに切り刻まれてぼこぼこに殴られて最後には元の姿に戻っていた。

 そしてそのあとロープでぐるぐる巻きにして身動きできない状況にされていた。撒いた時は気絶していたけどいつの間にか目が覚めていた様ね。

 

「それで、どうするの?」

 

「ふふふ、俺にいい考えがあるんだ」

 

 駄目な気がする。

 しかし今までもなんだかんだといい方向にはなっていたし、静観する事にした。

 狂化状態でも結局コウジュは言峰を殺さなかったんだもの、悪いようにはしないのでしょうね。

 狂化すれば思考が単純になると言いながら、泥だけを斬って命を奪わなかったのだからここまで来ると呆れを通り越して尊敬するわ。途中からはその思考もどこかに吹き飛んで完全な暴走していたようだけどね。

 まぁともかく、コウジュがどうするのか見てみましょうか。凜もすごい眼付きで見てはいるけど、コウジュに任せるみたいだし。

 

「来い、魔弾ミストルテイル」

 

 コウジュが呼び出したのは以前見せてもらった片手銃(ハンドガン)の一つ、魔弾ミストルテイル。

 ハンドガンとは言うが、これは銃の形はしていない。

 フォトンで出来た光球、そしてその台座、それらを3つの少し丸みを帯びたブレイドが包むようにして在り、銃身を造っている。

 確か、『この銃に射抜かれたものは運命の選択を迫られ、その決断によって魂が正しい場所へと導かれる』とか言ってたっけ。

 そこまで思い出し、つい苦笑してしまう。

 どうあっても彼女は激甘のようだ。

 でもそれが、なんだか嬉しく感じてしまう。

 そして、コウジュはそんな私はさておき言峰に向かってミストルテイルを構えた。

 

「お前の罪はお前が償え、言峰」

 

 バンッという音と共に、弾丸が発射され言峰に当たる。

 

「――っ!!?」

 

 着弾した瞬間言峰は気絶したのか、ぐったりとしてしまう。

 

「コウジュ、何をしたの?」

 

 凜が恐る恐る問うた。

 うんまぁ、事情を理解した私以外からすれば目の前で動けない状態にされた人間が撃たれたんだからいくら死と隣り合わせの世界に生きていても驚くわよね。

 

「あの皆さんそんなやっちゃったみたいな目で見ないでくださいな。別に殺してないから」

 

 コウジュが慌てて弁解するも、皆は引いたままだ。

 いつもいつも説明をせずに先に行動するコウジュが悪い。

 それでも何とか誤解を解こうとわたわたしているコウジュの後ろで、外道神父は再び目を覚ましたのかもぞもぞと動き始めた。

 

「ほ、ほらな!! 大丈夫だったじゃんよ!?」

 

 若干自分でも心配だったのであろうコウジュはまた涙目になりながらも、起きた言峰のロープや、口元を縛っていたものも全て外していく。

 

「ちょ、外していいの!!?」

 

 凛が驚いて言うが、私の予想通りならもうこの外道神父は外道ではなくなっているはず。

 そうこうする内にロープをすべて外された言峰。

 その言峰が、突然がシュバっという効果音が似合いそうなほど俊敏に正座をしだした。

 

「すまなかったぁぁぁぁ!!!」

 

 そしてそのまま、額を地面にこすりつけて土下座をした。

 

「大☆成☆功!! って、おぅっ!?」

 

 ドヤ顔で言うコウジュを今度は凜が頭をはたく。

 何で叩かれたんだという目を涙交じりにしているコウジュだけど、このよくわからない状況を作り出した原因があなたのだから仕方ないわよ。

 

「ほんとおぉぉにすまなかったぁぁぁ!!!」

 

 そして嗚咽交じりに言峰神父は土下座を続行中。

 他の面々は未だにこの気持ち悪い位の代わり様に引いたまま思考放棄しているようだ。

 仕方がない、そろそろ助け舟を出してあげるべきかな。

 

「さっきコウジュが持っていた武器の能力は簡単に言えば魂の在り方を導くというものなのよ」

 

「そ、そうなんだよ! 俺が言峰にしたのは言峰の感情の歪みを弄ったって言えば良いのかな…、生まれながらに在り方が歪んでたんだ」

 

「歪み?」

 

 私の言葉に慌てて付け足すように言うコウジュ。

 それに返してきたのは士郎だ。

 士郎の疑問に答える為にコウジュは続きを話す。

 

「歪みって言っても俺の主観的なものになるんだけど、言峰の中の判断基準ってのが大多数の人間と根底が違ってしまっている結果、今回みたいに死の瞬間の人の輝きを見たいとかって考えに至ったと思うんだ。

 確か、一般的な幸せを謳歌出来ず、人の不幸に愉悦を感じてしまう歪み。

 けど、この神父はその反面そんな自分に疑問を持っていて自ら色んな事をして救われようとしたりもしてたんだ。詳細は忘れたけど、堕ちるまでは聖職者らしい聖職者だったらしいよ。

 だから、その辺りを上手くいく様にちょちょいとやってみた」

 

「それをしたから…こんな言峰になったのか…?」

 

「That's right!! つまりアレだね、映画だと突然良い奴になる少年になぞらえて言うと、綺麗な言峰だね!」

 

 キレイなだけに、なんて嬉しそうに言うコウジュ。

 あ、今度はキャスターに頬を軽くだけど抓られてる。

 またしても何でという表情をしているけど、理解していないのかしらこの子は。

 魂の改変だなんて魔法の領域をさらっとしてしまったんだもの。魔術師でもあるキャスターが状況を消化しきれないのも仕方ない。

 今更だけど、本当に規格外なことばかりを起こしているわね。扱いきれていないのが残念で仕方ないけど。

 でも、その御陰で私は生きているのだし、感謝しないといけないのかしらね。例え最近胃が痛い時があったとしても。

 

 よし、私もなんだか我慢ばかりしている気がするし少し参加しようかな。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ああああ、私というものはどうしてこんな事を!!」

 

 俺がキャスターやイリヤにあちこち抓られている間に、土下座していた言峰はいつのまにか膝立ちになって空に向かって懺悔的な事をしていた。

 自分でやっといてなんだけど、何だろうこの落ち着かない感覚。

 でもこれしか思いつかなかったんだから仕方ないじゃないか!

 ってか何で俺は抓られてるの?

 防御力の関係か痛くは無いんだけど、やめてくださいお願いします。

 とは言えこういう時は大体自分がやらかした時なので我慢する。

 抗うと後が怖いことは学習したからね!

 そう思いされるがままになっていると、少しスッキリした表情をして止めてくれた。 

 実際には痛くなかったがつい頬を摩る。

 あ、痛いと思ったからかちょっと痛くなってきた。もう嫌だこのピーキーな能力。

 

 そんな風に内心で涙目になっていると、後ろで騒いでいた麻婆がいつの間にか静かになっていた。

 どうしたんだろうかと、目を向ける。

 そこには黒鍵(?)を手に思いつめた表情の麻婆が…。

 

「私一人の命で釣りあうとは到底思わないがこうなったら私の命を捧げ――「やめんかい!!」――ぐふ!? しかしこうでもしないと!!」

 

 一瞬固まってしまったが首を掻き切って自殺しようとしたのを見て、とりあえず殴ってしまう。

 そしてまだ何か言ってる麻婆を、とりあえず腕だけロープで再び縛り拘束する。

 俺はそんな言峰正面に行った。

 

「あんたの罪は消えねぇし、あんた1人が自殺した所でどうなるってもんでもねぇ」

 

「そうだ、私はたくさんの人を…人を……本当に何という事を!!!「やめぃ!」ごふっ!?」

 

 鼻と鼻が付きそうなほど顔を近づけていきなり大声で叫びながら泣くから思わず頭突きをかましてしまった。

 聴覚が良くなってる事もあったのだろうがかなりうるさかったんですごめんなさい。

 帽子越しだからそんなに痛くないし許せ麻婆。

 

「と り あ え ず! よく聞け言峰」

 

 後ろにのけ反ったまま戻れない言峰を引張り起こして目を見ながら俺は改めて話す。

 

「俺はあの教会でお前とギルが弄んだ子達と接触する機会があった。そこで話をしたが、あの子たちはかたき討ちをしてくれって俺に言った。けどな、一言もあんた達を“殺してくれ”とは言わなかった」

 

「それってあの地下の…」

 

 ボソリと思い出すように言う士郎。

 あの地下礼拝堂に行ったから俺が何の事を言ったのか気づいたのだろう。

 士郎は幽霊の子達を実際に見た訳ではないんだろうが それでも子どもたちを弄んだという結果はあそこにあった。

 “かたきを討つ”、この言葉本来の意味なら殺してくれっていう意味になるんだろうがあの子達が言った言葉に“殺してくれ”の意味は含まれていなかった。

 俺の思い込みって言われたらそこまでだが、ホントに短時間とはいえ、それ位は分かったつもりだ。

 ボコボコにしてくれとかは結構言ってたが…。

 

「だから俺はあんたを殺さないと決めた。あんたの感情を弄った事が本来のあんたを殺したっていう事にもなるとは思うし、ただの詭弁だとも思う。

 けど、あんたはここで今生まれ変わったんだとそう信じたい。

 そして、残りの人生を全てかけて償え。何をして償えとは言わねぇ。けど、あんたは生きて償うべきだ」

 

 偽善。自分勝手な押しつけ。まさしくその通りだろう。

 でも、こんな結末があっても良いと思うんだ。

 世間一般から見れば裁かれるべき存在かもしれないし、言峰を憎む存在もたくさん居るだろう。今まさに近くに居る凜ちゃんがそうだ。

 けど、だからと言って殺してはいおしまいってのは俺自身なんか嫌だ。

 俺自身が命を奪うということに対する忌避感を持っているのも勿論あったけど、やはり生きて償うことも必要だと思う。

 平和ボケしたなんて言われる現在日本人の感性かもしれないけど、それの何がいけないのさ。

 転生して、こんな体になって、チート能力貰って、いつ死んでもおかしくない聖杯戦争なんてものに巻き込まれたけど、やっぱり俺は俺だ。

 というか、ただでさえギスギスしてるのにこれ以上ギスギスしてしまうと俺の胃がマッハだ。

 

「ああ分かった!! この身この全てを掛けて償いをし続けよう!!」

 

 俺が考えている間に言峰も自分の意思を固めたのか、高らかにそう言いながら自分でロープを引きちぎり立ち上がった。

 自分で切れたのかよ…。

 

「では、一分一秒も惜しい!!さっそく行ってくる!!!」

 

 次の瞬間には言峰は走り出し、その場を去る。

 えぇぇ…、一応キャスターに強化してもらったロープなのにどうやったのさ…。

 しかし考えている間にも麻婆は影も形もなくなった。

 まぁ仕方ない、あの感じだと大丈夫だろう。

 そう自分に言い聞かせるようにしながら、置いてきぼりにしていた面々の方を向く。 

 

「すまん。凛ちゃんも士郎も言峰に対して色々言いたい事も、どうしようもない感情もあったろうけど、俺の勝手でこうしちまった…」

 

 俺は士郎達に頭を下げながら言う。

 麻婆は親が死んだ要因でもあるし、あの大火災を起こした張本人だ。

 それに、直接殺されそうにもなっている。思う所などいくらでもあるだろう。

 そんな中でもこうしたのは俺の勝手だ。

 だから、何か言われて当然だと思い頭を下げたが、予想に反していつまで経っても言葉は無く、代わりに頭の上に何かを乗せられた。

 

「わふっ…ん?」

 

 何を置かれたのかと思い手をやるとそれは士郎の手だった。

 というか、なんか犬っぽい声を出してしまった。意識なんか当然してない。

 何だか獣化するたびに獣に近くなってる気がする…。

 そんな風に意識が若干逸れていると、士郎が俺の肩を持って俺の姿勢を真っ直ぐにしてくれた。

 そして俺の目を見て優しく微笑みながら話し始める。

 

「別に俺は良いよ。遠坂は?」

 

「私も良いわよ。というか、例えばの話この状況で私がダメって言うとかどんだけ鬼畜なのよ」

 

「2人とも…」

 

 その言葉に、思わず泣きそうになる。

 ここまで自分勝手にしておきながらなんだが、心のどこかでは否定されるのではないかと怖かった。

 自分なりに色々考えて良い方向へ持ってきたつもりだ。それが認められた気がした。

 

「確かに思う所が無いって言ったら嘘になるけどさ、でもあいつはもうあの惨劇を起こそうとはもうしないんだろ?」

 

「うん、それは確実。あとで何かあっても大丈夫なようにもするつもりだし」

 

 条件で発動する呪い系の魔術とかそういったモノをキャスターに依頼するか自身でどうにかしようと思う。

 ミストルテイルで撃った際にかなり強力に願ったから大丈夫だとは思うが念の為だ。

 

「なら良いさ。俺は惨劇を止めたかっただけだし、少なくともこの結果誰か助かる人が増えるなら良い事だろうしな」

 

「腹を刺された身としては一発だけでも思いっきり殴りたかったところだけど、まぁ仕方ないわね。許すつもりは到底無いけど、これはこれで良い事なんでしょう」

 

 俺は目元をぬぐい、2人をしっかりと見る。

 そして頭を下げる。

 

「…ありがとうっ」

 

「お礼なんてする必要ないさ。な?」

 

「ええ、これは私たちが納得しただけなんだから」

 

 二人は微笑みながらそう言う。

 良いと言われたが、もう一度心の中でになるが大きくお辞儀し、ありがとうと俺はお礼を言う。

 ほんと良い子達過ぎでしょうこの子達。

 経験した年数で言えば5年ほどしか違わない筈なのにこんな風に笑えるとかすごいと思う。

 小並感ってやつだが、尊敬するよ。

 

「あのー、空気読めない発言になるので悪いのだけど、僕はどうすればいいかな?」

 

 学校で先生に質問する時のように片手を上げて言うショタガメッシュ。

 そういえば、忘れていた。

 対処を皆に任せていたのもあったし、静かだったから思考の端に行ってしまっていた。

 何故ショタ化させただけでミストルテイルを使っていないかだが、それは原作知識が理由だ。

 どういう理屈かは俺にもわからないんだが、確か…原作のhollow編だっけか?で、何故かショタ化しただけで良い子になって町の子とサッカーしてた筈。

 それをうろ覚えだが頭の中にあったので試してみたら大正解だったわけだ。

 原作でショタギルが大人ギルの事をどうしてあんな性格なのか分からないと言わしめるほどだった筈。

 それがあったからキャスター達にはとりあえずショタ化だけさせて様子を見て欲しいと言っておいたんだ。

 さっき自分でやらかした言峰ほどじゃないが、実際見て見るとこの子ギルもすごい変化だな。

 でも良かった思い通りに行って。

 

 そういや言ってなかったけどギルがショタ化した方法は、いつもの如くスケドを使ったのではなく、今回はキャスター作の薬品を使用した。

 ギルガメッシュは泥を浴びて既に現界し続けることが可能になっている。

 それでも魔力を一般人から奪っていたのは自身の理由としての能力というか、真名解放などの魔力使用に対して必要だからだと思う。

 スケド使って完全な受肉をしたら自己発電が容易とまではいかないがサーヴァント時より効率よく行えることは確かだ。

 だけどそれだといずれ成長してしまう。

 だから、何か他の方法をと考えていたらキャスターがこれを使えと渡してくれた。

 どうも製作途中のものらしいのだが効果は確実というもので、何かドロドロした緑色の液体Xをビーカーで見せてくれた。

 曰く、アンチエイジングの為らしい。

 スケドで復活し受肉した場合身体は成長していくから老いがある。それに対抗する為らしい。

 あんたまだ見た目少女じゃないかと言ったら、殺されそうな目で見られた。

 あなたも女の子なら今からしときなさいと何故か俺の分まで渡されたのは別の話だ。

 でまぁ、ギルガメッシュにそれを使う事(人体実験?)が決まり、実際に使ったみたいだが、もくろみは成功のようだな。

 結局AUOは皆に任せることになったから一応使いやすい様にカードにして渡したんだけど、イリヤが嬉々として受け取っていたしストレス発散できたかねぇ?

 

 そんな子ギル君を俺は真正面から見る。

 

「ショタギルくん、君にはやってもらいたいことがある」

 

 俺は今までのシットリ気味の空気を振り払うように、腕を組みながら不遜な態度を取る。

 

「ショタって…まぁ今の僕はそうですけど。それで僕にやって欲しい事というのは?」

 

「まぁちょいとした手伝いさ。あとで詳しく言うよ。これはあんたにしかできない事だからな」

 

「分かりました。出来る限りのことをしましょう」

 

 了承してくれたのか微笑むショタギル。

 素直でええ子やぁ…。

 何であんな慢心王になるのかホント不思議。

 そんな今の子ギル君に対し、前振りしておいて後でってのはひどいかもしれんが先にやらないといけないことがあるんで許してほしい。

 何せ俺が思っていたハッピーエンドはまだ終わっちゃぁいない。

 今回の聖杯戦争の締めとして最後にもう二つハッピーエンドを迎えなけりゃいけないんだ。

 

 

 まず一つ目、対象はイリヤだ。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「さて、俺には後もう二つこの場でやらなければならない事がある。まずはイリヤだ」

 

「どうしたの? 突然」

 

 コウジュが突然、真剣な表情で私にそう言った。

 その言葉に私は疑問を返すがコウジュは指を一本立てて続きを話す。

 

「俺はさっきツミキリシリーズを使って、それを媒体にアンリマユと化していた穢れた聖杯を斬りまくって自身に取り込み続けた。もちろん浄化しながらな。

 さてそこで問題です。聖杯はどこへ行ったでしょうか?」

 

「あなたまさか!?」

 

 コウジュの言葉で、私の中のピースがはまったかのように謎が氷解する。

 どうして高威力を放つ武器ではなく、ツミキリシリーズの中でもオモテの2本を持っていたのか少し疑問だった。

 泥に対して有効なものは他にもあると聞いていた。例えば切ったものを消し去るようなもの。

 それでもあの2本の剣に拘った理由がコウジュにはあったんだ。

 私が心配するからと決して詳細を話さず、聖杯を食らうなんて表現をしていた本当の意味が今分かった。

 

「あなた、聖杯を本来の聖杯としての状態で取り込んだのね」

 

「ピンポーン正解だ。俺の中にあるんだよ聖杯ちゃん。むしろ俺が今聖杯?みたいな」

 

「嘘だろ…」

 

「信じられない…」

 

 士郎と凛が驚愕の声を上げる。

 だけど、サーヴァント達は驚いていない。

 この子、私に言わずにサーヴァント達にだけ言ってたのね…。

 私が心配するからって、そんな無茶心配するに決まってるじゃない。

 後で折檻ね、そう思いながらジト目でコウジュを見ていると、コウジュは慌てて目を反らし、手を上に掲げた。

 

「こ、来い、『聖剣エルシディオン』!」

 

 慌ててコウジュが出したのは、いつだったかアインツベルン本家で結界を直すために使った聖剣エルシディオン。

 

「それは…エルシディオン? どうしてそんなものを…」

 

 私の疑問にコウジュは改めてこちらを見て言う。

 

「今聖杯は俺の中に溶け込んでる状態だからな。こいつを使って明確な形として使おうと思った訳さ。俺の能力は知っての通り思ったことを現実にすること。でも余計なことまで現実化してしまうこともある。失敗すらだ。

 でも、それは逆を言えば確信さえあれば現実化できてしまうわけだ。

 そして今、俺の中にはあらゆる願いを叶えるって聖杯がある。

 実質的には膨大な魔力の塊だか何だからしいが、その指向性を俺が示してやればいい」

 

 確かに、その通り。その能力については私も説明を受けていた。

 だから、強力な力があっても遠回りでしかやりたいことができないとコウジュ自身嘆いていた。

 でもそこまでして、私に秘密にまでして叶えたい願いって……?

 

「で、だ。俺は今この聖杯を使いたいんだが、使うに当たって一つ、セイバーに聞きたい事がある」

 

「な、なんでしょうか?」

 

 私の疑問などお構いなしに、今度はセイバーに問うたコウジュ。

 そして今のコウジュの説明にまだ少し理解が追いつけていなかったのか、若干動揺しながら返事をするセイバー。

 

「セイバーに聞きたい事ってのは、セイバーはこの聖杯戦争の勝者な訳でこれの所有権は本来セイバーと士郎にある訳だ。つまり、セイバーの願いをどうする? 士郎もな」

 

 確かに、実質的な勝者は士郎とセイバーだ。

 そして聞いていたかぎり、士郎はともかくセイバーには聖杯に託した望みがある。

 コウジュはそれをちゃんと叶えてあげるために聖杯を…?

 だけどその考えはどうやら違ったらしい。

 

「私は、いりません。私が叶えようとしていた願いはもう必要ない。そう気が付きました。

私の国は滅びるべくして滅びたのだと。

 私は良い王ではなかったかもしれない。だけど、その事実を消してはならない…と」

 

「俺もいらないよ。俺が叶えたい願いは聖杯を使って叶えるべきものじゃないしな。

 っていうか、セイバー前にも言ったけど、セイバーは良い王だぞ? 少なくとも俺はそう思うし、歴史もそう言ってくれてる」

 

「士郎…」

 

 あ、うん、士郎達はどうやら既に幸せそうだ。お姉ちゃん嬉しい。

 二人だけで固有結界を作れそうなほど自分たちの空間を作り始めた。

 コウジュもそれをどこかヤサグレた目で見ながらも、喜んでいるようだ。

 ってそうじゃない!

 これじゃあコウジュは何のために聖杯を取り込んだのかが分からない。

 

「ごほん!!」

 

「「……っ!?」」

 

 コウジュは咳払いを一つ、説明を続けた。

 

「んじゃ、この聖杯は俺が使うね? 答えは聞いてない」

 

「何でそうなるのよ!!」

 

「はうあっ…」

 

 先程から私を置いてけぼりに好き勝手しているコウジュに思わず物理的なツッコミを入れる。

 

「あのねぇ!聖杯っていうのは…「エルシディオン!!願いを叶えるぞ!!」って聞きなさい!!」

 

 だけど、今回はそれでも止まらずにコウジュは自分が思う様に進めるらしい。

 再びコウジュに詰め寄ろうとするも、それをひらりと避けて、エルシディオンをコウジュは掲げながら大きく声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

「イリヤに人としての寿命を俺は願う」

 

 

 

 

 

「…え?」

 

 コウジュの行ったことが一瞬理解できずに間の抜けた声を出してしまう。

 そしてそんな私を、コウジュが掲げた聖剣から溢れ出た光が包み込み始めた。

 

「ちょ、ちょっとコウジュこれは!?」

 

 どういうことかわからず、私は声を荒げる。

 そんな私を見て微笑みながら、いつものふざけた雰囲気ではなく、妹を見るような、家族を見るような、慈愛に満ちた笑みを浮かべながら話し始める。

 

「最初から、これだけは決めていたんだ。いや、むしろ最初はこれだけを俺がこの聖杯戦争の中で行うと決めていたんだ。まぁ、途中でいろんなものに触れて欲張ってしまったけど、それでもこれだけはって決めてた。

 イリヤはさ、諦めてたよな。諦めざるしかない状況だったんだろうけどさ、自分の寿命が短いことを知って、それを理解して、それでもどこか納得しきれずに諦めてた。

 それが悔しかったんだ。

 だから、自分が持ってる全てを使ってそれだけはどうにかしようって、世界はもっと広いってことを知ってもらおうと思って色々やってみたんだ。それがこれってわけ」

 

「コウジュ…あなた最初から…」

 

「んとまぁ…そういう事さね。俺が願ったのは、細かく言えば切嗣氏とアイリさんの子だっていう繋がりをそのままに人間としての生を願ったからちゃんと二人との子だってことは変わらずに人生を謳歌出来るんじゃないかな。遺伝子がどうとか本当はあるかもしれんけど、万能の願望器だっていうんだから、それくらいできると思う(・・・・・・)し」

 

 途中からはどこか恥かしそうに言うコウジュ。

 そんなコウジュの姿が、ぼやけはじめる。

 光が強くてなんだか前が見づらい。

 けど、そうこうする内に私を包んでいた光が和らいでいき、そして消えた。 

 それでも前が見づらい。

 どうやら私は泣いているらしい。

 

「っ!!」

 

「うおっと」

 

 私は飛びつくように抱き付いてしまう。

 普段の自分ではしないような恥ずかしい行為だ。淑女としてあるまじき行為だろう。

 でも許してほしい。

 このどう表現すればいいかわからない感情がそうさせるのだ。

 

「ありが…とう…」

 

「気にすんな。これは俺の願いでもあったからな」

 

「それでも…ありがとう」

 

「ん…」

 

「これでイリヤの身体は子どももできるし、良い婿さん貰ってラブラブ私生活でも送りな」

 

「ばかコウジュ…!」

 

「痛って!?」

 

 さっきまでの雰囲気は何処へやら、またいつものコウジュに戻ってそう言う彼女に思わず一層の力を込めて抱き付いてしまう。

 照れ隠しだ。

 それは自分でもわかるが感情が制御できないのだから仕方がない。

 

「なんだか、助け出されたお姫様と騎士みたいね」

 

「確かにな。両方とも姫さんみたいな外見だが」

 

「ふふ、確かにな…」

 

 そんな私たちを見てか、キャスターにランサー、小次郎が茶化すようにそう言うのが聞こえた。

 

「う、うるさい!!」

 

「い、イリヤ痛い! 息! 息できない!!」

 

 キャスター達の声に我に返った私はつい一層の力を込めてコウジュで顔を隠すように抱き付いてしまった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「っと、そろそろかな…?」

 

 イリヤのベアハッグというべき抱き付きに一瞬意識が飛んだがまぁ役得だったとして置いておこう。イリヤ可愛かったし。

 そんなイリヤは今では先程の自分がよほど恥ずかしかったのか、今は少し離れた所でアーチャーに慰められている。

 なんか取られた気分で少し寂しいがまだすることがあるし仕方がない。

 お次はセイバーだ。

 俺はセイバーの方に向き直る。

 そうすれば丁度、セイバーの身体を淡い光が包んでいっていた。

 

「セイバー…」

 

「そんな顔をしないでください。私はこの聖杯戦争に呼ばれて幸せでした。答えは得ましたから…」

 

 そう言い、優しげに微笑むセイバー。

 セイバーを光が包んでいっているのは、セイバーの現界を維持していた聖杯が無くなったからだ。

 つまり、セイバーの身体が帰ろうとしている。

 他のサーヴァントは既に受肉しているがセイバーはそうは行かない。

 そんなセイバーの姿を、士郎は言い表しようもない表情で見ながら、セイバーの手を握る。

 

「士郎、凛も…ありがとうございました。コウジュにも、心からの感謝を…」

 

「礼を言われるようなことはまだしてないよ」

 

「これで…お別れなのか…?」

 

「はい。聖杯が無くなった今私をこの時代に結びつけるものは無くなりました。私は自身の時代へ戻ります」

 

「コウジュ!!」

 

 士郎が俺の方を向く。

 士郎は俺にスケドを使って欲しくてこっちを向いたのだろう。

 けど、無理だろう。

 いま目の前に居るセイバーは分身体のようなもので、それ自体は他のサーヴァントと同じなのだが、セイバーに関しては本体がまだ生きている状態だ。

 そんなセイバーにスケドを使っても意味は無いと思う。何よりもそうではないかと俺自身が思ってしまっている。

 

「士郎、セイバーの身体はまだセイバー自身の時代で生きてる。スケドは死ぬ寸前で回復させるものだ。幾ら向こうのセイバーが死にかけてるって言っても……無理だ」

 

「くっ…」

 

「士郎…仕方がないではないですか。確かに、王としての使命が終わっている以上、私がこの世界であなたと共に居るのも良いのかもしれない。私自身、前の私では考えられないですがそれを望んでいる。

 しかしコウジュの言った通りに私の身体は遥かな時代を挟んだ向こう側にあるのです。

 そして、聖剣を賜った身として最後にしなければならない事もあります」

 

セイバーの身体は既に、今にも消えそうな程に光に包まれている。

 

「セイ…バー…」

 

 士郎は思いきりセイバーの身体を抱き寄せる。

 こちらから見える士郎の表情は今にも泣き出しそうだ。

 それでも我慢して、ただ、セイバーを抱きしめる。

 

「お別れです、士郎。あなたに出会えて…、あなたを愛せてよかった……」

 

 士郎が離れる。

 そして一度俯いて、改めて顔を上げた士郎は精一杯の笑顔でセイバーを見送る。

 

「俺もだ! セイバーに会えてよかった。そして俺も愛してる」

 

 そしてセイバーを包んでいた光は一層強くなり、セイバー自身が光となって消えていく―――。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 セイバーが消えてゆく。

 俺は、今にもこぼれ落ちそうになる涙を必死に我慢し、笑顔でセイバーを見送る。

 この柳洞寺に来る前にもセイバーと少しだけ話をした事を思い出す。

 コウジュが何をするかは分からないが、そのままを受け入れようと。 自分たちはどうしようと別れる事になるだろうけど、それが俺達の運命だから、出会えた幸せをただ噛み締めようと。

 そう二人で決めた。

 最後に、コウジュに頼りそうになったけど、でも、やはり最後は笑ってさよならをするべきだと思った。

 だからセイバーとほほ笑みあいながら別れを―――、

 

 

 

 

 

 

 

「ところがどっこい!! そうは問屋が下ろさんとです!!」

 

 コウジュがツミキリシリーズの内、どれかは分からないが二本を左右に持ってセイバーの服の裾を持った。

 

「な!? コウジュ!?」

 

「行くよツミキリ・ヒョウリ!!」

 

 次の瞬間、セイバーとコウジュは消えた。

 

「え…?」

 

 思わず呆けてしまったが仕方無い事だと思う。

 

 

 

 

 

 

「たっだいまー!!」

 

「ただいま…戻りました…」

 

 俺が(他の皆もだが)呆けてしまってすぐ、一分程で2人が再び俺の前に居た。

 コウジュはついさっきまでと同じでよく分からないテンションで、セイバーはとてつもなく疲れた姿でしかも何故か縮んだ姿で。

 

「なんでさ…」

 

 ホントに訳がわからない。

 え、どういう事なんだ!?

 俺たちの決心はどこへ!?

 

「ホントどういう事なんだ!?」

 

 俺は思わずコウジュに詰め寄り、肩を持って揺さぶる。

 

「おおう!?は、離すから…話して…! ち、違った…話すから離して!!!」

 

 コウジュが何故言い直したのか分からないが、確かに揺さぶったままじゃ聞けないのも確かだ。

 

「で、どういうことなの?」

 

 いつの間にか俺の隣には遠坂が居た。

 遠坂も気になるのだろう。

 とても良い表情で、俺の横で仁王立ちしている

 

「な、何をしたかというと簡単!! セイバーの時代に一緒に行って現場で復活アイテム(スケープドール)を使って来ただけ!」

 

 語尾に音符が付いているかのごとく可愛らしくコウジュが言う。

 そんなコウジュに俺はすかさず両方のこめかみにグーにした拳を当て、ぐりぐりと高速でする。

 

「にあぁぁぁぁぁっ!!!!!?」

 

 相当痛いのか、俺の手を持って離そうとするが俺は離さない。

 俺は女の子に手を上げるのはしたくないんだが、これはそう言ったレベルでの話では無い。

 というか、これはコウジュが俺にさせているのだ。うん。

 

「酷いよ士郎…」

 

 手を離した瞬間に、涙目で頭を押さえてコウジュは座り込んでしまう。

 

『コウジュが悪い(わ)(です)(な)』

 

 一斉にほぼ全員から攻められて今にも泣きだしそうだ。

 そんなコウジュに若干の罪悪感が生まれるが、でもコウジュも悪いと思うのだ。

 そう自分の中で割り切る。

 

「なんで教えてくれなかったんだよ」

 

「うぐ…ぬか喜びさせたくなかったんだよ…。俺自体が時代越えられるとか本気で思わなかったし、越えれてもセイバーの元にちゃんと行けるかどうか分からなかったんだよ…。確固としたイメージが無いとどこに飛ばされるやら…。まぁセイバー自身を指標にしてなんとか行けたけどさぁ。聖杯の魔力の残りもあったし。帰りは士郎の中の鞘をセイバーに強くイメージして貰ってなんとか……うぅ痛い…」

 

 まだ涙目で頭を押さえているコウジュはそう言う。

 あー、ってことは、悪い事をした?

 時代を上手く超えられるかって事は下手をすればその失敗した時代に取り残されたかもって事…だよな…?

 そう思うと、先程割り切った罪悪感が一気に自分を苛む。

 

「ご、ごめん!!」

 

 俺はすかさず謝った。

 

「良いよ、別に。言わなかった俺が悪いし…」

 

 少し拗ねるようにそう言うコウジュ。

 ゴメンな、ホントに。

 

「どうせなら謝るんじゃなくて、ありがとうを言って欲しいな~。これで、士郎とセイバーの思いが成就する訳だしね~」

 

 そんな俺にコウジュもばつが悪くなったのか、いつものように茶化すように笑いながらそう言うコウジュ。

 それならと俺も、セイバーもコウジュの前に行く。

 

「ありがとうなコウジュ」

 

「ありがとうございますコウジュ」

 

 二人で精一杯の感謝を込めて礼をする。

 

「ふふん、どういたしましてどういたしまして♪ これで名実ともに感謝の念を堂々と受けられるってもんさ。さっきは“まだ”何もしてなかったからねぇ」

 

 なるほど、それであんな妙な言い回しをしたのか。

 セイバーの事で頭がいっぱいでその場では流してしまったがそういうことだったのか。

 もう一度言うよ。

 

 

 

 ありがとう、コウジュ。

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

結局チート頼りな終わりでしたが、どうしてもイリヤに普通の寿命分の生を生きて欲しくて始めたこのSSだったのすごく満足です。
ほんとやりたい放題してしまいました。

そして、以前言ったことを覆してしまうのですが、前書きでも言ったように長くなったのでまた分割しました。
ただ、その後の話は明日には投稿しようと思います。

なので、もう少しお付き合いの程よろしくおねがいします!

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