テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
予定通り、日曜の間に投稿が出来ました。
でも、予定とは違って文字数が大幅に多くなってしまい分割。
そして後半は修正中でございます。
進む、終わる終わる詐欺。
どうかお許しください。
「「―――
声と同時に、金属と金属がぶつかり弾かれる音が連続して辺りを満たす。
轟音となって響くそれは、ギルガメッシュが射出してきた武器と俺達の後方から飛んできた剣軍の数が十や二十では到底きかないからか衝撃波として感じるほどだ。
「む…?」
ギルガメッシュから疑問の声が上がる。
自身の宝具を弾かれた事によるものだろう。
剣の雨が止み、俺の前に二つの影が降ってくる。
紅い影だ。
2人は降り立つと同時にこちらへ振り向く。
その影は2人ともに先程聞こえてきた声の主であった。
「まったく不甲斐ない」
「ふふ、まあ良いじゃない? 姉としては中々だったと思うわ」
片方はいつものニヒルな笑みを浮かべるアーチャー。
そしてもう一人は―――、
「ん? どうかしたかしら?」
――イリヤだった。
なんでさ!?
いや、なんでさっ!!?
思わず二回言ってしまった。
だが仕方ないはずだ。
俺は目の前に居る2人の向こうに居るギルガメッシュと言峰…のさらに向こうに居るイリヤwith聖杯。
次に目の前に居るイリヤ。
「…?」
目が合うと、首を横にこてっと可愛くて傾げる。
えっと、2人居るんだが?
「器が二つ…? 言峰、どういうことだ?」
「私にもわからん。双子か…? いや、そういう話は聞いていないが…」
ギルガメッシュと言峰が2人のイリヤに疑問を持つ。
持たない方がおかしいというものだろう。
何せ俺も意味が解らない。
「ふむ…いや、些事か。器として機能しているのなら構わぬな」
「確かに些事だ。そちらは任せるぞ」
しかし、あいつ等にとっては小さな事でしかなかったようだ。
俺からしてみれば、いや、俺の後ろに居るセイバーと遠坂にとってもどう表現する事も出来ない驚愕だというのに。
コウジュと居た事でそういった驚きに対する耐性が付いていたつもりだったが、どうやら気のせいだったようだ。
「これならどうだ贋作師ども!」
だが、そんな状況に着いていけてない俺の事をギルガメッシュが慮る訳はない。
ギルガメッシュがその手に取り出したのはつい昨日も見たあの宝具。
俺とセイバーを苦しめたあの宝具だ。
ギルガメッシュは宝具に魔力を込め始める。
合わせて、エアと呼ばれたそれは剣の名に似合わぬその歪な刀身を回転させ、込められていく魔力を今にも放とうと荒ぶらせていく。
「あ、そうだ士郎。ちょっとジッとしていてね」
イリヤが何かを思い出したのか、トトっと俺の方へ近寄ってくる。
正直この子は今の状況を掴めてるんだろうか?
近寄ってきたイリヤの向こう側でギルガメッシュは魔力を込め終えたのかこちらへ今にも放ちそうだ。
とはいえ、俺は意識がはっきりしてるとはいえ動けないのでどうする事も出来ない。
「
血のように禍々しい赤に見える魔力の嵐が俺達に迫る。
「まだ一度しか使えないのだがね!!! 防符『ヴィクトリウス』!!!」
懐からカードを取り出し宣言するアーチャー。
その見慣れたカードはコウジュが渡してくれるものと同じデザインだ。
そしてアーチャーが宣言することで出てきたモノ、それを何とかといった体でギルガメッシュが撃ち放ってきたものへと向かって掲げる。
その様子から盾…だとは思う。
だがその様相は盾には決して見えない。
一言で表すならば獅子、その顔を象ったもので、黄金色のオーラのようなものを纏っている。
「何ィっ!?」
未だ禍々しい嵐を放ち続けるギルガメッシュだが、その表情には驚愕が見て取れた。
それもそのはず、何故ならアーチャーが掲げている盾からこっちには一ミリたりともその奔流が流れてきてはいないのだ。
そのことに俺もまた驚いていた。
ギルガメッシュが持つあの歪な剣、あれの攻撃をまともな方法で防げるとは
でもそれを目の前のアーチャーは行っている。
俺が渡されたエクスキャリバーを通して得た知識、それと眼の前のアーチャーとの差異。
何とか状況を理解しようと頑張るが、どうにもうまくいかない。
身体が動かないのもあって現状がとても歯がゆい。
そんな俺をさておき、傍まで来ていたイリヤはアーチャーの事などお構いなしと言った風に、いつもの雰囲気のまま懐からカードを取り出す。
「士郎、あなたはまだ力の使い方を知らなさ過ぎるわ。道具『フォトンチャージ』」
イリヤの宣言、同時に俺の中へと何かが入っていき、満たされる。
身体の不調も、先程までが嘘のように身体が軽くなった。
「これは…?」
「これはコウジュの魔力から精製した魔力用の回復カードよ。コウジュ汁をキャスターが煮詰めてそれをコウジュがカード化し直した…見たいな感じかしら?」
…汁?
「そしてあなたが陥っていたのは魔力欠乏症。エクスキャリバーの御陰で潜在能力の使い方は引き出せてるのだけれど、それを用いるための魔力が足りなくなったのよ。連戦だし、それも仕方ないのだけどね。まぁ意識を失わなかったのは流石と言っておくわ」
少し意味深な言葉も聞こえたが、とりあえず俺を助けに来てくれたようだ。
それにしても魔力欠乏か。
この剣は強力な手段を与えてはくれるが、そこまで万能という訳ではなかったんだな。
だからアーチャーが用いている方法を理解できなかったのか。
恐らくあれは俺の可能性じゃなくてコウジュからの借り物。
詰まりこの剣で行えるのは俺が用いることが出来るかもしれない可能性だけ。
やはり中々にピーキーなもののようだ。
でもそれでも、今の俺にはとてもありがたい。
俺は一先ず立ち上がり、体の各部の調子を確認する。
先程までの虚無感はもう無い。
魔力が充足したからだろう。
「イリヤ…長くはもたない。避けるなり何なりしてくれると私としては嬉しいのだが?」
「あ、うん、分かった」
いつもの笑みを浮かべながらも汗をかいているアーチャーがイリヤに言った。
それに対して軽く答えるイリヤ。
そんなイリヤを見て冷や汗を見ながらも諦めた顔で前を向き直したアーチャー。
「えっと、イリヤ…で良いんだよな…?」
「私以外の何だと言うの?」
そうですねあなたはイリヤさんにしか見えません。
ただ、向こうで器にされてる子もイリヤさんにしか見えません。
「そうだな、うん、イリヤだ。ありがとう回復してくれて。でも避けようか」
「…? 何がでもなの?」
首をかしげるイリヤ。
天然か!?
天然で言っているのか!?
今俺が避けようって言った瞬間アーチャーが目にありがとうの意を含んでこちらを見たぞ!? あのアーチャーが!!
「ああ、もう!!」
「キャッ!? 士郎!?」
俺はイリヤを抱えてその場を離れる準備をする。
そして後ろの二人にも声を掛けようとするがそこには誰も居なかった。
あれ……?
いや、とにかく今は避難を!!
今しなければいけないことを思いだし、退避する。
次の瞬間にゴォッと、退避する俺達の後ろを力の奔流が通りすぎた。
アーチャーが防ぐのをやめ、回避したようだ。
……お疲れさまです。
「ちょっと士郎!! 聞いてるの!? いい加減お姉ちゃんを降ろしなさい!!」
腕の中でイリヤが暴れたので慌てて降ろす。
それなりに離れたから大丈夫だろう。
あれ、そういえば姉ってなんだ?
さっきも言ってたような気がするけど。
「そういえば姉ってなんのことなんだ?」
「あ…。いや、えと、今は良いじゃない?」
俺が聞くと挙動不審になるイリヤ。
うん、まぁ…戦闘中に聞くことではないか…。
そんな風に無理矢理納得というか後回しにすることを決め、ギルガメッシュ達の方を見直すと、声が掛かった。
「士郎!! ご無事ですか!?」
「士郎無事…よね…そうよね……」
声の主は、先程忽然と姿を消したセイバーと遠坂だった。
「2人ともどこに行ってたんだ!?」
どこぞのホラーモノじゃないが、忽然と後ろに居た人間が消えたのだ。心配しない筈がない。
「え…いや、なんというか……」
「予想外というか…ある意味予想通りの人物のところよ」
「…?」
誰の事を言ってるんだ?
「ああ、そういう段取りだったわね。どう驚いた?」
イリヤがセイバーと遠坂に話しかける。
段取り…?
話しは俺を置いて進んでいく。
「正直…まだ意味が分かりません」
「私はどうせこんな事だろうと思ったわよっ!!」
頭を抱えて言うセイバーに、自棄になったかの様な遠坂。
だからなんなのさ…。
「ふふん♪ 説明しよう。なぜなにコウジュの時間だよ〜♪」
突如響く声。
それを聞いて、遠坂が自棄になって『どうせこんな…』なんて言いたくなった訳が分かった。
声に次いで、空間からにじみ出るように現れたのは死んだとされていたコウジュ。
何故に不死殺しをくらって生きているのか…。
生きてたのは嬉しいけど、ちょっともやもやしてる俺は悪くない。
◆◆◆
まったくもう、と溜息をつく。
少し予定より遅刻気味に表れたのは、
彼女がキャスターの転移魔術でランサー、アサシンと共に現れた。
そのコウジュを見て、離れた所に居る言峰神父とギルガメッシュが驚愕を露わにする。
そしてそれを見てコウジュがドヤ顔をするので凜に頭をはたかれてしまった。
思わず苦笑する。
ほんとこんなので良いのかな、聖杯戦争って。
なんて緊張感の無い戦争だろうか。
大体コウジュの所為って言えばいいのだろうけど、やっぱり私はコウジュの御陰と言いたい。
私がこうしてここに立って居るのもコウジュの御陰だ。
本来ならば、私の人格は既に壊れていなければおかしいのだ。
この身はホムンクルス、聖杯の器として調整された身だ。
ホムンクルスと魔術師、衛宮切嗣との間に生まれた存在。
私はこの聖杯戦争で死ぬはずだった。
それはこの身体が聖杯の器である以上仕方ない事だ。
何故なら聖杯戦争が進むにつれ私の中の杯は満たされていき、最後にはその中身が“私”を消して本当の意味で“器”になる筈だった。
もし、“私”が残ったとしても、この身体はもうボロボロ。
この聖杯戦争の間さえ持てば良いといった程度にしか調整されていないから、もったとしてもあと10年も生きられない身体。
それをコウジュは助けてくれた。
ホントにコウジュはお節介。
勿論嬉しいのだけれどね。
本人曰く、私を助ける為にやったことは単純らしく、精巧に作られた私の
そうすることで、私の中に貯まる筈のものは既に溜まっていたものも含めて人形の方に流れていくという寸法だ。
それが、今言峰神父の後ろにある聖杯を召喚する為に使われたものだ。
だから私は自我を失うことなくこの場に居ることが出来ている。
確かにこれだとこの聖杯戦争の為だけに調整されたこの身は20幾ばくかしか生を全うできないだろう。
けど、それでもいい。
私はもともとこの聖杯戦争に勝ちなど求めてはいなかった。
ただ、見て見たかった。切嗣が選んだ子を。
だから最後は死ぬつもりだった。
正確には死ぬしかなかった、かしら。
でもコウジュがそれだけじゃダメだって、絶対に助けると言ってくれた。
幸せにしてくれると言ってくれた。
寿命に関してもどうにかすると言ってくれていたけど、これ以上は望み過ぎだわ。
だから、残り少ない命をコウジュの言う幸せの中で使ってみせる。
そのために私も戦うという選択肢を選んだ。
コウジュが持つカードの中で、特に適性が高かった“夢幻召喚『アーチャー』”のカード。
それを使った状態で私はここに居る。
誰かの後ろに隠れずに闘えるのは良いものね。
士郎のピンチにさっそうと現れる姉…良い感じ。
改めて、士郎を見る。
“私”が向こうで聖杯に半分取り込まれてるのに“私”が目の前に居る。
それで状況が分からなくて頭の上に“?”がたやすく幻視できる。
これが萌えってやつね!!
ゲフンゲフン…。
今のは忘れてちょうだい。
最近、人形を変わり身にコウジュのマイルームに潜伏してたからライダー達と会う機会が多くて…、ちょっと…、ほんのちょっとだけ染まっちゃったかな…?
ああいうゲームもばかにできないものよね…。
けど、そんな士郎を見て楽しんでいたから、ついつい私が姉だってことを言ってしまった。
まあ、誤魔化せたから良いわよね?
「イリヤ!! 助けて!!」
「諦めなさい。あなたが悪いんだもの」
凜にセイバー、そして士郎がコウジュを問い詰めている。
それを押さえようとするもダメだったらしく、涙目で助けを求めてきたコウジュ。
でも助け舟は出さないでおく。
その方がおもしr…最後まで士郎達に言わずに立ち回ろうとしたのはコウジュだし、コウジュが訳を話す方が良いと思うのよ。
そして私はコウジュから目を反らすように言峰神父たちの方へと目を向ける。
そちらではアーチャー、ランサー、アサシン、カバー要員でキャスターが闘っている。
泥を使う言峰神父と宝具の雨を降らせるギルガメッシュにいまいち決定打を与えられていないようだ。
やはり、コウジュの言う様に厄介だ。
特に泥は触ってはいけないそうだし。
…仕方ない。
士郎達への説明をコウジュに丸振りする以上、私はこちらに加戦しようかな。
どうもあの金色を見ていると心臓の辺りがきゅーっとするのよね、なんつーかこう、アイツの心臓えぐりとりてぇってな感じにもやもやとするし。
それに、人形とはいえ私を裸にして見るからに身体によくなさそうな泥にまみれさせながら宙に浮かせるという公開処刑を現在進行形をしてくれている奴らだ。
見た目幼女でも私は××歳近くなのに。
乙女の柔肌をさらした罪は重いわ。
あと、コウジュに聞いたんだけど切嗣が会いに来れなくなった原因の一つってこいつらにあるんでしょう?
ドウシテクレヨウカシラ…。
まぁいいわ。
コウジュは士郎にあいつらを倒させてあげたいって言ってたけど、別に手伝っちゃいけないなんて言ってないし、ふ、ふフフフフ…。
もう一人の弟君にも手伝わせて、消し炭にしてあげるわ。
私が貰ったこのカードを使いこなす方法はただ一つ。
最強の自分を思い浮かべる事。
なら簡単だわ。
最凶の近くに居たのだもの、想像は容易い。
フフフフフフフフ。
◆◆◆
幼女説明中。
ってわけで、俺の目の前には驚いている士郎。
そして向こう側ではギルガメとマーボーがこちらを向いて驚きながらアーチャーたちと戦っている。
あ、イリヤがそこに加わった。
イリヤのUBWには俺の武器が登録されてるからなんかえげつないな。
というか相変わらずアーチャーのクラスなのに弓使う奴が居ないのは何故だ。
と、とりあえず、士郎達に説明する前に倒さないで…ね?
「コウジュ…生きてたのか…」
「俺が死ぬ? 本来の意味で俺が死ぬ事なんてそうそうねぇよ」
俺に詰め寄ってきていた一人、士郎に視線を戻し質問に答える。
若干2名、士郎の後ろからすごい剣幕で見てくるけどさておき、士郎に対して苦笑する。
今の今まで自分が死にそうだったってのに、俺の心配するだなんて本と御人好しだねぇ。
たぶん、金ぴかが自信満々に「不死殺しで貫いてやったわ!!」的な事を言ったんだろう。
うわー容易く眼に浮かぶぜぃ。
さておき、どうだろうかこの状況。
予定していた通りに事を運ぶことが出来た(所々に失敗はあったけど)のでこちらの戦力はかなり充実している。
金ぴか&麻婆神父vs全サーヴァント&士郎・凜・イリヤという状況だ。
自分でやって思うが、もうこれ消化試合だよね。
まぁスケドを使ったサヴァ勢は多少戦闘力が削られているし、ライダーは桜ちゃんに付いてもらってるから居ないけど、いざとなったらすぐに呼べる状態だ。
イリヤなんて、俺のカードを使えちゃったから戦闘技術を学び出して、イリヤが人形と入れ替わってからずっと引きこもって練習してたから普通に今の士郎より強い。
練習相手には事欠かなかったしね。ライダーとかさ。腐ってもサーヴァントだし。
ライダーに関しては違う意味でそっち方面行きそうなので桜が心配してたけど…まあそれは別の話だ。
まぁそんなわけでイリヤも戦力としてこの場に居たりする。
あ、そだ。
軽くネタばれ含めて状況の整理と行くか。
俺はあの教会を出た後、迎えに来たキャスターと共にマイルームに向かった。
マイルームにはイリヤ、アーチャー、アサシンこと小次郎、ランサー、桜、ライダー、そしてベッドに寝かされてるバゼットさん(で合ってるよね?)が居た。
俺が教会に行ってる間はキャスターに衛宮家の事任せといたんで皆で避難したみたいだ。
凛はどうしたんだって?
それは…あれだ、原作通りにするためだ。うん。
ちゃんとキャスターにいざという時はすぐに回復に入れるようにしてもらってたし、これが終わったら殴られる覚悟もできてる。
アゾられそうで怖いけど…。
あ、そう言えば途中でセイバーと凛が消えただろ?
気付いてる人も居るだろうが犯人は俺です。
ツミキリ・ヒョウリでちょちょいとね?
足元の空間まで斬って繋げて、この部屋に落として生存報告+回復をして上げた。
して上げたっていうか俺が来るの遅れたのとか色々俺のせいでもあるから回復させていただいたが正解だな。
さてさて、そろそろ話を進めようか。
「さてさて士郎、聞きたい事がちょっとは「山ほど」…うん、山ほどあるだろうけど、今あんたは何がしたい?」
原作なら俺達はここに居らず、士郎とセイバーのみで倒した。
他のルートだと違うらしいけど、俺が基礎にしたルートはそうだ。
だが、この場には俺達が呑気に会話してられる程に戦力が余ってる。
だから選択肢は幾つかある。
仇を打つというのも良いだろう。
ただぶん殴るというのも良いだろう。
どうなるにせよ、出来ればここは士郎にどうするかを決めてもらいたい。
どうあれ俺のすることは変わらないし、折角なので士郎には色々と整理する為にもここで因縁を終わらせてもらいたいと思っている。
さてさて、返答や如何に?
「…あいつらを倒す。それだけはしないといけない」
俺の問いに、少し考えた後そう答えた士郎。
その瞳は決意に満ちている。
俺が問うまでもなく、そうするつもりだったと言わんばかりに。
その瞳に、少し見入ってしまう。
これが主人公ってやつなのかねぇ。
自分には無い決意を秘めた瞳は、とてもうらやましい。
「…ちなみに理由は?」
少し遅れて、再び聞き直す。
「はた迷惑だ」
そして再び、今度は言われたことに対して少し反応が遅れてしまう。
は?
え、どういうこと?
「はた迷惑?」
「ああ…。あいつらが目指してるのは他人に迷惑を掛ける事でしかない。だったら理由はそれで十分だ。少なくとも俺の中であいつらは悪だ」
そう決意を込めた瞳で言う士郎。
その意味を理解し、俺は腹を抱えながら笑ってしまう。
は、腹が痛い。
ラスボスに対してはた迷惑だってよ!
何だよその近所の迷惑ばっかり掛ける人みたいな評価は!
「はははっ! うんうん、確かにあいつらははた迷惑な存在だな」
「笑うなよ…」
少し不貞腐れた様に言う士郎。
でもゴメン。
笑うの止めらんないわ。
正義の味方を目指していた士郎、でもそれは自身を勘定に入れずに只々周りを救うという歪なものだ。
いや、ものだった。
原作とか、二次元の世界から知っていた知識ではあったが、実際に会ってそれを体感した。
そんな士郎がこんなことを言うのだ。
自分で言うのもなんだが、大分俺に毒されたね。
でも、それが何よりもうれしい。
原作は好きだが、目の前に居る人たちがあんな殺伐とした終わりを迎えるのは嫌だったんだ。
「まぁいいじゃんいいじゃん。これは嬉しくて笑ってんのさ。いや~士郎からそんな風に聞けるとは思わんかった。
俺は一応、士郎があいつに個人的な復讐しても良いと思ってたんだぜ? 切嗣氏の死因は戦争終了時に浴びた泥が原因でもあるからな。
それにもう一つ、後で詳しい事は言うけど、イリヤもある意味であいつに不幸にされたんだ」
切嗣氏がイリヤに会いに行けなかったのって、アインツベルンの爺が拒否してたのと、泥の呪いのせいで身体機能やらなんやらが落ちて、無理矢理イリヤに会う程の力が無かったからだった筈。
そういやそのイリヤさん上手く闘えてるかな?
チラッとそっちを見てみる…と…。
うん見なかった事にしよう。
とりあえず頑張ってるみたいだね。ほんと話終わる前に倒さないでね?
視線を士郎に戻す。
この状況で考え事を出来る士郎は、原作の士郎より肝が据わってるな。
俺の所為?
デスヨネー。
「確かにあいつは、あの大火事を起こしたし、たくさんの人を殺して、更に未だ飽き足らずに何かしらの災害を起こそうとしてる」
考えを纏めた士郎が俺に宣言する様に言う。
「だから俺はあいつを倒せさえすればそれで良い。親父の望みも、今じゃ聞けないけど仇討ちじゃない筈だ」
「なーるほどねー。くく、ホントにそれで良いんだな?」
「ああ。あ、でも…」
ふっきれた表情でそう言う士郎。
そして最後に何かを思い出したようだ。
「なんさ?」
「いや、イリヤがどうなのかなって。コウジュが後でっていうからよく分からないが不幸の源だったんだろ?」
コウジュがの部分をさりげなく強調して言う士郎。
そんなに不満かよぅ…。
それにしてもイリヤか。
今向こうで無双してるんだけどどうやって聞こうかね?
『なに? コウジュ何か用?』
突然頭の中に声が響く。
あ、念話か。
その手があったな。
前衛で親の敵と言わんばかりに(実際にそうだが)闘っていたイリヤがバックアップに回りつつもこちらに念話を繋げてくれたようだ。
『いや、作戦変更の可能性が出てきたからさ。士郎は別に仇討ちをする気はないみたいなんよ。ただあいつらを倒せれば良いってさ』
『ふ~ん』
『ついでに言うと、切嗣氏が仇討ちを望む筈が無いと思うってさ』
『分かったわ。士郎がそういうなら私も遠慮しとくわ』
さすがお姉ちゃんってところだな。
色々と吹っ切れたからか、最近は完全にそうだ。
たまに俺に対してもそんな態度を取ろうとするから困りものだけど。
そんなしょうもない事を考えているとイリヤはけど…と話を続けた。
『けど…、個人的な恨みがあるから復讐自体はさせてもらうわ』
念話ごしなのにものすごいオーラを感じる。
というか、遠くからホントに感じる。
だって、黒いオーラが幻視できるもの。
いつからイリヤはビジュアルユニットのブラックハートを付けるようになったんだろうか。
いや、どちらかというと黒色のブースト?
身体から噴き出すように見えるから。
倒したら通常より経験値貰えそうだな。
同時に呪われそうだけど。
それはおいといて、個人的な恨みって何だろ?
聞いたら後悔する気もするけど、聞かずにはいられない。
『ところで個人的な恨みって…?』
『ふフフ、ふフフフフフフフフ…あのね、あいつ等の後ろにあるのって…何?』
あー…。
そういえば麻婆たちの後ろにあるのは、とある界隈で高評価を受け始めている造形師なキャスターさん渾身の作品である身代わりイリヤちゃん(剥かれた状態)でしたね…。
『私の身代わり人形とはいえ、器になる程の精巧に出来たモノなのよ? それが裸にされて晒しものに…』
時間すら凍らせそうなほど冷たい声なのに、燃え上るような激情がその声には含まれてるようような気がした。
麻婆に金ぴか、南無。
まぁでも態々裸にしたあいつらが悪いし仕方ない。
ロリを裸に剥くなんて重罪だもの。
大人しく俳句を読むといい。
介錯はしてやるさ。
『コウジュ?』
『わっほい!!? な、何さ?』
憐みの目で麻婆たちを見ていると、話さなくなった俺を不審に思ったのかイリヤが呼び掛けてきた。
その声に驚きつつ、返答する。
『予定通り聖杯の方は任せるわ』
『了解っす』
念話の最後にこれでストレス発散ができるわと聞こえた気がしたが聞かなかったことにした。
魔法少女リリカル☆イリヤ始まります…。
いかがだったでしょうか?
なんと、紅茶さんと一緒に現れたのはイリヤだったのさ!!(棒読み
さておき今回はラストバトルなのにギャグ回。
ギャグじゃなかった回があったかと言われると私自身首をひねらざるを得ないのですが、ともかくギャグに走った瞬間にほとばしる麻婆と金ぴかの三下臭。
それもこれもコウジュってやつの仕業なんだってさ!
ではではまた次回!
P.S.
感想に綴る!が無くてちょっと寂しかったのは内緒…。