テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
少しずつ、けれど着々とお気に入り等が増えて行っているのを見てニヤニヤしている毎日でございます。
本当にありがたいです。
それではどうぞ!
「たっだいまー」
俺は能力でドアくぐって衛宮邸まで一気に帰ってきた。
後ろにはクー兄さんと干された布団の様にグデーっとなったまま寝ているバメットさん。
というか身長が低くなったランサーに担がれてるのでバゼットさんは若干引きずられ気味になっている。
まぁ仕方ないよね!
とにかく、俺は2人を衛宮亭へと連れてきた。
しかし部屋に入ったら何故か腹抱えてプルプル震えながらうずくまってる遠坂と、顔が真っ赤の士郎。
「なんぞ…?」
そう思わずつぶやいた。
多分俺以外の誰が見ても同じような事をつぶやくと思う。
「ひぃー…はう、笑った笑った…あら、おかえりなさいコウジュ」
ああ、なる。笑ってたのか。
それにしても、何を笑ってたんだ?
いや、状況から士郎の何かを笑ってたんだろうけど。
「ねぇ聞いてよコウジュ、士郎ったらね」
「ちょ、遠坂!?」
士郎はかなり必死に凛を止めようとして口を防ぐ。それも後ろから抱き付くようにして。
あのー、士郎さん? 反対の手がヤバいとこ触ってますよ?
あ、はたかれた…。
「どこ触ってるのよ!」
「わ、悪いっ!!」
さすが主人公、その程度で済むのか。
これがワカメだったら魂ごと消し飛ばされてるだろうに。
さすが主人公、とりあえず爆発しろ。
「んで、士郎がどうしたん? またどっかでフラグ立てた?」
「いーえ、どちらかというと回収に行く感じかしら。明日セイバーとデートしに行くんだってさ」
デートとな!
今の俺を効果音で表すとキランと付くことだろう。
人の恋路ほど面白いものは無いと言うがほんとそうだな。
私、気になります!
士郎の方を見ると顔を赤くしながら顔を背ける。
回り込むとまた顔を背ける。
何これ可愛い。
うりうりと顔をつついてみる。
っと、顔を赤くしながらも近くにあった新聞を丸めて構えたので離れる。
「それは面白…もとい…めでたいことだねー」
原作であったデートイベントかな。
ニヤニヤせずにはいられなかったシーンなんで印象に強く残ってるよ。
デート後に金ぴかがちょっかいかけてくるのもあって余計にね。
「いま、面白いって言いそうになってなかったか?」
ぴゅーぴゅーと口笛を吹いて誤魔化す俺。
訝しむ士郎だが、ハァと一つ溜息をついた後は諦めたようだ。
なんだよその何言っても無駄だなって表情は。
ちょっとその溜息に釈然としないながらも話を続ける。
「それで凛は爆笑してたわけか」
「そういうことよ。所で…後ろの二人って…あれ? 片方は…ランサー!?」
今更ながら驚いた凛は宝石を構える。
それにしてもよくわかったな。
小さくなってるから、もうランサーのコスプレした小っさいどっかの子になってるのに。
うん、改めて見てもやっぱ“らんさー”ってのがしっくりくる。
「ストップストップ。2人はもう味方だから一応。それに片方は気絶中だから起こさないようにな」
「…っ。…わかったわ」
凛は再び座ってくれた。
ふと、士郎の方に顔を向けると、苦虫を潰したようなといった微妙な顔をしていた。
あぁ、そっか。
士郎は一回ランサーに殺られてるんだっけ。
そらそんな顔になるわな。
「士郎、納得いかない部分もあると思うがそこはちょいと目を瞑ってくれないか?」
「…そう…だな。味方になったなら態々争うのもおかしいし」
表情的にはまだ納得してないって感じだが、それでも理性で抑えてくれたようだね。
でも、味方になったって俺が言っただけでそこまで自分の気持ちにふたをするってのはお兄さんちょっと心配だ。
なんか、ほっとけないよなこんなところを見ちゃうとさ。
まぁその表情をしてしまう現状を作った俺が言うのもなんだけどさ。
「それで、どこで拾って来たの?」
微妙にもやもやしている俺を、凛がそんなことを言いながらジトーっと見てきた。
こっち見んな!!っと言いたいけど、俺の日ごろの行いのせいだわな。
「拾ったというより釣った?」
餌は俺ってことになるのかね。
「おいおい、嬢ちゃん方そいつはひどくないか?」
クー兄さん(らんさー)が扱いを不満に思ったのか、今まで黙ってたがさすがに口をはさむ。
しかし見た目がアレなもんで少年が拗ねているだけに見える。
そんなクーさんは自分が座るついでにその辺の座布団を繋げて、その上にダゼットさんを寝かせた。
すかさずアーチャーが掛ける為だろう毛布を持ってきた。
無言で頷き合うアーチャーとランサー。
おお、漢な二人の掛け合いカッコいい。二人ともショタだけど。
まぁでもその二人の気遣いの御陰か寝かされたバメットさんも心なしか満足げだ。
…あれ? 本名なんだっけ…。
ふざけてたらどれが本当か分からなくなってきた。
ダメット・フラグミッツ?
三つ?
まぁそのうち分かるか。
「そんなわけで…あれ、どんなわけだ? …まいっか、そんなわけでランサーの協力を得る事が出来ました。わーぱちぱち」
「そういう契約しちまったからな。約束は守るが…そろそろ、内容を教えてくんねーか?」
その言葉に、他の皆も俺を見る。
そういえば話したのってイリヤとキャスターくらいで、今ここに居るメンバーは知らないのか。
まあいい機会か。
なんだかんだ言いながら俺は説明を抜きにして好きにして来たし、ほぼ最終段階まで来たのに言わないってのは駄目だよな。
それに、丁度セイバーも居ない。
現時点で問題となってくるのはセイバーの本心。
セイバーの本心が王の責務で塗りつぶされてしまっているか、それとも
実際問題として、セイバーが現界し続ける事は聖杯が無くても俺のスケド(スケープドール)で可能なわけだ。
セイバーは英霊として少し特殊で、本来の身体がまだ生きていたりするのからただ単純にスケドを使えばいい訳じゃないはずだが、でもまぁぶっちゃけ、手間がかかるだけで問題はない…はず。
だから、後はセイバー自身の問題だ。
聖杯が穢れてるとかそんなの抜きにしてセイバー自身がどう思うか。
それによって俺が取る方法を変えなきゃならない。
傲慢な考えだと思うけど、やるならとことんまでやりたいのは確かだ。
でも、こればっかりは士郎とセイバー二人がどうするかにかかってる。
二人があと少しの時間でどうなるか、それによって対応を決めるしかないのだ。
結局これに関しては後で考えるしかないか。
なら、現状で言えることは言ってしまっておいた方がやはり良いのだろう。
俺は意を決心して、皆の事をしっかりと見ながら口を開いた。
「単刀直入に言うよ。俺の目的は聖杯をぶっ壊す事だ」
「…なんだって?」
ランサーがキョトンとした顔をこちらへ向けてくる。
士郎、凛はどうやら固まってるようだ。
「嬢ちゃん…、本気か?」
「モチのロン。本気と書いてマジです」
「理由を聞いてもいいか?」
「私たちにも勿論教えてくれるのよね…?」
「勿論。けどどう話そうか…。そうだな、ちょっと聞きたいんだけどランサーは聖杯に望みってある?」
「ねぇよ。俺は聖杯に願いを持っちゃいねぇ。俺はこの聖杯戦争そのものが願いだからな。強い奴とやりあえればそれで満足だ」
「んじゃ、無問題だね。この度召喚される聖杯、実はこれが汚れてしまっているんだ」
「…どういう…こと?」
そう問う凜ちゃん。
穢れてるっていきなり言われても意味が解らないよな。
他の皆も首を傾げたりと理解まで行っていないようだ。
「汚されているってのは文字通りの意味だよ。聖杯は汚されている。あれはもう願いを叶える願望器なんて物じゃなくなってるんだ。いや、確かに願いを叶えることはできるだろうよ。けどな、その方法が問題なんだ」
「方法? 生贄が必要だとかって事?」
「いんや、それすらも生ぬるい。その方法ってのはな、『破壊』を持って成就するんだ」
「なんですって!?」
「おいおい、マジかよ…」
「ゴメン、よくわからないんだがどういう事なんだ? 物騒なのは分かるんだが…」
士郎ェ…。
いや、良いんだけどね。実質士郎は素人なんだからさ。
でも魔術に馴染のメンバーはその意味が分かったようだ。
クー兄さんも確かキャスターのクラスにも該当するぐらいに造詣が深い。
「例えば…そうだな、さっきランサーが言ってた“強い奴と戦いたい”っていう願いを聖杯に言うとするだろ?」
「…ああ」
「そんなの願わねぇけどな」
例え例え。
だから気に食わないってのは分かるけどブスッとしないでくださいな。
「そしたら多分、各国の重要拠点が吹っ飛ぶだとか、核ミサイルが誤作動起こして他国に落ちるだとか、文明の崩壊だとかが起こるんじゃないかな」
「ん? それがどうしてさっきの願いに繋がるんだ?」
「その結果何が起こる? 戦争が起こるのは確実だろうよ。戦争なんてものが起こったら人々は強くならざるを得ない。文明の崩壊も…残された資源を巡っての闘争、奪い合い、『ヒャッハー』や『汚物は消毒だー』な世紀末が簡単に来ちまうだろうな」
俺の想像力が貧困なのでこの想像なのだが、戦争が技術を発展させるっていう話はよく聞く話だ。
戦争なんていう極限状態だ。普通なら踏みとどまる所で踏みとどまれなくなる。
そりゃ技術力は上がるだろうさ。
戦争の結果生まれた技術なんてそこら中にある。
例えば新幹線に使わている技術、あれも元は戦闘機の開発技術を流用したって話だ。
つまり、何が言いたいかというと、人は極限状態ではどこまでも突き進む。
そして人間はそれを乗り越えるために強くなろうとする。
人間の強さは適応力だと聞いたことがある。
まあ悪い意味ばかりでもないのは事実だろうけどさ。
「たまったもんじゃないわ。世界最強を願ったら、多分世界中の人間が死ぬんでしょうね。自分以外に誰も居ないんだもの、当然1番になるわよ…」
それどこの独裁者スイッチと言いたい。
でもきっとそうなるのだろう。
改めて考えるとホントろくなもんじゃねぇな。
まぁ、聖杯自身も被害者と言えなくもない。
中に取り込まれているモノも然り。
「汚れた原因は確か第三次の聖杯戦争。そこで、アインツベルンがイレギュラーサーヴァント阿部…じゃなかった『アヴェンジャー』を召喚した。アヴェンジャーの正体はアンリマユ、つまり“この世全ての悪”だった。それ以来の筈だ、聖杯が穢れたのはな…」
“この世全ての悪アンリマユ”は善悪二原論のゾロアスター教において、絶対悪とされる存在だ。
それを当時のアインツベルンが勝利に固執し、ルールを破って例外的な方法で反英雄として召喚してしまうわけだ。
ただ、問題があった。
召喚されたのはアンリマユであってアンリマユではなかった事だ。
その正体は、拝火教を信じる古代のある村で、「この世全ての悪性をもたらしている悪魔を仕立て上げることで、人間全体の善性の証明とする」という身勝手な願いの結果、一人の人間がこの世全ての悪を体現する悪魔「アンリマユ」の名と役割を強制的に背負わされ、人々に心から呪われ蔑まれ疎まれ続ける中で「そういうもの」になってしまったただの人間だった。
しかしその在り方は人々の願いの結果であったことから願望器である聖杯が反応し、聖杯は汚染されていった。
それが穢れの正体。
「また厄介なものを…」
呆れたと言わんばかりに言う凛。
まったくだ。
「あなたが壊そうとする理由は分かったわ。でも、さっさと壊さないのは何でなの?」
おあふ…。
核心突いてくるなー。
……当たり前か。
「それはあれだよ、確かに召喚されるのを阻害する方法はあるけど、ここできっちりと処理しておきたいんだ。前回からの今回の様に、下手なことをしてまた次回なんて状況は勘弁願いたい。だから俺がある方法で聖杯を壊す」
「ある方法っていうのが知りたいんだけど?」
「それは…まだ言えない…かな」
言ったら絶対却下される方法だし。
だからイリヤにも言ってなかったりする。
キャスターには簡単な概要だけは伝えたけど、それでも全部じゃない。
俺の一番の目的ってのも、言うとその方法を絶対聞かれるからって理由で言えないのだ。
秘密主義ってわけじゃないけど、俺がハッピーエンドを考えた時に最初に思い付いたそれを犠牲にしてってのは本末転倒だ。
だから、言えない。
「…そう。まぁいいわ。今更だもの」
ゴメン。超ゴメン。
「あのさ…」
士郎が何かに気づいた様で俺に問うてくる。
「どったん?」
「親父は…気づいてたのかな…。3回目からって事は当然前回の聖杯戦争も穢れていたってことだよな…。それを親父は願いを捨ててまで寸前で壊したって事は…」
「おやおや、士郎にしちゃ鋭いじゃん。明日は槍どころかゲイボルグが降るんじゃなかろうか」
「どんな状況だよ。というか普段俺の事をどういう風に見てるかよーく分かった。それで、どうなんだ?」
「That's rightだ士郎。切嗣氏は寸前で気付いた。故にセイバーに命じて壊させた」
切嗣氏とアインツベルンの関係についてはまだ言わなくてもいいかな?
現状では聖杯戦争っていうものの中では重要度が低い。
どころか、士郎の場合100%足枷にしかならない。
終わってからゆっくりと話すべきことだしな。
ついでに言うとその方がイリヤを弄れて楽し…ゲフンゲフン、家族間の問題になるからじっくりと話せる方が良いだろう。
「ほぉー、小僧の親父さんは前回の勝利者だった訳か。けど壊したと…。やるねぇ」
クーさん今の会話だけで大体解かっちゃったげですか!?
こっちとしては説明する必要が無くて楽だけどさっ。
さすが兄貴と言わざるを得ない。兄貴の称号は伊達じゃない。
今の見た目はあれだけど…(目反らし
「どうやらそうらしい。いまいちピンと来てないけどな。って、俺の名前は小僧じゃないぞ? 衛宮士郎だ」
「あいよ」
飄々と笑いながら返すクーさん。
ショタなのに一々漢を魅せやがる。
ショタなのに。
「それにしても、親父悔しかっただろうな…」
士郎が悲し気に顔を下むがながら声に出す。
…なんのこと?
俺が首を傾げているのを見て、士郎は続けた。
「いや、親父にさ、どんな願いがあったのかは知らないけど、それを諦めてまで聖杯を壊したのに結局大火災が起こってしまったんだ。結果的に見たら被害の規模はまだ少ない方なのかもしれないけど、それでも親父なら…さ…」
遠くを見つめるように何かを思い出しているのであろう士郎。
何か…とは言ったが十中八九切嗣氏にあの大火災の中から士郎が助けられた所を思い出しているのであろう。
勘でしかないがそう確信できる。
俺は実際に見たわけではないがそのシーンはアニメで見た。
アニメは所詮虚構だが今目の前に居る士郎達は現実。だからこそあのシーンがより俺の中で鮮明に思い出された。
大火災による地獄絵図。救いなんてあるように思えない。そんな中で切嗣氏は一人に少年を見つける。今にも死に絶えそうなその少年。それが士郎だ。
そしてそこが、士郎の原点。
士郎は確かその時の切嗣氏の表情を見てこう言った筈だ。
“助けられたのは俺なのに助けた方が救われた顔をしていた”
細かい言い回しは違うと思うが士郎がそう思ったのもさもありなん。
俺はFateのZEROはほとんど知らないから切嗣氏の詳しい内情を知りはしない。
けど、当時の切嗣氏は罪に苛まれており、ほとんどの人が死人となった炎の地獄を歩き続けた中で生存者に出会えたってなっていたのは覚えてる。
その時に歓喜、虚しさ、その他諸々の感情が溢れたのは想像に難くない。
「確かに…ね…」
「報われねぇってのは、辛いもんだしな」
「自分が原因だなんて…ホント―――」
…?
あれ…?
「ちょいタンマ。切嗣氏は直接あの大火災に関わってるわけじゃない筈だぜ?」
「「え…?」」
◆◆◆
大火災は親父が聖杯を壊したからじゃ…?
どういうことだ?
「あれ、俺言ってんかったけ? 切嗣氏はあの大火災の原因って言えば原因だけど直接は関与してなかったはずだぜ? 詳しい事は俺もしっかりと知らないんだけど、切嗣氏の相手、つまりあの金ぴかのマスターが切嗣氏の足止めを願い、既に現界していた聖杯がその願いに触れてしまってああいう形で願いをかなえたってのが真相だった筈だ。実際は資格をまだ持ってないのに触れたから余計にこじれたとか色々あるのかもしれないけど、根本的には切嗣氏は大火災を起こした訳じゃないよ」
「じゃ、じゃあ聖杯を壊した結果が大火災じゃなかったのか!!?」
思わずコウジュに、机の上に身を乗り出して聞いてしまう。
「おおぅ!?」
「そうなの?」
身を引くコウジュだが、遠坂も気になったのか詰め寄る。
「そ、そうだよ…。ってか近い!!」
それから俺たちは情報を纏めてみた。
相変わらず、コウジュは色々と隠しているようだ。
理由としては、今は必要ないだとか、俺達が知ることによって計画が変わってしまった時に対処できないかもしれないからだそうだ。
それで…だ。
纏めた情報なんだが―――、
1.金色のサーヴァント、ギルガメッシュは聖杯を望んでいる。
2.ギルガメッシュは前回の聖杯戦争からの生き残りである。
3.ギルガメッシュはセイバーを狙っている。
4.ギルガメッシュは前回の聖杯戦争で、聖杯からこぼれ出たモノをかぶったために現界し続けられている。ただし、魔力の補充をするため人を襲っている。
5.今回の聖杯戦争は実はもう終わっている。
――――――なるほど…。
「「「って、ちょっと待て!!」」」
「う…?」
首を傾げるコウジュ。ちょっと可愛い…。
じゃなくて!!
「後半二つは俺聞いてないぞ!? 特に最後!!」
「聖杯戦争がもう終わってるってどういう事!?」
「あ、俺はノリだからな」
「ランサーェ…ゴロ悪いなこれ……じゃなくて、聞いてない? 言ってなかったけ?」
「「言ってない」」
当然のごとく遠坂と声が重なる。
「……わはー」
「「誤魔化すな…」」
「ゴメンなさい…」
コウジュが土下座をする。あの角度で何であの帽子落ちないんだろ…。
ってそうでもなくて!!
「聖杯戦争がもう終わってるってどういう事なの?」
「ギルガメッシュの方もだ」
コウジュはあははーっと苦笑した後、先の疑問について答えてくれた。
「いやー、ゴメンゴメン隠し事しすぎてどれを話してないのか忘れてたぜ。ギルガメッシュの方は簡単。前回のわたくしめの説明不足でございます。あわよくば、そのまま流してくれたらなーっと…」
そしてまた土下座。
なんだろう…やっぱりコウジュって実は遠坂家の関係者じゃないのかって最近ほんとに思うんだが…。
「前に俺が言ったのもあながち間違いじゃないんだ。けど、ギルガメ君は聖杯の中身かぶったおかげで現界し続けられてて、でも魔力が要るから人を襲ってるって感じなわけです、はい」
「ふーん。で、終わってるっていうのは?」
あの、遠坂さん? 恐いんですが…。目が笑ってないです。声はいつも通りなのに…。
ああ、コウジュが震えてる。
「聖杯戦争が終わったというのはですね、ランサーを先程倒して来たので、本来の参加者である7人のサーヴァントの内残っているのはセイバーだけなため聖杯戦争自体は終わっているというわけです。金ぴかは仲間はずれなので…」
ああそっか、聖杯戦争で倒すのは他の6人のサーヴァントだもんな。実質ランサーが最後の サーヴァントだった訳だから、セイバーの勝ちは決まってるんだな。
あれ、でも待てよ…という事は…。
「聖杯が危ないんじゃないか!?」
横で遠坂がハッとする。
「そ、そうよ!! 聖杯が!!」
ずっと土下座していたコウジュが顔を上げる。
「それは大丈夫。ぬかりないよ。聖杯を召喚するためのカギは全てこちらにある。一応何があっても大丈夫なように対策もしてる。約束もしたから絶対守るよ」
鍵…ってなんだ?
「そっか…」
横に居る遠坂は何か納得したみたいだ。
「鍵って何なんだ?」
「今は内緒…」
「あーそうね。士郎は知らない方が良いかも…」
「なんだよ、俺だけ仲間はずれかよ…」
疎外感…というわけじゃないが、少し寂しい。
俺のことを考えてくれての事だとは思うがそれでも…な。
「うあ…士郎そんな顔しないでくれよ。ものすっごい罪悪感感じるぜ。秘密にする俺が悪いとは思うけどさ、今士郎に話しちゃうとつっ走っていきそうだからな」
むう…。
思わず顔に出てたか。申し訳なさそうな顔をするコウジュに俺も罪悪感を感じる。
けど、俺が突っ走ってしまうっていう事は、それなりの危険か何かがあるってことだよな?
俺としてはそんなことを元サーヴァントとはいえ、女の子にさせるのはやっぱり心苦しい。本人は女の子扱いされるのを嫌がるけど、それでも俺からしたら女の子だ。
とはいえ、コウジュの言うハッピーエンドっていうのを目指すためには必要な事なのかもしれないし…。
まったく不甲斐ないな…。
「さて、真剣な話はここらで終わりにしよう。疲れた! アーチャーお茶ちょうだい!!」
「まったく…私は使用人ではないのだがね」
押入れからアーチャーが出てきて、そのままキッチンの方へ向かう。
衛宮家の押し入れはその内に青い狸でも出すんだろうか…。
「ちょっと! 元とはいえ私のサーヴァントなのよ! アーチャー私もお茶!!」
「おう、俺も頼むわ」
遠坂とランサーも便乗する。
もう何この状況。
俺の葛藤とかは何だったんだろうか…。
俺が言うのもなんだけど、聖杯戦争はこんなので良いのだろうか…。
あ、終わったんだっけ…。
はぁ…。
まったく、最近コウジュ関係で溜息が多い気がするよ。
◆◆◆
「やっぱりここに居た…」
「ん、凜か…」
話が終わり士郎を一通りからかった後、私はいつの間にかいなくなっていたコウジュを探しに来た。
どこにいるかは容易く予想がついた。
イリヤの部屋だ。
コウジュがうまく掻き回しているから士郎は多少訝しむ程度で気づいていないが、昨日からイリヤの姿を見ていない。
それを思い出してここに来てみれば案の定だ。
暗くしてある部屋、その中に敷かれた布団に眠るイリヤを見る。
薄暗いからよく見えないけど、薄く上下する胸から呼吸があるのは分かるがあまりにも生気が感じられない。
呼吸が無ければその容姿も相まって人形と間違えそうな程だ。
「イリヤは、大丈夫なの?」
「たぶん、ね」
そう言いながらも苦笑するコウジュ。
その姿は普段の彼女からはかけ離れていて痛々しい。
何かを我慢するように、そして申し訳なさそうに無理に笑おうとしているのが分かる。
そんな彼女に聞くのは心苦しいが、先程気づいたことを聞いておかなければならない。
自分の予想が正しいかどうか、それによって今後取るべき方針が変わる可能性がある。
「鍵って、イリヤのことよね?」
「やっぱ、気づいてたか」
「イリヤが自分で言ってたでしょ? 準備しなきゃって。それにあなたが幾らなんでものんびりしすぎているように感じたのよ。あれだけ私たちに不安を煽るように言うくせに、既に大事なものは手元にあるみたいに切羽詰った様子を見せてない。なんだかんだであなたってやることはやってるしね」
「それ、褒めてるの?」
「そう思うならそう思っておきなさい」
「ひっどいなぁ…」
そう言いまた苦笑するコウジュ。
その姿に少しイラッとする。
どいつもこいつも好き勝手やって、周りに居るものの心配を考えなさいっての。
そこまで考えて、自分もまた苦笑する。
いつの間にか目の前の少女を私は仲間と認識していたようだ。
最初は怪しいなんてものではなかった。
でも、ここ数日の彼女を見ていて警戒する自分が馬鹿らしくなったのは確か。
隠し事に向いてる性格ではないのに自分で何とかしようとして色々隠して、でも隠しきれてなくて。
ああ、やっぱり腹が立つわね。
士郎も、コウジュも、自分がやらなければと全部背負い込んで。
桜の事に関しては感謝してるし、アーチャーの事もまだまだ言いたいことがあったからあれはあれで何とか納得した。
けれどそれ以外の事に関しては別だ。
どこまで知っているのか分からないけど、コウジュは何から何までお膳立てして、全部掌の上ように振る舞って、後になってこういうことだったと説明されて…。
確かに、すべてを聞いたところで私ではサーヴァントの戦いに邪魔になるのは確か。
魔術師としての自分が冷静にそう告げている。
けどやはり言ってほしかった。
コウジュには恩義もある。
余計なことも多々されたけれど、それ以上に、桜との仲を取り戻してくれたのは彼女だ。
だから何か手伝ってあげたい。
でも―――、
「ねぇ、もう一度聞くわ。イリヤは大丈夫なの?」
でも、ここ数日でわかった。
私が言ってほしいと思うこの感情と同じように、コウジュもまた私たちの事を仲間だと思って行動してくれている。
不死身だと聞いた。怪我もすぐ治ると聞いた。そしてサーヴァントだと知っている。
けど身体が感じる痛みが和らぐわけではないはずだ。
死ぬという経験が消えるわけでもないはずなのだ。
それでも矢面に立って、色々としているのは彼女だ。
そこまでしてくれる彼女を邪魔したくないとも思ってしまっている。
「大丈夫、大丈夫だよ。イリヤと約束したから、守ると誓ったから、思ったことを現実にするってのは俺の専売特許だよ」
そう言う彼女の顔は先程までと違って強い目をしている。
「そう…」
「まぁお兄さんに任しときなって」
今度はニシシと軽快に笑うコウジュ。
その笑みはまるで、兄が妹を安心させる時にするようなものだった。
って、兄なんて私には居ないしコウジュは女の子じゃない。私は何を考えているのやら。
「まあ、他にも聞きたいことはあるけどこんなものにしておくわ。あまりここで話すのも悪いし」
「そうかい? ま、気遣ってくれるのは嬉しいけどさ」
「何よ、なら話してくれるの?」
「……あはは」
「どうせそんな事だろうと思ったわ」
やっぱり言ってくれない。
でももうそれで良いような気がしてきた。
というか、彼女が好きにするのなら私も好きにさせてもらうだけだ。
「だから、もう聞かない。聞かないでいてあげる。だけど、失敗したら承知しないんだからね」
「任せろ」
短く、けど力強くそう言うコウジュ。
さっきのもそうだけど、時折見える彼女の男らしさとでもいうべきか、とにかくこの不思議と大丈夫と思わせる安心感はなんなのだろうか。
でもそれが嫌じゃない。
大人が子供に言い聞かせるように言うときはちょっとだけムっとするけどね。
私は静かに部屋を出る。
持っていた疑問はほとんど解決していない。
でも不思議と心は軽やかだ。
「さってと、私は士郎のデートプランでも考えてあげるとしましょうか」
先程までのもやもやはどこへやら、私は足取りも軽く、居間へと向かった。
いかがだったでしょうか?
今回は話ばかりで盛り上がりはありませんでしたがコウジュの目的を皆に言う話でした。
クライマックス間近になってやっと言うコウジュに凜さんも激おこ。
でもコウジュの漢力の前に凜さんもしゃーなぇなと諦めてくれました(え
さておき、あと5話くらいでFate編は終わりの予定です。
その次はネギまが前回途中だったのでそれを終わらせたいと思ってるのですが、ハイスクールD×Dとかも面白そうですよね。
ほんと書きたいもの…というか妄想はいっぱいあるんですが文章力やら何やら色々な物が足りないので、結局は実現できず仕舞い。
一番やりたかった東方とかいつやるんだよって感じですw
まぁ現状で何言っても仕方ないので、引き続きぽつぽつと書かせて頂こうと思いますので、なにとぞよろしくお願いします。
P.S.
共通鯖でニュマ娘集会したんですがめっちゃ楽しかったですw
全国の人がああやって画面越しでも出会うことができるのってほんとすごいですよね…。なんかこうじんわりきました。
ちょっと眠気やら何やらが限界で先に落ちるしかなかったのが残念w