テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
すいません遅くなりました。
月曜になってしまいましたが、暖かい眼で見ていただけると嬉しいです。
では、どうぞ。
「まったく、やりたい放題ね…」
遠坂が呆れたと言わんばかりに眼前に広がったモノを見て言う。
それに答えることもできず、俺は呆けて目の前に広がるものに圧倒されていた。
セイバー、遠坂と共に桜を助けるため龍洞寺へとやってきた俺達。
遠坂に魔術的なわなを回避してもらいながらなんとかキャスターの工房へと侵入することが出来た。
だがそれは工房というにはあまりにも広大だった。
詳しい建築様式は分からないが、古代ギリシャの神殿を思わせる建物がいくつも並んでいた。
授業で習った程度だが、パルテノン神殿を彷彿とさせるものがいくつかある。
「これがキャスターの工房ですか」
「こんなものをどうやって…いや、魔術だよな…」
コウジュを始め、サーヴァントという存在はやはり英雄と呼ばれるだけの規格外さがある。
コウジュは何か違う気もするが、根本的なところでは一緒だろう。ただの魔術師ではその領域には至れやしない。
そんな風に諦観していると周囲の建造物からぞろぞろと何かが出てきた。
骨?
端的に言えば、見た目は骨でできた人型だ。
だが剣を持つものなど明らかにこちらへの敵意を持っているのが分かる
ただ、単純な骸骨という訳でもないようだ。
頭の部分が大口を開けた咢のみで構成されており、人間の頭部とはかけ離れている。
これもキャスターの魔術という訳だろう。
「来たわね」
「そう容易くいくわけはありませんか。少し数が多い。囲まれる前に正面突破をしましょう」
「分かった」
簡単に方針を決めて、出てきた骨兵に全員で突っ込む。
『GURUAAAAAAAAA!!』
どこから声を出しているのか、一目では数えられないほどに現れた骨兵は一斉に咆哮を上げる。
同時、遠坂が宝石を複数そちらへと投げた。
「Ein KÖrper ist ein KÖrper――!!!!」
複数の宝石はそれぞれが散りばめられながら骨兵へと降り注ぎ、そのまま彼らを大きく吹き飛ばした。
「ふふん、宝石の心配をする必要はないからね。思い切り行かせてもらうわ!!!」
言いながら再びポケットへと両手を入れジャラジャラと次の宝石たちを握った。
「行きましょう!」
次に行動したのはセイバーだった。
キャスターに宝具を封じられたと言っていたが、そんなことを思わせない動きで骨兵へと切り込んでいく。
遠坂の大量爆破で多くの骨兵が吹き飛んだとはいえ未だにその数は多い。
現在進行形でセイバーが更に道を広げてくれているが、のんびりしていていい訳ではないだろう。
「
俺は前にコウジュに見せてもらった黒白の双剣を投影した。
手に確かな感触が生まれると同時に、俺も眼前の骨兵へと切り込む。
「GUUUUA!!!!」
斧を手にした骨兵が斬り掛かってくるが、その速度が遅く感じる。
俺は冷静に斧を避け、そのまま右手の黒剣をかつんと骨兵へと当てる。
すると当てた場所がピキピキと甲高い音を立てながら凍り始めた。
よし、有効だ。
これはコウジュに見せてもらった干将・莫邪という双剣の効果らしい。
コウジュ曰く、ある程度の力量もしくは確率に左右されるが『凍結』という効果を齎すことができ、必ずしも斬る必要が無く当てさえすればいいとのことだ。
そしてここ数日のコウジュにされた修行の成果か凍結の確率は各段に上がっている。
いや、実際にはコウジュは数日の修行の後これを俺に見せてから修行には参加していなかったか。
重要な用事があるとかでいくらでも怪我をして良い様にとイリヤの監督の下で回復薬等を置いたまま出掛けてばかりだった。
さておき、この双剣は何故かよく手に馴染むし、これの扱いばかりを俺は練習していたこともあって大きなアドバンテージを俺に与えてくれている。
この『凍結』という効果が中々に使い勝手が良いのだ。
直接的なダメージを与えるわけではないが、効果が及んだ際には相手の動作が阻害される。
相手が早いなら遅くすれば良いじゃない等とコウジュは言っていたが、その横に居たアーチャーがそんなに簡単に言うなと呆れていたのをよく覚えている。
そういえばアーチャーも同じものを持っていたが、起源は同じだが違う歴史を辿った別物だとか。
そちらは伝説にあるように『引き合う力』を持っているらしいが、
サーヴァントの様なスピードが出せない以上、コウジュが言う様に相手の動作を制限するこの干将・莫邪は大いに助かっている。
「はぁっ!」
完全に倒す必要はない。
あくまでも俺達の目的は桜の救出だ。
邪魔になる骨兵へと双剣のどちらかを当て、凍結して動きが阻害されたならば走り抜け、効果が薄いようなら多少骨兵の行動が阻害されている間に追撃を加え倒してしまう。
「次っ!!」
また一体倒したところで次へと駆けだす。
しかし、俺はすぐに足を止める。
「そいやぁぁぁぁ!!」
目の前の骨兵の集団が一斉に吹き飛んだ。
まぁ犯人はすぐ後ろに居る奴なのは分かってる。
学校では決して見られない位にテンションが上がってるお嬢様だ。
後ろを見ればポイポイと宝石を投げる遠坂の顔はとてもじゃないがファンには見せられない。
というか見たくなかった。
「懐を気にしないで良いなんて気持ちよすぎる!!」
そっと顔を逸らし、見なかったことにしてセイバーと共に再び前へと俺たちは駆け出した。
数ある建築物の間を抜け、骨兵たちを退けながら、奥にある上段、その手前の階段まで来た。
ぱっと見る限りではこの階段を昇れば一番大きな神殿へと辿り着く。
そう思い更に速度を上げる。
だが――、
「よくぞ参られた。どうした? 私が門番である事は承知している筈だが」
階段の途中、やや開けた場所に佇むアサシン。
それを見て改めて干将莫邪を構える。
しかしそれを見て、アサシンがこちらを制すように手を上げた。
「まぁ、待て。貴様たちは先に行くがよい」
そうアサシンは俺と遠坂を見て良い出した。
…どういうことだ?
「ふむ、不思議か?」
思わず怪訝だという表情をしていたのであろう俺の顔を見て、アサシンが続ける。
「私の使命はサーヴァントからの守護でな。更に言うなれば私が相対するのは最優のサーヴァント。魔術師の一人や二人を通してしまうのは仕方なかろう?」
どういう意図で言っているのか、本心なのか、はたまた思惑があってか、俺には判断できない。
だが、通してくれるというのなら行くまでだ。
「セイバー」
「分かっています。私もすぐに」
「頼んだ」
「頼んだわよ」
俺と遠坂はセイバーに後を頼み、先へ進む。
階段も、あと少しだ。
◆◆◆
「感謝します」
「なに、礼には及ばぬ。お前との戦い、少しでも長く楽しみたいだけのこと。サーヴァントとして居られるのも後わずか…。この身に残る魔力では朝まですらもつまい」
「アサシン…」
私と剣を交えたいだけにしろ、今は助かった。
ただ、少しでも長くと望まれても急ぎあなたを倒し、武人として強者との戦いを望まぬわけではありませんが、今は先へ進ませていただきます。
「さて、
…?
どこか引っ掛かる言い回しするアサシンに内心で首をかしげる。
アサシンはそれを言った後、おもむろに袖に手を入れ何かを取り出す。
いや、何かではない。
ここ数日で見る機会は幾度もあったものだ。
だが、どうしてアサシンがそれを持って―――。
「どうしてあなたがそれを持っているのですか!! アサシン!!」
アサシンは答えず、その取り出したものを胸に当てる。
するとそれは溶け込むように消えた。
「なに、少し気が変わってな…」
何を意味するのかは分からないがそう言い構える。
「
「一体何の事を言っているのですか!? 私が言いたいのは――!」
「構えよ…。今はただ剣を交えるのみ…」
くっ!!
小次郎の剣気が一気に高まる。
私も構えて、魔力を高ぶらせる。
だが、心の中では今聞けなかった疑問が残り続ける。
何故―――、
何故アサシンがコウジュのカードを持っているのですか?
◆◆◆
「ぐ…こんの!!」
「……」
俺は今、葛木先生、いや葛木と戦っている。
理由は簡単だ。
俺と遠坂がアサシンの横を抜けて階段の最上まで上がると、祭壇のような場所にいる桜を見つけて駆け寄ろうとしたが横から葛木が奇襲を仕掛けてきた。
何とか反応して防ぎ、遠坂を先に行かせて俺が相対している。
そして現在に至る…、というわけだ。
だが、当たらない。
葛木の攻撃は素手、対して俺は双剣。
なのに、当たらない。
確かに相手の方が身軽であり、葛木の動きそのものも洗練されている事から基礎的な部分で俺はスピードで劣っている。
とはいえ、間合いは圧倒的にこちらにある。
それでも当たらない。
袈裟、横に一閃、突き、逆袈裟…様々な攻撃を仕掛けても、避けられ、当たりそうになると少しだけ逸らして、そして避けられる。
幸いなことは、葛木の攻撃もまた俺へと致命的な一撃を当てられていないということだ。
干将莫邪が当たれば凍ると知った葛木が警戒して刃に触れないようにしている。
だからこれを盾にして何とか直撃を防いでいる。
ただ、それでも防ぎきれない分があり、俺の防御の隙をついて俺に向かってくる攻撃が徐々に俺にダメージを与えている。
だがこのままじゃジリ貧には変わりない。
どうすれば……。
「余所事を考えている暇はあるのか?」
「!?」
腹で爆弾が爆発したかのような衝撃が走る。
「ッぐふぁ!!?」
後方へと吹き飛ばされ干将莫邪を手放してしまった。
しまっ…!!
「っ!」
葛木が追撃をかけて来る。
「やられてたまるかっ!!!」
俺は咄嗟にソードを掲げるように投影で出し、葛木の拳を防ぐ。
ガァンと拳と剣がぶつかったとは思えない音が辺りに響くと同時に、俺は反動で再び後ろへと飛ばされた。
「くっそ!!」
今度はこちらからだ!!
◆◆◆
「桜…」
私は桜が眠らされている祭壇の前まで来た。
桜は祭壇の上に虚ろな眼のまま立ち、その周りに桜を中心として引かれている陣へと桜の魔力が流れているのが分かる。
今、助けるからね…。
「キャスター!! 居るんでしょう!!」
私はこれを行っている張本人を呼ぶ。
居ないはずがない。
「あらあら、少し侮ったかしら。でも、あなたの
どこからともなく表れるキャスター。
深く被ったローブから出ている口元には笑みが浮かんでいる。
それにしてもいやな言い回しね。
恐らく私と桜の関係をどうやってか調べたのでしょう。
「全部…お見通しなわけね…」
「ふふふ、この子の記憶を覗かせていただいたわ」
そう言った後、キャスターは目に光の無い桜の耳元へ行き、何かを呟く。
「っ!!?」
何を言われたのか桜は何も移さない目をこちらに向けてきた。
「う、うあ…うああぁ!! あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
桜の元からキャスターが離れると同時、桜が苦しげな声を上げ、周りの陣が活性化する。
一体何をしたのよ!!
く、仕方がないわ。
「桜、ちょっと痛いけど我慢しなさいよ!! Set...Los! Zweihänder!」
魔力を腕に貯め、強めのガンドを一気に放出して桜にぶつける。
態々操った状態にしてあるということは覚醒状態である必要があるのだろう。
だからガンドを使って意識を飛ばす。
「くっ…」
しかし、当たる寸前で桜の前で障壁のようなものに弾かれてしまう。
だったらと、今度は宝石で攻撃を仕掛けてみる。
「これなら!!」
しかし、これもまた弾かれてしまう。
そして無情にも、時間が来てしまった。
「残念ね、時間切れのようよ」
桜がまた苦しみ出したと思ったら、陣が強い光を放ち、桜の足元から黒い、どこまでも黒く濁った闇が凝縮されたような何かが溢れだしてくる。
それは意思があるかのように形を作っていき、うねうねと何本かの触手のような形を形成していく。桜を守るように存在するそれは、一本一本が人の腕ほども太い。
なんだってのよあれは…。
呟く暇もなくその触手達がこちらへと一斉に迫ってきた。
咄嗟に近くの物陰へと隠れ、それを見ていると触手達が一斉にこちらに来た。
「っ!!? Sechs-ein-plus! Einhänder!!!」
慌てて、ガントではなく攻撃用魔術で迫ってくる触手達へと攻撃する。
しかしそれらは容易く弾かれ、自らが隠れる柱へと殺到する。
いやな予感がして柱から離れ、逃げ出す。
予感通り柱など容易く破壊し、それでもなおこちらへと迫ってきた。
「ぐっ」
足元に形成する陣の外へと飛び出すが、足に少しカスってしまった。
そして、しまったと思った瞬間には触手達がこちらに殺到していて…。
「んぐあっ!!」
身体が大きく跳ね飛ばされ、何度もバウンドした後地面を滑っていく。
身体が思うように動かせない…。
アドレナリンが出てるからか痛みは感じないのが唯一の救いね。
けどここで、動かないと意味が無いじゃない!!
動きなさいよ私の身体!!
桜はもう目の前なのよ!?
苦しんでる妹がそこにいるのよ!!?
自らの身体に叱咤し、優雅もへったくれもない根性で転がった体を起こす。
「ああぁぁ!!」
気合を入れるためにも吼えるように声を出す。
少しずつ…少しずつ身体が動かしていく。
立って、あの子の所へ!!
「どうしてそんなに頑張るのかしら?」
何とか立てた私に向かって、キャスターが言ってくる。
どうして?
そんなの決まってるわ。
「桜が…私のたった一人の妹だからに…決まってるじゃない…」
「あら?おかしいわね…。なら何故この子を間桐の家に渡したりしたのかしら? この子の感情の中にはそれを厄介払いされたという風に感じてる部分があるみたいよ?」
「違う!! 魔術師の家系は継承を1番上の子どもに伝えるのが習わしだから「つまり妹より習わしを優先したわけよね?」そんなわけないじゃない!! 私も! お父様も!! そのほうが桜が桜として生きていけるようにって!!!」
「それをこの子が望んだの?」
「!?」
さっきからキャスターは何が言いたいの!?
「それと、この子が間桐の家で何をされてきたか…それを知ってまだ同じ事が―――」
「…めて…」
キャスターの声を遮るように、かすかに…ちょっとした物音にでもまぎれてしまいそうな声で、しかし確かに聞こえた。
「さく…ら…?」
「驚いたわね、まさか私の呪縛を抜けるなんて…」
キャスターが本当に驚いたと言った体で言う。
「やめ…て…私は……望んで…」
「中を覗いた私が本当の事を知らないとでも?」
桜に向かってそう言った後、キャスターは再びこちらに向いた。
「ねぇお嬢さん。この子の髪や瞳は昔からこんな色だった?」
髪と瞳の色?
いいえ、昔は私と同じ黒だった。
「こんな性格だった?」
昔も大人しい性格ではあったけど、暗くはなかった。
「そういえば、間桐の家が魔術師の家系として断絶しかけてるのは…知っていて?」
「えぇ、魔術回路を失ってしまって魔術師としての力はもうほとんど無いのは周知の事実」
「不思議ねぇ…じゃあ誰があのライダーを召喚したのかしら」
何か、魔具を使ったんじゃ…いえ、そんな簡単に道具なんかでサーヴァント召喚を代替させられるわけが無い。
「やめて…」
桜が再び、停止の意を唱えるがキャスターは続ける。
「これはどうかしら? 間桐家には、まだ一人だけ魔術を使えるものが居て…そいつは蟲をつかって対象の身体を弄って自身の都合のいいように改造が出来たりするらしいわよ?加えて言うなら、遠坂の家系であるこの子の属性は高い素養があったのか『架空元素・虚数』なのに今のこの子の属性は『水』。どうしてかしら?そして、間桐の属性も『水』。スゴイ偶然ね」
「それって…」
今言われた事が真実なら…桜は…。
「やめてえええええぇぇぇ!!!!!!」
桜の足元から出ていた何かは一気に増え、触手の数を増やし、キャスターに向かって行った。
「完全に支配から…抜けられたみたいねっ!」
忌々しそうに、障壁で触手を弾きながら離れるキャスター。
しかし私の中ではそんなことより、桜があの日、遠坂の家から間桐の家に預けられた日からの事が気になって仕方がなかった。
お父様と、私が思っていた桜の幸せなんて一つも無くて、ただ身体を弄られていたというの…?
「桜…本当…なの…?」
「!?」
ビクッと桜が反応する。
桜自身の意思が戻っているようだ。
だったら、教えてもらえるだろうか?
あの子の先輩としてではなく、姉として教えてほしい。
本当なの?
無駄だったの?
「違い…ます…」
「お願い桜…。いままで姉らしい事なんて一つも出来なかったけど、でも、今更かもしれないけど…恨まれていたって私は…」
「違います!! 姉さんは! 姉さん達を…恨むなんて…!! ただ、知られたくなくて!」
「本当の事…なのね…?」
「ぅあ…ち、ちが、いや、私は…」
「桜…お願い…教えて…桜の気持ちを……」
悔しい…。
私たちに知られたくなかった…。そんなことが桜の身を襲ってるのに、私は気づけなかった…。
桜が、遠坂桜から間桐桜になってからも私は気にかけてきたつもりだ…。
だけど、まったく気づけなくて…。
髪も瞳の色も変わってるのに…。
それほど気にも止めずに…。
何が…姉よ……。
私は自身の情けなさに、気付けなかった悔しさに、どうするべきかも分からずただ拳を強く握り、血が滲むのもいとわず佇む。
「私は…、私は魔術なんか無くても…良かったんです…」
桜がポツリポツリと話し始めてくれた。
私は悔しさに下ろしていた顔を上げて桜の顔を見る。
「私はただ…あの家で、姉さんと…お父さんとお母さんと…一緒に居れるだけで…それだけで幸せだったんです…」
「桜……」
「本当の事を言うと…最初はちょっと恨んだこともあります。私はいらない子なの? 何で私がこんな目に合ってるの?…って。でも、でもすぐに思いました。そんなことはないって…姉さんに貰ったリボンを見るたびに、姉さんたちは幸せになれるようにこうしたんだって…。
それで、結局言えなかったんです。送り出してくれた所に助けを求めるなんて…迷惑をかけるなんて…」
「迷惑なわけないじゃない!! 桜は私のたった一人の妹なんだもの。そんな事…思うわけ…ないじゃない……」
私はいつの間にか桜に近づき、抱きついていた。
「うぁ…うぅぅ……」
あの触手達は私に攻撃する事もなく、それどころか減っていっている。
「私…ひっく……私は本当…姉さんの妹で良いですか…?」
「当たり前…。むしろ私が桜の姉で良いのか…」
「姉さんは私の姉です…。血の繋がったたった一人の…」
ピシっ…と何かにひびが入る音が聞こえた。
砕けたのは、桜を囲っていた黒い何かと、祭壇を中心に走っていた陣。
そして、黒い何かは消えていく。
良かった…。桜が戻って。
「えーと、良い所ごめんなさいね」
「「!!?」」
私と桜は声のした方に同時に振り向く。
しまった!! キャスターの事を完全に忘れていた。
慌てて残っていた宝石を手に持つ。
「待ちなさい! …まったく、攻撃するならさっさとしているわよ」
…そういえばそうね、でも何で…?
「ね、姉さん…あの…」
後ろにかばった桜が話しかけてくる。
「はぁ…。あのねぇ? ちょっとは不思議に思わなかったのかしら…何で、敵である私があれだけ親切な事を言っているのかとか。まぁ、そう思えない状況を作ったのは事実ですけどね…」
???
どうして、キャスターはいきなりこんなにフレンドリーになっているのかしら?
桜も何かを話したがってるし…。
「おーい、遠坂、桜無事か?」
どういうことか考えながら、私は声のした方、士郎へと顔を向ける。
走ってくる士郎。その後ろには、歩いてくる葛木先生の姿が見える。
「無事でしたか!?」
セイバーと…アサシン?
小さくなったアサシンみたいなのが今度は来た。
ホントにどういう事…?
「坊やとセイバーはもう聞いたの?」
「はい」
「あ、あぁ。未だに信じきれていないんだけど一応は」
「ということは、お嬢ちゃんだけね。
簡潔に言うわ、今回の事は全部コウジュの仕込み、お芝居だったの」
「はい…?」
え、どういうこと?
仕込み? お芝居??
どうしてコウジュの名前???
「最初から説明するわ――――」
・
・
・
「はぁぁぁぁ!!!?」
私たちがキャスターたちを狙うのも、桜が攫われるのも、そしてここに救いに来てした一連の事も全部がコウジュの計画!?
「それで!!その張本人はどこ!!?」
思わず拳に力が入る。今ならあの厄介な障壁も素手で壊せそうな気がするわ。
「姉さん!コウジュちゃんは私たちの事を思ってしてくれたんです。だから恩人なんですよ!!」
「うっ…桜がそう言うなら…」
ダメだ、桜には勝てない。
さっきまであんな事をしてたけど、私たちの間の壁がなくなったから今までギリギリ我慢してた物が溢れてやまない。
それは桜も同じことらしく、どこか吹っ切れたという感じがする。
はぁ…。
確かに感謝しないといけないわね。
でも…1発くらいは良いわよね?
◆◆◆
よかった…。
遠坂と桜が姉妹だったってのにはびっくりしたし、今回の1連の事が全部コウジュの計画だと言うのにも驚きだった。
自分なりに色々と考える事があった身としては、
いささか納得できない部分もあるが、桜達のためだったんだし構わないか…。
2人が嬉しそうにしてるのを見ると仕方ないと思える。
それにしても、計画した張本人は一体どこに―――?
パチ、パチ、パチ、パチ……
突然、気だるげな拍手が辺りに響き渡る。
コウジュか?
「中々に良い余興であった…」
だがコウジュじゃないことはすぐにわかった。
続けて発せられた声からして男だ。
そして声のした方向を全員で見る。
そこには黄金に身を包んだ男が居た。
「しかし、飽いた。舞台の終わった役者はさっさと降りろ。目障りだ」
一体何が起こってる?
この男は誰なんだ?
これもコウジュのシナリオってやつなのか……?
いかがだったでしょうか?
最後に現れた男、一体何ガメッシュなんだ…。
さておき今回はコウジュの名前はよく出ましたが、主人公は登場せず。
次回はちゃんと出ます!
ではでは!
P.S.
PSO2でチャレンジしたいけど、人が居ない…;;
ここでやってる人ってどれくらいいるんでしょうか?
P.S.2
タイトル抜けてたんで足しましたorz