テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回はキャスターと士郎が邂逅するお話です。
書いている途中でUBW編アニメでの邂逅シーンを思い出しましたがあれはすごかったですね。
宗一郎さん強すぎです(´・ω・`)


『stage33:“後でやる”って絶対あとで後悔するフラグだよね』

 

 

 

 私は今、柳洞寺の境内で雨空を見てる。

 

 

 この空はあの時に似ている。

 あの時と言っても少し前のこと。

 私が現世にキャスターとして召喚され、第五次聖杯戦争に参加が決まってからしばらく経った日。

 その日私は、私を召喚したマスターを殺し、彷徨っていた。

 

 殺した理由なんて大層なものではない。ただ、気に入らなかった。真名を教えた際に“裏切りの魔女”と言われた事が。

 だから、殺した。殺してしまった。

 ほかにも理由はあったけど、何よりもそれが気に入らなかった。

 

 けど、マスターの居ないサーヴァント。

 しかも、召喚されてすぐの私が現界し続ける事なんて無理なのは当たり前。

 

 そんな私は、目的もなくただただ歩き続けた。

 今思えば何かを求めていたのかしら…、雨の中をふらふらと歩いていた。

 

 いつの間にか私は森の中から砂利道に出る。

 しかしそこで力尽きた。

 これまで――。

 そう思い、意識を失った。

 

 ふと気付く。温かい…?

 先程まで雨の中に居た筈だ。ではこの温もりは?

 目を開ける。

 そこは部屋だった。そして私は布団の中に居た。

 

 何故?

 その疑問はすぐに解消される。

 

『起きたか?』

 

 そこには男の人が居た。

 

『事情は話せるか?』

 

 感情が無いかの様な声でその人は私に淡々と続けた。

 

『迷惑であったなら帰るが良い。忘れろと言うのなら忘れよう』

 

 続けて彼は出口の方向を言い、席を立つ。

 私は問わずには居られず声を掛けた『待って、どうして…』と……。

 

 

 

「キャスター。そこで何をしている」

 

 思考の中に入っていた私が声によって現実に引き戻される。

 声を掛けてきたのはあの人、いえ、宗一郎様。

 

「いえ…ただ、あの日もこんな雨だったなと…」

 

 宗一郎様は1度目を閉じた後、雨がまだまだ降り続く空を見た。私も続けて空を見る。

 

 

 どれだけ時間が経っただろうか。

 空を見ていた宗一郎様が庭の方へ出る。

 

「傘は…」

 

「必要か?」

 

「いえ…」

 

 大雨とまでもいかなくともそれなりに雨は強い。

 その下へ気にも止めず、歩いて行く宗一郎様に声を掛けた。

 

 私はただ聞くだけではそっけなく感じるであろう返事に嬉しくなって追従する。

 私も雨の元へ行く。

 2人で歩きだす。

 そして歩いて行く。雨の中を。

 お出迎えの準備をするために。

 

 

 宗一郎様。このお芝居が終わったら今度こそ私はあなたと――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、聞き耳は良くないわね」

 

「なっはは…、許してほしいな。これでも気を使った結果なんだぜぃ?」

 

 私の問いに答えながら、ストンと軽い音をたてて屋根からコウジュが降りてくる。

 どうやっているのか、この雨の中でも濡れることなく存在する彼女は、少し気まず気にしている。

 

 その様子に、クスリと笑みを漏らしてしまう。

 

「分かっているわよ」

 

「なんだよ。ひっどいなぁ…」

 

 どうやら拗ねさせてしまったようだ。

 口を尖らせながらそういうコウジュの様子が更に面白くて笑みを深めてしまう。

 

「気を使ってくれるのは嬉しかったけれど、もう動かないとでしょう?」

 

「はいはい、はぁ…」

 

 本当にからかい概のある子だわ。

 思わずポスりと、コウジュの頭へと手を置いて撫でる。

 今度は顔を赤くしたまま固まり、撫でられるままになっているコウジュ。

 しばらく撫でられるままに頭をふらふら揺らしていたが、ハッと気づいたのか後ずさり睨んできた。

 まぁ涙目で睨まれても全く怖くは無いのだけどね。

 

 ふふ、満足したし行きましょうか。

 

 

 3人となった私たちは、今度こそ龍洞寺を後にする。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 どうも皆さんこんばっぱー。

 色々と実験やら、準備してる間に士郎達による宗一郎氏襲撃の時間が来た。

 

 俺? 俺は勿論高い所に忍んで見てるぜい。

 方法は…まぁ例のアサシンのカードを使ってなわけだ。やっぱハズイね、これ…。

 

 とりあえず俺の事は置いとこう。

 なにせ丁度今始まった所だ。

 

 さてさて、なんで士郎達がこんな闇討ちみたいな事をしてるかというとだな。

 最近この辺りでは謎の昏睡事件が起きてるわけなんだが、それというのがキャスターが力をつける為に生命力(魔力)を集めてるからなんだ。

 そして士郎達は、それを行っているのがキャスターだとは気付いたがそのキャスターのマスターが分からない。

 で、まぁ御都合主義やら、というか俺がイリヤに頼んだ情報提供やらで宗一郎氏に当たりをつけたわけだ。

 けど、まだ確信を持てなかった士郎達は原作の様にガントをかなり弱くして撃って、その反応を見て考えようとなり、結果こんな状況なわけだ。

 もちろん宗一郎氏がマスターなわけだから大当たり。

 そして宗一郎氏に当たりそうになったガントはキャスターが出てきて無効化。

 

 さぁ御対面だ。

 

 一触即発の雰囲気の中言葉を交わす双方。

 キャスター勢は士郎達を言葉巧みに挑発する(あ、これ俺がお願いしたことね。原作の言葉を言ってもらってる)。

 

『葛木! あんたはキャスターが何をしているのか知っているのか!?』

 

『知っているが、それは悪い事なのか?』

 

『あんたって人は!!』

 

『キャスターも中途半端な事はせずいっそのこと命を奪った方が効率も良いだろうに』

 

 っとまあこんな感じだね。

 士郎達の琴線に触れまくりなセリフだ。

 

 おおぉっとここでセイバーが宗一郎氏に斬りかかる。

 しかし、一通り避けた後宗一郎氏の1、2!! 首掴んで地面にドン!でフィニッシュ!!

 セイバーさん吹き飛ばされてダウン!!

 そこに、宗一郎氏の決め台詞。

 

『お前はもう死んd(ry』

 

 ゴメン嘘。

 ホントはこっち。

 

『マスターの役割を後方支援と決めつけるのは良い。だが、例外は常に存在する。私のように前に出るしか能のないマスターも居るということだ』

 

 能が無いって、いやいやそんだけできりゃあ十分でしょ。

 キャスターの補助ありとはいえ、拳で地面砕くし。

 セイバー圧倒した技術とか…ねぇ?

 何あれどこの瞬歩?って感じな件について。

 

 あ、今度は凛が前に出て魔術を使おうと…宗一郎氏が詰め寄って1撃入れちゃった。

 そしてまた――、

 

『いかに優れた魔術師も呪文の詠唱を封じられては打つ手はあるまい』

 

 うん、ごもっとも。

 ってか、宗一郎さん優しくない?

 アニメ見ても思ったんだけど、なんか授業みたいじゃね?

 今はお芝居だけど、原作でも何故まだ殺していない?とか言いながら、対峙した時に本人が殺してないしさ。

 

 確か宗一郎氏の戦闘技術の名前は『蛇』という殺すことを目的としたもののはずだ。

 元々居た組織というか育った環境のせいで感情が無いって設定だったはずだけど、組織の決まりである任務遂行と同時に死ぬという事を自ら止めた位だし、わりと感情あるんじゃないだろうか。

 ただ、感情の出し方知らないだけでさ。

 ものすっごい不器用さんってな感じじゃなかろうかねぇ。

 ま、俺の勝手な考察だけどな。

 実際のとこは俺自身がほとんど会ってないから分からん。

 今回の件の説明は全部キャスターがやってくれたしね。

 

 そうこうする内に、遂に主人公が動き出した。

 士郎以外の二人が倒れてしまっている以上へっぽことはいえ前に出ないといけないのは当たり前だけどさ、エクスカリバーを持ったセイバーを撃退した宗一郎氏に強化しただけの木刀って…アーアー言わんこっちゃない。

 当たり前のように砕かれてんじゃん。

 けど、士郎は咄嗟に投影を行う。

 出てきたのは、干将・莫耶。

 久しぶりに見た気がするね。あの白黒双剣。

 

 士郎はそれを持って―――。

 

 ん? あれ?

 なんか氷のエフェクト出てないか?

 やっぱ出てる!! 宗一郎氏の服が若干凍ってるし!!

 これは予定より早く士郎のレベルが上がってるってことか?

 これはちょいと予想外だぜ。あれはチラッと見せただけなのに。

 

 あ…。

 

 キャスターが宗一郎氏の防護魔術追加した。

 あらま、士郎がアボンしちゃった。

 干将・莫耶と一緒に後ろに弾かれて膝を付く。

 ちょ、キャスターこっち睨まんとって!!

 俺も予想外だったんだからさ!

 こんなに早く徴候が出るとは…。

 

 さておき、そうこうする内にキャスターから士郎に対して交渉が始まった。

 内容は聖杯戦争をしなくても、“ちょっとした”犠牲を出すだけで聖杯を手に入れられるというもの。

 ま、答えは聞くまでもなく分かっている。

 だから、その前に俺はこの場を去ることにした。

 俺は俺でやることがあるからな。

 

 やることというのは勿論、桜ちゃん救出作戦だ。

 実は既に桜っちには会って話をしてある。

 いつの間にと思うかもしれないが、割りと簡単だった。

 あの子、重要人物の割に無防備に一人でいる事多いし。

 あ、ライダーの事は言ってあるよ。

 ちょっとだけだけど、会わせてあげたらすんごい喜んでた。

 ライダー縮んじゃったから色々あったけどね。

 ライダーさんの鼻から忠誠心出そうになってたとだけ言っておこう。

 んで、交渉した後は、ばれないようにする為キャスターに桜ちゃんの交渉内容に関する記憶を消してもらって、後は表面上だけだけど原作に沿わせていくって状態だ。

 そして、俺の仕事はこの後なのだ。

 というか同時進行か。

 キャスターには時間を稼いでもらわないとな。

 

 

 何をするかは…、まぁ、秘密ってことで。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 少し離れた場所に在ったコウジュの気配が消えた。

 どうやら予定通りもう一つの用事を済ませに行ったようだ。

 

 さて、ここからは私の仕事ね。

 これを終わらせれば宗一郎さまとの…うふふ…ゲフンゲフン! と、とにかく頑張らないとね。

 

「ねぇ、私たちと手を組まない?」

 

「なんだ…と…?」

 

 宗一郎様に吹き飛ばされた少年が、何とか立ち上がりながらそう聞いてきた。

 なるほど、コウジュが気にかけているだけの事はあるわね。

 宗一郎様の一撃には私の魔術も上乗せしてあったのに立ち上がれるなんて。

 

 そう内心で感心しながらも表面上は怪しい笑みを浮かべながら続きを話していく。

 

「あなた達の目的も聖杯を手に入れる事でしょう? 聖杯を手に入れる方法が他にもあるって言ったら信じるかしら?」

 

「世迷言を!」

 

「あら怖い。でも、嘘ではないのよ」

 

 脳震盪でも起こしていたのか未だ若干ながらふらついているセイバーも、何とか体勢を立て直しそう言い放った。

 それにしてもセイバーは予想通りの反応ね。

 その正体をコウジュから聞いてはいるけど、伝説とは違って中々に直情的で面白いわ。

 

「どういう…事かしら…?」

 

 ふふ、こっちも予想通りの反応ね。

 コウジュに聞いていたように彼女は敏い。

 魔術師としての興味もあるのでしょうけど、損得を抜きにしてまずは聞きに来た。

 

「殺し合いなんかしなくても、聖杯は召喚できるのよ。私はもう聖杯の仕組みは理解したの。協力するのならあなた達に聖杯の恩恵を分けてあげても良いわ」

 

「どうやって聖杯を手に入れるっていうのよ」

 

「この土地は聖杯を下ろすに足る霊脈を持っている。あとは聖杯の核となるものと、聖杯を維持する大量の魔力さえあれば聖杯の力は手に入るのよ」

 

「結構な話ね。それで、あなたの言う大量の魔力は一体何人の魂を使えば済むのかしら?」

 

 さすがは、と言った所かしら。

 今の話だけでそこまで推測できるなんてね。

 

 とはいえ、実際そんな事する気はもう無いのだけれどね。

 元々死者を出すまではしていなかったとはいえ、人を襲っていたのは真実。複雑な気分だわ。

 はぁ、この短期間であの子に影響されちゃってるわね。

 本来の私ならば切って捨てるものを、今は欲してしまっている。

 

 それから一つ言いたいのだけれど、あなたが言う魔力に関しては、あなた達のところのコウジュのものを使っても可能なのよ? お釣りが帰ってくる位に、ね。なにせ大量の生成が出来なくなっていたとしても元々の純度と瞬時回復量が桁違いだもの。

 ああ、やっぱり理不尽すぎるわね。

 頭がまた痛くなってきちゃったわ…。

 

 しかしそんなことはおくびにも出さずに続ける。

 

「ふふ、そうね…。聖杯を呼ぶだけなら、この町の人間すべてを使えば足りるかしら。けど、十分に運用し続けるには足りないかしらね。

 まぁ安心なさい。幸いにも現世には溢れるほど人間が居るもの。火にくべる薪はいくらでもあるわ」

 

「火にくべる薪…だと…!?」

 

 赤い髪の少年、衛宮士郎だったかしら?

 その子の琴線に触れたみたいね。

 

 当然の結果と言えば当然ね。この子たちみたいなのには許せない言葉でしょうし。

 

「もう一ついいかしら?

 聖杯の核って…魔術師の事よね?

 聖杯に触れられるのはサーヴァントだけだけど、呼べるのはマスターだけ。でもあなたのマスターは魔術師ではないみたいだし、代用品が必要って事になるわよね…? 生贄として…」

 

「生贄!? どういうことだ!?」

 

 本当に優秀ね。教えた者が良かったのかしら。

 素直にそう思う。

 

 そういえば、なんでこの赤い子が既に脱落して、男の子の方が残ってるのかしら…。

 これがコウジュの言っていた『しゅじんこうほせい』というものなのかしら?

 いえ、そもそもコウジュの所為だったわね。ご愁傷様。

 ……少し親近感がわくのは何故かしら。

 

「生贄とは野蛮ね。ただ装置として働いてもらうだけよ? まあ実際にやってもらえば注がれる魔力に耐え切れずに意思というものは消し飛んでしまうかもしれないけれどね。あなた達のどちらかがもう片方の願いを叶えるなんてどうかしら。素敵じゃない?

 

 さて、返答やいかに?」

 

「断るわ!」

「俺も断る!!」

「答えは決まっています!!」

 

 そう、それで良いのよ。

 あなた達はただ突き進みなさい。

 そうしてくれれば私たちも遠慮なく裏で動ける。

 はぁ…。

 でもこの子達を見ているとなんだか眩しくて悲しくなってくるのは何でかしらね。

 

 よし、種はまき終わったしこの辺りで戻りましょうか。

 恐らくコウジュの方もそろそろ準備できているでしょうしね。

 

「あらあら、それは残念ね。じゃあ他の子を使うとしましょう。別にあなた達以外にも一人、ふさわしい魔術師が居るもの」

 

 私の言葉に怪訝な顔をするセイバー達。

 ほらほら、早く思い出さないとどうなっても知らないわよ?

 

 私は宗一郎様に近寄り共に目的地へと転移する。

 

 待ってるわよ。あなた達。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 士郎と凛以外に、ふさわしい魔術師…?

 思考を巡らせようとすると、士郎と凛が同時に誰か分かったようです。

 

「「っ!?」」

 

「まさか・・・」

 

「あいつまさか、イリヤを狙ってるんじゃ…!?」

 

 っ!?

 イリヤスフィールは確かに先程の条件に十分当てはまる!!

 

「セイバー先に行ってくれ!! すぐに追いつく!!」

 

「分かりました!」

 

 士郎の命もあり、私は急いで家へと戻る。

 間に合ってください!!

 そう願いながら、衛宮家へとひた走る。

 

 元々それほど離れていなかったのもあり、家へはすぐに辿り着いた。

 既に深夜なのもあり辺りは静寂に包まれている。

 普段なら夜としては当然のものとして享受していたものだが、いまはただただ不気味なものに思えた。

 

 家へと入り、慎重に、イリヤが居るであろう居間に向かう。

 しかし異変に気付く。

 電気が点いていない…?

 私たちが帰るまで待つと言っていたはずだが、いや、先に寝ただけだろうか。

 もしくはコウジュと共にどこかへ出かけたという可能性もある。

 

 そう思いつつも確認の為、中を見る。

 居ない、か。

 いや、机の陰に隠れてはいるが誰かが倒れるようにそこに居る。

 慌てて駆けよれば、倒れているのは桜だった。

 まさか、襲われた後!?

 

「桜! 桜無事ですか!?」

 

 剣を置き、慌てて桜を起こす。

 呼びかけるが彼女の反応は無い。

 外傷はないようですが、まさか魔術的な何かを…!?

 眠るように静かではあるが、これだけ呼びかけても反応が無いのはおかしい。

 自分では彼女の状態を詳しく知ることも、対処する方法も思いつかない。

 どうするべきか、どう動くか考える。

 

 その時――、

 

 

 

  トスッ―――。

 

 

 

 

 私の胸元で軽く何かが当たるような感覚と音が聞こえた。

 

「え…?」

 

 目線を落とすと、刃が何度も曲がった歪な短剣が私の胸に刺さっていた。

 そして、その短剣を持つのは、桜だった。

 一体どういう…?

 思考が定まらない。

 

「ふ、ふふふ、ぬかったわねセイバー」

 

 桜から桜の声ではない声が響く。

 この声は先ほどまで聞いていたものだ。

 

「キャスター!」

 

 慌てて桜から離れる。

 だが次の瞬間、身体から何かが切れる感覚がする。

 同時に、離れた瞬間手に取っていた聖剣が何故か重くなった気がした。

 

「何をした!」

 

 私の問いに、(キャスター)はゆっくりと立ち上がり、普段の彼女からは考えられない妖艶な笑みを浮かべながら短剣を掲げるように私へと見せる。

 

「この宝具はあらゆる魔術契約を無効化する我が宝具、『ルールブレイカ―』よ」

 

「ルール…ブレイカー……」

 

「この子の魔力ではサーヴァント契約までは破棄できなかったけど、あなたの宝具は封じる事ができた。あなたはもう聖剣を使うことはできないわ」

 

 先程の何かが抜ける感覚はそれか。

 抜かりました…。

 次に何かしてきても即座に対処できるよう聖剣を握る力を強くするが、やはりどこか握り慣れたはずの愛剣が遠くに感じる。

 

「ふふ、この子は頂いていくわよ」

 

「待てキャスター!!」

 

 そう言い残し(キャスター)は影へと飲み込まれ消えていく。

 追いすがろうとするが、先程の言が正しければ、あの桜は操られているだけの本人だ。

 一瞬そう考えてしまい、その隙には影も形もなく消えていた。

 

 不甲斐無い…。

 

 そう、一人悔いていると玄関の方から人の気配が入ってくる。

 

「「セイバー!!」」

 

 どうやら士郎と、凛が着いたようですね。

 私は居間から出て、二人の元へと合流する。

 

「すみません、油断しました…。桜がキャスターに……」

 

「でもなんで桜が?」

 

「…まさか桜がなんて」

 

「遠坂、何か心当たりがあるのか?」

 

 私の一言に凜が一瞬、悲しさと後悔を織り交ぜたような表情となった。

 それに士郎も気づいたのか、凜へと問うた。

 士郎の問いに凜は逡巡し、やがてゆっくりと口を開いた。

 

「桜はね、元々の生まれが魔術の家系なのよ…。だから、素養はあるんだと思う」

 

 そもそも何故キャスターは桜を攫ったのだろうか疑問だったかがそういうことだったのか。

 

「じゃぁあ早く助けに行かないといけないじゃないか! キャスターが言っていた通りなら桜は!!!」

 

「分かっているわ!! でも…、でもキャスターは、恐らく自らの工房で陣取っている。並大抵では救出できない」

 

 ギュッと、音がするほどに手を握り込む凜に、士郎は続けて言葉を出すことが出来なかった。

 

「士郎、凜。今のあなた達に言うには酷ですが、先程キャスターの宝具によって私の聖剣は封じられてしまいました。申し訳ありません。だから、キャスターの元へと行くならば白兵戦を前提として頂かなければなりません」

 

 今の二人に、更なる絶望を叩き付けるようなこと場を言わなければならなかった自分が腹立たしい。

 

「それでも、桜を助けに行くことには変わりない」

 

 暗く重い雰囲気の中、それを振り切る様に士郎が力強くそういった。

 そんな士郎を凜はキッと睨むように見る。

 

「あんた魔術師の工房に突入することがどれだけ危険か知らないの!? それもただの魔術師じゃない。キャスターとして召喚されるほどの魔術師の英雄よ!!?」

 

「でも、ここで桜を見捨てるなんて選択肢は無い筈だ」

 

「それはっ!! でも…」

 

 凜の強い言葉に、士郎はそれでも揺るがない

 逆に凛の言葉が小さくなっていく。

 

「しかし士郎、無策で飛び込んでも意味がありません。キャスターというクラスは確かにサーヴァントの中では比較的弱いクラスとされていますが、それは条件次第です。陣地作成で創られた拠点内では英霊たる真価を発揮するでしょう」

 

「…これを使うよ。ここで使うべきだと思うから」

 

 そう言いながら、士郎は一枚のカードを出した。

 

「出来るか出来ないかじゃなくて、やるって気持ちが必要だって教えてもらったから、俺は自分に正直に言うよ」

 

 士郎は私と凜を、意志が強く籠った目で見ながら言う。

 

 

 

「行こう。桜を助けに」

 

 

 




いかがだったでしょうか?

いやー、なんだか私がセイバーを書くとポンコツさんに見えるかもしれないですが、ちゃんと最優のサーヴァントさんです。
ポンコツに見えるのは私の表現が悪いだけです。
なにせ、最優のサーヴァントですから!
だから器用貧乏とか言っちゃだめですよ!!

というわけで、次回は神殿内での戦闘となります。
コウジュの影が薄いような気がしますが、ちゃんと仕事してますのでご安心ください。

ではでは、ぐっどにゃっく!(ハマった

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