テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
遅くなりましたが次話となります。
そしてこの話は、タイトルからもお分かりかもしれませんが、ifの話となっております。
そして書きたかったシーンを飛び飛びで書いているため原作必読になっております。
ご了承くださいませ。
では、どうぞ。
「はぁ!? よりにもよって私にあの世界に行ってこいですって!?」
「うん」
新年早々、炬燵に向かい合って入っているのはイリヤとコウジュだ。
場所はとある世界に産み出したマイルームだ。
そして今日は、コウジュが言うところの1月1日、元日だ。
ここ最近の二人はそれぞれ別の
というのも、イリヤを始めコウジュの眷属となった者達はそれぞれがコウジュの手伝いの為に別々の世界で活動を行っていた。
コウジュのサポートとして共に出向くもの、コウジュの代わりに活動する者などそれぞれ動き方は違うが、誰もが眷属としての使命を全うしようとしていた。
そんな中、コウジュがお正月を祝おうと言い出した。
一応毎年行ってはいるが、今年に限っては類を見ないほどの忙しさにそれも無いかと思われた。
しかしコウジュは少しでも良いから皆でお祝いしたいと言い出したのだ。ぶっちゃけ会いたいと。
とはいえそれぞれが全く別の世界に居て、それぞれ使命があるわけでそう簡単に集まれるわけもなし。
それに世界を越えるのにもそれなりの労力も必要だ。
だがそこでコウジュの能力が役立った。
それぞれの世界にそれぞれのコウジュが行く。ただそれだけ。
詰まるところの力業であった。
そんなこんなで、今現在眷属達はそれぞれ別だけども同じコウジュと共に御節を食べているところだった。
ただしイリヤだけは、コウジュとゆっくりと過ごすためにさっさと世界を救い、使命を果たしたあとだ。
召喚勇者に頼るテンプレート感あふれる世界であったのだが、他に召喚されたひよっ子どもはさておき、魔王を銀糸で縛って吊し上げ、裏で色々画策していた王をやはり吊し上げ、嫁になれどうこう言って来た奴らも全裸で縛り上げ、何だかんだあって世界は救われた。イリヤを女王様と呼びながら
さておき、誰に似たのやら半ば強引に世界を救い上げた
そして暫くコウジュと雑談を交わしながら御節を突いていた訳だが、流れで次の世界についての話になった。
それへの返答が冒頭の一幕というわけだ。
「いろーんな意味で私が行くのはまずいのだと思うのだけれど?」
胡乱な目でコウジュを見るイリヤ。
コウジュはイリヤに苦笑する。
コウジュとて分かっているのだ。今言ったことがイリヤにとってどれほど避けたい事か。
しかしコウジュも考えるに考えた末での結論だ。
故にもう一度、告げる。
「頼むよイリヤ。それが一番丸く収まりそうなんだ。だから
「いーやっ!」
幾らコウジュの頼みとて、イリヤにも聞けないものはある。
イリヤはフンッと、顔を横へ向けた。
プリヤ―――、正式には『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』のことだ。
その作品は俗に言うスピンオフ作品というやつだ。
主人公はタイトル通り、イリヤ。
そう、
内容としては、stay nightの平行世界が舞台となっており、登場人物の名前や性格などは概ね似通っているが、その漫画のストーリーなどは全くの別物となっている。
例えばイリヤは、原作では18歳となっているがプリズマ☆イリヤでは10歳の小学生だ。誕生日すらも11月20日に7月20日と違っている。
当然ながら性格も別物だ。
それでも、両方ともが“イリヤスフィール・フォン・アインツベルン”なのだ。
だというのにコウジュは、イリヤにイリヤのもとへ行けという。
しかもだ。
タイトルにあるように、プリズマ☆イリヤとは魔法少女ものだ。
端的に言えば幼い自分が魔法少女な格好をして飛び回っているところを見に行けと言っているのだ。
ぶん殴られてもおかしくない事案である。
そんなイリヤの心情も分からないでもないコウジュだが、それでもイリヤにお願いする理由があった。
コウジュはイリヤの目をまっすぐ見ながら、訳を話しだした。
「そりゃイリヤの気持ちもわかるよ? むしろ俺自身が行きたいさ。プリヤ世界のイリヤも“イリヤ”なんだから、救いたい」
「むぅ、その言い方は卑怯だわ」
コウジュの言葉に困ったように照れるイリヤ。
それを見てコウジュは微笑む。
「でもそれが問題でさ。俺の戦闘スタイル的に、イリヤが苦難に立ってたりイリヤが目の前で強敵にやられてたりするとつい色んな
「・・・・・・うん、嬉しいけど、やめて?」
「でしょ?」
ニコニコとしたままそんなことを言うコウジュにイリヤは先程までの嬉しさはそのままに、全くこのバーサーカーはと頭が痛くなる思いだ。
だが実際にコウジュがプリヤ世界に行った場合そうなることは請け合いだ。
何せ既に、イリヤを真に救うためにと世界へ喧嘩を売ったことがあるのだから。
イリヤはそれを身に染みて分かっているため、コウジュの言葉が現実化してしまう事もよく分かっている。
最悪の場合、縁を結んだサーヴァント全員で制圧するなんてこともやってしまいそうだと、心の中で想像したイリヤはその脳裏に浮かんだ映像をかき消すために首を横へ振った。
「ええ、ええ、あなた自身が行かない方が良い理由は分かったわ。でも助ける時は何が何でも助けようとする理由には少し遠いわね」
そう、イリヤが言うようにコウジュは、
世界に遠慮できるような存在ならばそもそもが周りの人々ももっと精神を疲弊させるようなことは無いだろう。
無理も道理もすっ飛ばして、不幸なんぞ蹴飛ばして、ハッピーエンドを掴み取るのがイリヤの知るコウジュだ。
だからこそ、今コウジュが告げた理由は少し弱いと感じた。
そんな思いで聞いたイリヤに、コウジュがあはは・・・・・・と目を逸らす。
「いやまあもう一つ介入する方法を考えたんだよ。それならプリヤ世界のイリヤに助力しつつ、最悪の展開にはならないかなっていう方法」
「あら、それはいい事じゃない。あなたがそんな方法を思いつくだなんて意外だけど」
「おい俺がバーサーカー気質だからって何でもかんでも力づくで解決してるって思うんじゃないよ」
「違うの?」
「違いますー」
「否定するのなら私の目を見て言いなさいよ。それで、そんな良い方法を思いついたのに実行しない理由は?」
「・・・・・・・・・・・・が嫌がりそうだったから」
「え?」
「イリヤが嫌がりそうだったからだよ! 2度言わせんな恥ずかしい」
「え? 何なの襲ってほしいの?」
「おいやめろ近付くなそういう意味じゃないみぎゃぁ!?」
気づけばイリヤの銀糸で絡め取られ、そのままイリヤの膝の上へ座らされるコウジュ。
今は部屋着代わりのジャージなコウジュの為、バリケード代わりにもよく使われている帽子も無いのでスポッと捕獲された。
「ふふふ、それで理由は?」
「まったく、自分で話の腰を折っておいてよく言うぜ・・・・・・」
拗ねるようにして口を尖らせるコウジュ。
しかしイリヤとしてはそんなのも可愛いだけなので役得だ。
とはいえそのままでは全く話が進まないのも事実なので、改めて促す。
「もう一つ思いついた方法はな、俺自身の力をクラスカードとして割り込ませる方法さ」
「駄目よ」
「ほらみろ」
「だって、それってあっちの私があなたと合体するってことでしょう?」
「言い方! 言い方に気を付けて!? ・・・・・・まあ、イリヤはそう言うと思ったからこそ止めたわけだけどさ」
クラスカード、それはプリヤ世界に於いての重要なファクターだ。
聖杯戦争に於けるサーヴァント、その代わりにプリヤ世界で英雄の力を顕現させる謎の
stay night世界と同様に、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーに分けられたそれらを確保し、その力を使って問題を解決するのがプリズマ☆イリヤの主軸となる。
その中でもバーサーカーのカードへとコウジュ自身の力を割り込ませるという話なのだが、それが分かったからイリヤは拒否を示した。
隙あらばコウジュをいただこうとするイリヤとしては当然看過できるものでは無いからだ。
だから、コウジュが告げると同時に間髪入れずに拒否したわけだ。
しかしそうなると、やはり自分が行くしかないのかとイリヤは溜息を吐く。
「はぁ、そういうことなら仕方ないわね。ちなみに他の子達にしない理由は? 別件で動いているからというのもあるだろうけれど候補からは外しているのでしょう? 一応聞いておくわ」
仕方がないと諦めに近い形でだが納得してくれたイリヤに、コウジュはほっと息を吐いてから答えた。
「まずウカノは戦闘スキルがほぼ無いから却下。魔法少女ものと言いつつガチ戦闘系世界だしね。白レンは戦闘能力が高いけど隠密行動している途中でうずうずしちゃってちょっかい掛けるに決まってるから却下」
「アルは?」
「あの触手娘をぶち込んでみなよ。一瞬で18禁世界になるわ」
「あー、そうかもね」
アルとは、コウジュがGate世界で眷属化した元蟲獣の少女だ。
見た目の参考にした某ゲームヒロインの名前をそのまま貰ってアル・アジフと名乗らせているが、その本質は蟲獣時代のものを残しているため、隙あらば人をR18G的意味で襲おうとする。
しかし年月を経て人に近い心が生まれ、コウジュ達の協力もあり人を食べたりということは許可が無い限りしなくなった。
とはいえ元の本能自体は変えられないため、気付けばグロが抜けてR18的な意味で人を襲おうとするようになってしまった。
本人曰く、気持ち良くするから許してとのことだ。
ダメです。
「うん、やっぱり私が行くわ。私ではない私とはいえ、小学生の内から変な嗜好に目覚められても困るし」
「イリヤに頼む理由分かったでしょ?」
「ええ、よーく分かったわ」
ニヘラと笑うコウジュに、やれやれとイリヤが頭を振る。
そこでふと、イリヤは気になったことがあった。
「そういえばどうして今更あの世界に介入することにしたの? 前は止めたのに」
「ああそれね・・・・・・」
イリヤの質問に言い淀むコウジュ。
イリヤから見て何やら遠い目をしだした。
「簡単に言えば神友から頼まれたんだけどね」
「しんゆう・・・・・・?」
「神様友達ってことさ。それでその子っていうのが魔法少女を主に助ける神様をやっているんだけど、自分で対応したいけど悪魔になった友達に貞操を狙われていてその対処にいっぱいいっぱいで少し手が届かないそうだから代わりに御願いってメールが来てね」
「色々ツッコみたいけど、聞いたら後戻り出来無さそうだからやめておくわ」
「そう?」
「ええ」
・
・
・
「なあイリヤ、お姉さんって居たっけ?」
「え、居ないけどどうして?」
イリヤが登校してすぐ、授業の準備をしていると前から特に仲の良い友達4人がいつものように話しかけてきてくれた。
いつもの流れで挨拶をした後、友達の一人である見るからに活発そうな少女、
しかし生まれてこの方姉など居た記憶は無い。
姉のようなメイドさん達は家に居る訳だが、メイド達の事をこの面々は知っているため今は関係ないだろうことは分かる。
だから全く質問の意図が分からないイリヤは只々首を傾げた。
すると今度はメガネを掛けた少女、
「ほら見ろ見間違いだって言ったじゃんか。いやな、龍子が昨日商店街でイリヤをそのまま大きくしたような美人さんを見たっていうんだよ。でもイリヤからそんな話を聞いたことないし、気のせいだって言うんだけど聞かなくて」
「そうなんだよー、登校中もずっとそればっかりでねー」
雀花の言葉に続けて言うのは、常に目を眠そうに細めている
そんな二人に龍子が反論する。
「でも滅茶苦茶似てたんだよ! イリヤをそのままあだるてぃっくにして、ぼんきゅっぼーんにして、そんでもってぽややんとした部分を抜き取ればその美人さんなんだって!!」
「待って龍子わたしのことぽややんとか思ってたの!?」
自身を大人にしたような女性よりもぽややんと呼ばれたことにショックを受けるイリヤ。
しかしイリヤの上げた声を聴いて4人全員が目を逸らしたため思わず泣きそうになる。
「ま、まあまあイリヤちゃん、それよりもイリヤちゃんそっくりの美人さんってびっくりだよね!」
大人しげな雰囲気のショートヘアな少女、
イリヤも、すこし蟠るものが残るがそこに拘っていては話しが進まないため改めてその謎の女性について考える。
まず可能性として考えられるのが自身の母だ。
イリヤの母、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。
その容姿はまさしくイリヤ自身を大人にし、スタイルをよくしたような姿である。
だが、イリヤにとってそれこそアイリスフィールは天真爛漫を絵に描いたような性格をしている。
ぽややーんと表現したくはないが、そう言われても仕方ないようなことをしでかしているのは事実であった。
だから龍子が言うような女性とは少し違う気がした。
「あ、なら親戚とかは!? この前のクロエとか言ってたのもイリヤの色違いって位に似てたじゃん!」
「く、クロかぁ・・・・・・」
龍子が思いつくままにした質問に、美々たちが少しばかり頬を赤らめる。
それはほんの数日前に起こった珍騒動が原因なのだが、そんな彼女らと反対にイリヤは内心冷や汗をかく。
というのもクロエと呼ばれた少女の正体が、あまり公に出来るものでは無いからだ。
一応、対外的に親戚ということにしているのだが当然そうではなく、現状はイリヤにとって目の上のたんこぶ的存在なのだ。
そんな話をしていると、始業を伝えるチャイムが鳴った。
「おっといけねぇ! 続きは後でな!!」
「モヤモヤは残るが仕方がないな」
「だねー」
「み、皆急いで! 先生が来ちゃうよ!!」
声の割にあまり急いでいない3人を美々が急かす。
イリヤのすぐ横の席である美々に対して、残り3人は少し離れているからだ。
しかしその3人も、不承不承ながらそれぞれが席に着いた。
そんな中、ずっと沈黙を保っていたすぐ後ろの席に座っている少女、
「ひょっとしてクロエみたいに何かが起こったのかもしれない。あとで少し話を」
「うん、私も気になるし」
・
・
・
絶望が、溢れた。
神話が、顕現した。
それを表現する方法は数あれど、ただ分かるのは圧倒的な死の露出。
「馬鹿な、何ですかあのバケモノは・・・・・・。あれが英雄だとでも言うのですか・・・・・・?」
魔術協会からカード回収を命じられた女性、バゼット・フラガ・マクレミッツ。
紅い髪を短く切りそろえ、男物のスーツを纏った歴戦の魔術師だ。
そんな彼女が、驚愕の声を上げながら眼前の景色に戦慄する。
そこにあるのは成れの果てとでも言うべきものだ。
条件さえ揃えば、英雄とすらも戦闘可能な武闘派。
それは人間のままで容易に辿りつける様な領域では当然ない。
そんな彼女を以てしても、
山をも越える巨体。
周囲を圧して止まない魔力。
そしてなによりも、誰に向けられるでもなく撒き散らされている悪意。
対英雄? そんなものが対処できるレベルのものでは無かった。
「――――――」
その化け物から、何かが聞こえた。
地面が震える。
月の光が陰る。
山よりもなお大きい怪物が、その身に見合った剣を振り上げていた。
『薙ぎ払いが来ます! イリヤさん上空に!!』
イリヤの持つステッキが慌てて声を出す。
しかしそんな声も届いてるのか、届いた上で聞こえないふりをしているのか、イリヤはただ眼前の怪物を見上げたまま動かない。
「何してるのイリヤ!? 早く逃げなさい!!」
「しかし何処へ!?」
続けてクロエがイリヤに叫ぶが、もう遅い。
バゼットが言うように、既に剣は
「美遊も、こんな気持ちだったのかな・・・・・・」
そんな中でも、イリヤは短くも濃厚なここ最近の事を反芻しながら呟く。
それは非日常に触れてからの日々。
まるで走馬灯のように思えるその回帰の中で、燦然と輝く記憶。
自身の代わりに、唯一人強敵に立ち向かった友達。
「やっぱり、こんなの駄目だよ」
「何を言ってるのイリヤ!! もう遅――」
「遅くない!! このまま終わらせてなんか上げないんだから!! 力を貸してサファイア!!!」
『は、はい!!』
―――ツヴァイフォーム―――
「ふーん、やるじゃない私」
・
・
・
「まさか本当に倒してしまうとは!!」
「ええでも・・・・・・」
ツヴァイフォーム、二つの魔術礼装を平行起動することにより得た力。
それはあくまで代償が要るインチキでしかない。
だから、痛覚共有を通じてクロエに流れ込む痛みは想像を絶するものだ。
その身を引く裂くような、神経を鑢掛けされるような、唯の少女が耐えられるようなものでは断じてない。
それを唯の気力で押さえつけ意識を繋ぎ止めるイリヤは、やっと救うことのできた友達へと笑みを向ける。
「イリヤ・・・・・・」
「美遊、ごめんね」
「え?」
「私分かってた。美遊が何かとても大きな秘密を抱え込んでるって。でも今の日常を壊したくなくて、怖くて、踏み込んだらもう戻れない気がして、聞けなかった」
「そ、それは――――」
「でも私はもう逃げないよ。だって美遊が苦しそうにしてるんだもん。友達が苦しそうにしてるんだから、もうほっとかない。美遊は大事な友達なんだから」
「イリヤっ」
イリヤの言葉に、前が見えない程の涙を流す美遊。
そんな美遊を、唯優しく、抱きしめる。
それだけでイリヤの身体は悲鳴を上げるが、知ったことではない。
たった今後悔をしない為に動くと決めたところなのだから。
そんな思いを、踏みにじろうとする者が居た。
轟音、否、それは雷鳴であった。
『!!?』
そこに居た者全ての視界を染め上げる程の閃光。鳴り響く轟音。大地を穿つ雷。
それらは確実に殺意をもって放たれたもので、しかしながら何故かイリヤ達を前に、壁に弾かれたようにそれて行く。
「おっかしいなぁ、殺すつもりで撃ったんだけどなぁ」
「おい命令違反だぞ。溢れたらどうする」
「はいはい、分かってますよー」
呑気な声がその場に響いた。
それに対し、感情の乗らない声が続く。
土煙の中から、二つの影が出てくる。
金属の塊とも言える大槌を構えた赤毛の少女。そして黄金の鎧を身に纏い、ブロンドの髪をそれぞれの側頭部で分けた女。
イリヤにはその二人が何者かは分からない。
けれど、唯一つだけ分かるのは、たった今悪意をもって放たれた雷はこの二人のどちらかが原因であるという事。
「さあ、帰りますよ美遊お嬢様」
「いいえ私は帰らな―――」
「あなたの意見は聞いておりません」
黄金に身を包んだ女が美遊へと話しかけた。
いやそれは話しかけるというようなコミュニケーションではない。
唯の通告であった。
そしてその言葉の通り、美遊が何かを言い掛けたっと思った次の瞬間には、イリヤのすぐ傍から美遊の姿は消え去っていた。
突如消えた美遊の姿に困惑していると、探していた相手は既に、黄金の女の手によって捕えられていた。
「美遊!?」
「イリヤ!!」
二人は互いに手を伸ばす。
けれど、イリヤは満身創痍な為にもう一歩たりとも動くことは出来ず、美遊は女の手によってそれ以上進むことは出来なかった。
「もう良いぞベアトリス」
そんな二人を感情の乗らぬ瞳で見た女は、無情にも沙汰を告げた。
それに喜々として横に居た少女が笑みを浮かべる。
「漸くか!!」
少女の身には不釣り合いなほど肥大した右腕。
その豪腕に握られた巨大な槌が、雷を放出し始める。
それを見て慌てる美遊。
美遊でなくともその雷の脅威は見て取れる。
だが美遊だけは分かっていた。
この二人の目的が自身であることは。
だから懇願するように、美遊がベアトリスと呼ばれた少女に言う。
「待って! 戻るから!! だから皆は―――」
しかし無情にも、遅かった。
「もう遅いゾ☆」
少女が言うなり、臨界に達した槌から辺りを喰らい尽くさん勢いで雷が放たれた。
その雷に巻き込まれれば死ぬのは必至。
しかし放たれる先に居る者達は既に動くのも難しい。
その先頭に居たイリヤは、その迫りくる雷光に成す術もなく飲み込まれる運命を受け入れざるを得なかった。
「この辺りが、潮時かしら?」
雷がイリヤ達に当たりそうになる瞬間、響いた声が早いか、彼女たちを包むように幾本もの糸のような物が編まれた。
いかがだったでしょうか?
飛び飛びの内容となってしまい申し訳ありませんが、もし私がプリヤ編を書いた場合の導入のようなものというのが今話となります。
漫画で言う所のツヴァイ1巻と2巻の間から始まり、ドライに至るまでを書いた形になります。
本当はもっと戦闘シーンとかも入れたかったのですが、それを入れ出すと1話に収まりそうになかったので導入だけといった感じで書かせて頂きました。
こんな形で書くのはにじふぁん時代以来だったので何とも不思議な感覚でしたね。
さておき、お気づきの方はお気づきだと思いますが、タイトルはFGOでのプリヤコラボイベントでのものをもじって使わせて頂きました。いつ復刻してくれるのでしょうね(遠い目
そんな今話ですが、書いたのは気分転換というのもありますが、感想で何度もプリヤ時空へ行ってほしいという声を頂いたからというのが大きいです。
その度にもし書いた場合の展開はどうなるかと妄想したものですが、すこしばかりでもそれを形にしてみたくなりました。
原作で言えばここからが更に熱くなるという所ですが、それこそこの先は行ってしまうと戻れなくなると思いますので、もし頂けるならば今話の反響などを踏まえて考えたいと思います。
それでは皆様、次回は本編の続きにてお会いしましょう!
ではでは!!
P.S.
「「「例え生まれた時は違えども・・・!!」」」←全員イリヤ
とか思いながら書いてましたw
とりあえずイリヤ成分を補充したかったんです!!