テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
昨日お待ちいただいていた方ほんと申し訳ありません。
昨日upするつもりでしたが色々することが派生してしまい今日になりました。
一先ずどうぞ。
「へぇ、つまりコウジュは元々人間だったのか」
「そうなんさ。んでまあ色々あって戦争やら何やらがあったんだけど、信仰を集めるに至って神になったんだよ」
「・・・・・・物騒な言葉聞こえたけど聞かなかったことにするからな?」
椅子に座り足をぶらぶらとさせながら笑って言うコウジュに俺は苦笑いだ。
近接戦闘特化な神様が参加する戦争とか物騒すぎるんですけど!?
いや近接特化なのは今の状態だけか・・・・・・。
それでも戦争という単語だけで生半な経験ではないことが窺い知れる。
「東京に居た頃はそこが異世界と繋がって日本対異世界の戦争になったこともあるし、ホント大変だったんだよ」
「待ってホント待って、とりあえず聞きたいんだけど東京に居たこともあるってどういうこと? 俺が知ってる東京と違う。そんな物騒なこと起こってなかった筈だけど?」
聞かなかったことにすると言って舌の根の乾かぬ内に聞いちゃったわけだが仕方ないだろう。
嫌なことに引きこもりだった俺はリアルタイムでそれらのニュースを見ることが出来る環境に居たから見逃すことは無い。言ってて悲しくなるが。
ともかく俺が知っていた東京では、まあ物騒な事件が起こったりもしていたが、ファンタジーなのかある意味現実的なのか、そんな世界中を巻き込みそうな事件は起こってはいない。
ということは、だ。
フィクションでは定番のアレなんだろうな。
「カズマならよく耳にするんじゃない? 平行世界概念ってやつ。厳密には違うらしいけど、そんな感じ」
「そうだよな。ああ、これで安心・・・・・・できるかぁ!!」
ついホッとしそうになったけど、物騒なことがどこかで起こっていたのには間違いない。
今ここに居る俺がそれに巻き込まれるわけではないとしても、俺が居た地球と違って異世界は油断ならないということだ。
そもそもこの世界も魔王の脅威に脅かされている訳だが、そこはほらファンタジーということで誤魔化されていた部分がある。
しかしいざ自身にとって身近な地名が戦争の脅威に晒されたと目の前で言われてしまえば気にもなるというものだ。
「えぇ、カズマが聞きたいっていうから教えたのに」
ぶぅぶぅと言わんばかりに口を尖らせるコウジュ。
そう、確かに俺はコウジュに聞きたいことがあったから質問をした。
ただしそれは異世界生活についてであって、どこどことドンパチやったとかを聞きたいわけではない。
アクアに比べてまともかと思ったが、こっちはこっちで聞けば聞くほどやばい臭いがしてきた。藪をつついて蛇は出したくない。
出来れば、元は人間だったということだし、サブカルチャー関連も好きみたいだからその辺りのことを聞きたかったんだけどな。どうして転生させるために幼女化させる必要があるのかとか。あと、一人称が"俺”なこととか。
しかし、やはりとでもいうべきかこれ以上聞くと余計なことまで聞いてしまいそうだし一旦置いておこう。
時間はまだまだある。
そう決意したと同時に、近くの扉が開きそこからアクアが出てきた。
その扉の向こうは所謂トイレなのだが、アクアは別にトイレに行っていたわけではない。
アクア曰く女神はトイレとかいかないそうだ。ゲロは吐くけど。
さておきそんなアクアは、悔しいかな艶やかに湿った髪をタオルで拭きながら出てきた。
そう、アクアはシャワーを浴びてきたのだ。
いや待ってほしい。
トイレと言っておいてシャワーを浴びて出てきただなんて俺でもおかしな表現だとは思う。
勿論ユニットバスというオチでもないし、水洗トイレでしかもその水でシャワーしちゃったわけでもない。アレなやつだけどトイレの女神というわけでは無い筈だ。
これは偏に、コウジュの能力のお陰なのだ。
コウジュはそれを、『マイルーム』と呼んでいた。
どうやらそれは、扉一枚あればどこからでも入れる文字通りコウジュの部屋なのだそうだ。
何やらカードを使っていたが、選択した扉を起点に次元をずらしてマイルームは作られるらしい。何それめっちゃファンタジー。
ちなみに中はそれほど広いわけではないが、それでも一人暮らしするには十分な設備が整っていた。
機械的な、ともすれば近未来チックな仕様のその部屋は今居るファンタジーな世界とは相反する様相をしているんだけど、あれはあれで絶妙に男心をくすぐってくれるものだった。
初めて部屋に入れて貰ったときは、女の子の部屋ということで結構ドキドキしたもんだ。ぬいぐるみとかあったし。
でもコウジュの見た目に反してファンシーなのはぬいぐるみぐらいで、あとは機能的というか、どちらかというと男の部屋みたいな感じだ。もしくはショールームみたいなあっさり系。
あ、でも一番奥の部屋だけは絶対入っちゃダメって釘を刺されたっけ。
まあ服とか収納しているって話だったし、案外可愛い服とかコスプレとかあって恥ずかしがってるのかもな。コスプレに関しては有るなら見せてほしいが。
とかく、アクアはその
そんなアクアが、こちらへと話しかけてくる。
「何々何の話? 私も混ぜなさいな」
「そんな大層な話じゃないっすよ。俺の経験について軽く話した位」
「え、経験人数とか?」
「何の話ですかね!?」
「ん? 転生させてきた人数じゃないの?」
「・・・・・・ま、まぁ、そんなところっすね!!」
あ、このロリ女神耳年増系だ。
「あとはなんだ、俺がどうやって神になったかとか」
「ふーん」
アクアはそこまで聞いて特に興味は無くなったのか、髪を拭いていたタオルを畳んで置いたあとコウジュが少し前に人数分用意してくれていたジュースの一つを手に取り飲み始めた。
ゴクリゴクリと、見た目は美少女なこともあって非常に絵になる。なってしまう。
「かーっうまい!」
「おっさんか」
でもやっぱり残念女神なのでこんなもんだ。
やれやれだぜ、なんて思わず首を横に振ってしまう。
――――ゴーン、ゴーン、ゴーン――――
「っと、もうこんな時間か行ってくるよ」
辺りに鐘の音が響いた。
するとコウジュは慌ててそう言いながら出口へと向かった。
「行ってらー」
「行ってきまー」
いつの間にかベッドに寝ころびながらアクアは、コウジュの部屋から持って来た漫画を読みながらコウジュの方へ向かずに声だけ掛ける。
コウジュもどうやらそれに慣れたものなのか、特に気にもせずそのまま出て行った。
斯く言う俺も気付けば慣れたもので、いってらーと自身もコウジュに言って、皆が飲み終わったコップを洗う為に炊事場へと――――――、
「―――ってこれ主夫やないかい!!!!!!」
思わず声を荒げてそう言ってしまった。
勿論コップを割ってはいけないので静かに置いた後にだが。
いや待て待て待て待て!
俺はこの世界に何をしに来た?
冒険だろう!?
なのに何で異世界に来てやることが主夫なんだよ!!
ついついここ数日なりきってしまっていたが、炊事、洗濯、掃除と、今日もやりそうになったわこんちくしょう!!
「もう何よカズマ煩いわねー。先に言ってくれれば避けるんだから先に言ってよ。ほら、掃除するなら早くしてよねー」
そう言ってのける駄女神に目を向ければ、手に持った漫画は離さずに読んだまま、窓際に置かれたテーブルへと移動して読書を再開した。
良い御身分なもんで・・・・・・いや女神だから身分は高いのか? ともかく俺の気も知らないで呑気に日向で漫画を読むのを再開させやがった。
俺はズン、ズン、と近寄りアクアの手から漫画をかっぱらう。
「あ、返してよカズマ! 今良い所なんだから!! 仲間に裏切られた伍長がそれでも過去の楽しさを忘れられずナイフと拳銃だけで敵のアジトへ乗り込む所なんだから!!」
「え、何それ気になる・・・・・・ってちっがーう!!! おい駄女神!! おかしいだろうこの状況!!!」
「何で?」
「何言ってるのこの子みたいなその顔が何でだよ!!」
まるで俺がおかしなことを言っているかのような表情をするアクアに言い返すがそこでふと思い出す。
そうかそうだった。
この駄女神、そういえば知力が低いんだった。
それを思い出し、俺は冷静になるべく一呼吸を置いた。
「あのなぁアクア。俺達が冒険者になった理由ってなんだ? 魔王を倒す為なんだろう?」
「・・・・・・おお!」
結構な間があったぞ今。
こいつガチで忘れてやがった。
とはいえ自身もつい忘れていた側なのであまり強く言えないのも確かだ。
「あれ? でも最初は私達も働いていたわよね」
「って言っても冒険者っぽい感じじゃなくて土木工事だったけどな」
「けど働いていたのは働いていた筈なのに・・・・・・どうしてこうなったの?」
「ぶっちゃけて言えばコウジュが過保護な所為だな」
事の発端は冒険者登録をした次の日の事であった。
まず冒険するに当たって装備を整えるということになった。
しかしその為にもお金は必要だ。
勿論最初はコウジュが代わりに出そうかと言った。
しかし冒険者登録料すらコウジュに任せた手前、これ以上は借りられないと俺はそれを断ったのだ。
となると当然自分で稼ぐしかなく、アクアと共に日当が良い土木作業に従事することとなった。
しかしいくら日当が良いとは言っても、装備品というのは命を預ける物だけあって低ランク装備であってもそれなりの値段がする。
更に言えばそれだけの為ではなく一日一日の生活費というものの確保が必要となってくる。
先ずは住む場所の確保だ。
最初は初級冒険者がよくするという馬小屋生活をすることになったのだが、どうもコウジュ曰く臭いとかの五感が結構鋭いらしく馬小屋の臭いに耐えられなかった。ここに居るならどこかの屋根の上の方がマシだと涙ながらに言われてしまえば無理に住んでもらうわけにもいかない。住んでる人には申し訳ないけどと枕詞に入れるあたりで頭を撫でそうになったのは内緒だ。
さておきそれなら仕方ないと住む場所だけは別にしていたのだが、いつからかアクアはコウジュが自分で取った宿に押しかけて馬小屋に帰ってこなくなってしまった。
何を迷惑を掛けているんだと俺も連れ戻しにコウジュの部屋を訪れたのだが、あれよあれよと美味しい料理で持て成され、満腹と土木工事に疲れた体はいつしかうとうとし始めてそのままコウジュの部屋にアクア共々お世話になってしまった。
次の日になれば当然のように用意されている朝ご飯。
その日は土木作業は休みだということもあって、そのままお部屋にお邪魔することになった。
気づけばお昼ご飯、マイルームというものを紹介され、その中に置かれていた漫画をチラチラとつい見てしまうとコウジュが好きなだけ読んで良いよというものだから、色々と鬱憤やらが貯まっていたのもあって言葉に甘えて堪能してしまった。
そんなこんなで気付けばそのまま夜になり、晩御飯が用意されていた。
そこまで来ればさすがの俺も罪悪感があったのだが、俺が読んでいた漫画についてコウジュが話題を振ってくれて、アクアもそれを読んだらしく話に華が咲き気づけば真夜中。
その日も結局コウジュの御言葉に甘えてそのまま泊まることとなった。
流石に次の日の朝は申し訳なかったので食器の片付けや掃除をすると伝えた。
そうしてそんな日が続き、いつの間にかコウジュが出掛けている間に俺が家事をするという流れになってしまい、ここ数日はそんな日が続いていた。
土木工事も、日雇い作業の為慣れない家事に手間取り朝の受付に間に合わないという日が続いて今ではほぼ行けていない。
それでもコウジュは仕方ないなぁと言わんばかりに何も文句は言わず、それどころかどこに行っているのやら偶にふらっと出掛けては美味しいものをお土産にして帰ってきていた。
恐るべきは幼女女神の
「これはいけない」
「うん、ちょっと私もまずい気がして来たわ」
俺はアクアと顔を見合わせる。
そして二人でガシッと握手をして握り込む。
「「自立しよう」」
こうして俺とアクアの、本当の冒険者生活が始まることとなる。
◆◆◆
「ジャイアントトードの討伐?」
「ああ、それを受けようと思ってるんだ」
「でも武器が・・・・・・」
「いいや心配ご無用だ! 引退した元冒険者の人に安く剣を譲ってもらったから! 何も心配は要らない!! ほらこれ」
ある日カズマが突然討伐クエストをやりたいと言い出してきた。
しかしここ、初級冒険者の町アクセルは“初級”と付くだけあって魔王城からは一番遠い位置にある町であり、魔物の出現率はかなり低く周囲の討伐対象は殆ど狩られてしまっている。
その為比較的安全性が保たれているので採取クエストなどは一般の人でも普通に森に取りに行くし、討伐クエストも季節に合わせて出現するモンスターなどが中心でいざ一狩り行こうぜとなっても少し町から離れるしかない。
だから“初心者の町”ではあるが、初心者も初心者なカズマはレベルが上げ辛いと言える。
まあ幸いにも、比較的狩りやすいモンスターが今の時期活発になるそうだ。
それが“ジャイアントトード”だ。
ジャイアントトードは文字通り、バカでかい蛙だ。
高さは3~大きいもので5メートルほどになる。
今は丁度繁殖時期らしく、栄養を蓄えるために主にヤギなどの家畜が狙われる。
しかしその時に、農家の人たちが食われてしまう事もあるそうだ。実際に年に数人畜産農家から行方不明者が出るのだとか。
だから討伐依頼が出ている。
この情報は上半球お姉さんからいつだったかに聞いたことなのだが、その時にちゃんとした装備が無いと食われてしまうと聞いた。
その為カズマを心配したのだが、いつの間にか出来たコネで装備を手に入れたらしい。
流石カズマ。
アクア先輩はヒキニートだとか呼ぶが、何だかんだでカズマは人を引き付ける魅力のようなものを持っている。
他者を魅せるようなカリスマではなく、何となく関わりを持てば楽しくなるような類いの魅力だ。
そんな彼だからこそ、無理せず力をつけていけばいいと思って家に招いたのだが杞憂に終わったようだ。
いや、元々部屋には招いていたんだが、どうにも俺に借りを作ってしまうのは気が引けるらしくずっと断っていたのだ。アクア先輩には全く遠慮が無いけど。
そこに少し寂しさを感じていたので尚の事同じ部屋で寝泊まりできたというのは嬉しかったりした。
そんな紆余曲折がありきの今日なわけだが、カズマは腰の辺りに無理矢理括りつけた剣をこちらへ見せてくれる。
ジャージの上からそれを装備しているので少し締まりは悪いが、紐で括りつけられた少し抜かれた剣はその刀身に曇りは無く大事に扱われていたことが分かる。
鞘や持ち手には長年使い続けたのであろう使い古した様な汚れがあったが、それはこれをくれた“誰か”の愛剣だった証拠であろう。
「良い剣貰ったねカズマ」
「だろう? おやっさんはボロ剣だって言ってたけど、この使い古された感じが個人的にグッドだな。店売りしてたやつより断然こっちが良い」
そう言いながら嬉しそうに柄を握るカズマは、新しい玩具を得た子供のようでありながら、武器を手にしたということからか少し大人びた表情もしていた。
そして何よりも、貰って直ぐだというのにその剣に対してしっかりと愛着を抱いているのが分かる触れ方をしていた。
なるほど、これを見ればその渡した人の気持ちもよく分かる。
気に入った相手に愛剣を渡してみればそれを嬉しそうに、そして大事にしてくれているのだ。
嬉しくない訳がない。
確かに全て想像でしかない。
けど、うん、そのおやっさんさんとやらの気持ちはきっとそんな感じだったのだろうと、何となく確信が持てる。
・
・
・
【ジャイアントトードの討伐×5匹】
予定通りカズマはジャイアントトードの討伐クエストを受け、俺達一行は出現ポイントとされる小高い丘へとやってきていた。
しかし――――、
「ノオオオオオオオオオオオオ!? こんなにデカいとは思わなかったあああああああああああああ!!!!」
―――絶賛カズマはカエルに追いかけられて丘を走り回っていた。
「アっハハハハハハハハハハハ!!!! ちょっと待ってなにアレ超必死なんですけどアハハハハハハハハハハッゲホッゲホァッ!! ひぃ、笑い過ぎて超しんどいんですけど!!」
「ちょ、ちょっと笑い過ぎですって! カズマはまだ異世界初心者なんだし! ・・・・・・ブフッ」
「今コウジュまで笑ったなぁアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「ご、ごめーん!!!! いやだってひょっとこみたいな顔で走られたら誰だってそうなるって!!! ほんとごめんってば!!」
いやホント笑うつもりは無かったんだ。必死なカズマに対してホント悪いと思ってる。
けどあんなん無理だって。
ワザとやってるんじゃないかって感じに百面相しながら走るんだもんさ。
何かお詫びするから許してくれ。
何でも一つって言っちゃうとなーんか嫌な予感がするので言わないが、ちゃんと埋め合わせするから。
とりあえずはまぁ助けることから、かな?
「おいで『レールガン』」
呼び出すのはゲート世界で用いた、PSPo2iと『とある魔術の禁書目録』がコラボしたことで実装された武器だ。
あの時は非殺傷武器として使用した。
でも、申し訳ないけどカエルに情けを掛ける程優しくは無いんだ。
・・・・・・別にお姉さんから『多少の固さはあるけどさっぱりとしたたんぱくな味がする肉で食材として好まれる』とかは聞いていないぞ?
「Feuer!」
言うと同時に手元に呼び出した銅貨―――節約の為―――を、ジャイアントトードに向けてコイントスするように親指で弾く。
バシュン、と軽い音ともに光線が走る。
『グペッ』
「ほあああああああああああ!? 何か後頭部焼けたあああああ!? 禿げてない? 禿げてない!!?」
「・・・・・・サーセン」
ごめん、思ったより威力が出てしまった。
頭だけ消し飛ばすつもりだったんだけど、お腹の辺りまでまるごと消し飛んじまった。
これじゃあ食りょ・・・・・・ゲフンゲフン・・・・・・素材買取には回せ無さそうだ。
しかも勢い余ってカズマの頭掠っちゃったし。
だ、ダイジョウブ、髪先が焦げただけダッテ!
「ああびっくりした。近距離特化とか言いながら遠距離攻撃も出来るんじゃないか」
後頭部を擦りながら、逃げ回っていたカズマがこちらへと帰って来た。ほんとごめん。
そんなカズマへすぐにごめんとジェスチャーで謝れば、構わんとでも言わんばかりにふりふりと手を横に振って許してくれるカズマ。
とりあえず今日の晩御飯は奢ろうと心に決め、先の質問に返す。
「まあ出来なくはないんだけど、元々遠距離攻撃って苦手なんだよ。感覚的に走って寄って殴った方が早い」
「・・・・・・バーサーカーの方がよかったんじゃないか?」
「おいやめろ」
自分でも脳筋だって思うけどさ!
けど実際照準やらを合わせている間に近寄って殴るか斬る方が早いし、外す心配が少なくて良いじゃんか。
手数や距離が必要な場合は仕方ないけどさ。
「次は私の出番ね」
今度はアクア先輩が行くことにしたようだ。
笑い過ぎて涙まで目に浮かべていた先輩だが、今は無駄にきりっとした表情をしており、カズマに向かって格の違いを見せてあげるわと言わんばかりだ。
カズマはカズマでそんな先輩にイラッとした表情だが、次の瞬間には鼻で笑い、やれるもんならやってみろと嘲笑う。
今度はアクア先輩がその表情にムッとした表情をして、少し離れたところに地面から出てきたジャイアントトードに向かって走り始めた。
仲良いなあんたら。
表情だけで会話するな。
さておき、走り始めたアクア先輩は本来の回復職用に使う自前の杖を出さず、その高いステータスのみで瞬く間に標的との差を縮めた。
「カズマ、あなたには女神の本気というものを見せてあげるわ!!!!」
アクア先輩が拳を構えた。
そこへと神気とでも言うべき輝く力が集まっていく。
眩い光を発しつつ、ついにはアクア先輩の拳が見えない程に力の集約が完了した。
「ジャイアントトード、あなたに怨みは無いけれど私は女神の力というものを示さなければならいの! その礎になりなさい!!!」
まさしくその姿には人を魅せるカリスマを感じさせた。
先程まではアクア先輩を胡散臭げに見ていたカズマも、ついにはその姿に目を見開き驚きに声も出せずに居る。
気づけば、ゼロ距離。
アクア先輩の拳が届く所まで来ていた。
今更になってアクア先輩の存在に気付くジャイアントトード。
あまりの気迫にジャイアントトードも驚いて逃げようとする。
だが、もう遅い。
「ゴッドブロォォォォオオオオオオッ!!!」
アクア先輩渾身の一撃がジャイアントトードの腹に突き刺さった。
「・・・・・・ゴッドブローとは女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳。相手は死ぬ」
残心。
ジャイアントトードに拳を当てたまま、衝撃で吹き飛ばすでもなく、
その光景に俺も、回復専門だとアクア先輩から聞いていたから驚きに目を見開いてしまった。
まさか、回復職のテンプレにあるような、相手の細胞を過回復させたり、回復を現世からの解脱として結果的に相手の生命活動が終わってしまうような技を持っていたというのか。
アクア先輩は普段はあんなだが、回復関連の権能には俺も頭が上がらない。
でもまさかこんな攻撃方法まで持っていたなんて・・・・・・。
ジャイアントトードも、死んだということが未だ理解できていないかのように今にもまた動きだしそうなほど瑞々しい肌をしたままだ。
「・・・・・・あれ?」
「「あれ?」」
『ゲコ?』
何故か拳を戻したアクア先輩は、自分の手を見て首を傾げた。
その先程までとは反転して力の抜けた声と、その雰囲気に、つられて俺とカズマが声を出した。それともう一つ。
「あ、すみませーん。ちょっと今日は調子が出ないみたいで・・・・・・。それではこの辺りで失礼しマ゛ッ゛」
次の瞬間、アクア先輩は死んだ筈のジャイアントトードに頭からバクっと食べられてしまっていた。
「アクアせんぱあああああああああい!?!?」
「うん、シッテタ」
思わず叫ぶようにアクア先輩を呼ぶ。
しかしその間にもちゅるちゅるとジャイアントトードの中へと滑り込んでいくアクア先輩。
カズマは、その様子を見て遠い目をした。
とりあえず急いで助けねばと、右手を前に出すがアクア先輩が口の中に居るのにレールガンなんぞぶっ放せばアクア先輩ごと弾けてしまう。
なので地面を思い切り蹴り、刹那の後俺はもうジャイアントトードの前に居た。
既にアクア先輩は足の先が見える程度にしかその姿は残っていない。
となると斬るのもまずいかな。
「ああもうなんちゃって寸勁!!!!」
掌をジャイアントトードの腹に当て、そこから一気に押し込むように力を入れた。
結果だけ言うと、憐れ蛙は爆発四散。
中からそれはもうたいそう綺麗だけど血みどろで涙まみれ鼻水まみれの女神様が産まれたとさ。
おしまい。
あ、近寄らないでください生臭いです。
いかがだったでしょうか?
避けては通れない対蛙バトルでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?
中々このすば!の雰囲気の壊さずにバトルシーンを書くというのも難しくも面白いものですね。水の女神様には申し訳ないですが!
さて、これで次話から紅いのとの交流を始めることが出来ます。
いやぁ楽しみですねぇ(ニヤニヤ
ロリvsロリとなるのかならないのか、また気の赴くままに書きたいと思います。
それでは皆様また来週!!
P.S.1
FGOにて新たなイベが始まっていますが皆さまどんな感じでしょうか?
沖タさんを無事お迎えできたのは良いのですが、イベ自体があまり進んでいないのでちょっとばかし時間が止まってくれないかと本気で思っている今日この頃です。
P.S.2
前や中に書くのもと思い最後に持ってきましたが、皆さま地震の影響でお怪我や体調を崩されたりはしていませんでしょうか?
私は近畿圏に住んでいるもので、怪我などは特に無いのですが暫くは追加の地震が来るかもしれないとのことで、もしもの為に色々することがあり少しばかり手間取りました。非常用袋などは用意してありましたが、浴槽に水を貯めておくなども良いそうで、そういったものを検索しつつ色々家族総出でしておりました。
悲しい事に亡くなった方も出ており、逸早い事態の収束が望まれますが、本当にこれ以上何も起こらないことを望まんばかりです。
地震以外にも気候の変化に身体が疲れやすくもなっていると思いますので、皆さまお気をつけてお過ごしくださいませ。