テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
どうも、onekouです。
色々模索しながらの新章です。
どうか温かい目で見て頂ければ幸いです<(_ _)>
『stage0:この素晴らしい世界でも祝福を!』
眠っていた意識が、休みの日の朝の様にゆっくりと覚醒していく。
気づけば彼は、椅子に座っていた。
辺りは薄暗く、床は白黒の磨き抜かれたタイル。
そして視線を下げてみれば、着ているのはいつものジャージ。
状況が理解できずキョロキョロとしてしまう。
すると、コツコツと誰かが近づいてくるのが分かった。
「初めまして佐藤和真さん、そしてようこそ死後の世界へ」
とても、綺麗な女神様だった。
その女神が口にした言葉を噛み締めるよりも先に、見惚れてしまったほどに。
何故女神様と見るだけで理解できたのかというと、見るからに後光の様な、オーラのようなものを放っていたからだ。
更に言えば、モデルなんて目じゃない位の美貌を誇っていた。
蒼く透き通った瞳と蒼穹を思わせる長い髪もまた人間離れした美しさを際立たせる。
「って、ちょっと待ってくれ! 俺は、死んだのか・・・・・・?」
「ええ、あなたの人生は終わってしまったのです」
そうあっさりと言う女神は、いつの間にか現れていた小さな椅子に腰かけた。
思考が止まる。
あまりにもあっさりと終わりを告げられてしまった自分の人生に、戸惑いや哀しみなどではなく、彼はただ理解が出来なかった。
しかし薄らと思い出してくる。
自身はここで目覚める寸前、とあることをした。
それは、普段の彼からは考えられないようなことで、でもその時はただ我武者羅に動いた。
「あの子は、俺が突き飛ばしたあの子は・・・・・・」
もしかすると自分が行ったことは無意味なことだったのかもしれない。
ただ一つ死体を増やしただけの愚かな行為だったのかもしれない。
そう考えてしまうと、ただ口にするだけの行為が躊躇われてしまう。
そんな彼を見て、女神は不思議そうな顔をした。
「生きていますよ? まあ、あなたが突き飛ばした所為で少し怪我を負ってしまいましたが」
「・・・・・・ん?」
無事だったのなら良かった、そう喜んだのもつかの間、彼は女神の言い方に何か引っ掛かりを覚えた。
その時彼は、歩く少女の横から迫る車を見て咄嗟にその子を押し飛ばした。
代わりに彼へと迫る車の影。
熱した地面から発する陽炎と、寝不足に霞む瞳ながら、それが最後に見た光景であった。
だから言葉のニュアンスとして、怪我だけで済んだと言われるのは分かる。
しかし彼が今しがた言われた言葉は彼の所為で怪我を負ったという言い方に聞こえたのだ。
そう思い悩んでいる内に、女神がその答えを口にした。
「彼女はあなたが突き飛ばさなければ怪我1つ負わなかったんです」
「え? だって車が・・・・・・」
「車? ああ、トラクターの事ですか?」
キョトンとする女神。
そして告げられた言葉に彼も首を傾げる。
「トラクター・・・・・・? いやでも、それなら俺の死因はトラクターに耕されたってことになるのか?」
「いいえ、あのトラクターはあの女子高生の知り合いでしたので彼女の目の前で止まりましたよ。それを―――」
「・・・・・・?」
言葉を切り、口を閉じたまま何かを堪えるようにピクピクと震わせる女神。
その様子を見て彼が訝しむ。
しかし暫くすると女神はもう我慢出来ないとばかりに爆笑し出した。
「ぶふっ、あはははははは!! それをあなたは勘違いして女の子を突き飛ばしてけがをさせた上、車に轢かれたと思って心臓麻痺! そしてズボンを濡らしたまま病院に運ばれてショック死としてあなたは御臨終というわけ!! あまりの見事さに医者も看護師も皆腹筋崩壊中よ!!!」
「や、やめえてええええええええええええええええええええっ!!!?」
彼、和真の口から絹を裂く様な悲鳴が上がる。
男ではあるが、結果的にあまりにもな最期を迎えてしまった自身の死因に思わず出してしまったのだ。
しかしそれでも追い打ちとばかりに女神は続ける。
「ちょうど今ご家族が病院に到着して、死因を聞いて全員が噴き出したところね。近年でも類を見ない面白い死に方をしたわねあなたっ」
プークスクスと隠そうともせず笑い続ける女神。
その姿に、和真も恥ずかしさより先に怒りが込み上げてきた。
彼の20年にも満たない少ない人生でも、テレビの中ですらも見かけたことが無いような美人ではあるが、そんなもの目の前の姿があれば幻想もぶち殺されるというものだ。
しかし彼の
確かに腹は立っている。
立ってはいるが、この場において女神は上位者なのは確かだ。
機嫌を損ねて何かされては堪ったものではない。
決してヘタれたわけではない。
そしてひとしきり笑った女神はコホンと居ずまいを正すと、その美貌に似合った笑みを和真へと向けた。
「まあでもそんなあなたに朗報よ! あなたの様に天寿を全うする前に死んでしまった魂には救済措置が入るの」
「それが女神様ってことか」
「その通り!!」
和真の言葉に女神は一層笑みを深める。
「私は地球担当の女神なんだけど、あなたみたいな人には別の世界での人生を提供したりしているの。ここだけの話、この後行くことになる天界ってすごーくつまらない場所なのよね。特別娯楽も無いから、一日中ぼーっと日向ぼっこをするくらい。もちろん―――」
ニヤァっとどこか妖艶な笑みを浮かべながら女神が和真の耳元へと口を近づける。
「―――えっちぃ事も出来ないわ」
「・・・・・・ゴクリ」
囁かれた言葉に和真は息をのむ。
何せまだまだ少年と言って差し支えない、けれども大人の事情というものに触れ始める年代だ。
その身に宿したリビドーをどう発散したものかと悩むお年頃なのだ。
ちょっと前にイラッとさせられた相手だとしても見た目は美少女。
そんな子に耳元でそんなこと囁かれたら口でゴクリとか言っちゃう程度には動揺する。
和真のその姿に思惑が成功したと確信した女神は、ヒラリと身を翻して椅子へと戻る。
「というわけで、前途有望な子達に次の世界への案内をしているの。勿論このまま放りだすわけではないわ。その世界は魔物が存在し、魔王が存在する。だから特別に1つだけ、何か特典を渡すようにしているわ」
「それって!!」
「ええ、俗に言うチート武器とかよ」
女神の言葉に和真はやっぱりと内心でガッツポーズを決め込む。
和真は何やかんやあった結果引きこもって、あれよあれよとサブカルチャーにどっぷりと嵌まり込んでしまった少年だ。
その中には異世界転生ものと呼ばれるジャンルもあった。
元の世界に未練がない訳ではないが、そもそもが充実した生活を送ることができていたならば引きこもりになぞなっては居ない。
成りたくてなったものではないが、あのまま生活していたとて脱出できていたかと言えば和真自身そうは思えなかった。
だから和真にとってこの申し出は渡りに船とも言えた。
「それでチートの内容は!?」
「フフフ乗り気になったわね」
何はともあれチートの内容だ。
そう思って和真は身を乗り出し気味に聞いた。
すると女神は満足げに笑うと手をパンパンと叩いた。
「・・・・・・?」
何だ? と和真が思うがその理由はすぐにわかった。
女神のすぐ横に魔法陣のようなものが現れ、そしてそこから出てくる存在がいた。
「はいはい、資料お持ちしたっすよー」
それは幼女であった。
ただ幼女というには少し大人びたしっかりとした意思を感じさせる表情をしていた。
それが身長に似合わずどこか不思議な雰囲気を醸し出していた。
そんな幼女兼少女が、その両手いっぱいに丸めた用紙の束を幾つも抱えこんで出てきたのだ。
「ごくろうごくろう!」
「うんまあ別に構わないっすけど、なんで資料を直接召喚しないでここだけアナログなんですかね?」
「その方が私の威厳がよく伝わるでしょう?」
「・・・・・・逆効果な気がせんでもないけど、先輩がそれで良いならそれで良いや」
何やら疲れた表情で女神と話す少女。
やれやれだぜ、とでもいう風に首を横に振る。
そしてすぐにこちらへと向き直り、にぱっと快活な笑みを浮かべた。
「ああ、初めましてだ佐藤和真くん。選ぶ特典の資料はここに広げるからちょっと待ってね」
そう言うなり、彼女はテキパキと床へ紙に見える資料を並べ始めた。
「あなたは?」
少し躊躇いながら、和真は少女にそう聞いた。
見た目の年齢で言えば和真よりも確実に年下ではある。
しかしこの状況下で「君は?」と聞く対応を選べるほどの度胸は流石になかった。
少女は、問いかけられるとは思っていなかったのか一瞬キョトンとした後、和真に改めて向き直って口を開いた。
「えっと、転生に関する研修中のコウジュというものだよ。今は実地研修ということでこちらのアクア先輩の手伝いをしているのさ」
「研修とかあるんだ・・・・・・」
「まあ、ある場合もあるし無い場合もあるさ」
「???」
何とも曖昧な言い方に和真は首を傾げるが、それに苦笑した後はコウジュも紙面を広げる作業に戻った。
そして暫くの後、コウジュが広げるのを眺めている内にいつのまにか資料は広げ終わっていた。
「ちょいと量が多いもんで床に広げさせてもらったよ」
床に広げられた無数の紙。
そちらへと彼が目をやると、一枚一枚にびっしりと簡単な絵と文字が刻み込まれていた。
それらが無数に並べらている。
思わず和真は目元を抑えた。
「これ・・・全部・・・・・・?」
「おう!」
無茶苦茶良い笑顔で返されたもんだから和真はもう黙るしかなかった。
チラリともう一人の女神の方へと目を向ければ、既にくつろぎモードへと突入しているのかポテチの袋を開けようとしていた。
「どれでも良いけどなるはやでねー。まだまだ面倒見ないといけない子は一杯いるんだから」
「ああ! それ俺のポテチ!!!!」
「リビングに置いてあったんだから別に食べても良いってことでしょう? ほら、ちゃんと残しておいてあげるから早く終わらせなさいな」
「こんちくしょう!」
ぐぬぬっている幼女女神。
その幼女女神が、はぁと溜息を吐いた後、縋るような目で和真を見た。
うるうるとした瞳で、何かを訴えかけてきた。
その後ろで、パリパリと美味しそうにポテチを噛み砕く先輩女神。
視線を戻せば、パリパリが聞こえたからか一層涙を貯める幼女女神。
それを何度か交互に見て、和真はよし!と腰を上げた。
やらねばなるまいと、今までにない位の決意を胸に、和真はチートを選ぶ作業へと踏み出した。
◆◆◆
「ねぇまだー?」
「ポテチ・・・・・・俺のポテチ・・・・・・」
袋を逆さにして何も残っていないことを確認した先輩女神は指先の塩分を舐めとりながらご満悦の表情をする。
その横で、床に手を付き項垂れている幼女女神。
しかし俺はチートを選ぶ作業で必死だった。
幼女女神には非常に、ひじょーうに申し訳ないが、書かれている文章を読めば読むほどに焦りが出てきていた。
魔剣、聖槍、そのままスキルなんていうのもある。
それはどれもこれもが確かにチートと呼ばれるだけのことはあるものだ。
だがしかし、だ。
それらにはそれ相応の対価が在ったり、落とし穴があったり、そもそもが自身に扱いきれるのか、次の世界とやらで役立たせることができる物なのかを判断するのが難しい。
例えば『何でも斬れる魔剣』というのがあったが、近接職が自分に向いているか怪しいし、魔剣の時点で怪しい気もする。例えば斬りたいものを選べないとか。
他のやつもそうだ。
どれもこれも強力でカッコいいものが並んではいるが、次の一生を左右するかもしれないものだ。
ポテチは申し訳ないが、流石に自分の人生を掛けてポテチを食べてもらうほど肝は座っていない。
「ってあれ、なんだこれ」
手にしたのは数ある中の一枚。
「えー何々、おススメセット? 獣人転生、肉体強化、戦闘補助、自動回復・・・・・・おお、なんかいい感じじゃん」
見つけたそれは今までの一点特化ものとは違い、応用が利きそうな幾つかのスキルなどで構成されたセットものチートであった。
「あ、それ俺が混ぜたやつ!!」
俺が声に漏らしたのを聞いて、ガバリと幼女女神が顔を上げた。
何やら嬉しそうに俺の方を見る。
「ふふんどうかな?」
無駄にどや顔だが、ただ単に微笑ましいだけなのでスルーするとして、しかし実際に内容としてはとても良いもののように思える。
特に自動回復と戦闘補助だ。
聞けば次に行く世界は魔王に魔物にと異世界ファンタジー定番の世界観だそうだ。
今までとはまるっきりルールも違うだろう。
そんな中で特に心配する部分に関して応用が効きそうなこれはなんとも心強い。
しかもまだ特典があるときた。
半ば心を決めながらも、続きを読んでいく。
「へぇ、感覚強化もあるのか・・・・・・うん?」
最後の方に何やら気になる文字を見つけた和真。
それはアルファベット2文字であり、流し読みするとつい見逃してしまいそうなくらいだ。
「T・・・S・・・?」
思わずその文字を口に出して読む。
それは、自身の知識からするととてつもないデメリットだ。
到底看過できるものではない。
そう思い、それに関して何か知っているであろう幼女女神へと目をやる。
「・・・・・・
などと目を反らしながら宣う幼女女神。
じぃーっと俺が見れば、たらたらと冷や汗をかき始める。
「これ、トランス・セクシャルの方ですよね?」
トランス・セクシュアル、つまりは性転換。
ここで俺が言うのは一般的に使われる意味のソレではなく、サブカルチャーの中でややニッチながらも1ジャンルとして確立した“TS”というものだ。
そしてそういう意味で聞いたのは当たりだったようだ。
見れば、幼女女神は冷や汗どころか涙目になり始めた。
あ、やばい、新しい扉が開きそう。
っていやいやいやいや、待て俺踏み止まれ。
それよりもTSなんてのは望む所ではない。
サブカルの1ジャンルとしては面白いとは思うが実際に自分がなるだなんてのは許容できない。
俺だって健全な男の子なのだから。
そんな決意を胸に幼女女神を見ていると、口を開いた。
「せやかて工藤」
「佐藤です」
「ぐっ、だ、だってそのほうが祝福を与えやすいんだから仕方ないだろ!」
逆切れされた件について。
まあキレるというか唯々微笑ましいだけなのだが。
ほらなんか拗ねだしたし。
そこへ、プークスクスと笑い声が響く。
「まあ童貞卒業してもいないのに男を卒業させられるのは流石に可哀そうだものねぇ!」
「だだだだだ誰が童貞だって証拠だよぉ!!!?」
何やら一々腹立たしい方の女神が静かだと思ったら、どうもそんな失礼なことを考えていたらしい。
「おおお!」
「何でこの幼女は嬉しそうなの!?」
女神のあまりな言い様にすかさず否定した和真だが、懇切丁寧にその辺りの事を説明しようとするも何故か幼女女神の方が嬉しそうな表情をするもんだから思わずそちらへもツッコミを入れてしまう。
何なの? 何で嬉しそうなの? 何で目がキラキラしているの!?
瞬く間に頭の中がそんな疑問でいっぱいになる。
それほどに幼女女神の瞳は輝いていた。
寸前のもう一人の先輩女神による名誉棄損についても物申したいが近くに居るその幼女女神の瞳が気になって仕方なかった。
何がそんなに嬉しいのか、幼女女神は俺へと近づいてきて、手をギュッと握ってきた。
そしてニコリと柔らかく微笑む。
やめてええええええええええええ!!! その嬉しそうにするのやめてえええええええええええええええええええ!!!!!
しかし和真の心の声は当然届かない。
そんな和真へと、めんどくさそうに先輩女神――全体的に青いイメージを持たせる女神が告げる。
「それで、その欲張りセットにするの? 私はお勧めしないけどそういう趣味なら仕方ないわよね」
「しないからね!? 決して未使用だからとかそういう理由じゃなくて男でありたいという純粋な理由からそれは選ばないというだけで―――あああああもうそっちの幼女泣きそうにするなめんどくせえええええええええええ!!!!!!!!」
最初の頃の、下手なことを言ってマイナスの評価とならない様に気を使っていた口調もついつい忘れて口にしてしまう。
だってそうしないと男の尊厳とかの危機だからね。命は失ったかもしれないけどこれ以上男としての矜持まで失ったらもうなんかこう、あれだよ。
とかく、だからつい、先程からの苛立ちもあってつい、俺は言ってしまった。
「もうめんどくさいから転生特典はあんたで良いよ!!!」
びしりと、指もさしながら俺は先輩女神を選んだ。
何故とか、どうしてとか、そんな疑問に意味は無い。
ただこの場に有るモノから選べと言われていて、一番御利益がありそうなものを選んだだけだ。
幼女女神じゃないのはTSさせられそうな要因は排除したかったからだ。
「え?」
先輩女神は、俺が言った言葉を飲み込めなかったのか目を点にしていた。
しかしどういう理屈なのか、次の瞬間には俺と先輩女神は薄らと輝く文字に囲まれ始める。
身体を浮遊感が少しずつ包んでいく。
「え、いや嘘でしょ? 私女神よ? 女神なのよ!? こんなことあって良いはずがないわ責任者呼びなさいよ!!!」
輝く文字を壊そうとしてかドンドンと叩くがまるで見えない壁があるようにその手は虚しく音を響かせるだけだ。
そんな先輩女神を見て幼女女神は、おたっしゃでーと言わんばかりにどこから取り出したのかハンカチを振っていた。
「ま、待ちなさいよ、それなら私の補佐役であるその子もセットよね!? いやあああああああああ、こんなのと二人で異世界に行くだなんて襲われるううううううううううう!!!」
「はっはっは、楽しんできてくださいな先輩。居ない間は上手い事やっておき――――――え?」
次の瞬間、俺の視界はブラックアウトした。
いかがだったでしょうか?
と言ってもまだ導入ですので、今後どうなっていくかですよね・・・。
いやなんでこの物語を選んだかって言うと、書きたいシーンがあったので、ぶっちゃけ出来心です。
どのシーンかは皆さんの想像にお任せしますが、出来れば当てないでください(遠い目
P.S.
ISの方はやっぱり難渋しています、ごめんなさい・・・。
機械系とか銃器系の事となるとほんとちんぷんかんぷんで;;