テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
皆さま今回もお待たせしてしまいもうしわけありません。
しかしZero編も最後ということで、最後にもうひと盛り上がりして頂けたらと思います。
では、どうぞ。
「終わった、のね」
ボロボロの姿で、イリヤはそう口にした。
そして言うと同時、天の衣・改を解除して元の紅い外套姿へと戻る。
「まさか・・・・・・」
「ええ、残るは私とコウジュだけよ」
イリヤの言葉に力の無い言葉を返したのは衛宮切嗣だ。
既に、彼の傍にセイバーの姿は無い。
単独行動やそれに類するスキルが無い彼女は、切嗣の手から令呪が消えてすぐにその存在をこの世界から消失させていた。
つまり、“衛宮切嗣は第4次聖杯戦争に敗北”した。
その事実が切嗣に突き刺さり、茫然自失となっていた。
そんな切嗣にどう声を掛けたものかと悩んでいる間にコウジュからの念話で勝ったという報告を受けて出たのが先の言葉であった。
そして、喪失感に何も出来ずに居た切嗣だが、この聖杯戦争の趨勢に関わる情報であっただけに自然と頭の中に入り思わず反応してしまったのだ。
「そうか、聖杯戦争は終わったのか」
「そうよ。私たちの勝ち」
不思議と、ストンと切嗣の胸の内へとその言葉は滑り込んだ。
悔しくないと言えば嘘だろう。
しかし、悪くは無いと思えてしまう何とも言えない感情もあった。
「これで僕の夢も潰えるのか・・・・・・」
それもまた事実であった。
衛宮切嗣は元々、最後の望みを聖杯に掛け、この聖杯戦争へと参加していた。
その望みこそが世界の救済だ。
理想を追い続け、世界の救済を渇望し、それでもなお届くことの無かった願い。
あらゆるものを切り落とすことで、効率的に様々な物を救ってきた。
だがそれでも悲劇は消えず、むしろ増えて行くばかり。
故に彼は聖杯へと望みを託すことにした。
それが、失敗に終わった。
しかし、そんな彼へとイリヤは微笑みかけた。
「いいえ、終わりじゃないわ。切嗣には私たちの手伝いをしてもらうつもりだもの」
「何を言って・・・・・・」
優しい笑みと共にそう告げるイリヤに、切嗣は疑問しかなかった。
聖杯は彼にとって最後の望みだった。
だがそれが出来なかった以上、ここで終わるしかない。
既に彼の精神はその殆どが擦り切れていた。
僅かに残る彼の心も、繋ぎ止めてくれている存在があってのもの。
しかしこの聖杯戦争でそのうちの一人を犠牲にするしかなかった彼は、絶望の淵に立たされていたといっても良い。
確かにその
済んではいるが、それだけだ。
犠牲にしようとしたことには変わらず、その彼女自身が良いと言っていても、それでも理想への最後の望みが絶たれた今、切嗣にあるのはただの虚無感だけだ。
だというのに、イリヤはそうはさせないと言う。
そんなイリヤは気づけば、怒りながらもその目に涙を浮かべている。
「終わらせて堪るものですか。切嗣にはたっくさん言いたいことがあるんだから!」
「イリヤ・・・・・・」
自然と、キャスターだと思い込もうとしていた相手をそう呼んでしまう切嗣。
目の前のイリヤは、アイリスフィールの様に美しく成長した姿になっている。
だが今のイリヤは、どうにも子どもが泣きながら親へと訴える姿にしか見えなかった。
そんな姿を見てしまえば、切嗣はもう何も言えなかった。
「と り あ え ず !」
イリヤは少々乱暴に目を拭った後、強調しながら言葉を発した。
「向こうに戻ったら覚悟していてよね!」
「向こう?」
イリヤの言う向こうというのが何の事か分からず疑問を呈するが、イリヤはそれに答えることなく、その手に再び歪な形の刃を持つ短剣を手にしていた。
「
「イリヤ何を!?」
それを、イリヤは自身の心臓へと刺した。
その効果はあらゆる魔術的契約を白紙に戻すこと。
先程はそれによって切嗣とセイバーとの間にある契約を消し飛ばし、その結果セイバーは座へと還された。
そんなものをイリヤは、在ろうことか自身へと刺した。
当然切嗣は先程までの虚無感もどこかへすっ飛んでいくほどに驚愕し、イリヤへと駆け寄る。
しかし当のイリヤは飄々とした態度のまま、切嗣を指さした。
「言っておくけれど、落ち込んでいられる時間なんて渡さないんだから」
「でも僕は―――」
「駄目よ。娘の反抗期に精々悩んでもらうんだもの」
切嗣が何かを言おうとするが、遮るようにイリヤはそう言った。
「だから、またね切嗣」
そして、そのまま身体を薄れさせていき、切嗣の前から姿を消した。
◆◆◆
「お疲れさま、イリヤ」
そう口にしながら、俺は手の中に現れた聖杯を大事に抱える。
そして心の中で感謝と謝罪を送る。
元々イリヤとはとある約束をしていた。
それは“イリヤがこの世界を去る際に俺は立ち合わない”というもの。
そんな約束をしたのは、イリヤが勝つにしろ負けるにしろ、俺が最後の一騎になるためには彼女が聖杯戦争に敗北しなければならないからだ。
勿論勝つことを信じていたし、実際にイリヤは勝った。
でも、だからこそその場合は自ら敗退する必要が出てきてしまう。
その場を俺に見られたくないと、彼女は言っていた。
そして俺もまた、納得した。
まぁ実際には納得というか、『自身が男だというのなら乙女心を察しようとしなさいな』なんて言われてしまい二の句を継げなかったのだ。
それに、これで彼女が死ぬわけではない。
この世界での彼女はあくまでも仮初の存在だ。
だから再び会うことができる。
むしろ、それがこの世界を完結させた後の楽しみの一つであるといっても良い。
そういった事情もあって、一先ずのお別れは既に済ませてあった。
俺がギルガメッシュに勝ったことをイリヤに告げ、そしてイリヤはそのままこの世界を去ったというわけだ。
そして同時に、俺のバーサーカーとしての役目も消失する。
当然ながら俺は、バーサーカーとしての役目を終えても元々生身で居るため消えることは無い。
イリヤというマスターを失いサーヴァントとしての参加権限を失っただけだ。
まぁこれがギルガメッシュによる封印や契約破棄なんかをされてしまっていた場合にはその限りではないのだけどね。
だが俺は勝った。
あのギルガメッシュを、嵌め技感はあるけれども自身の手で倒すことに成功したんだ。
「第三部完、なんて言うのはちょっと早いかね」
当然ながらこれで終わりではない。
ここからが本番と言っても良いくらいだ。
何せ最後の仕上げがある。
俺は、手にした杯を目線の高さまで上げた。
トプンと、杯の中で音を立てるのは、粘性のある黒い液体だ。
それは闇の様に黒くはあるが、悍ましさを感じさせる混沌とした色合いである。
そう、聖杯の泥だ。
聖杯を揺らせば、その分ちゃぷちゃぷと揺れるその表面は、光すらも飲み込んでいるがごとくに俺の顔すら写さない。
そんな聖杯こそが、この第四次聖杯戦争の勝者に与えられる栄光だ。
持っているだけでも吐き気がするほどの憎悪、嫉妬、嫌悪、絶望、ありとあらゆる悪感情がここには詰まっている。
第三次聖杯戦争に於いてアインツベルン陣営が行った罪の結晶と言っても良い。
それが今、俺の手の中に在る。
それを俺は、口元へと持って行―――
―――こうとして、止める。
どうにも視線が気になってしまう。
目に入るのは俺の姿をした、俺じゃない“俺”だ。
改めて見れば、“俺”の姿はほとんどが同じため、分かりにくいが微妙に異なっている。
俺の一番近くに居るこの“俺”なんかは、耳が
そして、ここに居る皆は全員俺で在りながら、それぞれが別個の意志を持って居る。
というのも、そうなっているのは先程発動した『獣の軍勢』の効果故だ。
『獣の軍勢』は、文字通りにライダー:イスカンダルの『王の軍勢』をラーニングして得た能力だ。
ただしそのままだと、発動者と共に同じ景色を見た戦友しか召喚できない。
今の俺だと召喚できるメンバーは・・・・・・まぁ割といるかもしれないが、流石に英雄王との戦いに巻き込むわけにはいかない。
だから俺は、その召喚対象を変更して、既に得ているスキルなどを統合、そして元々使用していた泥による分体などを駆使して新しい能力に仕上げた。
それが『獣の軍勢』だ。
元々俺は分体として、自身の因子を切り分けることで生成していた。
最初は泥に形を付けただけのハリボテで、次に因子を入れ込んで、最近では入れ込んだ因子を基に分体もまた自分だという風に存在共有も行えていた。
だけどそれだけではあまり意味を成していなかった。
目視でマニュアル操作が必要な分身や、感覚共有のお蔭である程度離れていても操作できるようになったとしても共有する感覚の所為でダメージのフィードバックがある分体など使い道が限られてしまう。
後者に至っては、その切り出した因子を封印されよう物なら俺にその因子が戻ってくることは無いという始末だ。
だが、『獣の軍勢』にそんな弱点は無い。
効果は単純で、縁ある相手の召喚だけ。
これだけだと元とあまり変わらないように思うかもしれないな。
しかしその縁のある相手というのに、“自ら”も含まれるというのだ。
しかも自分を召喚した場合は、召喚した方もされた方も俺だし、構成する世界も俺だから、その全てを一度に消し飛ばさなければならないという鬼畜仕様だ。
何せ俺自身を座と認識して、それぞれを個として召喚しつつもその本質は繋がっているからだ。
勿論もともとの生存チートも同時に発動できる訳で、そうそう抜かれることは無いチート技へと変貌している。
ただ、一つだけ弱点がある。
それというのが自らの持つ因子の分だけしか召喚できないことだ。
だから、先程までギルガメッシュと相対する時に無数に居た俺の殆どは。実はただの分身体だったりする。
基点となる本体は数人だけだ。
とはいえ 各因子を基礎として俺を召喚するだけで、表面に出てくるのがそれぞれの因子ではあるが能力値はどれも変わらないという状態だったりする。
そして今、強制転生拳(スケドを握って殴っただけ。ただし幼くなる)でギルガメッシュを無力化し、内包世界の外へと出して、邪魔臭いので分身体だけを消したところであった。
つまりまだ、数人だけ俺とうり二つの存在が残っているというわけだ。
神の因子はこの世界の維持に、狼は俺が、後は猫に狐に龍そして人間だ。
それぞれがそれぞれの特徴をその身に宿してはいるが、それ以外はそのまま俺となっている。
そうして俺が見ていると、“俺”達は何事かと首を傾げる。
なんだこのあざとい生物。
あ、俺か・・・・・・。
と、ともかく、上手く
さておき、だ。
この聖杯の泥を飲んで初めて、達成される。
先程は自分で自分の視線に思わず手を止めてしまったが、これをしなきゃ始まらない。
「・・・・・・よし」
未だ“俺”達からの視線はある。
消せばいいじゃないかと言われるかもしれないが、それでは駄目だと思うから。
だから、一思いに俺は聖杯の中身を呷った。
「んっぐぅぅぅぅぅっ!!?」
喉を通って行くに合わせて、自らを侵食しようとする泥の気持ち悪さに吐き気がする。
だけども後から後から入り込んでくる泥に、戻すことも許されない。
第一吐き出すつもりなどさらさらない。
聖杯から、次から次へと、一体どこに入っていたのかというほどの量を、俺は飲み干していく。
だが当然ながら、飲めば飲むほどに俺を蝕もうと泥は悪意を俺へと振りかざす。
『
いつかの如く、俺の視界の端で毛先が黒く染まっていくのが見えた。
あの時と同様、いや、あの時以上に直接的な悪意が俺を襲う。
銀座で悪感情を知った時はまだ、直接的なものは少なかった。
しかし今のこれはその全てが俺を飲み込もうとしている。
だがこれに耐えなければならない。
耐えて飲み干さねばならない。
剣の効果で無害化するのではなく、俺自身の気概で乗り越えなければならない。
「んぐ、ぐぅ、んんっ―――!!!!」
そもそも、何故飲まなければならないのかという話だが、単純な話だ。
これを使って始めて俺は願いを叶えるからだ。
願望器として聖杯を使うという意味ではない。
泥そのものに組み込まれた悪意を使うのだ。
改めて言うが俺の権能は、“願いを叶える”ものだ。
しかしそれも万能ではなく、当然ながら願いがあって初めて使うことができる。
願いは何でも良い。
俺へと向けられる“願い”が俺への信仰となり、俺の権能を発動する糧となる。
それはつまり、悪感情でも良いということだ。
方向性が逆なだけで、悪意もまた何かに対する願いであることには変わらない。
「んぐぐぐぐっ!! ぷはぁっ!!」
だから、この程度を飲み干せなくて、何が神だと言うのか。
前の世界の様に悪感情を意識しただけでそれに飲まれるようなことは無くなった。
でも、今後あの時以上の悪意に晒されないとも限らない。
故に今ここで克服する。
その目的もあって、俺は聖杯の泥を飲むことに決めたのだ。
勿論勝算が無かったわけではない。
勝算も無しにこんな事をすれば、また脳筋だと言われてしまうしね。
とはいえ、そう誇れるものでもないか。
何せその理由は簡単で、聖杯の泥を浴びるのはこれで
故に俺は、既に聖杯の泥による精神汚染をラーニングした後となる。
当然ながら一度目というのは第五次聖杯戦争での決戦時だ。
あの時は敢えて暴走することで精神汚染を受けるはずの精神そのものをどうにかすることで潜り抜けた。
その結果俺は、泥からの精神汚染自体は攻撃と認識してラーニング済みだったりする。
だからこそ大丈夫だと、俺の感情が認識している以上は能力上問題は無くなる。
・・・・・・無くなるが、聖杯による精神汚染が無くなるだけなので、後の悪意を敢えて受け取り糧とするのは自力なのでそこは頑張らないといけない。
しかしそれも、不思議と出来る確信があった。
いや、絶対にやってやるという気概があった。
だから、叶えられる!!
・・・・・・まぁ最悪の場合、飲まれた俺を他の俺で押さえれば何とかなるでしょう。
「・・・・・・けぷ」
おっと失礼。
しかしやり切った!
全部飲み干したよ!!!
ちょっとばかし量が多かったものだからお腹がポッコリしてしまったが、俺のエンゲル係数を嘗めないでほしい。
暫くすればすぐに収まるだろう――――
―――ってあれ、幾らなんでもこれはおかしい。
幾らなんでも泥からの精神汚染が少なすぎる。
一度受けているからといっても、バサクレスさんの如く完全な耐性を得る訳ではない。
俺のは精々、慣れる程度のものだ。
だというのに、俺への負担が少なすぎる。
それに、少ない。
源泉となる“悪感情”が想定よりも少なすぎる。
これでは特異点としての記録を上書きできない。
なら、足りない分は何処へ―――?
「・・・けぷ」
俺はすかさず音のした方向を見る。
そこには、口元を静かに抑える“俺”が居た。
その“俺”は、先程まで一番近くに居た筈の俺で、
そこで俺は悟った。
ああなるほど、ここでこう来るわけか。
飲むこと自体を止めに来るかと思いきや、俺から直接持って行くことも出来たのか。
そんな思いで彼女を見れば、彼女は白々しく目線を反らす。
しかしそんな程度で誤魔化せるわけがない。
お前が何を言っているんだとどこかから幻聴が聞こえた気がしたが、こんなもので騙せるわけがないのだ。
「なぁ、アンジュちゃん」
「っ!?」
俺の言葉に、“俺”が驚きに目を見開く。
しかし、すぐに目を反らしながら静かに口を開いた。
「そ、そんな人知らない」
「知らんわけないやん」
思わず関西弁でツッコんでしまったが、どうやら認める気はないらしい。
ならこっちにも考えがある。
「口元に聖杯の泥着いてますよ」
「嘘よ!?」
「嘘です」
「・・・・・・嵌めたわね」
ジト目でそんなことを言う“俺”、もといアンジュちゃん。
いや、うん、まさかこれに嵌まるとは俺も思わなかったです。
一応、アンジュちゃんが居ることは元々予想していた。
むしろ、出てくるように仕向けてすらいた。
ただこのタイミングで出てくるとは思わなかった。
彼女と直接相対するのはこれで2度目だ。
しかし、これまでは俺との接触を出来る限り避けていた節もあった。
とはいえそろそろ話さないとというのもあったし、だからこそ準備していたのだが、まさかここで妨害してくるとはね。
何はともあれ聞いてみないことには分からないか。
「まぁそれは冗談で、居るのは分かってたんだよアンジュちゃん」
「はぁ、中々賢しくなったじゃないコウジュ」
溜息を吐いたアンジュちゃんは次の瞬間、淡い光に包まれてその姿を変えた。
その姿は以前に精神の中であった時の様に、見た目は俺にそっくりだが肌は浅黒く、髪もまた濡羽色の綺麗な黒だ。
その姿になった彼女は、改めて俺に問うてきた。
「でもどうして私が居るって分かったの?」
これに関しては、珍しく俺の作戦が上手くいった形だ。
「簡単だよ。俺の中に人間の因子って無いんでしょ? ならその姿をしている“俺”は誰かって考えたら、アンジュちゃんしか出てこなかった」
「それは―――」
そう、そもそも俺が呼びだした中に人間の因子を持つ“俺”が居るはずないのだ。
『獣の軍勢』によって確かに俺は自身の中の因子を全て出すようにして能力を発動した。
だが、その中に人間の因子が有ってはいけない。
何せ俺は、人間としての因子を持っていない筈なのだから。
「―――確かにその通りよ。でもどうして?」
「いやだって、俺の中に人間の因子が残ってるなら、それって男だった時の俺のものだろ? 毎回毎回男になろうとしてるのにそれが出来てないんだからいやでも気づくよ」
「・・・・・・そういえばそうだったわね」
おいこらそこで目線を反らすのは止めろください。
でも実際にそう考えると色々とつじつまが合うのだ。
今まで俺は、様々なことにチャレンジしてきたが、その中でも力を入れてやっていた一つが男に戻ることだ。
しかしそれは今まで出来なかった。
因子を扱えるようになってからも、それは変わらない。
でも、普通に考えるならばそれはおかしい話だ。
だって俺は元々男だったのだから、その因子を俺は持っている筈なのだ。
正確に言えば、人間の成人男性というべきか。
だというのに、成功したためしがない。
なら、その因子そのものが無いと考えるのが自然な流れだ。
「けど、そこまで辿り着いているのなら何故平然として居られるの? あなたの根幹を揺るがすことだった筈」
その言葉に、俺は苦笑いを浮かべてしまう。
確かにそうだ。
その考えに至った時、俺はかなりのショックを受けた。
俺が元々男だったのは胡蝶の夢か勘違いだったのではないかなんてことも考えた。
だけど違った。
ヒントは有ったんだ。
「始めは驚いた。ぶっちゃけショックだった。けどさ、そこでふと考えたんだ。なら逆に、この持っている因子は何なのだろうかって。俺が認識している因子の中に使えるものと使えないものが有る理由は何だろうかってさ。そこまで考えれば簡単だ。使える因子ってのは俺が認識しているものじゃなくて、この身体が持っているもの・・・・・・でしょ?」
「・・・・・・」
俺の言葉に、アンジュちゃんは何も言わず、静かに俺を見ている。
だがその表情には戸惑いや後悔といった物が見て取れる。
とはいえここで止める訳にはいかない。
「ヒントは幾つかあった。決定的だったのはこの身体の話になった時だ。この身体はあの社畜・・・・・・じゃなかった女神様が自分以外の誰かが用意したって言ってたよね?」
「ええ」
「・・・・・・それを知ってるってことはやっぱり、あの時に邪魔してたのってやっぱりアンジュちゃんか」
あの時、一度はその正体をアンジュちゃんかとも考えたが、何故か意識が反らされてしまっていた。
女神様の拍手、それだけで俺の意識からそれはどこかに飛んでいた。
何かしらの能力を使ってのものは俺がラーニングするから使わないと言っていたが、それも何かしらの穴があるのだろう。
でもだからか、この身体について『王の軍勢』をラーニング後に考えていたら思い出すことができた。
あまり強い力を使うとそれこそ覚えてしまうから・・・・・・とかだったのだろうか?
まぁそれは良いんだ。
大事なのは、何故あのタイミングでアンジュちゃんが邪魔をしたかってことだ。
「けど、これでスッキリしたよ。推測は正しかったわけだ」
俺は一呼吸おいて、再び話し出す。
「俺が『獣の軍勢』で召喚したのは、俺の因子に基づくものだ。そして、因子とはこの身体に無ければならない。元人間であった俺自身はどうしてか召喚という形で出すことは出来なかった。けどさ、そう考えると俺は知らないけど、この身体の中に在りそうな因子っていうのを一つだけ思い浮かべることができた。それがアンジュちゃんだ」
「・・・・・・本当に、上手く嵌められたわけね」
拗ねる様にそう口にするということは、俺の推測は当たっていたということだろう。
そう、つまりだ。
彼女もまた、この身体に起因する誰かということになる。
そうでなければ、この身体にある因子として召喚されるはずがないのだから。
なら、そんな彼女は誰なのか?
それは――――、
「アンジュちゃんが、元々のこの身体の持ち主ってことだよね?」
「正解よ」
いかがだったでしょうか?
ここで明かされる衝撃の真実ぅ!というやつですが、はい、アンジュちゃんは実はコウジュの元々の中の人でした!
読者様の中で当ててらしゃる方も居てびっくりです。
冗談半分だったとは思いますが、大当たりです。
テンプレ―トな神様との漫才の中にも何かしらの仕掛けをしたくて考えた一番大きな伏線でしたが、皆様いかがだったでしょうか?
少しでも驚いていただけていれば幸いです。
そして何故このタイミングで出て来たのか、彼女は何故コウジュが飲み干したはずのアンリマユを奪ったのか、その辺りは次回に続き、それにてZero編一先ずの閉幕とさせていただきたいと思います。
長くなれば後日談だけ別話になる可能性もありますが・・・。
ではでは皆さま、また次話でお会いしましょう!
P.S.
Zero編が終われば、コウジュが主人公ではないちょっとした短編とか書いてみたいなと思っていたりしています。
転生神コウジュによってTS転生させられる転生者ものとか、前に言っていた酒呑童子inH×Hとか、キャストinISとか、まぁ色々思い付きはするのですが、とりあえずは色々落ち着いてからですねw
妄想だけは捗るので困りますw
P.S.2
FGOの快楽天ビーストを誰が予想できたでしょうか・・・。
しかもピックアップされるなんて・・・(震え声
そのうちティアマトちゃん召喚できたりしませんか!!
あとエレシュキガルちゃんいつですか!!!