テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回で倉庫街の戦いは終了となります。
なんとも締まらない終わりですが、許してください。





大体コウジュの所為!


『stage5:俺が、俺達が、聖杯だ!!』

 

 

 

「うし、覚えた」

 

 俺がランサーに近づくと同時に身体へと浸み込む情報。 

 それはランサーの“愛の黒子”と言うスキル(呪い)に関してだ。

 対魔力が無ければランサーに対して魅了されるという迷惑極まりない能力なのだが、本人はそれを毛嫌いしている。

 何せ、それが故にドロドロとした昼ドラ展開を迎えた末に命を落としているのだから当然だろう。

 まぁ、今の俺でも弾ける程度だけど、見るだけで発動する魅了に対する耐久性を上げておくのは悪くない。

 一応俺も目元に黒子を作れば同じような能力を使えるだろうけど、妲己から覚えた方の匂いでの魅了があるので

それ自体は要らない。

 ただ単に抵抗(レジスト)しやすい様にしたかっただけだ。

 

 さて、これで俺の今回の目的の一つは達成した。

 あともう一つ、それさえできればあとは離脱してしまえば良い。

 

「さーて、行くぜランサー」

 

「来い、バーサーカー」

 

 まずは小手調べ、ランサーの返事と同時、俺は強く地を蹴り一足に彼へと近づく。

 

「っるぁ!!!」

 

「ふんっ!」

 

 手に持つルゥカを上段から斬り降ろす。

 それにランサーは右の短槍を横から当てるようにして反らそうとする。

 ところがどっこい、その位で弾かれて堪るか。

 俺は魔力(P.P.)による強化をさらに強くし、無理矢理に斬り下す。

 俺の馬鹿力に気付いたランサーは反らす途中で槍を起点に自身が横に飛んで避ける。

 お蔭でルゥカが何もない地面をそのまま切り裂いた。

 だが両刃剣(ルゥカ)はそこで終わらない。

 手首を起点にくるりとルゥカを回し、対の刃でランサーを追う。

 

 ランサーは俺の馬鹿力に自身の筋力では弾き切れないと悟ったのか、俺の刃を身を反らすことで避けていく。

 時には左の長槍でこちらへと突きを放ち、俺の動きを阻害する。

 それを俺は弾きながら、徐々にランサーへと猛攻を掛ける。

 

「流石はバーサーカー! 馬鹿力にも程がある!!」

 

「ありがとうって言うべきか・・・なっと!!!」

 

「ちっ」

 

 コンテナ側へと追い込んだので放たれた槍をルゥカで弾いてお返しに蹴りを放った。

 しかしランサーは器用にももう片方の槍で地面を付き、棒高跳びの如く飛んで逃げた。

 ドゴンという轟音と共に(ひしゃ)げるコンテナ。

 うん、ごめんなさい。請求書はアインツベルン宛でお願いします。

 っと、それよりも上に逃げたランサーだ。

 それに向かって俺はルゥカを投げる。 

 するとそこには俺の脳天に向かって槍を放とうとするランサーが居る。

 しかし俺がルゥカを投げたことでそれを弾くことを優先し、そして弾いた勢いのままに離れた場所へと着地した。

 

「いやはや凄い技量ですな。マジで当たらん」

 

「そういう君は驚くべき膂力だ。弾こうにもそれごと腕が持っていかれる」

 

「それだけが、取り柄なもんでね」

 

 事実、ランサーの技量に俺のものが及ぶべくも無し。

 俺が誇れるのは力と速度、そして獣の直感。

 第5次に比べ奇策を使わなくてもある程度はやれているが、向こうさんも獲るつもりでは来ていない。

 そもそも本来の戦闘スタイルは双剣双槍だって言うじゃないか。

 やっぱり、英霊ってのは生半ではないよな。

 

 とはいえ、だ。

 俺もそう易々と負けるつもりは端から無い。

 負け惜しみではなく、俺も全力ではない。

 

 そんな思いから、身体に纏う魔力を高めていたら後方から鳴っていた音が一際大きな轟音を最後に止まった。

 チラリと見れば、イリヤとアーチャーが何かを話しているのが見て取れた。

 

「ふーむ、あちらのキャスターも中々やるな。惜しい、実に惜しい」

 

 そんなことを言うのは観戦に徹していたライダーだ。

 まだこの人は勧誘を諦めきれていないらしい。

 

「征服王、イリヤは上げないからね」

 

「ハッハッハっ! そう言われては余計に欲しくなるんだがなぁ!!」

 

「・・・・・・何この人性質が悪い」

 

 嫌よ嫌よも好きの内とか言いそうなライダーに思わずげんなりしてしまう。

 しかし、そのままではいられない。

 そんな俺とは反対に、相対していたランサーはその身体に魔力を漲らせていた。

 幸いというか、ランサーは俺とライダーの話が終わるのを待ってくれていたようだ。

 

「流石は騎士ってことなのかな。待っててくれるとは」

 

「スキは在ったがな、暗殺者の真似事など矜持に反する」

 

「そいつはありがたい」

 

 念話か何かでさっさとケリをつける様にでも言われたのだろうか。

 恐らくランサーは本格的に宝具でのダメージを狙ってくるようになるだろう。

 先程までは恐らくこちらの様子見。

 ここからが本番であろう。

 

 俺は改めて、ルゥカへと魔力を注ぐ。

 

「とりあえず、一先ずの決着を付けようか」

 

「こちらこそ望む所だ、バーサーカー!」

 

 

 

 次の瞬間には、互いに一歩目を踏み出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔をするか雑種がぁ!!!」

 

「精々慢心していなさい!!」

 

 アーチャー(ギルガメッシュ)の言葉にイリヤ(キャスター)はそう荒々しく返した。

 そしてそう言葉を交わす間にも、攻防は続いていた。

 

 アーチャーより射出される宝具の群れ、それを撃ち落とすイリヤの銀糸剣群。 

 ただ、双方の立場は変わらず攻撃するものと防ぐものとに分かれている。

 しかも、アーチャーの攻撃一つに対してイリヤが放つは数倍の剣。

 些かイリヤにとって不利に見える闘いである。

 だが、イリヤの表情には未だ余裕が見て取れた。

 

 それが気に喰わぬアーチャーが眉を顰める。

 

「貴様、我が宝具を前にしてその余裕、何を企んでいる?」

 

「そんなもの、あなたをどう打倒しようかってことに決まっているじゃない」

 

 アーチャーの言葉に、イリヤは口角を上げるようにして笑みを浮かべながらながらそう答えた。

 しかしそんなイリヤを見て、アーチャーもまた笑みを浮かべる。

 

「フハハハっ! 我を笑い殺す気かっ? 面白い、ならばこれでどうだ!!」

 

「・・・・・・それは、ちょっとまずいかも」

 

 アーチャーの背後に新たに出てきた宝具は、今までのものとは明らかに格の違う宝具であった。

 それも、濃密な死の気配を漂わせていた。

 今まで撃ちだしていた宝具も、明らかに一級品の物には違いない。

 しかし今出てきた宝具は触れただけでも致命傷を負いそうな程の力を感じるのだ。

 

「行けぃっ!!」

 

 それが今、放たれた。

 

「ああもう! エッジブレイザー!!」

 

 黄金の波紋を突き抜けてきた宝具に対し、イリヤは奥の手の一つを取り出した。

 胸元から出てきたそれは1枚のカード。

 それを手に持ち、すぐさま起動キー(ワード)を唱えた。

 そして言うと同時に出てきたそれを、イリヤは構える。

 

「Feuer!!!!」

 

「何ぃっ!?」

 

 イリヤが行ったことに対し、アーチャーが驚きの言葉を上げた。

 そして次の瞬間にはガガガンとアーチャーが必殺の武器として放った宝具が辺りへと突き刺さった。

 見事、イリヤはアーチャーの宝具を弾いたのだ。

 上手くいったイリヤは、ふぅと一息つき、再び魔力をソレ(・・)へと充足させた。

 

 イリヤが持つそれの見た目は、近未来的な様相のライフル銃だ。

 しかし通常では在り得ないものがその先端に付いていた。

 それはライフル銃の長い銃身(バレル)ほどもある“刃”だ。

 それが銃口の下に有る。

 銃剣(バヨネット)というには重厚なその刃の厚みは、人など軽く切断できそうなものだ。

 しかし、それだけでアーチャーは驚いたのではない。

 驚いた理由は他にある。

 それは、その刃が射出されたこと。

 そして何よりも、イリヤが魔力を込めると再度刃が形成され、それを再び射出し、宝具を弾いたのだ。

 

 ライフル系武器『エッジブレイザー』、それがイリヤの手にする物の正体。

 これはキャスターとして召喚されたイリヤの為にコウジュが渡した物だ。

 そしてこれの真骨頂は“弾丸の代わりに刃を射出する”と言う部分にある。

 コウジュが持つ武器の中で言えば、それほど強力な概念(テキスト)を持つ武器ではない。

 ただ刃を弾丸にして放つというだけだ。

 だがこれをイリヤが持てば意味が変わる。

 

 コウジュの持つ重火器系の弾丸は基本的に魔力を使う。

 正確には違うのだが、言ってみれば使用者のエネルギーだ。

 そしてイリヤはコウジュからアーチャーのカードを貰っており、それはいつしかイリヤ自体の戦闘スタイルとして“剣を形成しての射出”というものを作り出すに至った。

 元々髪に魔力を通して半自立型使い魔として鳥や剣に形成することで使役する術式天使の詩(エルゲンリート)は持っていた。

 そこへ新たに得たアーチャーとしてのスキルを融合させることで戦闘スタイルを確立したのだ。

 ただ、今回イリヤは魔術師(キャスター)として現界している。

 バーサーカーに値するスキルを持っていてその枠に無理矢理嵌まり込んだコウジュとは違い、イリヤの場合はキャスタークラスとして補正を受けてしまっている。

 そして補正とは言うが、それによる制限も結構受けてしまうのだ。

 イリヤの場合で言えば、白兵戦能力の低下が最も上げられるだろう。

 耐久性や筋力、敏捷性の低下と言ったところか。

 勿論経験による戦闘能力や、魔力によるブーストが阻害される訳ではないのだが、それでも手痛い。

 そこで新たに生み出した戦法というのが、『エッジブレイザー』の使用であった。

 イリヤは今までの経験から魔力を刃―――、主に剣にすることに長けている。

 それはスキル大元である英霊エミヤから借り受けたモノであるし、コウジュが読み取ったスキルでしかないためにデメリットが無い代わりに本人の心理状態による変化といった物も無い。

 だが、重要なのは魔力による刃の形成だ。

 エッジブレイザーは本来、ぶっちゃけて言えば込められた魔力が弾丸の形ではなく刃として射出されるだけの色物武器と言える。

 しかしそこへイリヤが少し手を加えれば、その射出される刃は“意味”を持つ。

 当然そこには意味を持たせるだけの術式が必要なのだが、そんなものは今の(・・)イリヤには関係ない。

 何せイリヤを召喚した際に使用したのはイリヤ人形、つまり聖杯の受け皿としても使っていたいつもの媒体なのだから。

 そして加えて言えばそのイリヤ人形には一度完成した聖杯を仕込んであった。

 既に器が広がり切っている聖杯である為イリヤの精神を圧迫することも無く、しかも中身を満たすために宝石剣もセットでイリヤの中にある。

 ついでに言えば、イリヤの主はコウジュとなっている。

 今のコウジュには体内魔力量の上限はあるが、元より枯渇することは無い存在だ。

 最後に、何よりも大事なのが『エッジブレイザー』は宝具だ。

 そこから射出された物は、宝具としての威力を惜しみなく発揮する。

 

 つまり要約すると、イリヤが行ったのは“神秘の重ね掛け”だ。

 しかも魔力供給を心配する必要が無いので、乱射(トリガーハッピー)できる化け物ライフルとなっている訳だ。

 

「もう少し隠したかったけど、あなた相手だとやっぱりそうも行かないわよね」

 

 イリヤは奥の手の内片方を早々に切ることになったため、溜め息交じりにそう呟いた。

 ただ、イリヤにとってこれは想定内ではある。

 出来れば隠し通しておきたかったが、この聖杯戦争で一番の強敵となるであろうアーチャーを相手にしているのだ。アーチャーの慢心も理由の一つだが、むしろこの程度で済んでいるのは幸運だと言える。

 そもそも、先の一際強力な宝具以外を、魔力を無理やり込めただけの銀糸剣で防げたのが幸運であった。 

 投影よりもローコストでありながら構成から射出までのタイムラグを少なくすることができる銀糸剣、それを魔力を無理やり込めただけでアーチャーの宝具群に対抗できたのだ。

 それが分かっただけでも儲けものであった。

 何せキャスターが他サーヴァントに対抗する上で何よりもネックとなるのが相手の対魔力だ。 

 三大騎士クラスなどはそのクラスとして召喚されるだけで対魔力のクラス補正を得るというのだから笑い話にもならない。

 しかし今、通用することが分かった。

 それがこの場に出てきた目的の一つだったのだから贅沢は言えない、とイリヤは笑みを浮かべる。

 

 そんなイリヤに対し、宝具の射出を止めていたアーチャーが口を開く。

 

「何だ、それは。見るからに近代兵器であるのに神秘を内包するだと?」

 

 口にした言葉は当然と言えた。

 聖杯からの情報によりイリヤが持つ物をライフル銃という形式の物であることは見て取れた。

 しかし、それが剣を射出するなどという理解から外れる現象を起こしたのだ。

 論理的に考えても、銃から剣を射出するなどという不合理的な兵器に意味は無い。

 しかしたった今、それは己が必殺の宝具を弾くに至った。

 幾ら世界を見通す目を持つと言われるギルガメッシュであろうとも、その様な不合理極まりない宝具など理解の外であった。

 

 まぁ、これはゲームで言えば所謂“浪漫武器”という括りに入る武器でしかない。

 合理性など二の次なのだ。

 かっこよければそれで良い。

 それがたまたまイリヤの戦闘スタイルに合っただけなのだ。

 

「聖杯からのバックアップで銃は知っているのよね。けどこれはあの子の世界に纏わるもの。いくら考えても異世界まではあなたの目も届かないわよね」

 

 当然イリヤはその辺りの裏話をコウジュが目を反らして言わなかった為知らないのだが、異世界だしそんなこともあるのだろうといいように解釈していた。

 それが故の解釈だが、アーチャーは得心が行ったと、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 むしろ、アーチャーが気になったのは他の部分であった。

 

「貴様、先程からこの(オレ)を知った風に囀っているが、何を知った気でいる?」

 

 この場において、名が分かった英雄はランサー:ディルムッド、セイバー:アルトリア、そしてライダー:イスカンダルの3名。

 つまりアーチャーは未だ名は知れていない筈なのだ。

 しかし先ほどから知った風なことを言うイリヤが些か気になったのだ。

 

「言ったじゃない。私達は第5次聖杯戦争を経験しているって。つまり私たちは未来から来たの。だから、あなたについての情報も知っているのよ。古代ウルクにおける人類最古の英雄王ギルガメッシュ」

 

 そんなアーチャーの言葉にイリヤは軽く答えた。

 話を盗み聞いていた面々から驚きの声が上がるが、アーチャーは逆に面白そうなものを見る目でイリヤを見た。

 

「ふん、知っていて尚もその有り様か。面白い、少しばかり興が乗った」

 

 そう言いながら、アーチャーは宝具を納めた。

 背後の黄金の揺らめきが消えていく。

 それを見て、イリヤは目を見開いて驚いた。

 

「あら、もう良いのかしら? 私はまだ遊べるのだけれど」

 

「吠えるな娘、我は言ったはずだ興が乗ったと。この聖杯戦争、今少しばかりは付き合ってやろう」

 

 アーチャーの言葉に、イリヤは訝しんだ眼をする。

 それすらも、アーチャーは愉快そうに見た。

 

「娘、貴様の身体は人形でありながら人でもあるであろう?」

 

「・・・・・・あなたの目はそこまで見えるのね」

 

「当然であろう。我は王だ。王とは民の全てを見る者。そして我はこの世全ての王である。その程度の事も見れずして何が王か」

 

「ああ、そういう奴だったわね。あなたは」

 

 アーチャーの言い様に頭を抱えるイリヤ。

 しかし諦めたように首を振り、改めてアーチャーを見た。

 

「ええ、その通りよ英雄王。私は元々ホムンクルスと人間との間に産まれた存在だもの」

 

「しかし今の有り様は人形でもあり人でもある。その矛盾した姿、聖杯を使ったな?」

 

「それも合ってるわ。私は元々20年程しか生きられないように調整されていたから」

 

 イリヤの言葉に、アーチャーは眉を顰める。

 

「ふん、やはり魔術師共は気に入らんな。神にでもなったつもりか」

 

「あら、心配してくれるの?」

 

「戯け、戯言も程々にしろ。貴様のその(なり)に思う所があっただけの事よ」

 

 アーチャーの言葉に、イリヤはギルガメッシュの来歴を思い出す。

 英雄王であるギルガメッシュには唯一無二の友が居た。

 その名はエルキドゥ。

 神によって英雄王を繋ぎ止めるために送り込まれたのだが紆余曲折の後、最後は英雄王の代わりに死した存在だ。

 そんなエルキドゥの正体は、神の手により造られた泥人形であったという。

 

 そんなことをイリヤが考えていると、アーチャーはイリヤから目を離してコウジュ達の方へと目をやっていた。

 釣られてイリヤもコウジュの方へと目をやった。

 

 それを見てイリヤは―――、

 

 

「・・・・・・帰ったらお仕置きよ、まったくもう」

 

 

 

 と、呆れたように呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

「っご、ぷ……」

 

「終わりだ、バーサーカー」

 

 言葉を返そうとするも、それも儘ならない。

 何せ胸のど真ん中を槍で貫かれたのだから。

 とりあえず勢い余って触ったランサーは許さない。

 ってそんなこと言ってる場合じゃない。

 めっちゃ痛い。超痛い・・・・・・。

 

 俺はルゥカを消し、杖を出す。

 今回は念のため葱ではなくクラーリタヴィサスと言う長杖だ。

 

「バーサーカー、何をするつもりかは分からぬが貴様を貫いたのは呪いの黄槍だ。その傷は決して治らない」

 

 既に離れているランサー。

 その姿は既に勝敗は決したと言わんばかりだ。

 

「れ、スタ・・・・・・」

 

 淡い緑光が俺を包む。

 だが、回復する感覚は無い。

 

「あー……、これで一人脱落か。残念だのぅ」

 

 俺の姿を見て、名残惜しそうにそう言うのはライダーだ。 

 他の面々はというと、俺の無駄な抵抗に痛ましいものを見る目を向けている。

 アイリさんとか泣きそうですよ。

 ごめんなさい、痛みで俺が一番泣きたいです。

 でもまぁ確かに、俺はこのままじゃ死ぬだろう。

 ほんとは腕を斬られる程度のつもりだったのだけど、双槍ってやっぱカッコいいなとかつい思ってる間にズドンされたのだ。

 ちょっと気が反れただけなのだ。うっかりではない。

 

 とりあえず、今回は死ぬわけにはいかないのでさっさと治してしまおう。

 どうするのかだって?

 そんなのは簡単だ。

 呪いそのもの(・・・・・・)をどうにかするだけ(・・・・・・・・・)だ。

 

「レジェネっ、レスタ」

 

 光が連続して2度、俺を中心に包み込む。

 ちょっと勢い余って範囲が広がったけど、まぁ問題ない。

 

「なんと・・・・・・」

 

 目を見開いて俺を見るランサー。

 ふふふ、この瞬間だけは気持ち良いね。

 見れば他の面々も驚いてくれている。

 まぁ回復持ちのバーサーカーとか驚くしかないよね。

 

 今回俺がしたのは、単純だ。

 状態異常回復の魔法(テクニック)を使った後、通常の回復をしただけ。

 持っている杖は一応回復量の向上効果を持つのだが、それ自体は念のためでしかない。

 問題は状態異常回復(レジェネ)が呪いにも適用されるかどうかって部分。

 しかしそれはたった今、可能だと分かった。

 

「もう一回遊べるドン! ・・・・・・なんてね」

 

 サムズアップしながら言ってみたがそれぞれ目を見開いたりと忙しそうで反応してくれないので誤魔化すように付け加える。

 ボケ殺しとか一番辛いからやめてほしい。

 

 まぁさておき、これで俺の目的は達成された。

 

「いやはや、予想通り黄薔薇の呪いもやり方次第でどうにかなるもんだね」

 

「そんな馬鹿な・・・・・・」

 

「まるで幽霊でも見る様な目じゃないですかランサー、ただ単に呪いを如何にかしてから回復しただけなのに」

 

 まぁ実際にはそう簡単に治せるものでもないのだろうけど、俺の認識ではHPを削るのではなくそのゲージ自体を削るのがあの黄槍の呪いという認識だ。

 呪いを無視して回復は出来なくても、呪い自体を如何にかすれば回復できると俺は思ってた(・・・・)

 そして実際そうだったので、もうあの黄槍は怖くない。

 

 矛盾と言う故事がある。

 学校でも習うそれだが、何が言いたいかというと、実際にそう言った能力を持つ武器があるこの世界に於いて、全てを貫く槍や全てを防ぐ盾なんかを相手にした場合の対処法はどうすればいいかということだ。

 一撃必殺なんてされようものなら、即時敗退となってしまう。

 だけど、それだと困るのだ。

 だから、実験としてランサーには協力してもらった。

 承諾はしてもらってないけど。

 

「そう易々と破れる呪いではない筈だ。それが何故・・・・・・」

 

「流石にそこまでは言えないっすよ。ま、これで俺の負ける可能性は一つ潰せたって訳だ」

 

 そう、それこそが俺の最後の目的、ランサー・・・・・・ディルムッド・オディナの持つ呪いの槍の効果の確認だ。

 妖精王から齎されたって言う呪いがどれ程のものか確かめるのが今回の目的だ。

 最悪死んでもスケープドールがあるが、今回ばかりは勝ち続ける必要がある。

 そして、今ので対策出来ることが分かった。

 直接その効果を防げないのであれば、その能力自体に干渉すれば良い。

 恐らくこれは他の呪いを持つ武器にも有効だろう。

 これで俺が負ける確率はかなり減らすことができた。

 

 ただ、元々は腕で受けるつもりだったんだよな。

 もしも想定と違った場合駄目だし。

 ま、まぁ終わり良ければ総て良しってことで。

 向こうでイリヤさんがちょっと怖めの笑みを浮かべているが、だ、大丈夫なはずだ・・・・・・。

 

 とりあえず、俺は目的を達成したのでイリヤの方から目線を外し、予定通りこの場を離脱することにした。

 

「さてさて、ありがとうランサー。お蔭で実験は終わったよ」

 

 そう言いながら、俺は武器をルゥカからツミキリ・ヒョウリへと持ち変える。

 そしてそのまま、上空へとジャンプして宙に立つ。

 続けてツミキリ・ヒョウリで空間を斬り、イリヤの足元へと繋げてイリヤを回収した。

 イリヤは繋がった空間を通り、俺の横へと降り立つ。

 魔力を込めた足場を作るのはイリヤには言ってあったが、何とも優雅に立つものだ。

 

「待て、バーサーカー!!」

 

「申し訳ない。勝負はまたの機会ってことで!!」

 

 ランサーが待つように言ってくるが、古今東西待てと言われて待つような輩はそうそう居ないってものだろう。

 俺はもう一度空間を斬り、そこへと身体を沈めていく。

 

「今度は負けないからな!!」

 

 そう言い残し、俺はその場を去った。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

戦闘回というか、魔改造イリヤの紹介みたいな感じですが、仕方ないですよね!
変に長くしても仕方ないしと言うことでこんな感じに。
あれ、そういえば主人公的な人が出なかった気がしますが・・・・・・まぁ気の所為ですよね?
某青い騎士さんも影が薄かったですが・・・・・・仕方ないですよね!(え


さてさて、次回からが本当の聖杯戦争……と言ったところでしょうか。
次週はまたリアル事情で更新できないかもなのですが、出来る限り頑張りたいと思います。
ここから崩れていく第4次聖杯戦争を、楽しんで頂ければと思います。
ではまた!!



P.S.
FGO運営さん! ピックアップをころころ変えていくの勘弁してくだせぇ!!
財布が、財布が死ぬ!!!!
あとメデューサロリィさんまだうちに来てないんですが( ;∀;)



ま、まぁさておき、皆さん一緒にソロモン殴り頑張りましょう!!




P.S.2
クリスマス
また来てしまった
クリスマス



P.S.3
評価してくれた人の人数がたまに減るのは何でだ……。

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