テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編    作:onekou

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どうもonekouでございます。

今回はキャスター枠を埋める回と、臓硯がどうなったかの回となります。
そして、臓硯がどうなったかという部分は最後の方なのですが、その部分で微妙にR18な表現を使っております。マイルドにしたとは思うのですが、そう言った表現が苦手な方はご注意ください。


『stage2:サ(↓)モナー(↑)』

 

 

 

「えと、これとこれと、これでおkだな」

 

 目の前に並べられた幾つかの品々、その中にはつい先日手に入れたキャスターの(モニュメント)もある。

 それらを用意された魔術陣の中へと置く。

 そう、今から行うのは召喚だ。

 

「バーサーカー、本当にこんなにも簡易的で大丈夫なのか? 俺が爺にさせられた時はもっと準備したもんだが・・・・・・」

 

「大丈夫大丈夫。なんでも、召喚自体は聖杯が代行するから呼び水となるものさえ用意すればいいんだってさ。あのトゥー!ヘァー!とか言いそうな優男から奪った令呪もあるし、縁のモノもあるからイケルイケル」

 

「トゥー? ・・・・・・たまにお前の言うことが分からないのはやはりバーサーカーだからなのか?」

 

「喧嘩売ってる? 買おうか? 次は蟲爺みたいにするけど」

 

「これ以上俺の男としての尊厳を殺そうとするな! やるならさっさと儀式をしてくれ!!」

 

「全く我が儘だなぁ今回の召喚主は」

 

「誰の所為だ!!」

 

 準備を手伝ってくれていた雁夜少年(おじさん)との会話を楽しみつつ、準備を終える。

 雁夜おじさんが完全にツッコミ役になっているが、まぁいっか。

 それに、こんな会話ができるってのも平和な証拠だ。

 

 さておき、キャスジルを倒して早数日。

 今居るのは間桐邸である。

 そのリビングに於いて、開けたキャスター枠を埋めるべく、仲間を召喚するべく俺は準備をしていた。

 それも今、終わった。

 諸事情により地下室が使えないのでここにしたのだが、あんな辛気臭いし、実際に臭い所に居られない。

 その為少しばかり準備に手間取ったが、後は呪文を唱えて呼び出すだけの段階まで持ってこれた。

 

「さて、始めようか」

 

「分かった。予定通り俺は外に出てるからな」

 

「ういうい。終わったら改めて紹介するよ」

 

 言いながら部屋を出る雁夜おじさんを見送り、俺は改めて召喚陣へと目を向ける。

 床に描かれた魔術陣の上にある金色の駒と宝石剣、そして彼女縁の人形(・・)

 金色の駒に関しては、FGOにあったものをイメージして、形が魔術師(キャスター)の形となっている。

 本来であれば違う駒が良かったのだが、流石にそれは止めておいた。

 今の俺(・・・)が確実では無い戦いをするわけにはいかないのだ。

 だからこその、協力者。

 

 

「ほむ、最初の一言は何にしようかねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 その部屋に、魔力が満ちる。

 

「―――閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する―――」

 

 言葉を紡ぐのは、バーサーカーであるコウジュだ。

 その手には、()が握られている。

 本来であれば今行っている儀式には魔術師であることが必要だ。

 しかし、コウジュは最も適性があるのが狂戦士(バーサーカー)というだけで、魔術師(キャスター)の真似事ができないわけでは無い。

 当然、“出来ない訳ではない”と言うだけで、真に迫ったものではないのだが、今は適性があればいいというのがコウジュの判断である。

 そしてコウジュの左手には今、令呪がある。

 令呪自体は雨龍龍之介から奪ったものだが、それも今や伊丹の手にあったものと同じ獣の引っ掻き傷の様な3画の令呪へと変貌し、コウジュの手に馴染んでいる。

 

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ―――」

 

 令呪を通して、聖杯から魔力を汲み取り召喚陣へと流し込む。

 一度は喰らった聖杯だ。感覚ではあるが、コウジュは令呪を通して聖杯へと接続することが出来た。

 とは言えそれは聖杯を侵食する物では無く、コウジュ自身も聖杯としての機能を学習(ラーニング)した為にできることだ。

 そもそもこの世界の聖杯は未だ完成していない。

 対してコウジュは一度完成した聖杯を飲み込んだ。

 故にこそ持つ権限。

 聖杯と聖杯を繋ぐ機能は元々在るものであるし、それを少し応用したに過ぎない。

 

 ただ、コウジュはこの権限を用いて聖杯を思うままにしようとは考えていなかった。

 コウジュはコウジュで、とある目的を以て聖杯を完成させ使うつもりだ。

 最初の世界の様に、自身の敗北を視野に入れるのではなく、勝つつもりでこの聖杯戦争へと臨んでいた。

 

「―――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者―――」

 

 コウジュは今回、獣神としての力は使えない。

 それは、とある願いを叶えるために“願う”力を全てそこへ集約しているからだ。

 コウジュは願いを叶える力、『幻想を現実に変える程度の能力』を昇華させたが、実はそれは未だ不完全だ。

 認識し、結果を思い浮かべ、形にする。

 その工程を経て、願いは現実のものとなる。

 それはつまり、1度に1つずつしか願いは叶えられないという事だ。

 簡単なことならば瞬時に、または纏めて一つの物として処理することもできる。

 しかし今、現在進行形で行っていることにコウジュはその力を使っているため、前世界で得た獣神としての力は振るえない。

 だが、それがコウジュの弱体化を意味する訳ではない。

 コウジュ自身、神としての本領を発揮する必要は無いと考えている。

 自由度としては第五次聖杯戦争時よりは下がったかもしれないが、サーヴァントとしての経験は今の方が勝る。

 あの時の様に力を持っただけの一般人ではなく、一端のサーヴァントとして成長しているのだ。

 ただまぁ、念の為に、一応、万が一にも負けることが無い様に仲間が要る。

 その為の召喚なのだ。

 

 それに、コウジュは彼女と共に勝ちたかった。

 だから、彼女を求める。

 

「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 瞬間、魔力が吹き荒れる。

 召喚陣には稲妻が走ったように雷光が発生し、バチバチと甲高い音を響かせる。

 それは次第に大きくなり、コウジュが求める存在へと手を伸ばそうとする。

 そこへ、コウジュは自身の魔力を流し、道を開く。

 それは“彼女”を呼ぶために必要なことだ。

 何せ彼女は本来サーヴァントではない。

 英雄と呼ばれるに等しい事を行うが、彼女自身が聖杯に求める物は無い。

 だが、コウジュの呼びかけには答えてくれる。

 そういった確信がコウジュにはあった。

 

 そして―――、

 

 

「はぁ、召喚に応じ参上したわよコウジュ。今回の“願い”は何かしら?」

 

 

 ――そう、召喚されたイリヤ(・・・)は告げた。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「それで、バーサーカーがキャスターを召喚した理由は何?」

 

 そんなことをジト目で言うイリヤさん。

 それにあはは・・・と苦笑しながら答えつつ彼女を見る。

 

 イリヤの姿は前の世界で別れた時から寸分も変わらぬ姿だ。

 つまり大人の姿での彼女だ。

 年齢は確か20代後半ぐらいになってるんだったか・・・。

 そんな彼女の姿は絶世の美女と言っても過言ではない位のもの。

 身長は当然俺よりも高く、モデルも羨むプロポーション。しかし俺と同じサイズ位の時から見せていた小悪魔チックな所は今も持ち合わせており、それが彼女に妖艶さを生み出している。

 

 そのイリヤさん、やけに不満顔である。

 主に俺の所為で。

 

「とりあえず、久しぶりで良いのかな? 俺の体感ではたった数日だけど」

 

「私もその程度よ。ただ、突然異世界で生活した記憶が流れ込んだから驚いたわ。それを消化している内にまたあなたから呼ばれたの」

 

 あー、そんな感じでイリヤはあの世界に帰ったのか。

 気にはなっていたんだけど確かめる術を思いつかなくて保留していたのだ。

 まぁ、何はともあれ無事にまた出会えたわけだ。

 

「前はアンジュちゃんが呼んだらしいけど、今回は俺が呼んでみたんだ。それ自体には何も支障は無さそう?」

 

「アンジュ・・・・・・ああ、前に聞いた一条祭らしき子のことね。召喚については今は何とも言えないわ。キャスターとして呼ばれたのだし」

 

「アーチャーの枠を用意出来たら良かったんだけど、手っ取り早く用意できそうなのがキャスター枠だけだったからさ。すまぬ」

 

「良いのよ。弓も剣も結局は借り物だし、本来は魔術師なんだもの」

 

「まぁ、弓兵(アーチャー)に弓は元々飾り的な部分有ったしね」

 

 弓を使うアーチャーなど居ない的な迷言も何度掲示板で見たことか。前の世界でも見たし。

 それに、イリヤの今の戦闘スタイルは銀糸を編んだ剣の操作・射出がメインだ。

 戦闘能力事態にはさほど影響しないとは思う。

 それでも気になるのは、この聖杯戦争の参加者として認識される様にこの世界の聖杯を使用したからだ。

 俺の魔力を流用して、俺を通して呼んだとはいえ、未だ『この世全ての悪(アンリ・マユ)』が巣食う聖杯の影響を受けないとも限らない。

 まぁ、俺が接触した時点で何も無かったのだし、呼ぶための穴を聖杯が開けるだけで泥を浴びるわけでも無いから何ともないとは思うが念のためというやつだ。

 

 そんなことを考えながらイリヤを見ていると、身体の確認をしていたイリヤは『あ…・・・』と何かに気付いたように声を上げた。

 

「そういえば、何だか魔力がいつも以上に充実しているような気がするわ。まるで何処からか供給されているような……。貴方がマスタ―だからかしら?」

 

 それに対し俺は何とも気まずくなる。

 いや、別に他意はないのだけど、アレ(・・)を俺と一緒に知ったイリヤからすれば、今のキャスターというクラスも含めて引っかかる部分が出来るのではと思うのだ。

 

「言いなさい」

 

「はい」

 

 残念、イリヤからは逃げられない!

 というか、昔からイリヤの言葉には弱い。

 それは主従関係が有ったからとかではなく、なんというかこう、カリスマ(?)的な。

 そんなこともあり、とりあえず言う事にする。 

 条件だけで言えば悪くは無いのだから

 

「えっとだな、それは召喚時に用意したものが原因なんだ」

 

「召喚時に、ね。私の人形(ヒトガタ)だけじゃないってことよね? それは何かしら」

 

 うぐ、鋭い・・・。

 流石は何年も一緒に居ただけの事はある。

 そんな彼女は腰に手を当てながら、俺を追及するように目を鋭くしている。

 俺は観念して、用意したものを言うことにした。

 

「先ず、イリヤ人形だ。前の事もあってイリヤは俺の眷属に近い形で登録されてるとはいえ、本人をそのまま召喚する訳にはいかないからな。次にキャスターの枠。7騎の枠を埋めると同時に、サーヴァントとしての戦力(仲間)が欲しかったからだ。そして聖杯。一度完成して俺と同化していた聖杯はイリヤの身体を圧迫することなくサーヴァントたちを受け止めるはずだ。本来の小聖杯に負担を掛けずに済む。そして最後が、イリヤの魔力が通常の供給以上に満ちている原因だな」

 

 そこまで言って、俺は思わず目を反らした。

 そしてそのまま続きを言う。

 

「宝石剣だよ」

 

「・・・・・・はい?」

 

「だから宝石剣だよ。イリヤがキャスター枠になるなら、“第二魔法(カレイドスコープ)”が必要かなぁと思って・・・・・・」

 

「え、それってつまり・・・・・・」

 

 そう、彼女はあの漫画の存在を俺と共に前の世界で知っている。

 その名を―――、

 

「マジカル☆イリヤ爆誕! なんつって・・・・・・って痛!? 痛いってイリヤ!!? ワイヤー飛ばすの止めて!!!」

 

 ――――『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』。魔法少女となったイリヤが活躍する漫画だ。

 

 ワイヤーで俺をボンレスハムみたいにしようとするイリヤを押さえつつ、俺は続きを話す。

 

「ふざけて悪かったけど、キャスターとしては魔力の供給は大事だろう!? あ、こら暴れるな! だ、だからですね、発想はそこからだけど、イリヤ自身があの杖の役割を担えるように人形に取り込んであるんだよ!!」

 

「っ・・・・・・。そういうことなら、まあ良いわ。許してあげる。でも次マジカルどうとか言ったらその心臓を貰い受けるわ」

 

「ヤンデr・・・・・・いやなんでもないです。はい。」

 

 言ってる途中でイリヤが銀糸で槍を造りだしたので言うのを止めた。

 それにしても未だに根に持っているようだ。

 何せ、前の世界でだが、自分自身ではないとはいえ元が同じイリヤが魔法少女としてちょっと百合チックに活躍する漫画を見てしまったのだから。

 ただまぁ、それだけならイリヤも漫画自体は面白いし、自分ではないのだからと許容できたのだ。

 だが、ネット上で自身とのコラ画像(大人イリヤに着せているムチムチ状態)が出回った時にイリヤはブチギレた。無駄に技術高かったから余計に。

 お蔭で作者を探し出してUBWしようとしたのだ。

 その時は何とかネット上で呼びかけたりとかで納めたのだが―――やろうと思えば作者を特定も出来たが流石にやらなかった―――、本当にあの時は大変だった。

 

 そのことを思い出して遠い目をしていると、イリヤは一つ溜息を吐き話題を変えた。

 

「それで、私をキャスターとして呼んだのはあなただとして、あなたのマスターは誰になるの? それに流れてきた知識からして、れっきとした聖杯戦争よね? なら第何次の聖杯戦争になるのかしら」

 

「第4次だよ」

 

「・・・・・・!? ねぇ、聞き間違いじゃなければ第4次って言ったのかしら?」

 

 俺の言葉に目を見開くイリヤ。

 そして、必死で抑えるようにしながらも隠しきれていない震えた言葉で、イリヤはそう言った。

 そんな彼女の言葉を肯定するように、俺は再び言う。

 

「聞き間違いじゃないさ。今回の聖杯戦争は第4次だよ」

 

「・・・・・・それは、お母様が、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが、衛宮切嗣が参加した第4次聖杯戦争という事なのよね」

 

「ああ」

 

「そう・・・、なの・・・・・・」

 

 幾つもの感情が混じり、瞳を潤ませながら呆然とするイリヤ。

 そんな彼女を慰めるように、奮い立たせるように俺は抱き付く。

 

「俺は、イリヤの願いを叶えたい。一度目は生きたいとイリヤは願った。そして前の世界でイリヤはZeroに関する作品を見て願ったはずだ。こうでは無かった世界があればって。プリヤの世界でもイリヤの両親は生きていたけど、それとはまた違った悲劇があった。だから、本当に何も無い平和な世界をイリヤが願ったのを俺は知ってるんだ」

 

「それ、は・・・・・・」

 

「誤魔化せないのは知ってるだろう? 俺は消化した力の副作用で人の願いを聞き取ることが出来た。それはイリヤ相手でも同じだ。全部じゃないけど、強い願いは特に俺の中へと入って来る。イリヤは平気そうな顔してたけどさ、俺は見てられなかったんだ」

 

 俺がそう言うと、イリヤの身体がビクリと震えた。

 顔を見ることが出来ないからどういった感情からそうしたのかは分からないが、その後イリヤは暫く沈黙した。

 そして暫くして、イリヤは再び口を開く。

 

「・・・・・・覗きだなんて、趣味が悪くなったものね」

 

「素直じゃない子が多くてね」

 

 イリヤの言葉にはいつもの力が無かった。

 だけど、俺はただイリヤを悲しませるためだけにこんなことを始めたのではない。

 俺はイリヤから身体を離し、見上げる形でイリヤを見る。

 身長の加減で真正面から見れないのが残念だが、今に始まったことではないので仕方が無い。悔しくは無い。ほんとまじで。

 とにかく、俺は改めてイリヤを見て、力強く言う。

 

「イリヤ、ここからは俺の願いでもある」

 

「何?」

 

「アイリさんと切嗣さんを救おう。あと舞弥さんも・・・・・・舞弥さんに関してはイリヤも複雑だろうけど、俺としてはやっぱり死なせたくない」

 

「それを言い出したらシロウはどうなるのよ。あの子は3股よ?」

 

 ・・・・・・そうでした。

 

「それよりも、そんなことが可能なの?」

 

 俺が士郎の事を思い出して苦笑していると、イリヤは恐る恐るといった様子でそう聞いてきた。

 それに対して、俺は力強く頷いた。

 

「可能だ。その為に俺は今、それを可能にするために獣神としての権能をこの世界に使ってる」

 

「でもそれは時間の逆説(タイムパラドックス)とか言うものが起こるんじゃないの? そうすると私とあなたが出会ったこの後の世界は全てなかった事にになるんじゃ・・・・・・」

 

「ならないよ。そうならない様にしたんだ」

 

 タイムパラドックス。時間遡行における命題。

 その回避方法は、俺の中でもう決まっていた。

 

 俺の言葉に首を傾げるイリヤ。

 そんな彼女に、あるものを見せる。

 

「それは確か・・・・・・」

 

「そう、サイカ・ヒョウリ。運命を支配する対の剣だ。これを使った時の事を覚えてる?」

 

「っ!? そうか、桜の時ね」

 

「That's right! 桜の中から蟲に弄られた結果を取り出す(・・・・・・・)時に使ったチート武器さ。そして実際にそれは成功した。士郎と出会った結果を消すことなく、“蟲に弄られた”という結果だけを斬り取ることが出来た。そんな矛盾(・・)を、確定させることが出来ていた」

 

 あの時は偶々に近かったが、今ならわかる。

 キャスターに言われた矛盾という俺の可能性、それも結局は幻想を現実に変える能力から来るものだったんだ。

 俺が願った事象を(・・・・・・・・)現実に(・・・)していただけだったのだ。

 その結果矛盾が起こるが、それをそのままに固定する。

 世界の流れの観測者が俺だからなのか何なのか、そういったことが桜を治す時に行う事が出来ていた。

 なら、その範囲を拡大してしまうだけだ。

 1度出来た(体感した)ならば、それは俺にとって“出来る事”なのだから。

 

「つまり、第4次で死ぬはずだった運命を此処で変え、それをあの世界に移植する。それが俺の願いだ。それを、良ければイリヤにも叶えて欲しい。そうすれば、最後に書く言葉はハッピーエンドって訳だ」

 

「矛盾、してるわ」

 

「そんなの最初からさ」

 

「この世界の()はどうなるの?」

 

「それもイリヤさ。本来の第4次聖杯戦争が在って、その後に俺とイリヤの第5次聖杯戦争が在って、その後にこの第4次聖杯戦争の間だけの時間が入り込むだけだ。言ってみればこの第4次聖杯戦争は俺が創った固有結界みたいなものでさ。その結果があの世界に流れ込む。俺の上司?みたいな神様もダメだとは言わなかったし、大丈夫さ」

 

「本当に、良いの?」

 

「良い。その為のここだ。この特異点だ。それに、俺の願いだけでなく他者(イリヤ)の願いが在って初めてここは確定する。その上で救いたい人を救って、矛盾(幻想)を現実にする。ほら、ハッピーエンドだ」

 

「なら、私は願うわ(・・・・・)

 

 そうイリヤが言った瞬間、俺の中に力が満ち溢れる。

 願われた(・・・・)

 なら、それを叶えるのが俺の願い(権能)だ。

 

「All rightだイリヤ。これで本格的に動ける」

 

 改めて、自身の、皆の(・・)願いを叶えるために能力を行使する。

 “イリヤ達に(・・・・・)救われて欲しい(・・・・・・・)”、それはFate/Zeroを知った色んな人の願いだ。

 前の世界にも、そういった“if”を描く二次創作はたくさんあった。

 その“願い”は前の世界から持ってきている。

 そして、あの世界にイリヤが降り立ったこともあり、それは強く、大きくなっていた。

 それを使わせてもらう。

 

 

「さーてイリヤ、もう一度お前さんには救われてもらうからな」

 

「全く、本当に困ったバーサーカーだわ」

 

 そう言いながら、今度はイリヤから抱き付いてきた。

 正直に言って胸部装甲が凶悪な今のイリヤにされると窒息しそうなのだが、まぁ役得ってことで。

 それに、頭の上にぽたりぽたりと落ちてくる雫を感じてしまえば、引きはがすことが出来るだろうか。いや、出来ない(反語

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

「よせやい、未だ聖杯戦争は始まってないさね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「そういえば、あなたはどの陣営に召喚されたの? バーサーカーだし予想は付くのだけれど」

 

 落ち着いたイリヤは、コウジュを抱きしめたまま(向きは変えて)近くのソファーへと座った。

 そしてコウジュに対してそう聞いた。

 

「お察しの通り、俺を呼びだしたのは間桐陣営だよ。俺が割り込んだ形だけど」

 

「ということはあなたのマスターは間桐雁夜なのね。それは彼にとってかなり救いになるでしょうね」

 

 実際、コウジュのサーヴァントとしての価値は高い。

 能力はさることながら、一度召喚されてしまえば魔力の自己供給が出来るためにマスターの負担は0に近いのだ。

 更にバーサーカーの欠点たる狂化はスキルでしかなく、コウジュは割かし意志が通じる方だ。たま―に暴走するだけで。

 そして、何よりも悲劇を嫌う。

 実際に間桐邸には今や平和が訪れていた。

 

「ああ、そういえば雁夜おじさんを紹介するつもりだったんだ。結界張ってて部屋の内外を隔絶してるんだった。まぁ後で紹介するよ。・・・・・・小さくなってるけど」

 

「・・・・・・まさか、第5次でサーヴァントたちにやった事を彼に?」

 

「てへぺろ」

 

「・・・・・・可哀そうに」

 

「いやいやいや、あの人結構エンジョイしてるからね!? 桜ちゃんと遊んだりして楽しそうだからね」

 

「それなら・・・・・・良いのかしら・・・・・・?」

 

 首を傾げるイリヤに良いの良いのとコウジュは告げる。

 何だかんだと言いながらも、コウジュの言う通りに雁夜は小さくなった身体で桜と遊んでいた。意味深ではない。

 

「けど、そうなると一番の問題である間桐臓硯はどうなったの?」

 

「あー・・・・・・、それはですね・・・・・・」

 

 間桐の家を悲劇に包む最大の原因である間桐臓硯。

 その存在をどうしたのかイリヤが聞いた途端に不穏になるコウジュ。

 イリヤはすかさず銀糸を使ってコウジュを空中に貼り付けにして自身に対面させる。

 

「チョットイリヤさん!? 少しばかりこれはハードじゃないですかね!? 俺にそんな趣味ないんですけど!!」

 

「話して?」

 

「いや、先にこれを外してくれないと」

 

「教えて?」

 

「・・・・・・はい」

 

 外して、と言いながらコウジュは難なく拘束を力任せに引きちぎり、床に降り立つ。

 そして頬を掻きながら、コウジュは口を開いた。

 

「まぁあれだ。無害化には成功したんだけど、ある意味有害になったというか、目の毒というか・・・・・・」

 

「目の毒? ああ、そういえば本体は桜の中の蟲だったものね」

 

 間桐臓硯はとある願いの為に永遠の命を欲した。

 しかしいつしか永遠の命にばかり執着し、本来の願いを忘れ命を啜る邪悪となった。

 そしてその為に、自身を魔術蟲と化して他者に寄生させたうえで長い時を得るに至った。

 その蟲こそが、桜の中に植え付けられていたのだ。

 

 それをイリヤは思い出した。

 しかしコウジュは首を振る。

 

「確かにそれが本体だったんだけど、ちょっとお仕置きをしようとしてですね」

 

「・・・・・・うん? お仕置き?」

 

「うぃ。俺ってさ、実質的には死者の蘇生って出来ないんだ。魂の状態は俺からすればまだ“生きている”状態だから身体を産み出すだけだし、身体がどれだけボロボロでも回復させることができる。俺自身に関しては、不死となる要素を持ってるけど、実質的にはそれは転生に近い物なんだよ。前にも言ったけど、今の俺も実質的には転生者って枠組みだし」

 

「それは確かに聞いたけど・・・・・・」

 

 コウジュはイリヤに自身が転生者で、元は男だということは告げている。というかバレている。大元が唯の大学生だということまでは言っていないが。

 そんなコウジュの言い回しに、イリヤは再び首を捻る。

 結局何が言いたのだろうか?

 そうイリヤが考えていると、コウジュはこう告げる。

 

「結局何が言いたいかというと、魂も無い状態からの死者蘇生は出来ないんだ。まだ覚えてないからか、覚えるに至る世界にまだ行かせてもらってないからかはさておき。だからこそこんな遠回りな過去改変をしようとしている訳だけどさ。それでまぁ、俺が出来るのは“転生”みたいなんだ」

 

 コウジュがチートを得た時から、コウジュは時間回帰にも似た死者の蘇生は行えない様にされていた。

 それにもまた理由があるのだが、しかしその中で色々しようとしていた結果、コウジュが得たのは“転生”という権能(属性)のようなもの。

 最初はスケ-プドールを用いての裏技の様な物だったが、気付けばコウジュはそれを使わずに行っていた。

 それにコウジュ自身、元々転生者である為、その感覚(・・・・)を知っている。

 そして決め手は、獣神化した状態で自ら蟲獣の親玉であった存在にアル・アジフとしての身体を生み出したこと。

 その結果、“転生”といった手段を、コウジュは覚えた(・・・)

 

「で?」

 

「うぅっ、それでですね、間桐臓硯に俺は言ったんですよ。偶にはお前自身で“幼女が蟲に好き放題される感覚を体感してみろ”って」

 

「・・・・・・あなたまさか」

 

「や、やっちゃった!!」

 

 コウジュが言いたいことに見当が付き、驚きに目を開きながらコウジュへと問う。

 するとコウジュは手にツミキリ・ヒョウリを呼び出し、徐に空を斬った。

 その瞬間、部屋に嬌声が響いた。

 

 

 

 

『もっと、くぅ、うぅんっ、この程度では、今までの贖罪には、足りぬんほぉっ!?』

 

 

 

 

 少し反響しているのか、裂けた空間からそんな声が届いた。

 更に言えば、その裂け目はイリヤの目の前にあった。

 つまり、裂け目の先がイリヤの視界に映った。

 

 そこには、青髪の童女が控えめに言って”戯れている”様子だ。 

 もう少しだけ詳しく言うと、絡み合っている様子だった。

 しかも、その童女は申し訳程度に和服らしきものを所々に引っかけただけで、全裸だった。

 ついでに言えば、その年齢にふさわしくない艶をその顔に映していた。

 ぶっちゃけ、蟲と交合(まぐわ)っていた。

 

 イリヤは瞬時にそれの意味するところを理解し、顔を真っ赤にしながら固まる。

 しかしすぐに再起動し、コウジュへと声を荒げた。

 

「閉じて!!」

 

「イエスマム!!!」

 

 コウジュは再びツミキリ・ヒョウリを振るい、それによって裂けていた空間が閉じた。

 “ゲート”というものに触れた結果、比較的簡単に空間を繋げたり出来るようになったコウジュだが、イリヤからすれば堪った物では無かった。

 

「あ、あなたねぇ、なんて物を・・・・・・」

 

 震える声でイリヤが言う。

 そんなイリヤに、コウジュは言い訳染みた言葉を言う。

 

「い、いやぁ、本当は言いたくなかったんだよ俺も。でもほら、言わないと怒られそうだったから」

 

「あんなもの見せられた方が怒るわよバカぁ!!」

 

 顔を真っ赤にして涙目なイリヤ。

 比較的耳年魔ではあるが、さすがに今のは上級者過ぎたのだ。

 

「でもほら、基本的には無害になったんだよ! 若返らせたついでに麻婆にしたみたいにしたからか、性根も正義に満ちてるし!! ただまぁ贖罪とか言いながら地下室で蟲と戯れるようになっちゃって、ついでに言えば被虐趣味に目覚めたみたいでねぇ・・・・・・。だからイリヤの召喚にリビング使ったわけだけど」

 

「そう言う問題じゃないわよバカコウジュぅっ!!!!」

 

「痛い!? 痛い痛い!!! ちょっとした出来心だったんだって!! 痛ぁっ!!?」

 

 なんとかイリヤからの折檻を逃れようとするコウジュだが、そもそもそう言う問題では無かった。

 

 しかし、こうして間桐邸には平和(?)が訪れた。

 少なくともこれ以上間桐邸で悲劇に見舞われる人間は居なくなったのだ。

 

 

 

 

 

 めでたしめでたし(目反らし

 

 

 




いかがだったでしょうか?

いや、まぁ、はい、これだいじょうぶですよね?
ギリギリR15位の表現ですよね?
控えめに言っても、童女と蟲が戯れてるだけですし!!

・・・・・・駄目そうなら書き直します<(_ _)>



さておき、今までにここまでワカメと臓硯を改造したSSが在ったでしょうか。
即排除か、正義ZOUKENにするパターンは今まで見たことがあるのですが、童女にしてしまうのは無かったんじゃないかなぁと思います。
とりあえず言えることは、平和的な解決方法だしギャグ補正的なあれで大丈夫ですよね!(錯乱


それもさておいて、新たなキャスターはイリヤさんでした。
少女状態にするか、それとも大人イリヤにカレイドライナーするかかなり悩みましたが、イリヤのダメージが少ないこんな状態になりました。
愉快型魔術礼装を貰いに行くのも考えましたが、流石にそれは止めておきました。
ちなみに、イリヤを召喚するのは以前書いたZero二次と同じ展開ですが、細部は既に違っています。前はまだジルさん生きてたし。
差異の理由はコウジュが原作知識を持っているか否かという所が大きいですが、さっそくジルさんを退場させちゃったので、今後の展開をしっかりと構成できるように頑張らないとです!!


さて、それではまた次話でお会いしましょう!
ではでは!!!


P.S.
FGOに・・・・・・

紅 い 悪 魔 が や っ て く る。

いやぁ、次のイベントが楽しみですね!
ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィちゃんとか言う最高に愛くるしい幼女も増えるみたいだし、超楽しみです!!!

あ、アチャ男さんどんまいw
早速イラストでエミヤアサシン、ヘブンズフィールママ、マジカルなイリヤ、紅い悪魔(弓兵)に囲まれるアチャ男さんの江が出ていた笑いましたが、まぁしゃーないですねw


P.S.2
今年もクリスマスがやってくる・・・・・・。
皆さんはどうお過ごしですか?(死んだ目
とりあえず職場のクリスマス会で私は踊ってきます。ヒャハー・・・。


P.S.3
皆様のおかげで、いつの間にかUAが100万越えていました!!
ありがとうございます!!!!
お気に入りも4600と、こんなジャンルが偏ったSSにも拘らず楽しんで頂けようとは、続けてきた甲斐があります。
今後も、どうぞよろしくお願い致します!!!

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