テンプレ…まじで?(リメイクしてみた) ※現在このすば!編 作:onekou
さてさて、今回はタイトル通りにゲートと言うものに触れていくお話です。
どうぞ!
ガタゴトと揺れながら、流れて行く景色を眺める。
緑緑緑、少し目線を上にやれば青。
何の変哲も無い山の中だ。
見えるのは樹と空のみ。
思わず溜息をつく。
だがそれも仕方ない。
なにせ、この景色を見るようになって既に数時間が経過しているのだから。
「山の中に居ると、特地も日本もほんと変わらんよなぁ……」
マイクロバスから見える景色は、特地と何ら変わらない。
森の中に居る生き物的に、危険度という意味では断然違うだろうが、それでも森から香る自然の匂いはどこか心を落ち着かせる。
「そうかしら? こっちの森の方が都会育ちって感じがするわ」
「樹に都会育ちとかあるんだ……」
何の気ない俺の言葉に返事をしたのは、前の席に座って同じように外を眺めていたテュカだ。
木々が多いからこその自然の筈なんだけど……と思ったが、エルフであるテュカには何かしら違う観念があるのだろうと納得することにした。
そんなことを思っていると、テュカは座席の上から身を乗り出して、手を広げながら俺へと笑顔を向ける。
エルフには美形が多いってのはテンプレだが、テュカはその中でも群を抜いていると思う。プロポーションも抜群だし、先輩には勿体ない位だ。
そんなテュカが、素敵な笑顔でこう言った。
「ねぇコウジュ、暇ならきつねさんにならない?」
「暇だけど嫌です」
速攻で断る。
「ぶぅ、ケチぃ」
「可愛く言っても駄目ー」
「コウジュったら、苛めっ子だわ」
「たまに夜一緒に寝て上げてるでしょうが」
そう、初めての邂逅以降、テュカは何かを抱いていないと夜に眠れなくなってしまった。
まぁそれも今では大分ましにはなってきている。
最初の頃こそ俺が変身した狐じゃないと駄目だったが、今は似たようなサイズのぬいぐるみなら大丈夫になった。
それでもたまにこうして俺と一緒に寝たいと言うのだが、事情が事情だけに断り切れない時もある。
一応男としての矜持が在る為出来れば遠慮したいのが本音なんだけどな。
何せ、テュカと一緒に寝ると溺れそうになるのだ。陸なのに。
というのも、子狐化した俺と寝る時、テュカは必ず俺を抱き掛けて寝ようとする。
すると、自然と俺は間に挟まれる訳だ。胸に。
これがもしも男であったなら狂喜乱舞するところだが……いや男なんだけどさ中身は。
さておき、子狐モードでそんな所に挟まれたら、結構なモノを御持ちのテュカが相手の場合、息が出来ずにリアルに死を垣間見る。
子狐モードだと身体能力も相応の為、テュカってば弓とかも嗜んでるから腕力も結構あるもので押し退けることも叶わない。
ちなみに元の姿でも添い寝を試したこともあるんだけど、その場合は違う意味で嫌な予感がしたので、それ以降はしていない。寒気が半端なかったのです。
「それとこれとは別よ。別腹って言うのだったかしら?」
「それだと俺食われてんじゃん」
そこからはテュカと取り留めの無い話をしていく。
これも俺達にとっては本日何度目かのものだ。
この行程が始まってすぐの頃はレレイやロゥリィも含めて、同乗しているメンバーと話をしていた。
しかしそれも、適度な揺れと静かな土地に長時間のバス詰めによって眠気が襲ってきて数名は夢の中だ。
さすがに警護担当の隊員は仕事を全うしているが、年相応の体力しかないレレイや、景色に早々に飽きたロゥリィなんかは先輩を枕にして後部座席でお休み中である。気づけば先輩も一緒になって寝ている。
テュカも最初はそこに混ざっていたのだが、それすらも飽きたようだ。
まぁ、最後部とはいえマイクロバスで両隣を取られたらくっ付き様がないか。
というか、良い御身分だな先輩。
一応仕事中じゃないのか?
今回の主賓であるレレイの世話をするってのが今回の仕事とは聞いてるけどさ。他の第三偵察隊の皆は前後の車で警戒を続けてるってのにさ。
俺ですら慣れない方法で囮役を買って出てるっていうのに、なんかちょっとイラッとする。
そもそも、何でこんなことをしてるかっていうと、数日前に見たアポクリフが原因だ。
その解決策を見出すのが、今回の任務である。
◆◆◆
コウジュ達がアポクリフをその目にし、伊丹達と基地へ戻って数日した時の事だ。
コウジュは、アポクリフに頭から突っ込んで気を失い(というか頭を失い)、そこから復帰していつもとは違って復活に時間が掛かったことに首を傾げつつも特に深く考えることもせずに基地へと戻ってきた。
戻ると同時に、伊丹と共に狭間陸将へと報告を行ったコウジュ。
一応、概要に関しては通信で報告を行ってはいたが、全容を伝えるためにも、相談する為にも会って話すことは必要であった。
「任務御苦労。それでは早速報告を聞こうか」
「はい、今回我々が見て来たもの、仮にアポクリフとしますが―――」
陸将室に呼ばれた伊丹とコウジュを待っていた狭間陸将。
本来ならば各部隊の将官が同席するところだが、難しい案件の為、人払いを済ませていた。
そんな狭間に、意図を理解した伊丹はすぐに全容を話していく。
アポクリフ、世界を殺す霧、少しずつ広まりやがて世界を覆う……。
「終焉の霧、か。しかも教授陣の見解では物質ですら無い、測定不能なものときたか。先に概要を聞いていたとはいえ、本来ならばにわかには信じがたい案件だな」
「しかし、実際に起こっており今も広がっています。すぐにと言うわけではないですが、のんびりもしていられません」
「だが、報告の通りならば解決法があるのだね?」
「そうです。アポクリフの事を告げてきたハーディ神により、レレイ・ラ・レレーナへと授けられています。ただ――」
「何か欠点でも?」
「本人曰く、習熟が必要とのことです。感覚的に使い方は分かるが加減が出来るかどうか、それが必要かどうかもまだわからないレベルとのことです」
「ふむ、なるほど……。コウジュ君の方ではアポクリフに対して何か出来そうなことはあるかね?」
狭間は、今まで話していた伊丹から今度はコウジュへと目をやり疑問をぶつける。
それに対してコウジュは少し悲し気に目を伏せた後口を開いた。
「一応試してみたんですけど、無理でした。出来ないことも無いですけど、おそらくあれを消し飛ばすと大元の世界、そのどっちかも一緒に吹っ飛びます」
「……なるほど。ならば一先ずはレレイ君の方を優先しよう。上の方へはこちらで話を通し、近いうちにレレイ君の実験を行える下地を準備しておこう」
コウジュの答えに少し口元を引き攣らせつつも、狭間はそう纏めた。
◆◆◆
狭間陸将との話し合いを反芻している間に辿り着いたのは、とある県の山脈部。そこにある工場施設を貸し切り、機材を持ち込んで実験場とした場所だ。
機材や人員は数日前から準備されていたらしく、俺達が到着する頃には万端の状態となっていた。
「うへぇ、見るからに高そうな機械がいっぱい……」
「頼むから壊すなよ」
「俺を破壊神か何かと勘違いしてやしませんかねぇ?」
「違うのか?」
「よっしゃ、その喧嘩買った。殴らせろっすよ」
「やっぱお前破壊神とか邪神がお似合いだよ!!」
マイクロバスから降りるなり、ついそんな掛け合いを先輩としてしまう俺。
そんな俺達を研究員らしき人達が準備をしつつもチラチラと迷惑そうに見るのに気付き二人して黙る。
そんな俺達へと近づく影。
「お待ちしておりましたよ皆さん」
そう言って出てきたのはどこかで見たことのある人だった。
「森田総理、お待たせしました」
「いえいえ、妨害工作は大事ですから」
あ、総理なのねこの人。
暫くニュースとか見る暇も無かったからしっかり顔知らなんだわ。特地に居るとどうも日本の情報に疎くなって叶わん。
というか、大丈夫かねこの人。
何とも幸薄そうで、言葉巧みに利用されそうな人だけど。
いやでもそんなこと言ってはいけないよな。日本を背負ってる人に。
どっかの自重しない忍者漫画みたいに意外性ナンバーワンかもしれないし。
それに、前の総理さんも見るからに苦労人って感じだったけど、最後は日本を助けるために自分諸共他国の裏工作をぶっ潰すような人だったらしいし、偏見いくないよな。
「えっと、森田総理? 分体の方はもう解除しても大丈夫そうですか?」
「……ああ。ええ、構いませんよ。ご苦労様でした。それでは私は向こうでお待ちしていますので、少しの休憩の後、早速始めましょうか」
恐る恐る――知らなかった罪悪感から――声を掛けると、総理はこちらを見て何か思案した後に笑顔でそう言って奥へと入っていった森田総理。
最初の間はなんだよ。もしかして総理だと理解してなかったことに気付かれた?
いや、流石にそれは無いよね。気のせいか。
「それでは解除しておきますかねっと」
その言葉と共に、俺はある技の行使を止める。
それから少しの時間を置いて、身体の中に幾つかのモノが滑り込む感覚を得る。
「うし、はぁ、これで落ち着いた」
「ホントバーサーカーっぽくないスキルばっか持ってるよなお前さん」
「自分でもそう思うっすよ、ほんと。これ完全にアサシンの技だし」
そう言いながら、俺は自身の横に影から泥を生み出して形にして行く。
そうして出来たのはもう一人の俺だ。
その俺が、俺と同じように口を開く。
「「ぶんしんのじゅつー、なんつって」」
「ステレオでしゃべるな鬱陶しい!」
「「連れないっすねぇ先輩」」
分身の術、とは勝手が違うが、今までの泥人形とは違って自我も入れ込める術だ。戦闘力もそこそこある優れもの。
それが、今回俺が使用していた技だ。
何故こんなことが出来るようになったのかというと、どうにもこの間アポクリフに頭を突っ込んだ結果、何というか身体のキャパが増えたというか、なんとなく今までできなかったことが出来るようになったのだ。
この感覚はあれだ、“ラーニング”。
恐らく、アポクリフによって一回死んだことで、何かを覚えたのだろう。
アポクリフそのものを覚えたとは思いたくないが、しかしそれに連なる何かを得たのは確実だ。
その辺の感覚を明確なものにしようとして色々実験していると、泥人形とかとの繋がりが強くなっていることに気付き、泥人形からレベルアップして分体を造りだすことに成功したのだ。
ただ、この技には問題があって、最大でも出せるのは4体だけなのだ。
その数は、俺が今持つ因子の数だ。
狼、狐、猫、龍。
その数の分だけしか、出せない。
それが、この技が分身とは根本が違う技だ。
例えば、俺の横に居るのは、猫としての俺だ。帽子で見ることは叶わないが、耳が普段の場所とは違い頭の上にある。
つまり、因子を基に、泥で身体を作って、能力でそれも俺であると無理矢理形作っているのだ。
再現性が未だ低いのもあるだろうし、因子が一つの状態で俺を作ってるからスペックダウンしている訳だけど、それでも俺とは別の俺がそこには居る訳だ。
いつしか夢想していた分身の術へまた近づいたわけだ。
まぁ、未完成なので弱点も豊富だ。
まず、因子を分けるので、分体も本来に比べたら弱いし、本体から力を分け与える訳だから俺もスペックダウンする。
しかしそんな未完成な術も今回は役に立った。
それが先の会話に繋がる訳だ。
今回、レレイが得た技術の実験をするために、俺達は日本のとある山奥へと来ている。
特地でやれば良いなんて意見もあったが、欲しいのは
しかし、この実験にはかなりの慎重さが必要となる。
なにせ今まで量子力学やら物理学やらの第一人者たちが幾度も挑戦してきた壁に対するアプローチだ。
しかも、次元を操作できることは分かっており、今回はその調整が目的なのだから、そちら方面の関係者は喉から手が出るほどに欲しい実験の場となろう。
更に言えば、嬉しいことに俺が抑止力として働いている現状ではあるが、それでも余計なちょっかいを掛けてくる国はまだまだある。
日本が門を自由に出来てしまうと困る国だ。
そういった国は、形振り構わず今回の実験を妨害しに来る可能性がある。
そこで分体だ。
3体の分体を、それぞれ違う方面へと向かう車へと乗せ、量子力学やらの関連実験施設へと向かわせる。
更に、その情報をあえて流すことで敵対国の誘導も行っている。
今頃はニュースでも話題になっていることだろう。特地に出現したアポクリフと、それをどうにかする為に門を操作する技術を
その情報が流れた状態で俺が能動的に動いているのを見ると、技術を持っているのがレレイではなく、俺だと思わせる2段構え。
加えて言えば、そうやって世界に認知されたことで、今まで以上に日本が手に入れた技術を求めて同盟を申し込んできた国が出てきている。いくつかの大国もその類いだ。
その状態で日本に喧嘩を売ってきたならば、公的にその敵対国へと制裁を加えることが出来る。
こういった目的で、今回俺の分体は使われたわけだ。
「ほら、身体もほぐし終わったところで行くぞ」
「「はいっす」」
「ハイは一回」
「「使い方が違う気がするっすよ」」
一先ず俺は分体を消し、前を行く先輩へと着いていくことにする。
他の面々も、長くバス内に居たこともあり固まっていた体をほぐし終わったようで、俺と同じように施設内へと進む。
囮とは違って姿を隠すように移動してきたため、バス旅行の様に途中で休憩を入れることも出来ず、更に言えば念のための攪乱目的で遠回りをしたりバスを乗り換えたりもあったので、バスを降りた瞬間に皆が皆、年老いた人の様にまず体をほぐし始めたのはご愛敬だ。
さておき、中に入った俺達は案内されるままに施設の奥へと入っていく。
施設自体は、体育館を何倍かしたような大きさの巨大な倉庫だ。
コンクリートと金属でできた武骨な建物で、その中に、場違いな機械群が所狭しと並べられている状態だ。
何人もの科学者や研究者たちが、その間を忙しく行き来している。
その間を案内人の後ろをついていく形で進み、森田総理と、先輩が親しくしているという“閣下”こと嘉納太郎外務大臣が居る場所へと着いた。
「おう、随分ゆっくりしてたじゃねぇか」
「分かって言ってるでしょう、それ……」
嘉納さんは先輩を見つけるなり近寄り、肩を叩きながら揶揄う様に労う。
そんな嘉納さんに苦笑しつつも親しげに話す姿からは古馴染だとすぐに分かる。
「それで、本命のレレイさんの方は大丈夫そうかい?」
「ええ、バスを降りた時はやけにすっきりした顔をしてましたし、いつでも行けると本人も言ってましたよ」
「ぶい」
嘉納さんの言葉に先輩が返すと、斜め後ろに居たレレイが指をVの字にして表情を変えずにそう言う。
いつの間にやらそんなことまで覚えたのねレレイさん。
まぁ、俺と一緒にアルヌスまで飛ばされてる電波で色々一緒に見てたしなぁ。
「それじゃあすぐにでも始めよう。森田さんも構わないよな?」
「ええ。細心の注意だけは怠らずに頼みますよ」
「分かっとりますとも。っつーわけで、始めてくれえ!」
嘉納さんの言葉に、一時作業を止めていた研究者たちが改めて動き出す。
その内の何人かはレレイに近寄り、何かを話し始めた。
そしてしばらく話をした後、レレイと共に端にある部屋へと入っていった。
「実験する前に検査とかするんすかね?」
「それもあるけど、着替えらしいよ。計器を身体に付けるためにも、今の服装だと難しいからって」
「へえー」
俺の問いに、横で研究員から説明を受けていた先輩が教えてくれる。
それに相槌を打ちながら、俺は次に施設の中心部分に当たる場所へと目を向ける。
そこには円形にスペースが明けられており、そこに向かって幾つもの機械が向けられている。
恐らくそこでレレイの力を試すのだろう。
「後輩は予定通りに念のための待機ね」
「りょーかいっすよ」
今回の実験は予定通りに主役がレレイとなる。
俺はその補助として近くに詰める形だ。
現在の俺は、自ら特地と地球を繋げることは出来ていない。
偶然の産物(?)で一条祭りを介して特地と地球を繋げることが出来ていることに気付いたが、繋げようと思って行使したわけではないのだ。
それに、この実験の日程が決まるまでの数日で試してみたのだが、自由に特地と日本を行き来できるわけではない様なのだ。
知っているのが極少数なので大々的に実験したわけではないが、双子龍と俺と、俺と一緒に居る人間くらいしか、世界を越えることは出来ない様なのだ。
なんというか、一条祭りが嫌がるというか……、なんか意志を持って選択しているような感じだった。
前から自我っぽいのはあったけど、マジであるんだろうか。
となると、結構俺ってば一条祭りを酷使してると思うんだけど、給料とかあげた方が良いのかな?
いやでも段ボールにどんな給料渡すんだよ……。
さておき、その状態な一条祭りを当てにするわけにもいかず、確固とした次元を超える技術を手に入れるために今回の実験を行うわけだ。
ただ、世界を越えるように次元を繋げるようなことは俺には出来ないが、次元操作に誤ったりした場合のその場所を斬り取るくらいの事は今の俺でもできる。
要は目の前にある物を斬り取るだけだから、それなら俺にも出来るというわけだ。
その為、俺はいざという時の補助としてレレイをサポートする。
「着替え終わった」
「……シュールな格好になっちまったな」
「でも楽しみ」
着替え終わったレレイがこちらへと来たので目をやると、かなりへんてこりんな格好になっていた。
ぴちっとした全身タイツに、心電図を計る時に使うような電極用のパッドが沢山付けられている。
頭にはヘルメットを被り、そこからも配線が幾つも垂れている。
しかしそんな変な格好ではあるが、レレイ的には今から行われる実験やそれを観測する為の機械類が気になって仕方ない様子だ。真顔だけど。
「じゃ、行きますか」
「分かった」
俺とレレイは二人して中心部へと向かう。
向かえばすぐさま研究員たちがレレイへと色々なものを繋げていく。
それにレレイは質問していき、何を図るための物かを全て聞いていく。
いつもに比べてかなり口数が多くなっているからかなり燥いでいるようだ。
まぁ真顔のままなんですけどね。
そんなレレイを見ながら居ると、どうやら準備が終わったようだ。
「おいでツミキリ・ヒョウリ」
俺は空間操作の概念持つダガーを両手に出す。
これで、俺の方の準備も終わりだ。
俺はそれを近くの研究員に伝え、気を引き締める。
暫くして、『実験を開始します』と施設内にアナウンスが流れる。
全員が息を止めたかのように静かになり、レレイを見守る。
「行く」
その言葉を告げた後、レレイは詠唱し始める。
手にはいつもの杖と、ハーディが乗り移った際に伸びてしまったレレイの髪。
杖は精神集中の為だが、髪を何故持っているのかというと、その髪がハーディから与えられた力の媒介になるからだ。結晶と言ってもいいかもしれない。
技術そのものはレレイの中にあるが、通行証がその髪になる訳だ。
暫くの後、レレイを中心にしてマナが渦巻く。
それが手に持つ髪の束を起点にして前方へと流れ、そして凝縮されていく。
凝縮されたそれは次第に空間に波紋を作り、少しすればそれが大きくなっていった。
大きさで言えば数十センチ。
門と言うには小さいが、確かにそれはゲートだった。
「出来た」
どうやら成功したらしい。
見るに不安定な感じもないし、一先ず安心という事だろう。
パッと見る感じでは空間が少しぼやけているように見えるだけで、ガラス窓の様に向こう側がそのまま透けて見える。
だが、確かにそこには何かがあった。
「レレイ、これ何処に繋げたんだ?」
「分からない。特地は無理だから近くにあったどこか」
通常、世界と世界は球体と球体だから、接触してもぶつかる点は一個になるらしい。
そこに門を置き、固定したのが銀座のゲートと言うわけだ。
俺の一条祭りの場合、地球→一条祭り→特地と言う繋げ方だから出来ているのではないかと言うのがレレイの推論だった。
そのため、今回は適当に近くにあった世界へと繋げたようだ。
しかしこれで、銀座の門を閉じたとしても、とりあえずの再接続の目途は立ったわけだ。
だから、次の実験は指定した時間帯に繋げられるかどうかを―――
―――何だろうかこの臭いは?
ふと鼻を擽ったのは、腐った卵や牛乳を拭いた雑巾などの臭いを混ぜて更に濃縮したような汚臭。
鼻が曲がるようなという言葉があるが、これは鼻がこそげ落ちそうなほどの悪臭だ。
更に言えば、妙に生臭い。
しかし、どうやらこの臭いに気付いているのは俺だけらしい。
俺がこの臭いについて考察している間に、アポクリフを一緒に見に行った養鳴教授が棒を突っ込んで掻き回したりして実験している。
しかしそれで気づくことが出来た。
この臭いは確実にあのゲートの向こう側から来たものだ。
今抜き出された棒の先には更に濃厚な臭いが付着しているのだから。
そう感じた時点で、鳥肌が立つように、嫌な予感が身体を走った。
その時点で、俺は叫ぶ。
「レレイ! 門を閉じて早く!!」
「え?」
俺の慌て様に驚いたレレイが、後ろに居た俺へと振り返る。
周りに居た面々も、同じように驚きと共に俺へと目線をやっていた。
しかし俺はそれらを視界に入れながらも、ゲートから目を離せなかった。
何故なら―――、
―――ゲートの波紋がさっきより強くなっているから!!
「っ!!」
認識すると同時に俺は前へと出る。
そして集まっていた何人かを押し出して、一番ゲートに近かったレレイへと手を伸ばす。
だがそれよりもゲートから何かが出てくる方が早かった。
「ぐっ!?」
レレイを庇う様に腕を出したため、それが俺へと巻き付く。
触手だ。
しかもただの触手ではない。
棘棘とした突起物が幾つも付き、その先端には口の様なものまでも付いている。
太さは先端でも人の腿程はあるだろうか。
それが俺の腕へと巻き付いた。
かなり力が強い。
棘が俺の腕に刺さり、返しの様になっているからか抜けず、血が流れ始める。
しかし幸いにも、俺の馬鹿力で対抗は出来ている。
「後輩!!」
そう先輩に呼ばれ、大丈夫だと返そうとした瞬間、大きく触手が引っ張られて体が浮いた。
「……あ」
いかがだったでしょうか?
さてさて、触手に引っ張られたコウジュは一体どうなるやら。
感想が色んな意味で楽しみですね(ゲス顔
そういえば、前話の感想で某国とディアボ皇子の会談について沢山いただきましたが、あの国ならこのSSみたいになればマジでやっちゃいそうだなと思ったので書いちゃいましたw
いや、現実問題として見れてたら絶対にあんな喧嘩の売り方を外交でしないだろうと思ったので、私の偏見も多分に含みますがそうなった次第です。
あ、あくまでも某国ですよ某国。
さてさて次回はコウジュがどうなったかですが、いやほんと感想が楽しみですw
それではまた次回!
P.S.
FateGOで、今まで無課金だったのに酒呑童子欲しさについに課金しちゃいました……orz
PSO2の方でしてるから我慢しようと思ったけど、我慢できませんでした!!
でも後悔はしてないよ! 酒呑童子可愛いよ酒呑童子!!
とりあえずPSO2で再現しようと思ったけど、殆ど脱いでる着物っていうのが無かったので断念しました。
実装はよ!!!
あ、超薄着ロリ鬼自体は出来ましたよ(満面の笑み