暇潰し?面白いから転生?まあいいですよ。頑張ります。★更新停止中 作:写身
8話
俺は今、ギルドで昼食をとっている。
「シスイー勝負だー」
「止めとけ止めとけ」
「そうだぜナツ」
「今まで何回負けてると思ってんだよ」
「うるせー!今日は勝ーつ!」
「あま……月読」
「…」ガク
ナツは動きが止まり、その場に倒れる。
「ははは。一瞬だな」
「シスイ、今度はどれくらい掛けたんだ?」
「よっしゃあ十分!」
「なら三十分!」
「俺は十二分!」
「じゃあ五分!」
「二十五分だ!」
「皆短いぜ、四十分!」
「さあ、何分だシスイ!」
最近、俺がナツに掛ける幻術で、その時間で賭けている。それだけナツが俺に挑んでくるということで、たまに学習能力ないのかと思ってしまう。あんまりしつこいと天照って言いそうで怖い。さっきも言いそうになったし。
「一時間だ」
「ぐわー」
「マジかよ」
「当たったやつは無しか」
「というか今回長いな」
「そうだな。なんかあったのかシスイ?」
俺の答えに、賭けていた全員が項垂れる。なんかあったのかと言われても、今日だけで三回も挑まれていたら、さすがに鬱陶しいだろう。
「少しは静かにしてもらわないとな。せっかくの休憩なのに」
「確かにそうだな」
「今日だけで三回目だからな」
「ナツって何であんなに挑むんだろうな」
「かまってくれるからじゃねぇか?」
「ナツも子供って事か」
ほんと、困ったもんだよ。後半年で原作開始というのに、主人公こんなんで大丈夫か?俺が何回もでしゃばるはめになったりして……。
「はぁぁぁぁ」
「アハハ。大変だね、シスイ。はい、お待たせ」
「ありがとうミラ」
俺は出されたスープを飲む。
「うん。美味しい」
「ありがとう」
明日から原作前最後のクエストに行くっていうのに憂鬱だ。
「そういえば珍しく二日も休んでるね。初めてでしょ?何かあったの?」
「んー、そういえばそうだな。いやなに、十年クエストでも行こうかと思って多目に休んでるんだよ」
「十年…クエスト。……大丈夫なの?」
「分からんけど大丈夫だろう。俺、自分で言うのもなんだけど相当強いと思うし、一人ならなんとかなるよ」
「もし、もしだよ?私が行かないでって言ったら?」
どうしたんだミラ?なんか雰囲気が。
「そうだなー。……………………悪いけど行くよ」
多分失敗はあっても死ぬことはないし。
「……………そう」
「ミラ?」
「あ、ううん、何でもないよ」
何でもないって顔じゃなかったが、本人が言うならいいか。
「で、明日行くの?」
「ああ。明日の昼に出るよ」
「生きて帰ってきてね」
「大丈夫だって。いざとなれば輪廻眼もあるしね」
「そうね。確かにあれは強力。でもどんな状況になるか分からないじゃない!」
「ミラ?」
「十年間誰もクリアしてないクエストなんだよ?シスイにもしものことがあったら……私」
ミラは心配性だな。心配してくれるのは嬉しいけどな。
「心配してくれてありがとう。でも大丈夫、必ず帰ってくるって」
「約束よ?」
「ああ、約束だ」
「ならいいわ。それならもう今日は帰って休んだら?」
「そうだなスープも飲み終わったし、そうするよ。じゃあまた明日」
「ええ、また明日」
翌日の昼。
「じゃあ行ってくるよ」
俺はミラとマスターに挨拶してか
行く。
「行ってらっしゃい」
「こんな心配は無用だとは思うが、くれぐれも気を付けて行くんじゃぞ」
「分かってますよ」
俺が出入口の方に行くと、ナツが話しかけてくる。
「おいシスイ!十年クエスト行くんだろ?俺も連れて行け!」
ナツが連れて行けと言うが、俺も十年クエストがどのレベルか分からんし、とりあえず難易度を確かめてからだな。
「ははは、今回はダメだ」
「何でだよ!いいじゃねぇか!」
「ナツゥ、今回は止めとこうよぉ」
「ハッピーまでそんなこと言うのかよ!いいだろシスイ?ダメって言ってもついてくぞ!」
はあ。十年クエストは初めてだから守ってる余裕あるか分からんって言うのに。
「ナツ―――」
「こらナツッ!!」
俺がナツに少しきつく言おうとすると、ミラが入ってくる。
「み、ミラ?」
あれー?ミラの後ろに阿修羅が見えるんだけど(笑)え?マジで何で?
「我が儘は止めなさい!」
ゴゴゴゴゴッ!って聞こえる。やばくね?これやばくね?ナツ、さっさと諦めた方が…。
「嫌だ!俺も十年クエストに行く!」
しかしナツは俺の思いを無視し、断固として諦めない。ナツゥゥゥ、度胸ありすぎだろぉぉぉぉ。
「……そう」
ミラがナツの側まで行く。
「な、何だよミラ?」
さすがにミラの雰囲気に気づいて気まずそうにし、ナツは横を向きながら尋ねる。それが大きなミスだとも知らずに。
「フッ」
一瞬だ。俺でも目で追えなかったぞ。残像が見えたくらいだ。
「うっ」
ナツがその場に倒れる。ミラの手を見ると、手が手刀の形になっている。おそらく、というか確実にそれで首筋を……………。
「み、ミラ…さん?」
思わずさん付けになる。
「ほら、今のうちよ」
ナツはその場で放置ですか。
「あ、ああ。そ、そうだな。じゃあ行ってくるよ」
「気を付けてね」
俺はそそくさと退散する。この時全員が思った。ミラを怒らせてはいけない、と。
「ふぅ」
シスイが出ていったあと、カウンターに戻ったミラは、ため息を吐く。
「ま、シスイなら大丈夫じゃろうて。やつは下手をすれば、いや下手をしなくてもギルダーツより強いかも知れんからの」
「マスター。…………そうですよね」
俺は一日掛けて、問題の場所に来ていた。当然魔物討伐だ。
「ここが…」
今回は町からの依頼だ。その町のギルドでは誰もクリアできないらしい。
内容としては、十五年くらい前に少しはなれた場所の村が壊滅したと言う。壊滅した村の近くにある村が調べに行ったらしい。次は我が身かもしれないからな。
それで、調べてみると、その所業からどうやら魔物の仕業らしい。
それで、その村が、一番近い町のこの町に依頼したらしい。
しかし、討伐に赴いたやつは誰一人帰ってこず、今では三十人はその依頼で死んだと言う。
そうこうしているうちに、この町の近くの村まで壊滅し、誰もその向こうに行けないらしい。
「さて、調べ終わったし行くとするか」
傷跡から、鋭い爪を持つ魔物らしい。それと敵は複数かもしれない。なぜなら、燃えたような跡と、凍っていたような後がみられたからだ。
それに、爪痕からみると、相当な巨躯らしい爪の間が広く、人二人分近く空いている。
しかしここには居ないみたいだ。普段は奥に籠っているのかな。
「とりあえず各村を回ってみるか」
おかしい。これだけの村を回ったのに、魔物はでてこない。魔物は複数と予想したんだが、間違っているのか。それとももうどこかに移動したんだろうか。
でもこれだけの力を持つ魔物が十五年でこれだけしか被害がないのもおかしい。
魔物は自分の領土を広げているんだと解釈していたんだが………。
「グルルルル…」
「今のは……」
魔物の声か?なら近くにいるのか。
その時、シスイに影が射す。
「グルルルル…」
「そこか!」
影のお陰で場所がはっきり分かった。俺は振り向き、魔物見る。
しかしその魔物を見たとき、俺は驚愕で固まってしまった。