暇潰し?面白いから転生?まあいいですよ。頑張ります。★更新停止中 作:写身
18話
「目的だったわね。地下にあるデリオラを復活させるのが目的よ」
「デリオラ?」
聞いたこと無いな。なんなんだろ。
「10年前にイスバン地方を荒らし回った不死身の悪魔よ」
不死身だと!?
「って10年前?」
「ええ。ある一人の魔導士が命を懸けて封印したの」
「ほー」
なるほど倒せなくても封印することは出来たのか。
「って、イスバン地方ってここからずいぶん遠いじゃないか。どうしてこんなところにデリオラが?」
「持ってきたのよ。封印を解くためにね」
!!?不死身の悪魔なんだよな?しかも封印するしか止める手立てが無かったほどの。それを解くってマジかよ。
「何で封印を解く?」
「トップはデリオラを倒すために封印を解くのよ」
「何でわざわざ復活させてまで倒す必要がある?」
「さあね、知らないわ」
知らない?仲間なのにか?それに、トップはと言っていた。ならばこいつは違う目的があるのか?
「なら、お前の目的は?」
「言ったでしょ?デリオラを倒すためって」
「それはトップのだろう?トップはと言うことは、お前には別の目的があるんだよな?」
「………口が滑ったようね。その通りよ、私はあの力が欲しい」
力?デリオラの?
「何でだ?」
「それを操る術があるのよ。なら欲しいと思うのは普通でしょ」
それを聞いたんじゃないんだが。って操る術があるのか!!いやいや今はそうじゃない。
「そうじゃない」
「ならどういう事かしら?」
「なぜ力を集めるのかと聞いているんだ。さっきも言ったが、対人であの技を使ったのは初めてだ」
「それが?」
「それを使わなければならないくらい、俺が追い込まれたということだ。仮にも妖精の尻尾の門番と言われているんだ。そいつに、今まで使ったことのない技を使わせた。それだけで、お前の力がどれほどか伺える。そのお前が、なぜまだ力を求める?」
「…親に復讐するためよ」
「復讐?」
親にだと。
「そうよ。それ以上は言わないわ」
「事情を話せ」
「これ以上は言わないって、言ったでしょ?」
こちらを睨み付けてくる。その瞳にはさっきまで欠片ほども無かった殺意が込められていた。しかし拘束しているのはこちらで、立場は俺が上だ。俺は殺意は気にせず聞く。
「こっちも言ったよな?無理やり聞き出すことができると」
「くっ…………」
歯を食い縛ってこちらを見る。
「分かったわ」
その後、女は事情を全部話した。無理やり話させたの方が正しいか。
母親に研究施設に入れられたこと。その母親はデリオラを封印するために死んだ人で、己を氷に変えてまで封印したこと。その親に復讐するためにゼレフを生き返らせ、理想の世界にしたあと、己の魔法を使い、母親が生きていた時まで戻し、復讐すること。
「そうか……」
「これで満足かしら。全く、女の過去を無理やり聞き出すなんて趣味が悪いにもほどがあるわ」
いや、それについては申し訳なく思うよ。でも仕方ないよね。
それにしても
「デリオラの封印を解く方法は?」
「
もう完全に諦めたのか、素直に答えてくれる。
「なるほどな」
「そろそろ離してくれないかしら?」
「いやいや、離したら逃げるだろ?」
「当然ね」
「いや、当然ねって…。逃げるのが分かってて離すわけないだろ」
「しつこい男は嫌われるわよ」
今それ関係なくない?
「それなら、それでもいいって人を探すよ」
「強引なのね」
「そういう訳じゃないんだけどな」
「このまま襲われるのかしら」
「んなことしねぇよっ!!!!」
何言ってんだ。全く。
「何本気になってるの?冗談よ」
「質わりぃ……」
はあ、俺が拘束してるんだよね?何でこんなに疲れてるんだろうか。
それにしても死んだってことは穢土転生できるってことだよな。このままじゃこいつ、何するかわからねぇし……。
でも生け贄がいるんだよなー。もしものためにと覚えておいたけど、使う機会今まで無かったし、問題なかったんだけどなー。
『巻物に閉じ込めてるやつらを使えばいいんじゃないか?』
『九喇嘛?』
『貴様、言っていたではないか。法で裁けないようなやつを何体か巻物に封印していると』
『ああ、あれね。確かに法で裁けないやつとか、評議院の手に負えないやつとかを、何体か封印しているけどさ。それでも人だからなー』
『でも改心する余地がないからそこに閉じ込めてるんだろう?』
『うん、まあそうだね』
『ならいいじゃないか。それにいつまでもそのままと言うことは出来ないだろう。もしお前が死んで、知らない誰かが封印を解いたらどうする?』
『確かにそうだね』
『なら有効に使ってやるのがいいだろう』
『確かに……』
『それにしても貴様にそんな度胸があったとは知らなかったぞ』
『どういう事?』
『女を力ずくで押し倒して上に乗るなんて、なかなかやるじゃないか。フハハハハ!!』
「これはちげぇよっ!!!」
「いきなりビックリするわね。何が違うのかしら?」
『焦りすぎだぞシスイ』
『焦らせたのは九喇嘛だろ』
『焦ったと言うことは自覚はあったか』
『ないよっ!!』
『隠す必要はない。お前にどんな趣味があろうと俺は否定はしないさ』
『九ぅ喇ぁ嘛ぁくーん?』
『さて、俺は寝る。面白くなったら起こしてくれ』
『おいっ!九喇嘛!!』
『ぐーぐー』
『ね、寝た振りって…これが九尾って……』
「まぁいい…」
「何がいいの?」
口に出ていたか。
「その親の物を何か持ってるか?」
「持ってないわ。何でそんなことを?」
「そうか、それがあればお前の親を生き返らせる事ができるからな」
「それは本当っ!!!?」
いきなりすごい剣幕で聞いてくる。どうしたって言うんだ。
「あ、ああ。そう言う術を持ってるからな」
「なら私のポケットに施設に預けられる前にもらったネックレスが入っているわ」
それなら最初から出せよな。俺はポケットに手を入れてネックレスを探す。
「ちょっと!どこ触ってるのよ!!」
「いや、ネックレスを探しているだけなんだけど」
「そんなにまさぐる必要無いじゃない!!!」
「まさぐってなどいない!というか無いぞ?ネックレス」
「反対側に入っているのよ!!」
「早く言ってくれ、これでは俺が変態見たいじゃないか」
「どこをどー見ても変態でしょ!!女を押さえつけて体をまさぐっているんだから!!!」
「だからまさぐってなどいない!!あった、これか」
「そうよ」
シンプルなネックレスだ。その人の性格を表すようだ。
「それで本当なんでしょうね。生き返るって」
「本当だ」
俺は木遁で女の四肢を拘束する。
「ちょっと!これは何!?」
「いや、もしかしてこれが嘘で、準備している間に逃げるかも知れないだろ」
「逃げないわよ!だから解きなさい!!」
『いい趣味だなぁ。クハハハハッ』
『うるさいっ!』
『いやいや、女を拘束してナニをするんだか』
『何もせんわ!!!』
ったく、九喇嘛のやつめ。俺は巻物を取りだし、開く。
「解」
巻物から完全に人が出てくる。
「それは誰?」
「改心の余地がない犯罪者だ。今は眠っているがな」
「そんなの出してどうするの?」
「生き返らせるには生け贄が必要なんだよ。それがこいつだ」
「あなたが人の命を代償にするなんて信じられないわ」
「仕方ないさ、こいつは改心しないし、お前も放っておけば、もっと犠牲者が出るだろう。ならばこいつに犠牲になってもらって、お前を改心させる。そっちの方がより多くの人が助かると思ったわけだ」
「あら、このまま私を捕らえればいいだけじゃないの?」
「お前の仲間が脱獄を手伝うだろ?俺は常に見張っていれる訳でもないし、居ないときを狙われると結果被害が出るからな。これが最善と判断した」
「……そう」
ていうか、俺は何を律儀に話しているんだ。全く、調子が狂う。さて、準備は終わった。
「口寄せ・穢土転生」
生け贄の回りを塵芥が覆っていく。
「こ、こんなことが……」
「あれ、ここは?アタシはいったいどうしてこんなところにいるんだ?」
「失礼、ウルで合っていますか?」
「ああ、アタシはウルだよ。しかし、アタシは絶対氷結で死んだはず、どうしてここにいるんだ?」
「それは俺の技、穢土転生で蘇らせたからです」
「そんなことができるのか!!?ものすごい魔導士なんだな、君は」
「失礼しました。シスイ・うちはと言います」
「そうか。それでシスイ、何でアタシを蘇らせたんだ?」
「こちらの人に見覚えは?」
そう言って、女を指し示す。女は信じられないのか、茫然自失状態になっている。
「まさか!!まさか、ウルティアなのか!!?」
そう言えば、名前知らなかったぜ。ウルティアと言うのか。
「お、母さん…」
あれ?ウルティアさん泣いちゃたよ。というか、よくウルティアだって分かったな。そんなに面影が残っているのか。
「おいっシスイ!!」
「何ですか?」
「何でアタシの娘が拘束されている上に泣いているんだっ!!!」
「あ、それはですね。暴れるから拘束しただけで―――」
「貴様、ウルティアが嫌がることをするつもりだったのか!!?」
あっれー、おかしいな?話が噛み合わないぞ。いや、ある意味噛み合ってるのか。
「許さん!!アイスメイク―――」
俺に向かって両手を構える。
「げっ!!ちょ、ちょっと―――」
「
槍と大鷲の氷が向かってくる。俺は素早く後ろに飛ぶ。俺のいた場所に槍とが刺さっている。しかし、大鷲は俺を追尾してくる。
「な、何でだ…」
俺はそれをジグザグに動くことで距離を開け、火遁鳳仙花で相殺する。
「話を聞いてくれ!」
「問答無用!!娘の痛み、何倍にもして返してやる!!!」
話を聞かず、氷の造形魔法で攻撃してくる。グレイと同じ魔法だが、グレイのやつは追尾なんて一度もしたことない。
それに、最初のは小手調べみたいなものだったらしく、技から技の間に全く隙がなく、攻撃する暇がない。特に追尾してくるのが厄介だ。
追尾してくると思って注意していると、そいつは追尾してこず、それに戸惑っているうちに、後ろから別の大鷲が攻撃してきたりと、ウルティアより容赦がない。
何回かクナイを投げたが、全て途中で落とされ、飛雷神の術ができない。いや、できるけど、懐に入れないから一度見せてしまうと対策をとられてしまう。
数はウルティアの方が多かったが、ウルの方が熟練されていて、少ない数をうまく使い、避けた先などに配置することで、こちらの攻撃する暇を潰してくる。
次第に、埒があかないと思ったのか、ウルはウルティアの拘束を壊す。
「ウルティア、手伝いな!」
「分かってるわ!!」
「うおいっ!」
ウルティアはさっきの仕返しとばかりに、容赦なく攻撃してくる。
ウル一人でも手一杯なのにウルティアまで交ざり、対処しきれなくなってくる。殺すのが目的なら何個でも強い技はあるのだが、無力化だと使えない。次第に、被弾するようになり、動きが鈍ってくる。
特に、ウルが穢土転生だから魔力が尽きない、無尽蔵のスタミナで、一切手が緩まない。
って!!そうだよ!穢土転生じゃん!!死なないじゃん!!何やってんだよ俺ぇ。
気づいたときに時すでに遅く、反撃もままならぬまま、遂に動きが止まる。
そして、アイスメイク
「さて、覚悟はいいかい?」
くっ技をすり抜ける事ができれば……ってあるじゃん!!神威!
「なっ!!」
「そんな!!」
神威ですり抜ける。
「話を聞いてくれよ。というか、ウルティアは悪のりしすぎ」
「どういう事だウルティア?」
俺の言葉の確認のため、ウルがウルティアに事情を聴く。そしてウルティアから話を聞いて、構えを止める。
「そうだったのか。なら最初に話してくれればいいのに」
「話聞く気無かったでしょ(泣)」
「スマンスマン」
スマンスマンじゃないよ。
「聞きたいこと一杯あるんだけど、何から聞けばいいのかな」
ウルがそんなことを言う。
「あー、ならなんか、親に復讐するとか言ってたウルティアと話してからにすれば?それまで待ってるよ」
俺の言葉にウルが悲しそうな顔をする。
「そうか。アタシに復讐を……まあ当然か」
「じゃあ俺は少し離れた場所にいるから、二人で話すといいよ」
そう言って、指差した方にある程度進む。気になってることもあるし、それには夜にならないと意味ないからな。
「それとウルティア、逃げるなよ」
「分かっているわ」
「ありがとう、シスイ」
俺は後ろ手に手を降ってその場を離れる。