暇潰し?面白いから転生?まあいいですよ。頑張ります。★更新停止中 作:写身
16話
「みーつけたっ」
俺はナツとルーシィの肩を叩きながら言う。
「グレイ!」
「何でここに?」
「お前らを連れ戻しに来たんだ」
「ぐわー、もう見つかったー」
「このまま行ったら破門だぞ!!」
「破門!?」
ルーシィが驚く。ルーシィは知らなかったのか。
「グレイ~おいら無理やり連れてこられたの~」
相変わらず変わり身早いな、ハッピー。ったく、何で俺がこんなことを……。話は十数分前に遡る。
「着いたか」
俺とシスイは無断でS級クエストに行ったナツ、ハッピー、ルーシィに合流するために、電車に乗って港町ハルジオンに来ていた。
S級魔導士以外が、S級クエストに行くことは禁じられ、それを破れば破門される。
本来ならば。今回はそのクエストをS級魔導士のシスイが受けるということで破門は免れた。その際に俺も連れてこられた。ルーシィのお守りシスイは言う。
確かにナツの魔法より俺の魔法の方が守るのに適しているしな。しかし、S級クエストだからどこまで通じるか分からねえが……。
俺もS級クエストには何回か行ったことがある。俺はS級魔導士じゃないからシスイに連れていって貰って、だけどな。それ以外のやつは連れていってくれねえしな。
「グレイ、島に行くために船に乗るはずだ。港に行くぞ」
電車を降りるとシスイが言う。
「分かった」
俺達は追い付くために、走って港に移動し、すぐにナツ達をを見つける。
「おーい、ナ――――」
「待て」
ナツを呼び止めようとしたが、シスイに止められる。
「なんだよ?」
「少しお灸を据えようか」
「どう言うことだ?」
お灸を据える?
「このまま行けば破門だと脅し、ビビらせる。ルールを破ろうとしたんだからそれくらいしないとな」
「なるほど。分かった」
確かに必要だよな。ナツに効くとは思わねえけど。
「じゃあグレイ、頼んだぞ」
「はっ?何でだよ」
何で俺だけなんだよ、シスイも行けばいいじゃないか。
「俺はS級だぞ?S級魔導士が居ればS級クエストに行ける。なら俺が居ると破門だと脅せないだろ」
「確かにそうだな。分かった、行ってくる」
そして冒頭に戻ると言うわけだ。
「いやだ!俺はS級に行く!?」
「この事エルザに知られたら……」
エルザの名前を出したらビビるだろ。ほんとはそんなことあり得ないんだがな。
っと、俺も想像してビビっちまった。
「エルザを見返してやるんだ!こんな所で引き下がれねえ!!!」
「なっ!」
マジかよこいつ。なら仕方ねえ。
「マス―――」
「もういいよ、グレイ」
「シスイ!!」
何で出てきたんだよ。
「シスイ~おいらあの二人に無理やり連れてこられたの~」
ハッピー……。
「シスイ、あの、これはね……」
ルーシィも分が悪いことを悟ったか。
「俺は帰らねえぞ!!シスイっ!!!」
「はぁ~、俺がここに来たことを察せよ。と言ってもナツには無理か」
「どういうこと?」
ナツが分かってないのはいつも通りだが、ルーシィも分からねえみたいたいだな。
「ルーシィ、S級クエストはS級魔導士じゃないと行けない。しかし、S級魔導士同伴なら、S級魔導士以外のやつもS級クエストを受けられる」
「そうなんだ。でも私達S級魔導士じゃないわよ」
ルーシィ鈍いな~。
「何で俺が来たと思う?俺がS級魔導士でそのクエストを受けたからだ」
「と、言うことは……もしかして!!!」
やっと分かったか、ルーシィ。シスイも回りくどいよな。ナツはちんぷんかんぷんで頭抱えてるぞ。あいつも何回かシスイに連れていってもらってるくせに。
「お前達の破門は無しだ。グレイには少し懲らしめようと、わざと脅して貰ったんだよ」
「ま、そーゆーことだ、悪かったな」
「なんだよ~、おいら本当に心配したよ」
物凄い変わり身だったもんな。
「そうよね、まったく。シスイは意地悪なんだね」
「おい…自分達がしたこと分かってるんだよな?最悪、マスターを裏切るって言ってるんだぞ?」
シスイが脅しを掛ける。こえー。
「ごめんなさいっ!!」
「ごごごごめんなさいぃぃぃ!!!」
ハッピーとルーシィが勢いよく土下座する。スゲー早業だな。
「いやだ」
そこまで黙っていたナツがやっと口を開く。しかし、出てきたのは否定の言葉。なに考えてるんだ、こいつ。
「俺は自分の力でS級クエストをクリアするんだ!!!」
「ばっ、馬鹿か!!」
まじで謝れって!俺はシスイの様子を伺うが、シスイは目をつむり何か考えている。
「シスイ?どうするんだ?」
「仕方ない、か」
「何が?」
「いいだろうナツ。やってみろ」
「おお!!さすがシスイ!!!話がわかるぜ!!!」
「シスイっ、いいのかよ?S級だぜ?」
「分かってるよ。ナツ、ただし条件がある」
「な、なんだよ?」
「お前の手に負えないと判断したら手を出す。それでいいな?」
「よっしゃあ!!」
「ルーシィとハッピーもいいな?」
「は、はい!」
「あい!」
不安だけど、シスイが決めたなら仕方ないか。
「それとグレイ」
「ん?何だよ?俺はもう帰るつもりなんだけど」
用がすんだのならとっとと帰るぜ。
「ナツ達を手伝ってやれ」
「はっ?何でだよ!?」
「そうだぜ!こんな裸要らねえ!!」
「誰が裸だ!!くそマフラー!!」
「言うことを聞け。出なければどうなるか……分かるな?」
「「あい」」
くっ、不本意だが、シスイには逆らえねえ。ここは手を組むしかないか。
○
ったく。ナツには困ったもんだな。グレイに脅してもらったのに効いてないし。さすが主人公と言っておくか。
さて、俺達は今ボボという船乗りに、ガルナ島に送ってもらっていた。その悪魔の島と呼ばれているらしい。ボボが左腕を見せて、それが異形のものであることを示す。
「その腕…」
「呪いって…まさか…」
これが呪い?おかしい。写輪眼で見ても異常がない。どういうことだ?これが呪いならそれが何らかの形で見えるはず…。逆に人の部分の方に違和感を感じるが…。
「見えてきた」
俺達はその言葉に振り向き、前方を見る。
「ねえ…オジさん」
ルーシィがボボを呼ぶが返事はなく、そこを見ても誰もいなかった。俺は、島が見えたというから白眼に替えて島を見ていたので、空に飛ぶのをしっかり確認した。やはり何かあるようだな。
しかし…あれは…島の上が結界みたいなので覆われている?どんな効果なんだ?人が暮らせるってことは大丈夫なんだろうけど。
「きゃあああ!!!」
「大波!!!」
何っ?ちっ、考え事してて気づかなかった。笑えねぇ。みんなが騒ぐなか、俺は船を守るために印を組む。これを利用し、島まで一気に行くのが本当の目的だけどな。
氷遁秘術魔鏡氷晶。
氷の鏡で隙間なく船を覆う。沈没しないように、船が壊れないように全体を覆う。
「ナイス!シスイ!」
「さっすがぁ!!」
「でも波は止まってないからな」
「「「え!!!」」」
俺の言葉に振り向き、波を確認する。でも魔鏡氷晶で覆っているから見えないけどな。船に波が当たり、激しく揺れる。
「きゃあああああ」
「くっそー」
ルーシィとグレイが騒ぐが、ハッピーは落ち着いた。飛んでいれば揺れを気にしないですむからな。ナツはダウンして騒ぐ元気もないらしい。
船は波に呑まれる。まぁ俺は土遁軽重岩で浮いてるから問題ないな。あ、こいつらも浮かせてやればいいのか…………まぁ今さらだな。
ふむ、着いたか。今のところ、体に異常はないな。やっぱり人体に影響はないみたいだな。ならとりあえずこいつらを起こすか。
「おい起きろ」
俺は全員を起こしていく。てかなんでハッピーも気絶してんの?
「この島には村が1つある。そこの村長が依頼主だ。まずはそこに行くぞ」
「「「おおっ」」」
「あいさー」
「で、村に来たわけだが?」
「立ち入り禁止ってどんな村だよ」
「まいったなー」
「どうするの、シスイ」
「当然挨拶してはいる。すみませーん。妖精の尻尾から来ましたー、開けてくださーい」
「何者だ」
いや、名乗ったでしょうが。
「魔導士ギルド、妖精の尻尾から来ました」
「紋章を見せてくれ。本物か確認したい」
俺達は紋章を見せる。袖めくるの面倒だな。というか、暁の服が長袖だからな。今さら服を変える気はないし、もっと見せやすいところにすれば良かった。
「確認した。どうぞ、村長を呼んでこよう」
俺達は村に入る。村長は村人を集めていた。みんなローブを羽織って、必要最低限以外肌の露出をしていない。
「これを見ていただきたい。皆の者布をとりなさい」
村長を含め、村人が羽織っていた布を取る。そこには予想通りというか、体の一部が異形のものになっていた。
「やはり」
グレイは予想していたか。他のやつは?
「ごく…」
「スゲェモミアゲ!!!」
ルーシィは息を飲み、ナツは村長のモミアゲに驚く。いや確かに、村長のモミアゲは臍辺りまであり、驚いたけどもそうじゃないだろう。
「これが呪いですか?」
「何十人もの医者に見てもらいましたが、どの医者もこのような病気はないとの事です」
ある方が怖いけどな。でも確かにこれは呪いと捉えても仕方ないな。俺もそれしか思い付かん。
そして村長は、このようになった原因に月の魔力が関係しているという。村長の言う通り、紫の月が出ていた。
「これは月の魔力呪いなのです」
村長がそう言った次の瞬間、村人全員の姿が完全に異形の者になる。さすがにこれには驚いた。他のみんなもガーンという効果音が聞こえそうなくらい驚いていた。
白眼で村全体を確認するが、特に気にするようなところはない。本当にこれはどういうことなんだ。
そして村長は、朝になれば戻ると言う。しかし心まで魔物と化した者は、殺しているらしい。閉じ込めたりしても壊して出てきて村人が殺されるから、苦肉の決断らしい。
そして村長の息子も魔物となり、殺したらしい。見せてくれた写真には、ボボが写っていた。ナツ達は幽霊だと思ったようだが、俺は飛んでいったことを知っている。
少なくともあれは幽霊じゃなかった。つまり、生き返ったか、元々重症だったが死んではいなかったということだ。しかし心まで魔物になったにしては、襲われる気配はなかったし、殺気もなかった。
この姿、テイクオーバーすればなれるんじゃないか?しかし、そうするといたずらということになる。いたずらでギルドに依頼するものなのか。仮にしたとして、ランクがS級…いたずらにしては度が過ぎてる気がするが……。
俺が考えている間に話は進み、結論まできていた。
「呪いを解く方法は1つ……月を破壊してください」
月か…壊すのは簡単だが、月は壊せないよな。重力バランスが崩れて、この星がどこに行くか分からなくなるし。
『というか、九喇嘛。何か分かる?』
『さあな』
『どんなことでもいい、教えてくれ』
『ふん。俺に分かるのはただ1つ。こいつらに悪意はねえってことだ』
『悪意が?まったく?』
『そうだ』
悪意がないということはいたずらじゃないのか。ならこの人たちが言っていることは本当で、あの月が呪いを発しているのか……。
どうやら、一筋縄ではいかなそうだな。