史上最強の弟子ケンイチ〜宇喜田転生伝〜   作:夏野菜固定金具

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道場

今現在オレ、宇喜田孝造は技の三人衆としてラグナレクの遊撃隊として活動している。

 

「はっはー!遅い遅ーいっ!」

 

右手一本でラグナレクに従わない不良共を沈めていく、三人のリーダー武田一基こと突きの武田。頭が残念だがこの遊撃隊が結成された当初、オレは泡を吹いて気絶中でもう一人はトイレの住人だったために消去法でリーダーになったのだ。

 

「うぉりゃっ!」

 

襲い掛かって来る雑魚達を投げ飛ばすのはオレ、人呼んで投げの宇喜田。ぶっちゃけ色んな物を投げるから投げの宇喜田のはずが周りからの勘違いのおかげで投げ技を習うことになった。せっかく鬼幽会と言う空手道場に通っているのに。まぁ期待には応えたい性分なのだ。

 

「ほぉーらどうしたどうしたっ!」

 

煽りながら蹴りで相手を蹂躙しているのは蹴りの古賀、古賀太一の代理人である辻新之助。自らの部隊である辻隊を率いる出世頭だ。拳豪入りも噂されているスゴイ奴だが、拳豪入り必須である現拳豪の推薦を受けられないでいるちょっと残念な奴である。

 

 

「全くよう、古賀の奴はどうしたんだよ。」

 

雑魚掃討が終わった帰り道、冬の足音を聞きながらお馴染みの三人で歩いている。後片付けは辻隊のおかげで楽に終わった。

 

「なぁんでも今日は通院の日らしいじゃなぁ〜い。」

「いつも思うがタイミング悪すぎんぞ三人衆!」

 

辻と武田の話しを聞きながらもっともだと納得するオレがいる。なんと技の三人衆、結成から一月半一度も三人揃ったことがないのだ。遊撃隊なんて名前だけの所詮は便利屋。自由ではあるけどスケジュールが急にやって来るのだ。揃わないのも仕方ないがこれは些かマズイと思う。下手をしたら技の三人衆と言う看板を降ろさなくてはならない事態になりかねないし、何より代理として来てくれる度に足技の磨きをかけている辻の蹴り技が古賀より強いかも分からん状態にもなってきているのだ。

 

「まぁとにかく、月末の定例会までには三人揃った実績をださねぇとおめぇら解散だってありえるぞ?」

「ハハッ、解ってるじゃな〜い」

 

二人の言ってることは流しながらプリッキャーファンBOXの中身について考察する。三人衆のことだって気絶中に決まったことだし、解散したらしたで辻隊に入ろうかと考えてるし、これ以上ラグナロクへの心証が悪くなる位ならお取り潰しも悪くは無いかなと思う。というか凄まじいな通天双指肛。あれから一月半経ったのに古賀は復活できずか。一応禁じ手にしておこう。

 

「我に秘策あり、任せておくじゃな〜い。」

「本当だろうな、おい。」

 

二人の話しが終わった辺りで流れ解散となりそのまま空手道場、鬼幽会があるビルへと歩いて行く。今日はアラン須菱先生が対多数の対処法と浸透頸のさわりを教えてくれるらしい。

 

鬼幽会に着いた。鬼幽会は基本的にはどんな事をしても勝つというスタンスで空手を教えており、武器や凶器を使うことを奨励している道場だ。むしろ教えてくれるのは空手よりも喧嘩での勝ち方で、組手でも平気で武器が出てくる辺りにらしさが滲んでいる。

さて、道場主のアラン先生だが筋骨逞しい褐色肌の白スーツ姿という見た目で、組手に参加する時もだいたい同じいでたちなのだが今は上半身裸で浸透頸を見せてくれている。長々細々とした説明と実演だったが、要約すると浸透頸とはワンインチパンチや寸頸などの外側を壊す技とは違い内側を壊す技で、下半身の踏み込みを上半身に伝えると同時に体重移動で放つプロセスは変わらないが身体の捻りと関節の固め方が違うらしいのだ。確かにアラン先生が二つの違いを試し割りという形で見せてくれたが壊れ方が違う。片方はくの字に折れ、もう片方は爆ぜる様にと石ブロックは二通りの形で壊れた。ふぅーむ、ナルホドナァー。その後各自練習となったので帰ろうとしたら自由組手に誘われたので参加していく事にした。

 

今は対多数の実戦訓練でボコられている最中。いやぁ、自由組手って聞いてたんですけど始まった瞬間に実戦訓練開始っ!て誰かが叫んだらスタンガンで動けなくさせられるとは思ってなかった。まぁ浸透頸のイロハを先に習ったので帰る気満々だったが攻撃を避けたりすることの大切さがわかる結果になった。確かに雲のジュウザもラオウの攻撃躱してたな。アクロバットに避けたいからパルクールでも習うかね。さて、せっかくなのでラグナレク修錬場で思い付いた、身体の中にある赤色の気の様なのを腕に集めるイメージで拳を振るう、というのをやってみますか。周りの奴らもボディアーマー着てるからだいじょぶだろう。お、身体も動いて来た事だし思い付きを実践しながらキューピッドパンチとアメリカ指導のフルコースをご馳走しようとするかな。

 

 

それから数日後、定例会まであと一週間となった今日、武田に呼び出された。待ち合わせ場所には古賀の姿もあった。なんでも武田が言うにはこれから三人は離れないまま定例会当日を目指すそうだ。原則個人行動禁止だと。武田はイイ笑顔でこれが秘策ってわけじゃな〜いと告げてくる。ふざけんな。

 

「なぁ、オレ空手道場にかよってるだろ?おかげで技が進化したんだ。」

 

唐突に告げるオレを二人は困惑顔でコッチを見る。聞く耳持たんし空気も読まん。

 

「ヒデヒコ神拳究極奥義、通天双指肛‼︎」

「おっごぅわぁあ…」

 

え、なんで?と言う顔でこちらを見る武田。転がる古賀。安心しろ、とどめを刺しただけだ。

 

「今までは奥義止まりだったが遂に究極奥義を出せるようになった。最早二度とその足で歩くことは叶うまい…三日くらい…。」

 

武田困惑顔、古賀痙攣中。

 

「まぁアレだ、技の修行中の事故だ。だから定例会に間に合わなくても仕方ないし、暫く古賀が合流出来ないのもしょうがない。古賀は犠牲になったのだ。」

 

武田驚愕顔、古賀失神中。

はてさて、帰るとするか。と、その前に

 

「古賀、ずっ友だよ。」

 

フォローを忘れちゃいけない。

それよりも早く帰ってプリッキャーを観なくては。今は佳境に入って良い処だし劇場公開記念の総集編も観なくちゃならん。さらにファンBOXの店頭予約受付が明後日から始まる。今週は忙しい。週末の放送局番違いのプリッキャーも要チェックだ。

オレはプリッキャーの為なら禁を破ることも厭わんさ。

 

宇喜田孝造はクールに去るぜ‼︎

 

 

 


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