史上最強の弟子ケンイチ〜宇喜田転生伝〜   作:夏野菜固定金具

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編集できたハズ。


拳豪戦

六月某日、オレが引越してから一ヶ月と少々の時が過ぎた。後何日かすると拳豪候補を決める戦いがラグナレク主催で開催される。勿論オレは出ない。今オレは第七拳豪トールから四股(しこ)を学ぶのに夢中だからだ。屋外の修錬場で、

 

「世の太めの男性のためにぃ〜い!」

 

叫びながらドスンと四股を踏む第七拳豪。あれか、モテタイのか。或いはお付き合いしたいのか。でも普段してるのはど突き合いだよね。良し、今度四股を教えて貰ったお礼に合コンをセッティングしよう。そんな事を考えながら四股を踏むオレ。格好は無論まわしを締めている。

 

「うむ、良くなって来ているぞ。ちと貫目が足りんかと思ったが中々じゃ無いか。ガッハハハハ」

 

四股は柔軟性とバランス感覚、さらには筋力を鍛える為の要素が全てつまった全身運動で結構キツイ。それと貫目=体重が必要なのは重心を安定させる為なのだそうだ。コレを続けて行っている第七拳豪は一見デブってるが筋肉の塊の様な身体であり、さらにその上に脂肪を着けたという打撃が通りにくい身体なのだ。どうやってその身体を作ったのか気になって聞いてみたところ、案外気さくに答えてくれて指導までやってもらっているのだ。オマケに顔を出す度にチャンコを食べさせてくれる。一人暮らしにはありがたい。

 

「ラッララーラーララララ〜♩」

 

四股を踏んでいると響いてくる歌声。第七拳豪の友人、飾り羽の帽子を被った第五拳豪ジークフリートがプリッキャーのオープニングを歌ってくれているのだ。正直わけ分からんが第七拳豪の為にありがとう!という気持ちの現れなんだとか。うん、合コン成功させて見せる。しかし男が歌う女性歌手の曲ってどうなのよ?と思っていたが驚く程に上手い。疑問も無しに音楽Podに入れて持ち運んでるオレがいるね。

 

 

拳豪二人との稽古が終わり、汗を拭いて帰ろうとしたら

 

「おーい!宇喜田ぁー。」

 

オレを呼ぶ少女の声。最近仲良くなった南條キサラだ。最近髪をショートにした。うん、オレの青春が始まった気がする。

 

「拳豪戦に向けて練習したいから的になれよ。」

 

バイオレンスだけどこれも青春だ。青春のはずだ。アレだ、不器用な愛情表現ってヤツのはずだ。プリッキャーとかキワキワにも似た様なキャラいたし。うん、お付き合いしましょそうしましょ。オレは拳豪戦に出ないけど南條や武田、辻に古賀と言った奴らは皆参戦するらしいし、やっぱり勝って欲しいからな。今から当日が楽しみだ。

 

 

 

 

拳豪戦を明日に控えた今日、第七拳豪とのぶつかり稽古と第五拳豪との歌いながらのダンスというハードな訓練を終えてチャンコを食べている。すると武田がやって来て、拳豪戦が終わったら立ち会って欲しいとのこと。オレもそろそろ実力を測りたかったから都合が良い。了承の旨を伝えると、武田は不敵に笑って去って行った。明日も楽しみだが、武田との立ち会いも楽しみだ。

 

そして本日は拳豪戦当日。だけど風邪をひいてしまったので見に行けねぇ。どーゆー事態だよ!確か転生した時の特典に健康になるってのがあったはずだがどぉーなってんの。でも何で風邪ひいたかな?思い当たるのは食生活が乱れまくってた程度だけど、まさか原因はそれか?まぁなっちまったもんは仕方ないから大人しく寝てるかね。しっかし暇だね。プリッキャーとかキワキワとか筋肉刑事マッスルとか見たいもの沢山あるけどまずは風邪治さないと。体が資本ってのはいつの世も変わらんし。あぁーおやすみなさーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、アレだ。目が覚めたけど目が開けられねぇ。誰かが部屋ん中にいる。怪しげな気配がベッドの横からプンプンと漂ってくるしそれ以外の殺気にも似た気配がある様な感じがする。気のせいだったらイイなと思うが、オレの顔を覗き込んでいるのか鼻息がヒョッブルヒョッブルと吹きかかってくる。………思い切って目を開けるかな。鼻息がいい加減うざいし。

 

「‼︎‼︎」

 

目を開くとそこには見知った顔、第三拳豪がいた。

 

「おはよう。」

「あー、なんでここに…」

「おはよう!」

「お、おはよう。」

 

ニコリと微笑む第三拳豪。威圧感が凄まじい。どうしたんだろうか?て、オレは今住んでる場所を教えたのは武田と古賀、あとは辻だけだったはずだぞ。どうしてここに居るんだと問えば、武田達が拳豪戦で来れない自分たちの代わりにお見舞いを頼んだとのこと。なるほど、自分は良い友達に恵まれたものだ。さらには鍵が開けっ放しだった為に悪いとは思いつつも上がったとのこと。

 

「あっれー?オレはいつもチェーンロックまで……」

「水分補給は大事だぞ。」

 

オレの疑問を笑顔と威圧感でねじ伏せながらスポーツドリンクを差し出してくる。

 

「お、ありがとな。第三拳豪」

「かなめだ。」

「?」

「わたしの名前は必要の要と書いてかなめと読むんだ。」

「あーありがとな要ちゃん。」

「い、痛たたたっ抜ける抜けるっ!」

 

何か知ってる声がした方を見たらラブやんさんがいた。何でも姿が見えないから心配になり上がらせてもらったら足の小指をぶつけてしまったそうな。要ちゃんに紹介しようとしたら二人は部屋の隅に行って何かヒソヒソ話してる。既に顔見知りなんだな。

ラブやんさんが要ちゃんの肩を叩いて立ち上がった。

 

「まぁあたいは撤退した振りして見守ってるから、あとは若いお二人で。」

 

キリッとした表情でそう告げると帰ろうとするラブやんさん。するとドアが勝手に開いて、

 

「宇喜田、見舞に来たよ!」

 

と、トンファー女がやって来た。ありがとなと言うと、二人のチビッ子の姿が急に現れた。なんだろう、風邪ウイルスの取り過ぎかなぁ。現れたのは引越しの挨拶で見知った二人でシラとクロエだ。この二人もオレのことが心配になったらしく来てくれたらしい。しかし来て早々にラブやんさんとガンを飛ばし合うのはどうしたものか。優しさはありがたいだけにツッコミずらいぞ。

 

「もぉ、鍵開けっ放しなんて不用心だよ?それとお腹減ってると思うからお粥でも作るね。」

 

まるで周囲が目に入って無いかの様な行動に、若干戸惑いながらお礼をする。拳豪の要ちゃんにもあいさつしてないし。

 

綾崎 智里(あやざき ちさと)て言うんだ。ちゃんとした自己紹介まだだったよね?」

「そーいやそーだな。ま、よろしくな綾崎。」

「ハハハッ!わたしも孝造って呼ぶから智里って呼んでよ。」

「ん?別に…」

「智里だよ孝造。」

「……メシありがとな智里。」

 

何かすんごい威圧感を感じたわ。お腹痛くなって来たよ。しかもラブやんさんが足が滑ったって言いながら矢で刺そうとして来たから思わず裏拳でぶっ飛ばしてしまった。帰るんじゃなかったのか?今は盛大に血を吹いて床に転がっている。掃除どうしようかなと考えていたらキンコーンと呼び出しのチャイムが聞こえ、智里が鍵をかけたはずの玄関が開け放たれてミノッチさんが現れた。

 

「ど〜もっす。バイトは来週から来て欲しいそうっすよ。あ、あとこの子が玄関先でウロウロしてたっす。」

 

アルバイト面接がOKだったことをワザワザ言いに来てくれたみたいだ。電話でもよかったのに。てゆーか鍵が仕事してない件。

 

「み、見舞に来たぞ。」

 

南條キサラ登場。何かモジモジしてビニール袋を差し出して来た。受け取るとダッシュで去るキサラちゃん。ありがたく貰うとしますか。いつの間にかミノッチさんもいないけどまぁいいや。

 

「出来たよ孝造!」

 

お粥が出来たらしい。食べようと見てみると、何か薬みたいなカプセルとか錠剤がご飯と一緒に浮かんでいる。

 

「わたしも玉子酒つくったんだ!」

 

何時の間に作ったのか分からない物だが要ちゃんから受け取る。何か酒の匂いと目を刺激する何かが漂っている気がする。でもせっかく作ってくれたものだし有難く頂くとしよう。特典に頑丈も有ったから最悪死にはしないはずだ。

 

怪しげなお粥をかき込み玉子酒を一気に飲み干す。何か気分が悪くなったのでキサラちゃんからの差し入れの飲み物を飲む。気分がらくになった。ありがとうキサラちゃん。ん?キサラちゃん?拳豪戦はどうした?終わったのか?拳豪戦といえば、………!そうだ!武田との約束!武田と殴りあわなくちゃ!急げ!武田と殴りあいだっ!

 

「美味しかった?」

「どうだった?」

 

何か誰かが聞いて来るがそれどころじゃ無い!すぐさま服を脱ぎ捨てて着替えて、武田との約束を果たすべく拳豪戦の会場へと急ぐ。

 

 

着いたぁっ!ゴールだっ、しばき愛だ!

 

「たああぁぁぁけ、だああああぁぁぁぁぁっ!」

 

武田が古賀、辻と一緒にいた。三対一か面白い!

武田とか古賀とか辻が何か言っていたがよく分からんとりあえず殴る。フヒッ!そんなダメージを負ったままこのワタシと戦おうというのか!片腹痛いわっ‼︎アンッドゥットロワァッ!のリズムでワキ毛を毟りとってくれてやらないのだぞっ!どぉしたソレでおしまいくぁっ?

 

「っだぁ〜ハハハハハハハハハハハハッ!」

 

思う存分高笑いしたところで三人が動かなくなった。なんか身体はダルイけど気分は爽快だわ。あ、風邪をひいていたのを思い出した。なんだか爽やかな気分だ。このまま寝てしまおう。

 

 

 

目が覚めたら部屋にいた。何か別の場所にいた様な気がしないでも無い。風邪は治った様だ。ん、武田達からメールが入っている。どうやらタミ◯ルのせいで奇行をしてしまったみたいだが気にしてないとのことと、女子三人にはしっかり言い聞かせておいたとのことだ。タ○フルのせいで記憶が曖昧なせいか憶えていないが、どうやら迷惑をかけてしまった様だ。今度何かお礼をしなくちゃな。あと女子三人って誰だ?

 

 

まぁいいか。さて、風邪も治ったことだしプリッキャーでも見るか。

 

 

 

 

 

 


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