時差ボケという現象には慣れているつもりだったが、実はそうでも無かったようだ。
扇要は飛行機の中、椅子を起こして水を飲んだ。
黒の騎士団に居た頃にも頻繁に海外へと行くことは合ったが、EUに行ったりブリタニア本土に行ったりと、首相になってからというもの移動の幅が大きくなったことを実感する。
現在はEUで行われた会議の帰りであり、久しぶりに家族と暮らす事が出来る事に今から胸躍らせていた。
日本の首相、つまり総理大臣という役職に就いた事に後悔はないが、不安は積るばかりだ。
自分以外に適任者がいるのでは? 自分は上手く代表を務められているのか?
一度考えると、溢れ出す不安の数々に扇は答えを出せずにいた。
しかし、これは自分が起こした出来事、そして彼が作り出した未来への責任を取るという形では最高の役職だった。
彼の超常なる力、一部の者だけが知りうるもう一つの世界の力、ギアス。
自分たちはただ操られ、信じている心すらも偽物だと疑わざるを得なかった。その為に起こしたZEROへの反逆。
あの時の選択に後悔がないと言えば嘘になる。
と言っても自分たちが状況を見直し、少しでも真実を知ったのはもう彼が世界を改革し、この世を去った後だった。
全てが彼の計算だと言われれば納得できてしまう自分が嫌になる。
ZEROは、あの少年は本気で世界を憎み、世界に抗っていた。
「後悔……なのか。いや、俺たちはいつまでも彼に頼る訳にはいかなかった」
ぽつりと呟いた言葉はそのまま溶けて無くなって行った。
今のZEROが誰なのかは知らない。いや、知ってはいけない。
これは残された者で話し合い出した結論の一つだ。
各自が自分で考え、正解を見据えて、正しいと思った道を行く。
頭が悪い自分がいくら脳を回転させてじっくり考えたって答えが簡単に出てくるはずがないのだ。
『扇総理大臣。当機は着陸の姿勢に入ります。準備をお願いします』
アナウンスが入り、扇は体勢を整えてしっかりとイスに座る。
今後の予定に空きは多くなくとも存在はする。
「久しぶりに玉城のバーにでも顔出すか」
気分転換、というよりも思い出話がしたいのだ。
そして、例の準備の為に計画を練らなければいけないのだ。
扇要は窓から見える朝日をしっかりと見つめながら祖国へと降りて行った。
*
リヴァル・カルデモンドという一人の少年の話をしよう。
カリフォルニア出身の、貴族ではなくともそれなりに裕福な家に生まれた彼は当主である父親との仲が悪い為に元エリア11であった日本のアッシュフォード学園に入学することになる。
父親の事を嫌っているあまり、苗字を母型の性にして学園に登録したり、また自らもそう名乗っている。
アッシュフォード学園生徒会唯一の一般人であり、ルルーシュのZEROからなる物語には一切関わることのなかった人物である。
枢木スザクが転校してくるまでは、ルルーシュが唯一心を開いていた男子生徒であるが、リヴァルはルルーシュの過去を詮索するような事をしなかった為に素性などの情報を一切知ることは無かった。尤も、詮索したとして情報を知り得ていたかと問われればNOとなってしまうが。
つまり、物語の中心に居たのにも関わらず、最後まで何も知らなかった登場人物と言えよう。
そんなリヴァル・カルデモンドはゼロレクイエムから半年たった今でも、自分の不甲斐なさを後悔しながら過ごしていた。
夕暮れが差す生徒会室には自分だけしかおらず、他の役員は皆先ほど帰って行った。
仕事が終わり誰も居なくなった生徒会室で一人、椅子に座って過ごすというのが彼の付いてしまった習慣だった。
ボーっと天井を見つめ、視線を下に動かすと見えてくるのは『生徒会長』と書かれた役職を示す置物。
本来ならば自分が座るはずが無かった席の机に顔を付けて指で置物を弾いた。
「俺は何も変われないなー」
どれだけ周りが、世界が変わってもリヴァル・カルデモンドは二年生の時からの変化がない。
ミレイを思う心も健在であり、自分だけ一人取り残された感覚に幾度も陥る。
しかし、そんなリヴァルでも小さな目標が出来ていた。
それは『友人を理解する』ということ。
望むことならばルルーシュ・ランペルージ、いやルルーシュという個人を全て理解すること。
それが、一人で苦悩していた友人を助けることが出来なかった自分が唯一出来る事だった。
何時ものように『ガーッツ!』と一声出して気合を入れ、生徒会室の扉を閉めてバイトへと出かけた。
リヴァル・カルデモンドがバイトしている場所は個人経営のバーであり、ルルーシュと出会った賭博場ではなくなっていた。
慣れた手つきで着替えを済ませ、扉を開けた向こうのバーカウンターにいるマスターへと挨拶をする。
「こんちわーす」
リヴァルの挨拶にグラスを拭いていた手が止まり、赤髪をバンダナで逆立たせたガラの悪いヤンキーのような店主が答えた。
「おう、来たな。まずはいつものように頼むわ」
「うぃーす」
リヴァルはいつものように掃除や、準備をしながら話しかける。
「今日は誰が来ますか?」
「誰だろーな。ああ、南の奴は来るって言ってたな。杉山ももしかしたら来るかもしんねぇな」
「よっしゃ」
「お前も毎回毎回懲りずによく聞いてんなぁ、俺達じゃ殆ど知らねぇってのに」
「いやいや、聞いてて辛いのもありますが俺にとっては大事な話ですよ。玉城さん」
店主、玉城真一郎は並べられた置物をつまらなそうに弄りながらため息をついた。
そして思い出したようにリヴァルに声を投げつける。
「マスターと呼べよ!」
「はいはい。分かりましたって」
リヴァルは面倒そうに返事をしてせっせと作業をしていく。
リヴァルがこのバーを知ったのは賭博場のバーがつぶれた後、バイト先を探している時にカレンに勧められたのがきっかけである。
最初の印象は何処にでもいそうなヤンキーだったが、話を聞くと驚くことに、カレンと同じく黒の騎士団結成時から居た古参であり、幹部でもあったそうだ。
そして、この玉城が営業するバーには名だたる人物たちが来店してくる。
それはIT企業の重役を務めている南佳高であったり、当時は駆け出しだが、今では人気急上昇中のアーティストである杉山賢人とであったり、さらには日本の首相である扇要もたまにであるが来店するという驚くべきバーであった。
その他にも、数々の政治的重役が顔を見せる時もある。
そんな彼らの全てに関わっているのが、元黒の騎士団幹部だという事。
カレンは少しでもリヴァルの助けになればと、ここを紹介し、リヴァルは思ってもみなかった幸運に全霊をこめてお願いした結果、現在のように働くことが出来ている。
「リヴァル、お前はルルーシュが、ZEROが悪人だったと思うか?」
「たま……マスターはどう思っているんですか?」
「俺はあいつの事は親友だと思ってもいたし、すげぇ奴だって尊敬もしてたけど……だぁ! 俺はなんか色々もやもやしてて考えが纏まんねぇから聞いてんだよ!」
「んな無茶苦茶な……。でも、それは俺もですよ」
「だよなぁ……」
ため息交じりの玉城の声にリヴァルは少し間を作った後、元気な声を出した。
「でも! 俺はあいつが悪の敵であった、と思います……」
「つまり?」
「正義の味方、善人ではないと思います……。だけど絶対悪人では無いとこれは言えます」
「ははっ! やっぱりおめぇを雇って良かったぜ。半年が経ったとしてもそう結論が出るもんじゃねぇしな! まぁ、アイツはもう死んじまったんだし答えはねぇが、それでも考えるのを忘れたらそれは本当のバカだ。俺以上に腐った奴だぜ。だから、俺たちは馬鹿正直に悩んでいくしかねぇんだ」
「マスター……たまには言いこと言いますね」
「んだと!? 給料下げんぞ!」
「そんな! 勘弁してくださいよ!」
そうだ。これから時間はまだまだある。全てを理解することが出来なくとも、それが何十年掛かったとしてもいい。
しかし、それが出来た時にはブリタニア本土に行ってアイツの墓参りをしてやるんだ。
そして、『意地っ張りのバカな奴め、お疲れ様』って言ってやるんだ。
リヴァル・カルデモンドは心の中で新たな決意を決め、店の看板を裏返した。
*
ブリタニア本土、黒の騎士団訓練場にZEROの恰好をした二人組が堂々と姿を現した。
一人は背が高く背丈恰好から男性だというのが見て分かる。逆にもう一人の方は背が小さく、子供にも女性にも見えてどちらか分からない。
二人が倉庫区画に顔を出すと、今まで騒いでいた他の団員は静かになり、また綺麗に列になっていた。
「ほう、行動は素早くて結構。諸君らも聞いているかと思うが、今日は君たちのナイトメア操縦技術の向上の為に出向いた。今日覚えたこと、感じたことをこれからの訓練に生かしてもらいたい。私からは以上だ」
背の高いZEROの挨拶が終わると、団員の一人が前に出て全員に向き合った。
「今日はお忙しい中番外特務のお二人が来て下さった。皆、もちろん俺もだがよく話を聞くように」
前に出た団員は話し方的にここの代表のようだった。
他の団員が素直に返事をした後、背の低いZEROが口を開いた。
「それは違う」
「それはどういう意味で……」
「私たちは何も教えない。ただ実践とアドバイスをするだけ、自分で見つけなければ意味がない」
「うむ、実にその通りである。さて……では前列の五人ナイトメアに乗機したまえ」
多少面食らった面々も指定されたようにテキパキと行動し、全員の起動が確認出来ると背の高いZEROはよしよしと頷いた。
『えっと、番外特務さんこれからどうしらいいでしょうか?』
「そのまま五人は倉庫の外に出てもらおう。私と実践だ」
『いきなりですか!?』
「問題あるかね?」
「いいえ」
ナイトメアに乗っている女性に当然のように答えた背の高いZEROは五機が倉庫を出て行くのを見送ると、同じように倉庫を出てどこかに行ってしまった。
取り残された団員の代表として背の低いZEROの横にいる代表が声をかける。
「どこに行かれたのでしょう?」
「今取りに行ってるからちょっと待ってて」
皆が妙な空気の中待っていると、音を立てながら大型のトラックがやってきた。
そして後ろの大きな扉から首が無く、その位置に剥き出しのコックピットが取り付けられたナイトメアが姿を現した。
「第三世代KMFガニメデ!?」
『ほう、知っているのかね代表くん』
「ええ、ルルーシュ皇帝の母君で有らせらせたマリアンヌ皇妃の専用機ですよね」
『そうだ。しかし、これは私の専用機でね当時に作られた物とは違う代物だ』
良く見ると所々に緑色の突起も追加されており通常とは少し違っていた。
ガニメデはそのまま直進し、五つのサザーランドの前で停止した。
『さて、諸君らはこれから全力を持って私を撃墜してほしい。当然遠慮はいらない。そして安心して欲しい、最近作ってもらった物だとしても性能は当時の物と、そうは変わらないものにしてある。性能だけなら諸君らの方が上である』
『そんな!? いくらあなたでも無理ですよ!』
『ならば試してもらおう!』
大きな掛け声とともにガニメデは敵陣に突っ込んで行き、一体と衝突した。
流石にただやられるわけもなく、正面に居た一人がスタンファントムで迎え撃つ。
他の四人もワンテンポ遅れたが取り囲むように並び、銃を構えた。
『これで終わりです』
『それはどうかな?』
言うと同時に、ガニメデの肩に付いていた緑色の突起が四方向に飛び、銃を全て叩き落とした。
『なっ!』
『馬鹿な! あれはスラッシュハーケンだったのか!?』
『狼狽えずに構えろ!』
当然団員は唖然としたが、スタンファントムを構えてそのうちの一体は大きく振りかぶりながら突進していった。
『いい判断である。しかし! その動作までが遅すぎだ』
ガニメデは大きな手で目の前のサザーランドを突き飛ばし、後ろに振り返りながら両手を落して人質を取る様に首を絞めて他の四機の前に出た。
『さて、この状況ではモジュール飛行で抜け出すことは出来ない。しかし、四人が同時にスラッシュハーケンを使えば私を倒すことが出来る。勿論この人物は助からないが。さて、ここで問う!』
声を張り上げながらガニメデは試すように言葉を出した。
『こういった状況に陥った場合、諸君ならどうする! 答えを聞かせてくれ』
少しの沈黙の後、一人がシュラッシュハーケンを構えて答えた。
『軍人として、自らを犠牲にして対処するべきです!』
『それが君の答えか……軍人としての答えなら満点であろう。しかし! 今のこの世の中でその答えは最低点である!』
ハッキリと断言し、サザーランドを解放したガニメデは五人に、他の団員に、向き合い声を張って続ける。
『理想であろうとも、その可能性が低くとも、最後まで人命を捨ててはいけない! 今は軍事より、個人が優先される世界である! 絶対に見捨てるな、絶対に諦めるな、最後まで考え抜け! これが私が諸君らに伝える最も大事な事である!』
団員の中には感銘を受けて涙を流す者、尊敬の眼差しで見つめる者その他大勢が真っ直ぐにガニメデを見つめていた。
『さて、私から言う事は終わった、早々に決着を付けよう。そこの四人、仲間を人質にされて悔しかっただろう、私を憎いと思っただろう、そして何も出来ない自分を恥じただろう。さぁ、その感情は間違ってなどはいない! 全力で私を倒しに来い!』
腕が残っている四機は一斉にスタンファントムを構えて体勢を整え、腕がない一機はシュラッシュハーケンを構えた。
緊張感と高揚感が絶好調に達し、五人は息を吸うような自然な動きで一斉に突撃していった。
*
ブリタニア本土、船を降りたルルーシュとC.C.は観光客に流されるように街の中心部まで来ていた。
「それで? 何を買うつもりだ?」
「服やこれから必要になる生活品だ」
「言っておくがホテルの用意まではしていないぞ?」
「そんなのは分かっている」
ルルーシュは周りを見渡し、ふむと顎に手を置いて考え始める。
その間暇なC.C.はベンチに座り、退屈そうに歩く人々を流し見ていた。
「そうだな……まずはサングラスが欲しいな」
「それならメガネ屋か?」
「そうなるな。では行こうとしよう」
帽子を深く被り、ルルーシュは店内に入って行き、C.C.も続いて入って行った。
店に入るとメガネを掛けた女性店員がにこやかな笑顔で近づいてきた。
「いらっしゃいませー、今日はどのような商品をお求めで?」
「サングラスの場所を教えてもらえますか?」
「でしたらこちらの棚になります」
手招きするように先を歩く女性の後ろでC.C.はからかう様にルルーシュに耳打ちする。
「相変わらず変わり身が早いな」
「黙ってろ」
「おお、怖いな」
店員は棚に着くと振り返り、はっとした表情を作った。
「もしかしてカップル用をお求めですか?」
「いいや、普通ので頼む」
「新婚用を頼む」
「何!? お前何言って!?」
「はいっ! でしたらこちらがお勧めとなっております。ごゆっくり!」
何故だがテンションの高くなった女性店員は素早く何種類か勧めると、踵を返して去って行った。
居なくなる女性店員の背を呆れながら見つめると、ルルーシュはため息をついてC.C.を睨んだ。
「面倒な事を起こしやがって……。お前何がしたいんだ?」
「冗談も通じないのかお前は? 全くつまらない奴だな」
「お前……っ!」
「はぁ、悪かったよ。代わりに私が選んでやろう」
「自分の事ぐらい自分でやる」
「いいから任せておけって。私が何年品定めしてきたと思っている?」
「そんな事知った事か」
「坊やは黙って私に付いて来い」
「黙れ年増」
「お前! 言ってはならないことを言った! 言ってはならないことを!」
「先に年齢の話をしたのはお前の方だ」
「だからって女性に、私に年齢の話をすることがタブーという事が分からないのか!」
二人の口論はどんどん大きくなっていき、店に居た全員の視線を集めることになった。
その事にも二人が気付くことはなく、場を収めようと女性店員は慎重に声をかけた。
「あ、あのーお客様……。他のお客様の迷惑になりますので……」
「なんだ! ……すみません。気を付けます」
振り返ったルルーシュは事態を早々に理解し、冷静に対処した。
女性店員は二人の争いが収拾した事に安堵しながらごゆっくりと後付けして戻って行った。
「熱くなり過ぎた、すまん」
「いいや。私の方こそ」
「さて、気分を戻してさっさと選んでしまうか」
「そうしよう」
ルルーシュは値段、色、形、様々な要因を考えて最適な物を選んでいく。
最も大事なのは相手から目を見ることが出来ない黒くて透明度が低い物、そしてルルーシュの性格から、ダサい物はNGである。
「これなんかいいんじゃないか?」
C.C.が手に持っていたのはルルーシュの要望に応えるように黒く、シャープな形で柄は少し明るい色になっているスポーツタイプと言っても信じて貰えるようなサングラスだった。
「これは良い物だな。よし、これにしよう。というか、今考えるとお金はお前が払うんだよな……文句言ってすまん」
「気にするなよ。元々はお前が稼いだ金だしな」
「ピザ用の貯金がこんな所で役に立つとは」
「何馬鹿な事を言っている? ピザ用はピザ用で別にあるさ」
ヒラヒラと手を振ってC.C.は二つサングラスを持ってレジに並んだ。
レジに着くと先ほどの女性が笑みを絶やさずに奥から新品のサングラスを二つ持って来た。
「合計で340ポンドになります」
「何!? そんなに高いのか?」
「え、ええ。こちらの商品は人気が高く性能も充実しておりまして……。あ! 申し訳ありませんでした。カップル割という物が有りましてお二人がカップルと分かる物を提示していただくと45%オフとなります」
ルルーシュはこの問いに窮していた。
カップルでも新婚でもないのでいつもなら直ぐに訂正していたが、今このまさかの値段を前にして言葉を詰まらせていた。
なぜあの時にキチンと確認しなかったのか悔やまれる。
しかし、他を見る限りこれ以上の物はない。どうしたものか。
「おい、その証明とやらはなんだったらいいんだ?」
「はい。皆さんツーショットの写真などが多いですね」
「そうか。今ここで取っても構わないのか?」
「はい、大丈夫ですよ。その為に奥に部屋があるのでごゆっくり」
「すまない。そのサングラス未払いだが、使ってもいいか?」
「はい。少々お待ちください」
C.C.は貸し出し用のサングラスを受け取ると、思考にふけっているルルーシュを引っ張り、歩いて行く。
「おい、どこに行く?」
「話を聞いていなかったのか? 証明写真を撮るんだよ」
「待て! まだ俺は認めるとは言ってないぞ!?」
「この状況になってから否定するのは無理だろう。それに節約は出来るならした方がいいのでないか?」
「確かにそうなのだが……仕方がない。さっさと終わらせるぞ」
垂れ幕のような扉を潜り、広い部屋に出ると長椅子や他にもボールなどの小道具が置いてあった。
「どういうポーズがお望みだ?」
「私達といえばのポーズがあるだろう?」
「なら俺は偉そうな態度で椅子に座っている感じか」
「私も同じ姿を想像したが自分でいうものなのか?」
「何事にも自覚は大事だろ?」
「ふふ、そうだな」
ルルーシュは椅子に座り、足を組んで肘掛に肘を立てて顔を支えるように指を置いた。
C.C.は携帯にタイマーを掛けて目の前の台に置き、椅子の後ろからルルーシュに項垂れるように体を預け、抱くように手を置いた。
そしてタイマーが鳴り、写真を撮るとお互いに離れてルルーシュは写真を確認する。
「サングラスをしていると別の味がでるな」
「服装もお互いに違うしな」
「さて、さっさと会計を済まそう」
「私が後はやっておくから、お前はホテルを予約しておいてくれ」
「了解した」
二人は部屋から出た後、店を出て壁に寄り掛かりながら電話を掛ける。
淡々と予約を取り付けていき、最後に思い出したように付け加えた。
「二十分後には行けると思いますのでチェックイン後に、ホームページに書いてある特注ピザを持ってきて貰えますか?」
『はい。了解いたしました。確認のため、もう一度お名前をお願いいたします』
「ルルーシュ・ジェンダルシナー、そしてシーツー・ジェンダルシナーです」
『ジェンダルシナー夫妻ですね。お待ちしております』
電話を切りふっと笑って空を眺める。
「……今回はサービスだぞ」
誰に言うでもなくひとり呟く。
暫くしてC.C.が袋を手にぶら下げて出てきた。
「随分と時間がかかったな」
「サービスを付けて貰っていたからな」
「どんなだ?」
「見れば分かるさ」
C.C.はニヤリと笑い、サングラスを取り出すとそのままルルーシュに差し出した。
受け取ったルルーシュは慎重にサングラスを見ると、柄の部分に文字が彫ってあるのが見えた。
「お前これって」
「カップルサービスの特典らしいぞ。面倒だからどちらともジェンダルシナーにしたが、別に構わないだろ?」
「ありがたく使うとするさ」
「素直だな」
「そうでもないさ。ホテルは予約してある、もう少し買い物してから行くか」
「そうしておこう」
二人はサングラスをかけ、並んで歩き、人混みに紛れていった。
夫婦漫才はニヤニヤしてしまいます笑
皆さんはドラマCDを聞いたことがありますか?
あの平和さは面白いですよね。
感想お待ちしております。