Magic game 作:暁楓
今回の投稿二〇一五年五月。
マジで申し訳ありませんでしたぁぁーーーっ!! ……まともに待ってた人っていたのかな?
一度止まると動かなくなってばっかです。綾と瑠璃々の関係描写がすっげー難しい。
頑張れ俺、これを切り抜ければStS編だ。俺の妄想を爆発させることができるんだ……だから頑張るんだっ……!
東上院との見合いから数日後。
本当に招待状が来た。というか、迎えが来た。
高級車に乗せられ、俺は東上院家の屋敷に案内される。
豪邸だった。まあメイド付きの生活を送っているのを見た時点で豪勢な生活もある程度想像がついてはいたが。
車から降りると東上院家の長女、瑠璃々が出迎えていた。
「ようこそ朝霧さま。東上院家へ」
「……ご招待していただき、うれしく思います」
「クスッ……ええ。では客間へ案内いたしますわ」
そう言って振り返り、屋敷へと歩いていく。お嬢様なだけあって、動作一つ一つに気品があり優雅だ。俺はその後ろをついていく。
屋敷の中は通路一つを取っても広かった。大理石の床に、壁や天井には豪華絢爛な装飾。俺の家も広くて豪華な方だとは思っていたが、幹部と社長でこれほどの差があるものなのか。
辿り着いた客間もまた広い。
どうぞと勧められ、ソファに腰掛ける。東上院は付いてきていたメイドに何か指示して下がらせ、それから向かいのソファに座る。
それから、先ほど下がったのとは違うメイドがティーセットを運んできた。
「まずはお茶にしましょう」
「砂糖やミルクはいかがしますか」
メイドが訊いてきたので、砂糖だけ入れてもらうことにした。
メイドに入れてもらった紅茶を口にする。……うまい。
しかし、今回の招待は一体何のつもりなのだろうか。招待状には何をするとも書いてなかったのだが。
第一に彼女が俺を気にかける理由がわからん。あの時の勝負は完全に負けたっていうのに……約束を守るためだけとは見えないし。
「どうかなさいましたか?」
「……いえ、なんでもありません」
「そうですの? ……ああそうでした、今回お呼びした理由を申していませんでしたわね」
こちらの考えを察したのか、単にそのことを思い出しただけなのか。どちらとも取れる喋りが少しだけ不快に感じた。こちらの考えてることを見抜かれてるのに、こちらは相手の思考を読めていないという感覚が少々悔しく思えた。
「この度は、朝霧さまにお願いがありますの」
「お願い?」
ノックと扉が開く音が聞こえた。
メイドが何かを持ってきていた。それは一つだけでなく、何人かのメイドによって一つ一つ運ばれてくる。
運ばれたものの正体は、チェスや将棋といったボードゲーム、トランプ、花札などのカードゲーム、さらにはビリヤードテーブルやダーツボードまでもが運ばれた。
「また、わたくしと勝負してくださる?」
そう言う東上院は目を細め、妖しく微笑んだ。
◇
訳を訊いてもはぐらかされたため、真意を確かめるためにも勝負を受けることににしたのだが……。
結果、全部負けた。
チェスも、将棋も、トランプも花札もビリヤードもダーツもその他諸々も全て、負けた。
ルールのある勝負には必ず、勝ち負けの線引きがはっきりとされる。そこに至るには運、知力、技術、運動神経……様々なものが複雑に絡み、優劣となり、勝敗となる。惜しかったとは言い訳にしかならない。
俺は負けた。そこには、俺が持っているものが彼女より劣っていたか、そもそも持っていなかった。
――羨ましい。
悔しさの後に、それ以上に思ったのが東上院への羨ましさだった。
俺が持ってないものを、俺より優れたものを、彼女は持っている。
どうしたら手に入れることができるのか。何をしたらそこまで辿り着けるのか。
知りたい。知って、自分もそこに辿り着きたい――。
東上院は、見定めるように俺を見て、それからクスリと笑った。
「さあ、それでは何をお願いしようかしら?」
……辿り着く以前の問題が、目の前にある訳だが。
今回も前回のように『勝ったら一つ願いを聞き入れてもらう』という賭けをした。勝負一つ一つにその賭けが適用されているため、相当な負債を抱え込んでいることになる。
果たして、どんな無茶ぶりをされるのやら……。
「……決まりましたわ。朝霧さま、暫くわたくしの執事となってわたくしに従事なさい」
「……はあ!?」
「勿論ここに泊まり込んでもらいますわ。朝霧さまの学校は現在夏休みとなっていると聴いております」
知ってますとばかりに東上院はドヤ顔をこちらに見せつけてくる。
確かに今夏休みで学校はない。その夏休みもまだ始まったばかりなので日にちはある。
だが、だがそれでも、この命令にすぐ頷くことはできなかった。
「何言ってんですか、いくら命令は何でもいいって言っても、限度ってものが……!」
「ええ。なので権利一つにつき一日、合わせて十日間ですわ。それなら許容範囲内でしょう?」
「ぐ……」
一日何かをする、というのは罰ゲームではある方だろう。そうなると反論できない。
そもそも、こんな賭けをして負ける方が悪いのだ。どんな命令でも受け入れるという条件に頷いた以上、文句は言えない。
「まあ、ご両親への説明も無しに泊まることは難しいでしょう。わたくしが話を……」
「……いえ、こちらで話をしておきます。恥ずかしい話ですが、喜んで許可を出すと思いますので」
「あら、そう」
電話を借りて父さんに東上院家にしばらく泊まり込むことを伝えると、案の定訳も聞かずに二つ返事で許可を出した。想像通りとは言え、流石に恨めしく思った。
「ではこれから、朝霧さまには執事となっていただきましょう。如月!」
新たにメイドが一人入ってきた。いったい何人メイドがいるんだ。
「彼に合う執事服を仕立てなさい」
「かしこまりました。――朝霧さま、ついてきてください」
言われるがままメイドの後を追う。
廊下を歩いている途中、如月と呼ばれていたメイドから声をかけられた。
「……朝霧さまは、お嬢様のことをどのように感じられましたか?」
「は? ……ええと」
突然の質問に一瞬回答に困ったが、俺は先ほど思ったことを答えることにした。
「……突拍子もないことを言ったりするので読めない方ですが、俺が持ってないものを多く持っている。正直……羨ましいと思ってます」
「……そうですか」
如月さんが立ち止まったので、合わせて俺も歩を止める。
如月さんは振り向き、
「お嬢様は、同世代の方々と親しくなることを苦手とされています。また、今までの社交場の影響か、素直になることも苦手とされているようです。今回朝霧さまを執事にすると仰ったのも、何か理由がおありだったのだと思います。――どうか、お嬢様をよろしくお願いします」
そんなことを言って、如月さんは深々と頭を下げた。その姿は、使用人というよりは保護者のようだった。
しかし顔を上げた瞬間、彼女の雰囲気は保護者からメイドへと変わった。
「失礼しました。こちらへ」
すぐ近くにあった扉を開け、如月さんは中へと入る。どうやらすでに目的地に到着していたらしい。
採寸や着付けをされるがまま、俺は如月さんの言葉を思い返していた。
同世代と仲良くすることが苦手……それは俺と同じようにしてできた苦手意識なのだろう。いや、社長の令嬢という立場も考えると俺よりも堀は深く、壁も厚いことが予想できる。なのにどういう訳か俺はその内側に招かれたということになる。
(……どうにも、期待されてるみたいだな)
口から出そうになった溜息は、どうにか押しとどめて胸の内に片付けた。
◇
「着替えてまいりました」
執事服に着替えた俺を見て、東上院は一言。
「似合ってはいるけれども、服に着せられてますわね」
余計なお世話だと俺は思った。
しかし彼女はそれでも何か納得したようで、それ以上言及することもなく、次の話に移った。
「さて、それではまずあなたには剣道を教えて差し上げましょう」
「……剣道?」
言ってる意味がよくわからなかった。なぜ、執事となって最初にやることが剣道なんだ。
「だって、あなたに家事をやらせたところで、ここのメイド達よりいい仕事などできる訳がないでしょう?」
「……………」
まあ、正論だ。俺とメイドを比較した場合、俺の利点といえば精々力仕事の時に少し役に立つくらいだろうか。
だが、だとしてもなぜ剣道なのか。
「まあ、わたくしの執事を名乗らせるのですから、主を守ることくらいできてもらわないと」
そういうことらしい。
「……それでは単なるボディガードでは?」
「何か言いまして?」
「……いえ」
渋々、彼女の言うとおりにすることにした。
場所を変えると言われてついていくと、その先にあったのはスポーツジムだった。屋敷からは出ていない。しかしスポーツジムがあった。なんでもありなのかこの屋敷は。話を聞くとやろうと思えば大抵の競技を行えるだけの道具は揃えてあるが、最近は剣道やフェンシング以外はあまりやってないらしい。
「さ、始めましょうか。まずはあなたの動きをもう一度見せて貰えます?」
「……防具は?」
「今は必要ありませんわ。防具自体好きではありませんですし」
竹刀を渡され、とりあえずは一通り素振りを行ってみた。
一通り素振りをし終えたところで、東上院がやはりといった様子で口を開いた。
「基礎がしっかりできていますわね。充分美しい剣捌きですわ」
……上から目線の言葉に聞こえるが、まあ事実彼女には負けている。てっきりダメ出ししてくるかと思いきやそれどころか褒めたことを意外に思っていた。
「ただ、教科書の通りになりすぎている。相手からしたら、ただ教本の通りに捌けばそれで終いですわ」
「……教科書の通りの基礎もできなければ、勝つのは余計に難しいのでは?」
「勘違いしないでいただきたいのですが、教本の型を捨てろとは言っておりませんわ。ただ、そのまま過ぎて工夫がなってないということでしてよ」
はぁ、と生返事をする俺。その指摘に実感がなかったのは、彼女と会うまで負けなしだった経験によるものだったのかもしれない。
「安心なさい。わたくしがその一工夫を教えて差し上げますわ。あなたが我が流派の一番弟子、誇りに思いなさい!」
「……その流派の開設日は?」
「今日ですわ!」
「……………」
「そんな目をしないでくださる!?」
本当に大丈夫なのかこれ。
これからのここでの生活に不安を感じ、俺はため息をついた。
「馬鹿にしないでくださる!?」
次回はもっと早く投稿したいです。でも最近忙しい。
次回はまだ真っ白でこれからなのに、次々回はすでに完成しているという謎。ホント瑠璃々が難しい。自分で作ったキャラなのに。