Magic game 作:暁楓
このペースだと、ちょうど八十話になるかならないかの辺りで第四章終わりかな?
ではどうぞ。あ、前回からちょっと飛んでます。そのへんの説明は書いてありますけど、念のため。
追記・第七十一話における綾のスターチップ保有数を修正しました。海斗達のクリア分入れるのすっかり忘れてた。
保有数 三十八→四十
「スパァーーークッ!!」
スプライトフォーム姿のレヴィが放った大量の電刃衝は、その誘導性によってユーリの元へと群がっていく。
ユーリはその誘導弾に対して減速することなく、右へ左へ、振り子のようにして回避してみせた。
「光翼斬!」
「ブラストファイヤー!」
レヴィの魔力刃に加え、シュテルの炎熱砲による同時攻撃。
二人の攻撃もユーリにはヒラリと避けられてしまうが、その避けたルートこそがシュテルの狙いだった。ユーリの進むルート上に仕掛けられた設置式バインドが作動し、ユーリを絡め取る。
「今です!」
バインドの起動とその合図はほぼ同時。そして堕翼を羽ばたかせ、ある限りの速度を持って綾が突撃したのもほぼ同時だった。
「うおおっ!!」
高速突進からの刺突。しかし黒刀が貫くよりも早くユーリはバインドを引き千切り、綾をよけた。
「ちっ……!」
「スピアー」
ユーリが手をかざす。自分を覆うように球状に展開された無数の槍が、全方位に一斉に撃ち出された。
綾はできるだけ最低限の動きで回避する。いくつか身体を掠めそうになって冷や汗が出たが、当たってはいない。チップは無事だった。
狙われないようにするため、ユーリを中心にして円を描くように飛翔する。
「タイミングはいいと思ったんだがな……」
『もっと早くしろってこったなぁ』
(これ以上タイミングを早めるとなると、バインドが作動する前になるな……)
それは厳しいと考えた綾は、シュテルに指示を出す。
「シュテル! もう一度トライしてくれ!」
「わかりました」
再度シュテルとレヴィのコンビネーションアタックが仕掛けられる。
二人の攻撃による誘導、そして再度捕縛。綾は飛び出した。
(今度こそ……!)
ガギィンッ!!
だが、今度は表面で『何か』が弾き、黒刀が通ることはなかった。
見た目からはわからにい、ユーリの多層防御機構。これがある限り接続どころか攻撃も通らない。
ユーリからの魄翼の爪を回避し、後ろに下がる。
「やはりあの防御層がある限り、何をやっても通らないようですね」
「……みたいだな」
自分のところにやってきたシュテルにそう答え、ユーリを見据える。
大量発生した闇の欠片を由衣と共に倒していたところ、ウレクがユーリを捕捉した。由衣をアースラに帰し、様子を見るために向かうて、力の補充をしているユーリがいた。
ウレクが言うには、力の補充が完了されるとユーリに近づくことすらできなくなるという。加えて指令も来たため、途中で合流したシュテルとレヴィと共にユーリに挑んだのだった。
差出人:管理者
件名:緊急指令
内容:
現在U-Dは力を溜め込み、その充填率は85%となっている。
U-Dの力の充填を阻止せよ。
成功条件・報酬:規定時間後の充填率が85%以内となっている。85から充填率の数値を引いた数だけスターチップを配布。
失敗条件・罰:規定時間後の充填率が85%を超える。充填率85%を超えた数だけスターチップを剥奪。
「……とにかく防御層を削る。俺が前に出るから、シュテルは後方からの支援を頼む」
「ウレクのオリジナル。僕は?」
「お前達がさっき言ってたワクチンプログラムってやつを、全部一撃で撃ち込めるように詰め込んで待機してくれ」
「一撃に賭けるのは、かなり大きなリスクを伴いますが」
「むしろ二撃三撃もチャンスを作れると思うか?」
「……………」
「……異論はないな? 行くぞ」
綾はユーリの元へと飛び出した。
手始めに首の両側を狙って黒刀とレイピアを振るう。硬質音と共に両方とも弾かれた。
「攻撃、開始」
彼女の振るう腕の動きに合わせて魄翼の爪が襲いかかる。
それをよけ、斬る。また弾かれる。
再び来る爪を、今度は後ろに下がって回避し、魔法陣を展開。
(一撃じゃ足りねえなら、いくらでも食わせてやる!)
斬る。斬る。
魄翼の正拳突き。黒刀で逸らす。
相手のエターナルセイバー。くぐって近接状態を維持。
(まだ、上がる……!)
弾かれる。弾かれる。弾かれる。弾かれる。
爪を回避。後ろに下がった瞬間、シュテルからの砲撃。まだ効かない。
さらに斬る。唐竹、袈裟斬り、薙ぎ、斬り上げ、突き。
「ぅ、ぐ……っ!!」
隙ができてしまった綾の腹に魄翼の拳が直撃した。肺の空気と共に我慢していたものまで嘔吐する。そして、目の前で二つのスターチップが砕け散る。
魄翼の拳が再び来る。脚に
「パイロシューター!」
シュテルからの魔力炎弾がユーリへと向かう。
ユーリは飛行にて回避。追いかけてきたところをエターナルセイバーによって一網打尽にする。
「ルベライト!」
ユーリの足が止まった隙にシュテルが捕縛を試みる。が、あっさりとその拘束が引き千切られてしまう。
拘束が解かれたユーリに綾が斬りかかる。弾かれるが、それでもさらに激しい高速連撃を入れ続ける。
が、
「ぐ、ぅっ……」
グラリと、綾が揺れた。 先ほどの腹部へのダメージ、加えて行き過ぎた強化による負荷が腹部のとてつもない痛みと吐き気として綾にのし掛かる。
その隙を逃すほどの情は今のユーリにはなかった。綾を引き裂かんと魄翼の爪が襲う。
まずいと思っても、もうよけきれない。――そのはずだった。
――ダァンッ!!
「……っ!?」
ユーリが何かに撃たれた。その衝撃でユーリが仰け反り、攻撃も中断となる。
(狙撃……誰だ!?)
方角的にシュテルではないとはすぐにわかった。レヴィやディアーチェに狙撃ができるとは思えない。才ならできないことはないだろうが、それなら狙撃の前後に念話が来てもおかしくない。なのはなら事前に念話が来るだろうし、彼女の場合砲撃を撃つだろう。
つまり、それらとは別の誰か。おそらく、狙撃能力を持った転生者だ。だが、今はそれを長々と気にしている場合ではない。
黒刀とレイピアを同時に振るう。弾かれる感触と音がした。しかし先ほどとは違い、剣を振るった箇所の防護服に傷がついていた。
(やはり……防御層が弱まっている……!)
狙撃で仰け反ったということは、その狙撃が効いたということになる。ということは必然的に、ユーリの防御が弱まっていることを意味していた。ダメージとしての通りは薄いが、それは綾の攻撃自体が威力が低いことを考えると、レヴィの火力なら通る可能性がある。
ならば次に自分がやることは、レヴィの攻撃――ワクチンプログラムを通すための補助をすること。
念話を飛ばす。
『レヴィ! 合図が出たらすぐ撃ち込めるよう準備しておけ!』
『いつでも出れるよ!』
『シュテルは補助を!』
『わかりました』
綾はレヴィの動きが感づかれないようにする為の囮として、ユーリに斬りかかる。
高速化状態での乱舞。攻撃し身体を捻る度痛みと吐き気が綾を襲うが、歯を噛み締めて耐える。
斬る。斬る。斬る。
エターナルセイバーによる唐竹。かわす。
ユーリ自身のハイキック。くぐる。
斬る、斬る、斬る、斬る。
「弾幕陣、展開」
魄翼が大きく広がった。警戒して後ろに退避。
膨大な数の魔力弾が飛んできた。横へ飛ぶ。
「エターナルセイバー・カノンモード」
続けて広範囲砲撃。間一髪でかわす。
隙をついて、ユーリの後ろからシュテルが接近。ルシフェリオンの先端をユーリに押し付ける。
「ディザスターヒートッ!!」
ゼロ距離での三連砲。直撃し、ユーリが吹っ飛ぶ。
飛んできたユーリを左手で掴む。バチチッ、とウレクの魔力がショートする。
「ナパームブレス」
爆発がユーリを包んだ。綾は後ろに下がって様子を伺う。
「それなりのダメージは与えたでしょうか」
「まだ一区切りもついてないぜ。多分な」
ウレクはこちらに来たシュテルにそう答えた同じく綾も、ここまでのダメージが効いているとはさほど思っていない。
煙から魄翼の腕が飛び出してきた。
綾は堕翼で飛んで退避する。が、ユーリの狙いは綾ではなかった。
二つの腕によって、シュテルが捕らわれてしまった。
『……チッ!』
「ウレク! 方向を変えろ!」
シュテルに意識が向かい、ウレクが操作する堕翼の動きが止まる。綾が指示するが、それが叶う前に弾幕が押し寄せてきた。
黒刀とレイピアで捌こうとするも、多勢に無勢、弾幕が容赦無く綾を襲う。被弾数十発。二十ものスターチップが一気に失った。
そして綾もシュテルと同様魄翼の腕に捕まえられる。さらに二つチップが消える。
綾とシュテルを掴む魄翼に魔力が集束していく。
「ナパーム――」
「――行けっ」
綾が、そう呟いた。
バチバチという電流の音が鳴る。魄翼からではない。ユーリの背後からだ。
「干渉制御ワクチンを詰め込んだこの一撃……!」
大剣形態のバルフィニカスを振りかぶったレヴィ。ユーリの魄翼は両方とも埋まっている。
「ブラスト――!」
「ヴェスパーリング」
「レヴィーーーッ!!」
しかし、バルフィニカスが振り下ろされる直前にユーリの手から発せられたリングがレヴィを弾き飛ばした。バルフィニカスが手離され、宙を舞う。ようやく駆けつけたディアーチェが叫んだ。
『オーバーアシストプログラム、起動』
「お、おおおおおおおっっ!!!」
まだ、終わっていなかった。ウレクによって過剰強化を受けた綾が力尽くで魄翼の腕から抜け出し、宙を舞うバルフィニカスを掴んだ。そして振りかぶる。
「今度こそ逃がさねぇ!」
バルフィニカスを掴む手に力を込める。魔力刃がレヴィの魔力とウレクの魔力で混ざって染まる。
「はああああああああっ!!」
一閃。直後に膨大な魔力で爆発が生じた。
爆風に飛ばされまいと踏ん張る綾。しかしそこにウレクの声がかかった。
『ケケッ。さぁて、ゲームの最終準備だ』
「――ッ!?」
直後、融合を解いたウレクに蹴り飛ばされた。蹴られた衝撃と爆風に流される。
煙から飛び出してすぐ、煙から何かが綾の目と鼻の先まで迫った。赤黒いそれは、針状に変形した魄翼の爪だった。
上昇のベクトルを失って落下する。レヴィが捕まえてくれたおかげで落下は止まった。
「よっと! ウレクのオリジナル、大丈夫!?」
「ああ……っ、ゲフッ、ごほっ」
綾は答えようとして咳き込み、血を吐く。強化魔法や過剰強化による負荷の影響だった。
そこにディアーチェも駆けつける。
「おい貴様! シュテルはどうした!?」
「……わからない。あの中にウレクも残ってる」
綾は少しずつ晴れていく煙に目を向けた。
やがて煙が失せ、三人の姿が見えるようになる。
ユーリとシュテル、そして、シュテルの盾となり幾つもの針に貫かれたウレクがいた。
ウレクの運命やいかに。
そういえば、Vividがアニメ化するそうですね。
『Magic game』はStrikerS編辺りをを終点として目指してますので、大した関係ないのですが。
見れたら見ます。一応そう思ってます。