Magic game 作:暁楓
なんていうか、展開が無理やりな気がする。でも直そうとしたって文が思いつかない。
俺が目を覚まして一日が経過した。
脚が砕かれている以上現在歩くこともできない俺はベッドに横になり、右腕で天井からの光を遮っている。
「……………」
しばらくそのままでいた右腕をどかす。一気に取り込まれる光に、目を少し細めた。
(できるだけ早い内に……話をした方がいいよな……)
寧ろ、今話すべきなのだろう。面談謝絶にしている今なら、一対一の話も容易だ。
念話をしようとして、やめる。アースラにいるとは限らない。なら、ここは電話で呼ぶべきだろう。
少し動いて、テーブルの上に置かれている携帯を手に取った。
◇
「……面談謝絶って言っておきながら、君から呼び出すというのはどうかと思うよ?」
「……まあ、そうだろうな」
数分後、呼び出した才が集中治療室に入ってきた。 彼には、話さなければならなかった。これからのこと、俺がどうするのかということ。
そして何より、あのことも。
「報告書、君が改竄するように進言したらしいね。彼女、話聞いて泣いてたよ?」
「リインフォースのことか。……まあ、なんとかなるだろ」
「そう……それで、話って?」
才が訊いてきたため、俺も話すことにした。
「……十二月二十四日の指令で、俺が達成した場合の報酬は、スターチップ十五個。それから……神への挑戦権を得るのに必要な条件の告知」
「……それで? 話は聞いたの?」
「……ああ」
リンディさんとの話が終わって、それから報酬のスターチップを受け取った後に奴からの電話がかかってきたのだ。
……そして、奴が言い放った条件は……
「……百個だとよ」
「……………」
「スターチップ百個。厳密には、百個揃えた方がいいなんて言い方だったがな」
それが、奴の答えだった。
そして、それを聞くより前に、俺はあることを決めていた。
「才……俺は、反逆から手を引く」
「……………」
「……限界になっちまった」
それが、俺の出した答えだった。
直接神に挑み、勝てる可能性……どうしても、俺には勝てる見込みがなかった。そして何より、精神がついていけそうになかった。
才は、静かに椅子に座った。
「……君の話を聞いて、一つ確信した」
「確信?」
「……うん。神との直接対決では、チップそのものが僕達の力だ。勝負の方法は……多分、戦闘系になる」
「……どういうことだ?」
「……神は、挑戦するにはチップは百個がいいと言っただけであって、百個揃える必要はない言い方をしたんでしょ? つまり、チップの数を揃えることはただの下準備……チップを消費して挑戦権を得るのではなく、チップを使用して戦うことになる……」
「……でも、なんで勝負が戦闘だとわかるんだ? ギャンブルって可能性も否定できないんじゃ……」
「……神に願いを叶える力がある以上、その存在そのものがイカサマになる。勝負を成り立たせるには、イカサマのできるギャンブル系ではできない」
「……………」
よく考えたら、俺でもわかることなのかもしれない話だった。ただ、今の俺は精神状態からそれに気づくことができなかったのだろう。
「チップを力として使用する戦闘であるなら、勝利の可能性はある。その方法は――」
「待ってくれ。それは……俺が聞くことなのか? 俺は……引くと言ったんだぞ?」
「……僕としては、君以外は有り得ない。君だからこそ聞いてほしいと思ってる。我が儘だけど、僕は君が立ち上がって、共に戦ってほしいと思ってる」
「……………」
「……じゃあ、話すよ。僕が推測する、勝負の方法と攻略方法。それは――」
それから静かに、ゆっくりと彼は語り始めた。
「―――――」
「―――――」
「―――――」
勝負の大まかな概要。
その勝負で生じる一つの抜け道。
そして、それを利用した攻略法。
「―――――」
「―――――」
「―――――」
どれくらいの時間をかけたのだろう。
ゆっくりとした話のはずなのに、理解して追い付くのがやっとだった気がした。
「――と、こんな感じかな……」
「……マジか?」
俺はそう訊いた。
訊いてるのは、推測された勝負の信憑性ではない。攻略法についてだ。
「リスクが大きすぎる……その方法も成功率は高くないはずだし、何より、
「……だろうね」
「それ以前に、そのやり方が成立しない可能性だって……」
「それでも……構わない!」
「……!?」
「例え成功率が低かったとしても、例え死ぬことになるとしても……謀反のためなら、それに全てを賭けても構わない」
相変わらず表情の変化が乏しい才だが、その目には確かな覚悟が見えていた。
その覚悟に俺は押し黙って、しばらくの間沈黙が流れる。
才が、沈黙を破った。
「……神風……という言葉は、知ってるよね?」
「……文字通り神が起こす風……その他に、日本に存在した神風特別攻撃隊から転じて、命知らずなさま……」
「そう……誰かが、その神風を起こす必要がある。僕は……それが、僕と君だと思ってる」
才は立ち上がった。
「答えはまだ言わなくていいよ……すぐ決めたところで、しばらくはチップを集めることに専念しなければならないんだし。でも……できれば君が、もう一度立ち上がることを願ってる」
そう言って、才は立ち去った。
◇
俺はしばらく、ベッドに横になり、腕で目隠しをした状態でいた。
「……神風、か」
才の推理が正しいことが前提だが、あの作戦なら確かに通用するかもしれない。完全な特攻作戦であり、成否に関わらずどちらかは死ぬことになるが……。
……俺は……。
「……ッ!!」
上半身を起こした俺は、自らの拳で自分の額を殴った。
鈍痛が額から頭部全体へと広がっていき、クラッときたが、痛みによって意識がはっきりとした。
「……やってやる。なってやろうじゃねえか……神風に!」
そうだ。そもそも俺はもう引ける立場じゃなかった。
氷室はあの時、俺が希望だと言った。だったら、俺はそれに応えなければならないっ……!
(待ってやがれ、神……チップを揃えて、俺は俺達の神風を吹かせる……!)
例えこの世界で死んでも、お前にだけは絶対に負けない……!
俺は、そう決意を新たにした。
おわかりかお思いますが、才が説明しているシーンにおける「―――――」は全て才の台詞です。
『零』でもこんなのありました。というか、これがやりたかったんですよ。
あと、最後らへんのあれ。SAOにおけるアスナさんの台詞をリスペクトしてみました。あれはなかなかの名言だと思います。
さて、決死の覚悟を持たせるほどの策とはなんなんでしょうね。明らかになるのはものすごく先になりますが。もしよろしければ覚えていてください……という作者が忘れるかもしれませんが(殴