Magic game   作:暁楓

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 殺伐とした世界でも、たまにはほのぼのしてもいいよね!
 今回は少し短いです。


第二十四話

「到着っ」

 

『わー』

 

 光から解放されて、俺が立っている場所は桜台の一角だった。

 昨日コード少将との対話をして、追求が来る前にアリシアを海鳴市に連れてきた訳だが。

 アリシアは俺に背負われている。車椅子を使いたいところだが、ミッド技術の車椅子は先を行っていて逆に使えなかった。

 だって、デバイスの技術を取り入れて魔力操作でヌルヌル動くんだぜ? この世界で使えるか。ちなみに魔力がない人用の車椅子なんてのもあるのだが、その場合は魔力→電力に変わってちょっとコスト面で不便になっただけで動きがハイスペック過ぎることに変わりなかった。というかそんなもん積んでいない普通の車椅子というのはないのか。

 まあ、車椅子はリンディさんが後でここの世界のものを用意してくれるって話だし。少しの間だけ我慢してもらおう。

 

「さてと……とりあえず家に向かおう。今の時間だったら由衣も竹太刀も出て家にはいないかもしれないけど」

 

『うん! しゅっぱーつ!』

 

 今日も念話が元気なアリシアを背負って、道を歩き出す。

 

 

 

   ◇

 

 

 

「ただいまー……おお、綾! お帰りやなぁ!」

 

「あ、綾さん! お帰りなさい!」

 

「おう、お前らもお帰り」

 

 夕方になって、バイト帰りの竹太刀と学校帰りの由衣が一緒に帰ってきた。

 そして竹太刀はすぐにソファでテレビ番組を見ているアリシアに気づいた。

 

「ん、その子は……」

 

「ああ。アリシア、紹介するよ。一緒に同居している、坂本竹太刀と藤木由衣だ」

 

「坂本竹太刀や。よろしゅうな、アリシアちゃん」

 

「藤木由衣です。その、よろしくね」

 

『お世話になります! 竹太刀さん、由衣ちゃん』

 

 仲良くやっていけそうで何よりだ。

 特に、由衣には色々と頼んでいきたいからな。

 

「由衣、同じ女の子として、家にいる時にはいくらかアリシアの世話を頼んでもいいか?」

 

「あ、はい!」

 

「ん、ありがとな」

 

「わいもなんかやったるかー?」

 

「ああ。必要に応じて頼むわ」

 

「了解やー」

 

『あと、俺が指示の紙で頼んでおいたものは?』

 

 アリシアがいるため、念話に切り替えて竹太刀に尋ねる。

 

『んー? 花火はまだ売っとらんかったけど、それ以外ならだいたい揃えたで。でも一部本当に意味あんのか疑問なんやけど』

 

『ただの戦闘で俺達が勝てる訳がないだろ。勝てる勝負でやり合うのが必要なんだよ』

 

『それはわかっとるけどなー。後、2番のあれってホンマにありなんかなぁ?』

 

『やるだけタダだ。やったところで不審がられないようにシナリオも書いといただろ?』

 

『そーなんやけどなー』

 

『狙いの時期は九月上旬。練習やっとけよ』

 

『そういや、綾はどないすんねん? この世界に来れたのやし、なんか……てか手伝わへんの?』

 

『まあ付き添いぐらいは考えてやる。他にも当然やるさ』

 

 狙うは、守護騎士完全制覇だ。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 数日後の休日。車椅子も手に入れて、アリシアに海鳴市の案内をすることにした。

 アリシアを乗せた車椅子を押しながら、所々解説。アリシアが気になった場所があれば、その場所まで行ってやる。

 

「あれ、綾さん?」

 

「ん?」

 

 声をかけられたので振り返ると、なのは、由衣、アリサ、すずかの四人がいた。

 

「ああ……お前らか」

 

「こんにちは……って、あれ? その子……」

 

 アリサがさっそくアリシアに気づいた。すずかもアリシアに気づく。

 

「あれ……フェイト?」

 

「残念ハズレ」

 

「え?」

 

「アリシアっていうの。フェイトちゃんのお姉さんだよ、アリサちゃん」

 

「あれ? 由衣ちゃん、知ってるの?」

 

「一緒に住んでるからな」

 

 俺がそう言ったら、アリサとすずかが驚いた。

 

「ええ? なんで!?」

 

「まあ、色々あるんだよ。アリシアはちょっと訳ありで今は身体が動かないんだが、リハビリで治るまでの世話役になった訳だ」

 

「え、でも、フェイトちゃんは……?」

 

「だから色々あるものなんだよ」

 

「色々って何よ」

 

 そう言われても。

 俺的にはバラしちまっても一向に構わないのだが、なのはは隠しておきたいんだろうし……という訳で、二人の後ろで苦笑いしているなのはにアイコンタクト。なんとかしてくれ。

 

「え、えっと……アリサちゃん、すずかちゃん、きっとそっちにも色々あるんだよ。色々!」

 

 おい、援護になってないぞ。アリサがジト目になってる。

 

「色々ってね……そもそも、なのはもこの子のこと何も言ってなかったじゃない。由衣も全く話してこなかったし」

 

「あぅ……」

 

「あはは……そ、そろそろ自己紹介はしようよ、三人とも」

 

「あ、そうだね。じゃあ私から……」

 

 由衣の言葉でようやく言及は止まり、三人が自己紹介をすることに。

 

「はじめまして。月村すずかです」

 

「……ぅー……ぁ……」

 

「……うん。よろしくね」

 

 口もまともに動かせないアリシアにすずかは同情などはせず、にっこりと微笑んでアリシアの頭を撫でた。いい子だよなぁ……。

 

「次は私ね。アリサ・バニングスよ。よろしくね」

 

「じゃあ最後は私! 高町なのはです。フェイトちゃんとは友達なの!」

 

「あーっ、なのはだけズルいわよ!」

 

「ズルいって訳じゃないとは思うけど……でも、私達だってフェイトちゃんと友達にはなりたいよ?」

 

「ふえぇ!? 私に言うの!?」

 

 残り二人はちょっと違う……か?

 

『ねぇ、綾さん』

 

『ん? なんだ?』

 

『私も……みんなと友達になりたいなぁ……』

 

『あの子らは優しいからな。もう友達と思ってくれてるだろうけどな。……それでも不安なら、リハビリして自由に喋れるようになったら、その時に自分から友達になりたいって言ったらいいと思うぞ』

 

『……うん、頑張る』

 

『おう、頑張ろうな』

 

 アリシアの頭を撫でる。

 しばらく言い合っていた四人だったが、途中でアリサが「そういえば」とこちらを向いた。

 

「綾さん、アリシアを連れて何をしてたんですか?」

 

「ああ、アリシアにこの街の案内をしてたんだ。それが、何か?」

 

「じゃあ、私達も案内やっていいですか? アリシアに色々教えてあげたいんです!」

 

「わぁ、賛成!」

 

「私も!」

 

「いい考えだな。じゃ、そうするか」

 

『な? 優しいだろ?』

 

『……うん!』

 

「さぁて、まず最初にあんないする場所はー……」

 

 アリサが先導して各所色々教えたり、すずかが車椅子を押してくれたり、なのはが話をしてくれたり。

 その間、アリシアのとても楽しそうで、嬉しそうな声ばかりが続いた。




 すずかいい子だよすずか。
 さて、次回から攻略に踏み出しますかね。

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