黒い銃弾とは何だったのか   作:黄金馬鹿

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エヴァンゲリオン好きな僕はまんまとモンストに時間を取られていました。そんな訳で今回は多少短いです


フォーティーワンパンチ

深夜。既に時刻は日付変更数分前まで来ている。そんな中で多田島は一人天童民間警備会社のドアの前に来ていた。

蓮太郎の言った事。櫃間が正体のわからない敵のスパイなら、もしかしたら結婚予定の彼女なら何か知ってるのではと淡い希望を持って来たのだ。

多田島は気分晴らしに吸っていた煙草を携帯灰皿に突っ込んでインターホンを押す。

「誰よ~……慣れないパソコン使い過ぎで目が痛いのに……あら?確か……多田島……警部でしたっけ?」

「すみません、少し里見蓮太郎について……」

「何も言うことはありません。お帰りください。」

蓮太郎の情報を洗いざらい吐けと言うのだろうと思った木更は問答無用でドアを閉めようとする。が、多田島は靴と手を突っ込んでそれを防ぐ。

「ちょっ、何するんですか!?警察呼びますよ!?」

「私が警察です!大丈夫です!里見蓮太郎の事について尋問しようだなんてこれっぽっちも思ってませんからお願いなので中に入れてくださいだだだだだだだ!!」

人外の力でドアを閉めようとする木更だったが、多田島の表情は嘘をついてるようには見えなかったので、力を緩めてドアを開けた。

「どうぞ。」

「すみません、夜分遅くに。」

天童民間警備会社の中は聞いてた通りで机とソファ。ソファの上には誰かの毛布と枕。そして質素な内装に似合わない薄型テレビとゲーム機、さらに天誅ガールズのグッズ。

「これはあなたの趣味で?」

「ウチの子達の趣味ですよ。すみませんが、やる事があるのでそっちをやりながら聞かせてもらいます。」

木更は社長用のデスクの上に置いてある、恐らくブルーライトを遮る効果のあるメガネをかけて少し古いノートパソコンの前に座るとマウスを操作し始めた。

「失礼ですが、何を?」

「関係ありません。」

冷たい声でバッサリと話題を切られてしまった。

「……さ、里見蓮太郎についてですが、彼は生きています。」

「知っています。彼はマグマの中にアイルビーバックしようがライトセーバー的な何かで斬られようが真空パックでお片付けされて一ヶ月経とうが生きてますから。」

ああ、あいつは人間辞めてるんだなとこの時初めて多田島は蓮太郎の事を理解した。

ただ、怪力なだけとか丈夫過ぎるだけで済ませてきたが、木更の言ってることに嘘は含まれてるようには聞こえなかったので、信じる他なかった。

が、なかなか本題に入るための話題を作れない。

「ところで、何をしに来たんですか?ここ数日寝てないので苛立ってるんですけど。」

と、思ってたら助け船を出された。剣山並に針がぶっ刺さってたが。

「櫃間さんについてです。」

木更がピクっと反応を起こした。

「里見蓮太郎から彼は敵のスパイだと聞きまし……」

その瞬間、木更が残像を残しながら多田島へ接近し、口を手で抑えた。

「っ!?」

初めて見る人間の残像に驚き、さらにいきなり口を塞がれたのにも驚いた。

「死にたいんですか!?消されますよ!?」

木更が多田島にしか聞こえないように小さな声で叫ぶという器用な真似をする。

木更の相当焦った顔を見るに、どうやら蓮太郎の言ってた事があながち嘘ではないと言うのが嫌でも分かった。

「……監視カメラと盗聴器があるかもしれないんです。私は発見できませんでしたからあまりこの事を喋らないでください。」

辺りをキョロキョロと見回し、再び社長席にドカッと座り込んでマウスを手に持った。

多田島は見てもいいですか聞き、と了承を得てから画面を覗きこんだ。

「こいつは?」

画面に映された内容ははっきり言って、最初から見てないと分からない物だった。

「……多田島警部。あなたは私についてくれますか?」

「……」

「私が見てるのはかなり危険な物です。そして、里見くんの敵について書かれています。今の彼は凶悪犯罪者。そんな彼に味方する度胸はありますか?」

パソコンから目を背けずに、しかし力強く木更は言った。

これは警告だろう。下手すると、死んでしまうかもしれないぞ、という。

木更が本当に人を殺して逃亡している蓮太郎の肩を持ち、多田島自身をこちらへ引き込もうと計画しているのかもしれない。だが、蓮太郎は本当は人を殺しておらず、蓮太郎が警察署で話した妄言が実現している物で、木更は自由に動けない蓮太郎の代わりに情報を集めているのだとしたら。

櫃間は怪しい。だが、彼も多田島と同じ警察だ。法を守る正義の味方だ。

だが、

「分かりました。私も覚悟を決めましょう。」

蓮太郎を信じてみることにした。彼の目には、揺るぎない決意と正義があった。

その決意はただ単に俺をハメた奴らをぶっ殺すという決意なのだが、多田島はその決意は正義を守るという決意なのだと勘違いしていた。

しかし、それは好都合な事だった。

「……わかりました。なら、見ましょうか。」

木更は振り返らなかったが、横顔から見える口角は上がっていた。

 

 

****

 

 

一方菫の研究室。

『そろそろあの子達を出しても問題はない筈や。』

「そうか……流石に何日もゲームざんまいだと彼女達も一人を除いて飽きてくる頃だからな……」

『せやで。子供は外で遊ばんと。』

「私みたいにはなって欲しくないからな。彼女達と彼を出そう。」

『さよか。なら、私はもう用済みやな。』

「同時に、私もだ。暗躍もなかなか楽しいものだったな。」

『今度も何かあったら暗躍するとしよか。』

「そうだな。ではな、社長令嬢。株はたんまり買わせてもらおう。」

『通帳見たら驚くぐらいの金儲けさせたるで、博士さん。』

 

 

****

 

 

「で、邪魔するには覚悟は出来てんだろうな?」

そしてさらに蓮太郎と片桐兄妹&朝霞。蓮太郎は最早悪役の顔をして指をポキポキと鳴らしている。

片桐兄妹&朝霞をポキポキ(何処をとはわない)する気満々のようだ。

「お、おい、待てよボーイ!」

「辞世の句は終わったか?」

「まだ辞世する気ないからな!違う違う!俺っち達はお前と手を組みに来たんだ!」

「……はぁ?」

片桐兄妹と朝霞は己の武器を地面に置き、手を上げる。

「あんたと一戦交えたら骨どころか細胞の一片すら残らないでしょ。そんな自殺嫌に決まってんでしょ。」

「そもそも、貴方が殺人をするなら細胞の一片すら残さず、目撃者も現場も残さない筈。なのに捕まるという事はハメられたとしか考えられません。」

蓮太郎を知るからこその言葉だった。

朝霞の言葉に二人が首を吹っ飛びそうな勢いで縦に振る。

そして火垂とリカはそんな様子に開いた口が塞がっていない。

「仮に捕まったとしたら警察署消し飛ばして逃走するでしょ。」

「それどころか東京エリア消して大々的な証拠隠滅だってするだろ。」

「……否定は出来ないな。確かに、やるんならそれくらいはやるさ。」

「なので、私達は知人をハメた馬鹿共と戦うために依頼の前金パクってここまで来たわけです。なので、パトカーは包囲していますが、私達の後ろにはパトカーが来ないように言ってあります。」

朝霞は蓮太郎をハメた者と戦うと言っているが、本当は蓮太郎の被害を少しでも減らして本当に蓮太郎が犯罪者となる事を防ぐ為に来た。玉樹なら蓮太郎の連続普通のパンチ一回なら耐えることは出来るため、肉壁になれる。

さらに、もしも蓮太郎が誰かを殺して豚箱にぶち込まれた場合、下手したら玉樹の言った通りに東京エリアを消して大々的な証拠隠滅をしかねないからだ。

そして、後ろにパトカーが来ないようにしたのも、問答無用で殴り飛ばされた際に余計な犠牲が出ないようにする為だ。

「……なるほど。なら、力を借りるぜ、片桐兄妹、朝霞。」

その瞬間、三人はふぅ。と一息ついて武器を回収した。

「さて、ボーイ。警察達が来る事はないが万が一という事もある。場所を変えないか?」

「そうだな。そこら辺のビルの屋上に行くか。」

そんな訳で、仲間を得た蓮太郎は弓月の糸で全員を一まとめにして担ぎ、その場から常人の認識速度をぶっちぎって去った。

完全に、五翔会は人選を間違え、敵に塩を送る真似をしてしまったのだった。

そして数分後。そこら辺のビルの屋上で初対面のモノもいるので軽く自己紹介をしてから、玉樹達にはもう自分達は殴り込みに行くのを残すのみになってるのを説明した。

「ほんと、五翔会だったか?そいつらは最後の手段として俺達を送ったっぽいが……」

「人選をミスった訳ね。それにしても、ほたるんもリカっちも災難だったね。」

「あ、あはは……」

ちなみに、リカの事は五翔会に体を改造されたが、命からがら逃げ出してきたという設定を使っている。

「それより、どうしますか?もう殴り込みに行きますか?行きましょう。深夜アニメ見たいんです。」

そして完全に私情をぶち込んでくる朝霞。

だが、早く終わらせたいのは蓮太郎も、火垂も、リカも同じ。

「そうだな。場所はもう割れてるんだ。行くっきゃない。」

「なら善は急げだ。いつ警察が嗅ぎ付けてくるか分からねぇからな。とは言いたいが……また仲間が増えるっぽいぜ。」

玉樹の言葉に、蓮太郎を除く全員の視線が玉樹と同じ場所を向く。

その瞬間、四つの着地音がビルの屋上に響いた。

『私(妾)達、参上!』

無駄に決めポーズを付けて登場して来たのは、延珠、ティナ、夏世、翠だった。

なお、翠は恥ずかしさで顔を真っ赤にしてる模様。

「よっ、おひさ。」

「おひさ、じゃないのだ!全く、蓮太郎は最近トラブルを引き寄せる病気にでもかかったのか!?」

「あはは……トラブル持ち込んだ事あってすみません。」

「まぁ、そんなこたぁいいんだよ。お前らも来るのか?」

「当然です。少しおいたが過ぎる人達には誰に手を出したのか思い知らせませんと。」

「そ、そうです!」

どうやら四人ともヤル気満々らしい。

これで人数は十人。数分前までは三人だったのに、何とも大所帯になった物だ。

だが、この戦力は恐らく、木更がいない事を除けば東京エリアの最高戦力だろう。蓮太郎一人で最高戦力なのだが。

五翔会は喧嘩を売る相手を完全に間違えたのだ。そして、もう撤回するには完全に遅い。五翔会壊滅は近い内に行われるだろう。南無。

「さぁて、全員揃ったことだし、殴り込みに行くか。」

「おっと、もう一人追加させてくれないか?」

玉樹の言葉に、誰かが一言付け加えた。

声のした方は延珠達が来た方から。足音はしなかったが、確実に誰かがいる。

その方を見た蓮太郎とリカははぁ!?と声を漏らし、火垂は暫く放心した後、目に涙を溜めて、口元を抑えた。

「おっと、初めましての奴もいるから自己紹介が先だな。俺の名は水原鬼八だ。俺の敵討ち、一緒にやらせてくれないか?」

死人が、地獄の底から舞い戻った。




もう想像していた方がいると思いますが、鬼八復活&参戦です。これには火垂も嬉し涙

次回は櫃間&悠河終了のお知らせ。





あと、出来たらモンストの招待受けてくださいお願いします。スルーしてくれても構いません
シンジ君が割とマジで欲しいんです
http://static.monster-strike.com/i/?i=620751166&p=16&f=line

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