地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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「ったく……思いっきり引っ張りやがって」


耳を押えながら、麗華は焔の乗った。


「さて、二人だが……」


焔に乗る麗華を見ながら、龍二は龍実と大輔の方を向いた。


「普通なら安全な場所に行かせたいんだが……そんな暇はない。

つーことで、お前等にも手伝ってもらう!」

「へ?!」

「俺等に!?」

「お前等二人共霊力あるんだろ?

だったら、丁度いい。」

「けど、あったとしても何も」

「別に大丈夫だ。大まかな事は俺達三人でやるから。な」

「……」

「よし!そうと決まれば、とっとと行くぞ!

大輔は鎌鬼と一緒に、龍実は氷鸞に乗れ」

「分かった」
「分かった」


二人の返事を聞くと、龍二は渚に乗り、大輔は鎌鬼に掴まりながら大鎌へと乗り、ぬ~べ~は雷光に乗り、龍実は氷鸞に乗った。


「出て来い!雛菊!」


その叫びと共に、一枚の紙を投げるとそこから煙が上がり中からを雛菊が現れた。


「これは…一体……!?

な、何だあの化け物は?!」

「妖怪だ。

雷の術を使うから、獣の姿になれ」

「え~~~

嫌じゃあ!」

「いいからしろ!」

「ウゥ~~~~~」

「……麗華」

「ハ~イ。


雛菊の獣姿、私見たいなぁ……」

「……麗が言うなら、変化してもいいぞ?」

「さっさとしろ!!」


雛菊は懐から扇子を取り出すと、火の玉を出しそれを自身の上へと浮かせ火のカーテンを造り出した。数分もしない内に、火のカーテンが消えると共に、そこから三つの尾を持ち茶色い毛に包み、首に赤い椿の飾りを付けた首輪をした狐の姿をした雛菊が現れた。


「どうだ?麗!」

「やっぱり、この姿の方がいいよ」

「本当か?!」

「本当、本当」

「嬉しいぞ!」

「喜ぶのは後だ!

早く行くぞ」

「ハーイ!」


砕け散る壁

大蛇の姿となった蟒蛇は、嵐をさらに激しくしていた。島の住民たちは、川の氾濫を防ぎに川へと行った。

 

 

「町長!!このままだと、川が氾濫します!!」

 

「この嵐がおさまれば、いいんだが……いったい、何がどうなっているんだ……」

 

「昔もありましたよね?確か何十年か前に、同じように嵐が来て危うく島が沈みかけて」

 

「あぁ!それなら、俺少し覚えてます!

 

けど、その時はあの静代さんが嵐を鎮めたんですよね?元巫女の職に就いてたからかなんかで」

 

「そうじゃそうじゃ!」

 

「それじゃあ、今回も静代さんが?」

 

「いや、さっき静代さん、娘さんと一緒に体育館にいましたよ」

 

「じ、じゃあ、今回誰がこの嵐を?」

 

「……麗華」

 

「?」

 

「今この場にいないのは、麗華ちゃんと龍二君だけだ。あの二人が今、この嵐を止めようとしてるんだろう」

 

「……二人だけで、大丈夫なんでしょうか?」

 

「もう麗華ちゃんを疑ったりするのはやめだ!」

 

 

町長は海を見ながら、皆にそう言い叫んだ。

 

 

「わしらは、あの子を迫害し過ぎた……今起きてる災害は、その罰だ。

 

今は、あの子に頼ろう」

 

「そう……だな」

 

「あの子はいつもいつも、僕らに忠告してましたもんね。

 

森に入っちゃいけない……祠を壊しちゃいけない……川を汚さないでほしい……」

 

「考えてみれば、言われてきたあの子の願なんて……普通にできる事ですもんね。」

 

「それなのに、俺達は守らずいつも破って、そして怪我を負ってはあの子のせいにして……」

 

「俺達が、悪かったんだな……」

 

「あの子は何も悪くない……今考えれば、優しい子だった。」

 

「無駄話は後だ!とにかく今は、俺達ができる事をやろう!」

 

「はい!」

 

 

その頃、体育館では、嵐の轟音で目を覚ました子供たちが遊び回っていた。そんな中、久留美たちの学年は隅の方に集まり今までの事を七海が全て説明していた。

 

 

「えぇ?!」

 

「じゃあ久留美、妖怪にとり憑かれてたってことかよ!?」

 

「そうよ……さっきから説明してるじゃない」

 

「けどよその蛇妖怪……どうせ、神崎の手下かなんかじゃねぇのか?」

 

「手下なんかじゃない!!説明したけど、今回起きてる神隠し事件は全部、蛇の妖怪の仕業だったの!!だから麗華は関係ないの!!」

 

「そうです!僕等を探し出したのも、ここまで送ってくれたあの大きな鳥も、全部神崎さんがやってくれたことです!!」

 

「麗華、皆の家に式神を着かせて、見張らせてたんだよ!」

 

「けど、失敗に終わってるんじゃねぇか?」

 

「それは……」

 

「じゃあ、アンタは一人で出来たっていう訳?!

 

私達には見えない妖怪を相手に!!」

 

「そ……それは」

 

「言い返せないなら、文句言わないでほしいもんだわ!!」

 

「何だよ!!手の平返したような態度取りやがって!!」

 

「だから!!私は妖怪にとり憑かれたんだって!!」

 

「単なる言い訳だろ!!」

 

「何よ!!やるっていうの!?」

 

「ちょっと、二人とも!!止めなよ!!」

 

 

立ち上がり睨み合う二人を、座っていた奈美が慌てて止めた。

 

 

「ねぇ……謝りませんか?」

 

「?」

 

「誰にだよ?」

 

「神崎さんですよ!

 

二年前に起きた事を、全部謝ろ……」

 

「何で」

「だって!

 

だって……元後言えば、麗華をあんな風にしたのって、私達に原因があるじゃない……もし、私達が麗華をしっかり受け入れてさえすれば、鈴村先生も入院することもなければ、先生を辞めることだってなかったじゃん……」

 

「……けど、久留美の奴が全部」

 

「それは卑怯ですよ……

 

自分達は悪くないみたいなこと言って……全部九条さんのせいにするなんて」

 

「そうよ……久留美だって悪気がなかったんだから……」

 

 

二人の言い分が正しいと思う章義達……すると長い黒髪に赤いカチューシャをした真鈴が口を開いた。

 

 

「私ね……神崎さんがまだいじめられる前、助けて貰ったことがあるの。

 

 

ほら家、両親が帰り遅くて……それで遊び心で夜、外へ出て一人で森に行ったの。

そしたら、迷子になっちゃって……歩いても歩いても、全然出口が分からなくなっちゃって……怖くて泣き出しそうなった時だったかな。神崎さんが、私を助けてくれたの。

 

懐中電灯持って、私の手を握って一緒に森の中を歩いて……そしたらすんなり、森から出られたんだ。あの時は本当に助かったって今でも思うよ」

 

「ぼ、僕もあるよ!

 

川で怪我した時、神崎さん僕の足の治療をしてくれたんだ。まるで看護婦さんみたいだったなぁ。あの時の神崎さん」

 

「そういや俺も似た様な事あったな」

 

「俺も」

 

「私も……」

 

 

それぞれがそれぞれの事を思い出し話をし出した。皆の話を聞いていた久留美は遙と七海を見ると、手を叩いて自分に注目を浴びさせた。

 

 

「皆、麗華に助けられてる……

 

ねぇ、ちゃんと謝ってさ……頼まない?友達になろうって!」

 

「……そう…だな」

 

「そうよね……その方が良い!」

 

「私、神崎さんと友達になりたい!」

 

「俺も俺も!神崎と一緒に遊びてぇし!」

 

「そうよ!」

 

「それじゃあ決まりね!

 

嵐がおさまったら、麗華の所に行こ!」

 

「うん!」

「うん!」

 

 

 

 

蟒蛇の元へと近寄ったぬ~べ~達……

雷光に乗っていたぬ~べ~は、先程麗華から受け取った剣を鬼の手で握り、バランスを取りながら立ち上がった。

 

 

「いつでもいいぞ!!」

 

「了解!!

 

焔!!氷鸞!!雷光!!」

 

 

麗華の声で、焔は口から火を放ち、氷鸞は龍実を気にしながら羽を羽ばたかせ氷を出し、雷光は自身の背中に乗っている彼に向かって風を起こした。

三つの技は全てぬ~べ~が握っている剣に吸収されていった。

 

 

「渚!!雛菊!!」

 

 

三つの技に続いて、渚は焔と同様に口から水を放ち、雛菊は三つの尾を立たせ先から雷を剣目掛けて放った。

剣は二つの技を吸収し、そしてぬ~べ~の鬼の手から妖力を吸い取り、その形を変えた。鬼の手の様に赤く巨大な剣となった。

 

 

「鵺野!!今だ!!」

 

「強制成仏!!」

 

 

雷光から飛び上がり振りかざした剣を、ぬ~べ~は蟒蛇目掛けて振り下ろした。

 

 

「馬鹿め!!そんなもの、この俺に通用しない!!」

 

 

蟒蛇は振り下ろしてきた剣を防ぐようにして、口から水を放った。水は壁のように上から流れ落ちその攻撃を防いだ。

 

 

「何?!」

 

「防がれた……」

 

「ハッハッハッハッハッ!!どうだ!

 

所詮、貴様等はこの俺に適わなかったと言うことだ!!」

 

「………(確かあいつ)

 

麗華」

 

「?」

 

 

何かを思い出したのか、龍二は焔の背に飛び移り蟒蛇に聞こえない様に声を小さくして話し出した。

 

 

「あいつ、雷に弱いんだよな?」

 

「うん……それから火にも弱い。

 

でも、攻撃性式は体力的にもう使えないよ?兄貴だって、その体じゃあ………」

 

「いや、いける」

 

「え?」

 

「薙刀を構えろ」

 

 

焔の上で立ち上がり、自身が持っていた剣を構えた。麗華は疑問に思いながらも、薙刀を握り締め立ち上がった。

 

 

「兄貴……何やるの?」

 

「な~に……

 

ちょっとした作戦だ」

 

「作戦?」

 

「雷光をこっちに呼べ」

 

「うん」

 

 

口笛を吹き、雷光を呼んだ。彼は音に気付くと素早く麗華の元へと駆け寄り、雷光とほぼ同時に雛菊も龍二の元へと来ていた。

 

 

「揃ったな……

 

二人には、今から俺と麗華が持ってる武器に、雷を放ってほしい」

 

「?!」

 

「あの水のバリアを破壊する。残ってる作戦はこれしかない」

 

「……」

 

「大丈夫だ。必ず成功する」

 

 

不安げな表情を浮かべる麗華に、龍二は笑みを溢しながら彼女の頭を雑に撫でた。

 

 

「早速やるぞ。

 

雛菊!!」

 

「雷光!!お願い」

 

 

渚の背に飛び戻り、剣を構えた。構えた龍二に雛菊は、三つの尾を立たせ先から雷を放った。同時に雷光も角に雷を溜め麗華が握っている薙刀に放った。

 

二つの武器は、雷に包まれ雷刀となった。その圧倒的な力を抑えるのがやっとの麗華は、バランスを崩しかけ落ちかけた。その時、鎌鬼が彼女の二の腕を掴み立たせた。

 

 

「その妖力じゃ、抑えられないんじゃないかな?」

 

「う、うるさい!!これくらい……わっ!」

 

「立っているのがやっとじゃないか……?」

 

 

鎌鬼の腕に掴まり立っていた大輔は、起用に大鎌の上を歩き麗華の隣へと飛び移り、彼女と一緒に柄を掴んだ。

 

 

「星﨑?」

 

「お前等みたいに、戦えなくても……

 

力を貸すことができる」

 

「……」

 

「君達三人は、氷鸞に乗り移った方がいい!

 

氷鸞!!こっちへ!それから」

 

 

的確な指示を出す鎌鬼……そんな彼を見た大輔は、嫌そうな目つきをした。

 

 

「何だあいつ……偉そうに指示して」

 

「本当……前は私達兄妹を、普通に殺そうとしてたのに」

 

「え?!お前、あいつに殺され掛けたのか?!」

 

「まぁね……(あん時は、マジで死にかけたからなぁ)」

 

「そんな野郎と、よく手を組む気になったな」

 

「色々あってね……

 

今じゃ、手助けしてくれて結構助かってるんだぁ」

 

「フーン……」

 

 

指示を出し終えると、氷鸞が彼女達の元へと寄った。大輔と麗華、そして龍二が飛び移りそれと入れ替えに龍実は鎌鬼が乗る大鎌に飛び移った。

 

 

「氷鸞!鵺野の攻撃を防いでる水壁の所まで連れてけ!」

 

「承知!」

 

「ギリギリの所で、飛び上がって水壁をぶち壊す。

 

上手くいけば、氷鸞が俺達をキャッチしてくれる」

 

「う、うん」

 

「俺の合図で飛べ!!」

 

「了解!」

 

 

空高く飛び、そこから急降下し水壁に向かう氷鸞……

 

 

「今だ!!」

 

 

龍二の掛け声と共に、三人は一斉に氷鸞から飛び降り水壁目掛けて、それぞれの雷刀を振り下ろした。

 

水壁は見事に切り裂かれ、崩れていった。それを知ったぬ~べ~は今だと思い、剣を振りかざし蟒蛇を切り裂いた。切り裂くと共に、自身の鬼の手で弱くなった蟒蛇を、最後の一撃として攻撃を与えた。

 

 

「ウワァァアアアア!!」

 

 

断末魔を上げ、蟒蛇の体は頭から黒い粉になっていき、やがてその姿を消した。


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