地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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その頃島では、住民達が学校の体育館へと非難していた。突然起きた雷雨と強風によりすぐに非難警告が出された。
町長たちは、職員室にあるテレビで、天気予報を見ていた……だが、自分たち付近だけに雷雲が囲っており、まるで自分達を逃げださない様にしているような光景だった。


「何だ…こりゃあ」

「これじゃあ、避難どころか島から逃げることもできません!」

「一体、何が起きてるんだ?」

「……」


「町長!!子供たちが戻ってきました!!」

「?!」


外にいた者から話を聞いた町長は、レインコートを着てすぐさま表へと出た。表では巨大な鳥から降りてくる、大輔たちと広達、更には行方不明になっていた子供たちが降りていた。


「こ、これは?!」

「すぐに医者を頼む!!」

「はい!」

「それからもう少し人手を」

「分かりました!」


体育館にいた男性たちは次々に立ち上がり、外へと出て行った。出て行った者の中に、自分の子供を見つけた父親はすぐに我が子へと駆け寄り抱き締めた。それに続いて、次々に自分達の子供へと駆け寄り、それぞれ抱き締め中へと入った。


「七海!!」

「久留美!!」


全員が中へ入り、タオルを受け渡されていると、そこへ七海と久留美の母親が駆け付けてきた。二人の母親は二人を見つけると、力強く抱きしめた。

そんな光景を、遠くから大輔は眺めていた。


「おい、大輔」

「?」

「お前は母ちゃん、捜さなくていいのか?」

「別に……捜したところで、何の意味もない」

「へ?」

「何で?」

「……」


その時、子供達を抱きしめる親たちの間を抜けながら、女性が一人大輔の元へと歩み寄ってきた。大輔は少し驚いた顔でその女性を見つめた。


〝パーン"

「!?」

「!!」


何も言わずに、女性は大輔の頬を引っ叩いた。


「何で……何でそうやって、いつもいつも迷惑かけるのよ!!」

「……」

「いい?!これ以上世話を掛けるようなことを起こさないで!!

樹梨と海斗が、真似したらどうするつもりなの?!」


叩かれた頬を押えながら、大輔は彼女の後ろにいる小さい二人の子供を見た。その子供達は手を繋ぎ自分の事を、哀れな目で見つめていた。女性は何かを言うと、二人の手を引きそのままどこかへ行ってしまった。


「……」

「あれが、うちの親だ」

「え?」

「大輔?」

「……これが現実だ」


大輔の頬に、一滴の水が流れ落ちそのまま彼は階段を上り姿を消した。そんな彼を氷鸞は少し気になり、後を追いかけて行った。


同じ頃、龍実は突然消えた島の上空を、持っていた双眼鏡で覗き見ていた。


「おいおい……何か、あの蛇デカくねぇか?」

「見りゃあ分かるわい!!クッソぉ……せっかく、剣見つけたのに」


鮫牙の手には、布に包まれた剣が握られていた。


「なぁ、何とかして麗華達の所に行けねぇのか?」

「行けたらとっくに行ってる!」

「あいつ等みたいに、飛べねぇのか?」

「飛べたら飛ぶわ!!俺は海専門だ!!」

「分かったから、デカい声出すな!」

「……?」


ふと、森の方を見るとそこに、何かが降り立つ影が見えた。その陰に気付いた龍実は鮫牙と一緒にその陰へと駆け寄った。


「……?!

龍二さん?!」


龍実は地面に横になった龍二の元へと駆け寄った。その横で丙は再び治療を始めた。


「これ……何があったんです?」

「攻撃されて、今は動けない状態だ」

「麗華は……あいつは?!」

「あの化け物と闘ってる」

「なら焔だっけ?連れてってくれ俺を!!」

「バカか?!危険なところ」
「これを届けたいんだ!!」


そう言いながら、龍実は鮫牙の腕に抱えられていた剣を奪い焔に見せた。


「これは、大昔この島にいた悪霊を切り裂いて封印したと言われてる剣だ……

もしかしたら、これであの化け物を倒せるかもしれねぇんだ!」

「龍実……」

「俺は、アイツに何もできなかった……

だから、今度はやってあげたいんだ!!」

「……焔、こいつを連れてけ」

「けど」

「いいから……

龍実、頼んだぞ」

「はい!」


龍実は持っていた剣を抱えながら、焔に飛び乗った。焔は飛び乗ったのを確認すると、彼は麗華の元へと向かった。


五つの力

渚の背に乗った麗華は深く息を吐き、意を決意したかのようにして、目の前にいる蟒蛇を睨んだ。そしてポーチから、数枚の札を取り出した。

 

 

「……結界発動!!」

 

 

数枚の札は円を作るように配置に着き、陣を造り出した。陣を造り出すと、麗華はポーチから一枚の紙を取り出した。

 

 

「臨、兵、闘、者」

 

 

呪文に反応する可能用に、それぞれの位置に着いた札が別々の色の光を放った。

 

 

「皆、陣、列、在、前!」

 

 

札から光線を出し、その光線は蟒蛇の体に巻き動けなくさせた。

 

 

「鵺野!鬼の手で攻撃しろ!

 

雷光!彼をアイツの所まで送れ!」

 

「承知!」

 

 

雷光は前足をバタつかせ、蟒蛇の元へと駆けて行った。ぬ~べ~は鬼の手を構え、雷光から飛び上がり動けなくなった蟒蛇目掛けて鬼の手を振り下ろした。

 

だが、その鬼の手は弾き返された。そして蟒蛇を囲っていた札が全て破かれ、彼は自由の身となり腕を伸ばしぬ~べ~と麗華を攻撃した。

 

 

「グワァ!」

「わぁあ!」

 

 

攻撃されたと同時に、麗華とぬ~べ~は海の方へと落ちて行った。

 

何かに着地した麗華とぬ~べ~……着地した地面を麗華は手で触れた。水で出来た床の様なもの……ぬ~べ~は彼女の傍へといきながら、その床を凝視した。

 

 

「この床は……一体」

 

「……たぶん、海に住んでるやつだと思う」

 

「……」

 

「麗!!」

「麗殿!!」

 

 

馬と狼の姿から、人の姿へと変わった渚と雷光はその床に着地し、麗華に駆け寄った。渚は駆け寄るとぬ~べ~を退かし、麗華を抱き締めた。

 

 

「麗!!無事でよかった!」

 

「な、渚……苦しい」

 

「お…俺は無視なの?」

 

「フン!麗の命の方が、よっぽど重いわ!

 

アンタの命なんて、どうでもいいのよ」

 

「己ぇ!!このくノ一めぇ!!」

 

「誰がくノ一よ!私は白狼一族の狼娘だ!!」

 

「格好がだ!!格好だ!」

 

「何ですって!!雷光、麗をお願い!」

 

 

抱き締めていた麗華を、渚は雷光に投げ渡し拳を鳴らしながら、ぬ~べ~に殴りかかった。麗華は雷光の腕の中で気を失っていた。

 

 

「れ、麗殿?!」

 

 

渚に抱き締められたせいか、麗華は気を失ってしまった。魂が抜けたかのように口を大きく開いた彼女を、雷光は体を揺らしながら懸命に呼び掛けた。

 

 

そんな光景を、到着した焔は呆れた様子で眺めながら、水の床へと着地し背から龍実を降ろすと、人の姿へと変わりぬ~べ~を殴っている渚の元へと寄った。

焔の気配に気付いた渚は、殴っている手を止めぬ~べ~の胸倉を掴みながら、彼の方を向いた。

 

 

「あら、焔」

 

「『あら、焔』じゃねぇよ!!

 

何殴ってんだよ、このバカ姉者!!」

 

「誰が馬鹿だって!この男が、失礼な事言うからよ!!」

 

「ここまで殴る必要があるか!!大体、何で麗が気を失ってんだよ!?」

 

「へ?!麗が!!何で!?」

 

「姉者……また強く抱きしめたな」

 

「ア……アハハハ」

 

「『アハハハ』じゃねぇ!!俺の主を何回気絶させる気だ?!」

 

「ゴメンゴメン!つい、力が入っちゃって」

 

「ゴメン済むなら警察はいらねぇんだよ!!

 

さっさと龍を迎えに行け!!」

 

「ハ~イ…(そんな怒らなくても……)」

 

 

胸倉を掴んでいたぬ~べ~を投げ捨て、狼の姿へと変わり龍二の所へと向かった。

 

 

「ほ、焔ぁ!!れ、麗殿が目覚めぬぅ!!」

 

「あ~もう!分かったから、麗を貸せ!それから、そこで伸びてる馬鹿を起こせ!」

 

「あ、はい」

 

 

雷光から渡された麗華を座らせると、焔は背中に膝蹴りを軽く入れた。すると意識が戻ったのか、ハッと顔を上げ眼をパチパチとしながら、辺りを見回した。

 

 

「あれ?私、何……」

 

「ようやく意識が戻ったか……」

 

「大丈夫か?」

 

 

心配した龍実が、恐る恐る麗花の元へと寄りながら声を掛けた。

 

 

「あれ?龍実兄さん……何で」

 

「これを、届けたくて」

 

 

肩にかけていた布に包まれた剣を、龍実は差し出した。

 

 

「これ……」

 

「鮫牙から聞いたんだ。

 

昔ここにいた巫女が、あの化け物を封印する際、この剣を使って封印したんだ。

剣を使い、五つの力で化け物を封じたんだ。」

 

「五つの力?それに、何で龍実兄さんがそんなことを?」

 

「ここへ来る前、祖母ちゃんから話を聞いたんだ。

 

風と雷の他に、水、氷、火を使ったって」

 

「あのババァ、どんだけ最強なんだよ……」

 

「全くだ…あれだけ、麗の事いじめてたくせに」

 

「なぁ、焔君……一つ聞いて良いか?」

 

「?……!」

 

 

後ろを振り返ると、そこに丸焦げになったぬ~べ~と頭を掻きながら、少々困ったような雷光が立っていた。

 

 

「どうしたの?その格好」

 

「あれなのか……俺は、こいつらに嫌われているのか?」

 

「……何やったの?雷光」

 

「目を覚まさせようと、そのぉ……雷を……」

 

「……アホ」

 

 

 

 

大雨が降る島……体育館では、親の膝に頭を乗せ安心して眠る子供達……大輔は、ただ一人教室に置かれている机の上に腰を下ろし、外を眺めていた。

 

 

「……御独りは好きですか?」

 

「?」

 

 

教室の隅に佇む氷鸞……ゆっくりと大輔の近くへ行くと外を眺めた。

 

 

「……なぁ」

 

「?」

 

「妖怪って、どうやって生まれるんだ?」

 

「……」

 

「なぁ」

 

「……さぁ。どう生まれて来るんでしょうかねぇ」

 

「……じゃあ、生まれた後はどうなるんだ?」

 

「そうですねぇ……

 

その地の神になって、その地を守っていくでしょう。

 

 

例え、どんなに人に迫害されてもですけど」

 

 

フラッシュバックで思い出す過去の記憶……氷鸞は悲しげな瞳で、大輔を見つめた。

 

 

「……二年前。俺もアイツと一緒に、この島から出て行きたかった」

 

「?大輔さん?」

 

「俺が一歳の時、本当の母親がこの島から出て行った。

 

俺もついて行きたかった……けど、父親がそれを許さなかった。

 

 

今でも覚えてる……船に乗り込むお袋が、涙を流して俺との別れを惜しんでたのを」

 

「……」

 

「神崎のお袋は死んだって聞いてるけど、何で死んだんだ?」

 

「詳しくは聞いていません。私が麗様に仕えたのは、一年程前です」

 

「……そういや、そうだったな。

 

アイツがあの時連れてたのって、あの狼と馬くらいだったもんな」

 

「……?」

 

 

何かに気付いたのか、氷鸞は窓を開け外を眺めた。

 

 

「どうした?」

 

「……少々、嫌な殺気を感じましてね……」

 

「神崎の所に行くなら、俺も一緒に行く!

 

ここにいたって、誰も俺の事を心配しちゃくれねぇ……俺も神崎と一緒なんだよ」

 

「……乗りなさい。

 

しかし、いつも通りのスピードで飛びます」

 

「分かった」

 

 

外へと飛び出た氷鸞は、巨鳥へと姿を変えた。変わった氷鸞の背に大輔は飛び乗り、彼が乗ったのを確認すると猛スピードでどこかへ向かった。

 

 

 

 

「よし!治療完了!」

 

 

傷口から手を放し、丙は嬉しそうに言った。龍二は龍二は立ち上がり、丙に礼を言うと紙へと戻した。そして地面に刺していた剣を抜き取ると渚に乗り、麗華達の元へと急いだ。

 

 

 

 

「麗華ぁ!!」

 

 

水の床へと降り立った渚から、素早く飛び降り麗華の元へ駆け寄った。

 

 

「兄貴!」

 

「良かった、無事だったか」

 

「兄貴、もう大丈夫なの?」

 

「ばっちりだ!

 

それより、こいつ何でいじけてんだ?」

 

 

蹲り、目から涙を流し何かブツブツ言うぬ~べ~を見ながら質問した。

 

 

「何があったんだ?」

 

「さぁ……」

 

 

「麗様ぁ!!」

 

 

空から声が聞こえると、巨鳥から人の姿へとなりながら、腕に何かを抱えて飛び降りてくる氷鸞の姿があった。着地すると、抱えていた人をその場に下ろし麗華の元へと駆け寄った。

 

 

「麗様!!お怪我はございませぬか?!」

 

「ないない」

 

「何しに来てんだよ、阿呆鳥」

 

「フン!麗様がピンチの時に、何をのうのうとしているのだ。この馬鹿犬が」

 

「あぁ!!やるっていうのか?!この阿呆鳥」

 

「馬鹿犬如きに、この私が負けるなどありません」

 

「んだと!!」

 

「やりますか?馬鹿犬さん」

 

「止めんかい!!こんな一大事の時に!!」

 

 

氷鸞と焔の頭に、思いっきり殴った。二人は殴られた個所を押えながら、二人は背を向けた。

 

 

「全く……?

 

あれ?星崎?!」

 

 

地面に膝を着き、手を着く大輔の姿に気付いた麗華は彼の元へと駆け寄った。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「し……死ぬかと思った。

 

あ……あんなスピード、もう……味わいたくない」

 

「……氷鸞、まさかアンタ」

 

「いつも通りのスピードで行くと言いましたら、別に良いと言ったものですから」

 

「……雷光、電撃」

 

 

角から雷を出し、氷鸞に攻撃した。氷鸞は体から煙を放ち、その場に倒れた。そんな彼を焔は足で突っつきながら遊んだ。

 

 

「さぁて、御遊びはここまでにして……

 

 

麗華、アイツを倒す方法あるか?」

 

「一応、龍実兄さんから聞いた方法ならあるけど……」

 

「方法?どんなの?」

 

 

龍実は先程の話を龍二に話した。五つの力を使い、龍実が持っている剣にその力を加えさせるのだと……

 

 

「なるほどなぁ……(何ちゅうババァだ)」

 

「どうする?やってみる?兄貴」

 

「やってみる価値はある。

 

それ以外方法はねぇだろ?」

 

「確かにそうだけど、力はどうするの?

 

今ここに揃ってるのは四つだけだ」

 

「いや、一応五つ揃ってる」

 

「え?」

 

「お前、雛菊のこと忘れてるだろ?」

 

「……あ!」

 

「ったく、人の式神の技くらい覚えとけ」

 

「ハイハイ……」

 

「返事は一回だろうが!!」

 

「わ…分かった!!分かったから、耳を引っ張るな!!」


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