地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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―――――元々は……一つだった。

だが地上へ降りた時、二つに分かれた。人間の目から見れば、蛇と馬の姿をした妖……
ところが、人間たちはそんな自分達に攻撃していった。矢や剣……鎌や火……いろいろな武器で攻撃していった。
そんなある日、島に災いが起きた。人間達はまるで手の平を返したかのようにして、自分達に助けを求めてきた。しかし…自分達にはそんな力は無く……いや、それどころか人間を助ける気などなかった。あの方が来るまでは……


雷と風の使い

“バーン”

 

 

四方八方に放たれる雷……その攻撃を麗華達は瞬時に避けて行った。

 

 

「くそっ!!キリがない!!」

 

「星崎!鎌鬼と一緒に注意を引け!!」

 

「了解」

「承知」

 

 

木刀と鎌を振りかざし、雷光に攻撃を仕掛け自分達に注意を惹き付けた。その間、麗華はポケットからいつ枚の札を取り出した構えた。

 

 

「大地の神告ぐ!汝の力、我に受け渡せ!その力を使い、目の前の敵を正気に戻す!!」

 

 

その言葉に反応するかのように、紙は赤く輝きだした。輝きだしたと同時に持っている紙が燃え出し、火が上がった。

 

 

「いでよ!!火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)!!」

 

 

紙から上がっていた火は、紐のように伸びた。鎌鬼はその火を目にすると、傍にいた大輔を抱えその場を離れた。二人が離れて行くのを見ると、麗華は火を操るようにして振るい、雷光に攻撃した。攻撃を食らった雷光は、吹き飛ばされ壁に激突した。

 

 

「雷光!!」

 

 

放っていた火を消し、麗華は壁に激突した雷光の元へと駆け寄った。

 

 

「雷光…雷光!!」

 

「ゥ……」

 

「雷光……私が分かる?」

 

「……我に触るな!!」

 

 

叫び声と共に、雷光は体中から電撃を放った。電撃は傍にいた麗華を包み攻撃した。

 

 

「わぁああああ!!」

 

「麗華!!」

 

「クゥ!!……

 

 

苦…しんだろう……」

 

「?!」

 

「苦しんだろ……雷光。

 

あの時……アンタ言ってくれたよな?

 

 

今……吹いてる風と……アンタが放ってる……雷に誓って……

 

私を……守り抜くって」

 

「……黙れ」

 

「雷光」

「黙れ!!」

 

 

放っていた雷をさらに強くし、麗華は雷光に触れていた手を彼の首に回し強く抱き締めた。雷光は彼女を振り払おうと、首を回し暴れ出した。暴れ出したせいか、雷は敵身味方関係なく、そして地面で眠っている子供達にまで危害を加えようとしていた。地面に寝かされている子供達を守ろうと、鎌鬼は持っている大鎌をさらに大きくして、攻撃を跳ね返した。

 

振り回していた雷光の首から、麗華は力が尽き洞窟の外に面している崖に飛ばされてしまった。飛ばされた勢いで麗華はそのまま海の方へと落ちて行ってしまいそうになった。

 

 

落ちて行く麗華を、崖から飛び降り縁に手を掛け、大輔は彼女の腕を掴み助けた。

 

 

「星崎?!」

 

「ギリギリ…セーフ」

 

「バカ!!アンタ、何やってんの?!

 

下手したら一緒に」

「見過ごす訳にはいかねぇんだよ……

 

もう……傷付けたくないんだ」

 

「……」

 

「いつも、大人達のお前に対する対処見てて……正直、反吐が出ると思った。

 

だってよぉ……そんな大人達に、俺達育てられてきたんだぜ?」

 

「……」

 

「いつもいつも、お前が体張って俺達の事を守ってたのは、島の中じゃ俺が一番知ってたつもりだ。

 

だから……今度は俺が、体を張ってお前を助ける!!」

 

 

縁を強く掴み、宙吊りになる二人……そんな中、雷光は首を振り回しながら、壁に頭をぶつけ正気を取り戻そうとしていた。

 

 

「雷光……君の主が今、大変なことになっているよ。

 

それを見逃すのかい?違うだろ」

 

 

鎌鬼は大鎌を持ちながら、ゆっくりと彼に近付き優しく語りかけた。その様子を見ていた焔は、狼から人の姿へと変わり、雷光の元へと駆け寄り彼の角を掴み自身の方に振り向かせ、頬を思いっ切り殴った。

 

 

「テメェ……

 

あの時の約束は、嘘だったのか」

 

「……」

 

「俺等で……麗を守ろうって、約束したじゃねぇか!!杯、交わしたじゃねぇか!!

 

約束の誓いとして……」

 

「……我は」

 

「目を覚ませ!!雷光!!

 

テメェがいなくなったら……麗はどうなるんだ!!俺達三人で、守ろうって決めたじゃねぇか!!」

 

「我は……」

 

 

記憶が混乱しているのか、何も答えようとしない雷光……

 

その時、大輔が掴んでいた崖縁が崩れ、二人は落下していった。

 

 

「麗!!」

「麗華!!」

 

 

落下した麗華を助けようと、焔と鎌鬼は崖に駆け寄り助けようとした。そんな彼等の背中を雷光は見つめ、言葉を呟いた。

 

 

「れい……」

 

『雷光』

 

「レイ……」

 

『雷光……』

 

「麗……」

 

『アンタの雷と風は……私を守ってくれる大事な力だよ。もちろん、アンタがいなきゃだけどね』

 

「麗……殿」

 

 

「雷光ぉ!!」

 

 

崖の下から聞こえた叫び声に、雷光は正気を戻し人の姿へと変わり稲妻の速さで崖から飛び降り、二人を受け止めた。地面へ降りると雷光は馬の姿へと変わり、麗華に頭を下げた。

 

 

「雷光……」

 

「某が不甲斐なばっかりに……

 

焔も鎌鬼も……済まぬ」

 

「雷光」

 

 

謝る雷光に、麗華は抱き着いた。雷光は驚くも、抱き着いた彼女に顔を摺り寄せた。

 

 

「お帰り……雷光」

 

「只今帰りました……麗殿」

 

 

すると、雷光は麗華から離れ蟒蛇の方に目を向けると、角に雷を溜め彼目掛けて放った。

 

放たれた雷を見た渚と焔は、龍二達を蟒蛇から離した。雷は、蟒蛇に見事当たり体から煙を上げながら、彼は地面に膝を着き雷光を睨んだ。

 

 

「鬼驎……己ぇ!!」

 

「もう……良いではないか。蟒蛇」

 

 

互いを睨み合う雷光と蟒蛇……

 

渚と焔に助けられた龍二とぬ~べ~は、二人の元へ降り立った。龍二は降り立つとつかさず、麗華の元へと駆け寄り彼女を抱き締めた。そんな二人を見ていた渚は、傍でさり気無く見ているぬ~べ~の顔面に裏拳を食らわした。また大輔は鎌鬼に手で目隠しされ、二人の光景を見せない様にしていた。

 

 

「怪我はねぇか?」

 

「ない……大丈夫だよ」

 

「そうか……」

 

「雷光……戻ったよ……何とか」

 

「麗華!」

 

 

足がふら付き、麗華は龍二に倒れかけた。龍二は慌てて彼女の腕を掴み支えた。二人の元へ心配し、渚と焔は駆け寄り彼女を見た

 

 

「麗、大丈夫か?」

 

「大丈夫……目眩がしただけ」

 

「……お前は後方に回れ。前方は俺と鵺野の二人でやる」

 

「けど」

 

「あれを使ったんだろ?だったら、尚更だ」

 

「……」

 

「言ってただろ?

 

お前は体が弱いから、使うごとに体にくるって」

 

 

その時、蟒蛇の口から何千引きと蛇が飛び出し、自分達に攻撃してきた。目を回しているぬ~べ~を渚が、大輔を鎌鬼が、龍二は麗華を抱え高くジャンプし、狼の姿になった焔の背中に飛び乗り、蟒蛇の攻撃を避けた。

 

 

「鬼驎!!貴様はなぜ、散々俺達を傷付けてきた人間共の味方をする!!?」

 

「某がこの者達に、救われたからだ!!」

 

「何が救われただ!救われたからって、結局貴様は道具扱いじゃないか!!

 

そこにいる女を守るだぁ?ふざけるな!!」

 

 

もう一度口から蛇を吐き出し、麗華達に攻撃をした。口から出してきた蛇を、雷光は角から雷を放ち攻撃を防いだ。

 

 

「麗華!!龍二!!

 

ここには子供達がいる!激しい戦いは避けた方が良い!!」

 

「分かってるけど、どうすればいいか……」

 

「兄貴、場所を変えよ」

 

「そうだな……

 

鎌鬼と大輔は、ここに残ってこいつ等を起こしてくれ!」

 

「分かった。大輔、いいね?」

 

「あ……あぁ」

 

「蟒蛇!!場所を変える!!ついて来い!!」

 

 

そう言うと、龍二は焔から渚の背中へと飛び移り先頭を切った。渚から受け取ったぬ~べ~を、麗華は焔に任せ自身は雷光の背に乗り移りながら、ポーチから紙を取り出した。

 

 

「氷鸞!!」

 

「これは、一体……」

 

「説明は後。アンタは鎌鬼と星﨑と一緒に、ここの奴等を起こしてここから避難させろ」

 

「承知しました」

 

「それから、アンタは今回戦いに参戦しなくていい。

 

敵が水に強い。万が一のことを考えて」

 

「……承知しました。

 

雷光、焔…麗様を頼んだぞ」

 

「命に代えて」

「命に代えて」

 

「じゃあ、後お願い。雷光行こう」

 

 

麗華の指示に、雷光は蟒蛇について来いとでもいう様に首を振って龍二達の後をついて行った。蟒蛇はそんな彼等を睨みながらその後をついて行った。


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