地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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火の鳥の襲来

商店街から駆けてきて、外れの土手へやってきた美樹……

 

 

息を切らしながら、美樹は土手の芝生に腰を下ろし、息を整えた。

 

 

「はぁ……はぁ……(な、何なの……何なのよ。アタシに何か災難が起きるっての?嫌よ!嫌……アタシまだ、死にたくない……死にたくない!!)」

 

 

「死にたくないか……

 

だったら、俺様の手伝いをしてくれねぇか?」

 

「え?」

 

 

どこからか聞こえてくる声に気付いた美樹は、後ろを振り返るとそこに夏なのにコートを着て目深い帽子を被った人が立っていた。美樹はその人物を見つめていると、その人物の目が突然光り気を失りその人物の胸の中へと倒れてしまった。

 

 

(いい獲物だ……

 

今日の役割は、こいつで決まりだな……

 

 

さぁて……今日はどこを燃やすか……)

 

 

その人物は、自分の着ていた服を脱ぎ捨て、美樹を連れそのままどこかへ消えてしまった。

 

 

 

 

その夜―――――

 

 

郷子がお風呂に入っている最中、郷子宛てにぬ~べ~から電話がかかり、郷子は慌てて風呂から上がり電話の子機を取った。

 

 

「もしもし、先生どうかしたの?」

 

「お前、今日の放課後から美樹にあったか?」

 

「美樹に?

 

帰りに会ったけど……どうしたの?美樹に何かあったの?」

 

「帰ってないんだ!まだ家に!!

 

他の奴らにも電話して、聞いたんだが誰も知らないって言うし……

 

今広が、美樹を探しに商店街に行っている」

 

「え?!

 

帰ってないって、もう八時よ!!

 

 

ぬ~べ~、私も探しに行く!!」

 

「分かった。俺も今から、探しに行く!」

 

 

ぬ~べ~の言葉を聞いた郷子は子機を置き、すぐに部屋へ行き着替え家を飛び出し美樹が行きそうな場所を探しだした。

 

 

「広!!ぬ~べ~!!」

 

 

商店街を抜けた土手の所へ行くと、そこに広とぬ~べ~の姿があった。郷子は二人の姿を見つけると、二人の名を呼びながら駆け寄った。二人は郷子の声に気付くと後ろを振り返り、郷子を見た。

 

 

「郷子」

 

「美樹、見つかった?」

 

「全然……

 

目撃情報が何もないんだ……」

 

「そんな……

 

 

 

ねぇ、それ美樹の鞄じゃない?」

 

 

郷子が指さす方に目を向けると、そこには美樹の鞄が落ちていた。ぬ~べ~は鞄を取り上げ、手に持っていた霊水晶をかざした。

 

 

「……

 

!!

 

やばいぞ!!」

 

「どうしたの?!美樹に何かあったの?!」

 

「美樹の気に、邪悪な影がかぶさっている!!」

 

「え?!」

 

「美樹は?!美樹は?!どこに!!」

 

「……

 

公園…」

 

「公園?」

 

「この近くの公園だ!!行くぞ!!」

 

 

ぬ~べ~の掛け声と共に、郷子達は公園へ向かった。

 

 

 

 

その頃、美樹は公園の遊具の近くに新聞と灯油を吹きかけていた。そしてすべての遊具に吹きかけると美樹は、手に持っていたライターを点け投げようとした時だった。

 

 

「放火犯、見っけ」

 

「?」

 

 

そこにいたのは、白い髪を生やした青年と一緒にいる麗華だった。

 

 

「お前の狙い通りだったみたいだな?麗」

 

「言ったでしょ?次はこの子だって」

 

「みてぇだな?」

 

「何者だ」

 

「その人間の子と同じクラスの者。

 

悪いけど、そいつ返してもらえる?」

 

「それは無理な願いだ。

 

この場所を燃やした後、この人間を焼いて今日の晩飯にすんだからな?」

 

「食っても不味いよ?そいつ」

 

 

すると美樹の体の中から、鳥の姿をした人間の姿にを犬のような毛並をした妖怪が姿を現し、気を失っている美樹を抱え、麗華を睨んだ。

 

 

「不味い美味いは、俺が判断する。

 

これ以上邪魔をするのなら、お前を先に食ってやる」

 

「正体を明かしたか……

 

麗、こいつ火使う妖怪だぜ?」

 

「分かってる。

 

今回はこいつで行くよ。

 

 

出てきな!!氷鸞」

 

 

腰に着けていたポーチから、紙を投げ出すと紙から煙が上がり、中から僧侶の格好をし水色の髪を下ろし笠を被った青年が姿を現した。

 

 

「この者は……」

 

「こいつ、見た感じ火使いの妖怪らしいから、お前の水攻撃で倒して」

 

「承知」

 

 

氷鸞は持っていた錫杖を地面に着け、術を唱え始めた。すると地面から水が噴き出てきて、それを察したのか、氷鸞は閉じていた眼を開け、錫杖を回した。

 

 

「水術!渦潮の舞!」

 

 

回していた錫杖から、渦を巻いた水が出てきて犬鳳凰に襲いかかった。だが犬鳳凰は、口からマグマの様な液を出して水を防ぎ、美樹を抱え持ったまま飛び公園に火を放った。

 

 

ちょうどそこへ、駆けつけてきたぬ~べ~達がその光景に驚きながら、公園の入り口へ急いだ。

 

 

「美樹!!」

 

「?!

 

れ、麗華!!」

 

 

入り口で、空を見上げる麗華の姿があり、広の声に気付いた麗華は、三人の方へ振り返った。

 

 

「な、なぜお前が……」

 

「美樹は?美樹はどこ?!」

 

「ほぉ……また人間か」

 

「?!」

 

「今日は、やけに多いなぁ……」

 

「な、何?!この妖怪!!」

 

「広、郷子!!お前等は下がっていろ!!」

 

 

そう言いながらぬ~べ~は、白衣観音経を取りだし郷子達を自分の後ろへ隠した。只ならぬ事態を悟った広は、遠慮深い声で質問をした。

 

 

「あの妖怪、そんなにやばいのか?」

 

「あれは犬鳳凰……

 

愛媛に伝わる怪鳥で、火を使う妖怪だ」

 

「火?……

 

まさか、ここ最近起きてる火事って」

 

「そう。こいつ……

 

小火が起きた現場や火事が起きた現場に行くと、必ず妖気が残っているのと、そこいらに飛び散った血痕の跡があった。だけど、死体はどこにもない……

 

 

言いたいこと分かります?」

 

「……

 

そういうことか……」

 

「郷子、どういうことだ?」

 

「つまり、あの妖怪が人間の中に入って、操って火事を起こしその後、その人間を食べてのよ……」

 

「う、嘘…だろ」

 

「……

 

麗華!お前、このこと知っていたのか?!」

 

「もちろん、承知の上……

 

だから、あいつに『今夜は、気をつけな』って言ったのに……」

 

「そんな忠告を聞いて、美樹が気を付けるとでも思ったのか?!

 

少しは言い方を……!!」

 

 

説教の途中、突然顔面を誰かに殴られ、ぬ~べ~は地面に尻を突いた。殴られた顔を手で押さえながら、ぬ~べ~は顔を上げた。そこにはあの白髪の青年が、怒りの目をぬ~べ~に向けて麗華の前に立っていた。

 

自分を殴ったのは、どうやらこの青年かとぬ~べ~は確信した。

 

 

「さっきから聞いてれば、まるであの人間が襲われたのが、麗のせいだって言い方しやがって……」

 

「……」

 

「麗はな、テメェ等人間なんかのために、夜寝る間も惜しんで現場を調査して、次狙う場所を探して、テメェ等が危険な目に遇わねぇようにしてたんだ!!」

 

「!?」

 

「嘘でしょ……」

 

「じゃあ、美樹が昨日の夕方麗華を見たってのは……」

 

「あれも、現場を検証してたんだ!!

 

あの現場に残ってた妖気が、今度はあのクソ女の身体に付いたから忠告したんだ!!」


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