地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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見つめ合う麗華と大輔達……

その時、大輔の隣にいたサイドテールの女の子が、腕を組み口を開いた。


「よくもまぁ、戻ってこれたわね?異端児」

「……」

「戻ってきたかと思えば、余計なものまで連れてきて……

あ!そっかぁ!だから、神隠し事件が起きたんだ!」

「……」

「ちょっと久留美、今起きてる事件と神崎さんとは」
「うるさい!!

そうに決まってるわ!!でなきゃ、おかしいもの!!


そうよね?大輔」

「……」

「大輔?」


久留美の質問に、何も答えない大輔は、ずっと麗華を見つめていた。顔を下に向かせていた麗華は、大空を郷子に預けその場から立ち去ってしまった。
そんな彼女を広達は呼び止めた。麗華は呼び止められ、一瞬足を止めた。


「おい、麗華!」

「お姉ちゃん!」

「ゴメン……

調べることあるから……」

「え?でも……」

「ゴメン……」


振り返らず、麗華は走り出しその場を立ち去った。


「全然変わってないのね?異端児」

「おい、誰が異端児だって?!」

「異端だから異端児って呼んでんのよ!悪い?」

「麗華のどこが、異端児なんだよ!!」

「そうよ!普通の女の子じゃない!」

「普通の女の子?

どこがよ!!妖怪がいるだの、幽霊がいるだの言って……それのどこが普通なのよ!」

「妖怪や幽霊が見えちゃ、普通じゃないのかよ!!」

「そうよ!普通じゃないわよ!!


それに、普通だったら、あんな事件起こさないわよ」

「事件?」

「そう。あの子が転校する羽目になったあの」
「それくらいにしとけ」


黙っていた大輔が、久留美の話を止めた。


「大輔……」

「その話をしたって、アイツ等に俺達と神崎の過去は消せない」

「……」

「行くぞ」

「あぁ、待ってよ!」


先に歩き出した大輔の後を、久留美は慌てて追いかけて行った。そんな二人の後を、七海と男の子は広達に申し訳なさそうな顔を浮かべながら、ついて行った。


悲痛な過去

入り江を通り、無人島へと来た麗華……

 

 

森の中にあった岩に腰掛けた。彼女の様子が気になったシガンは、心配そうな鳴き声を発した。姿を消していた焔は姿を現し、麗華を囲うようにしてその場に寝そべった。

 

 

思い出す過去……

 

 

二年前、久しぶりに学校へ着た麗華……

 

教室へ入ると、突然クラスの男の子に打たれた。打たれた麗華は勢いで、その場に尻餅をつき男の子を見上げた。その男の子の後ろには、自分を虐めている者達が集まっていた。

 

 

『お前だろ!』

 

『何が?』

 

『奈美の体育着、隠しただろ!!』

 

『し、知らな』

『知らばっくれるな!!

 

お前以外に、誰が犯人なんだよ!?』

 

『そんな事……言われても』

 

 

自分を責めるクラスメイト達……そこへ担任の先生がやってきて、慌てて皆を教室の中へと入れ話し合いをし始めた。話し合いをして、ようやく収まるかと思っていたが、担任は男子達の言い分を正しいと判断し、証拠もなく自分を犯人だと決定付けた。

 

 

クラス中から暴力を受けた麗華は、一瞬頭が真っ白になってしまった。

 

 

 

他の先生の声で、麗華はハッと我に返った。教室を見回すと、机や椅子が滅茶苦茶になっており、隅には怯えて泣いている女子達と、周りには傷だらけになっている男子達と担任が横たわっていた。

 

 

 

「……」

 

 

目を覚ます麗華……いつの間にか眠っており、傍には焔とシガン、更には島に住んでいるであろう、兎や鹿などの動物が近くで座っていた。

 

 

(寝てたのか……)

 

「起きたか?」

 

「一応ね……」

 

「魘されてたぜ……」

 

「嫌な夢見たから。まさか、ここに来てアイツ等に会うなんて……」

 

「……

 

 

これから、どうすんだ?」

 

「どうするって、調べるに決まってるでしょ?

 

昼間に行った店の亭主から聞いた話じゃ、行方不明になった二人の子供、いなくなる前に誰かに追われてたって、親に言ってたみたいだし」

 

「誰かに追われてた?」

 

「あぁ。正体は分からねぇけど、誰かに追われてたってずっと言ってたらしいんだ」

 

「フ~ン」

 

「早速行動を開催しますか」

 

「その前に、置いてきた荷物取りに行かねぇか?」

 

「そのつもりだ。

 

シガンおいで、行くよ」

 

 

傍で丸まっていたシガンに呼びかけ、麗華は焔に乗った目を覚ましたシガンは、素早く起き上がり麗華の肩へと登った。それを見た焔は、その場から飛び去った。

 

 

 

 

広達の元へと戻ってきた麗華……広と遊んでいた大空は、焔から降りてきた彼女に抱き着いてきた。

 

 

「麗華、大丈夫?」

 

「あぁ。何とかね……

 

荷物取りに来ただけだから……」

 

「あいつ等、何者なんだ?一体」

 

「学校のクラスメイトだよ。以前行ってた」

 

「っ……」

 

「嫌な思いさせて悪かったな……」

 

「べ、別に気にしてないわよ!ねぇ」

 

「そうだよ!」

 

「……」

 

 

作り笑いを浮かべ、麗華は大空を郷子に任せ待っていた焔に乗り、飛び去ってしまった。

 

 

「麗華の奴、大丈夫かな?」

 

 

不安げに、広達は焔が飛び去っていった方向を見上げた。

 

 

 

 

島にある森の中を調べる龍二と龍実……

 

 

「森なんか調べてどうすんだ?」

 

「森には、そこに住みついている妖怪や幽霊がいる。

 

そいつらに聞いて、情報を集めて、この島でい変わったこととかを調べるんだ」

 

「なるほどねぇ」

 

 

森を見回すと、龍二の言う通り、そこらじゅうに小さい妖怪や浮遊霊が存在していた。

 

 

「お前と大空には見えてくれててよかったよ」

 

「見えたからって、別に得したことはなかったけど。

 

麗華が住み始めた頃に、やっと自分も見えててよかったなって思えたよ」

 

「何で?」

 

「当時、俺も正直麗華の霊感をよく思ってなかったんだ……もちろんこの俺や大空の霊感も。

 

けど、あの日あった出来事で俺達にも霊感があってよかったって、改めて思ったんだよ。

 

 

四年前、麗華がこっちに来た頃だったかなぁ……

 

 

あの日、学校の授業で海で泳ぐことになってな。けど俺はどうにも、その日海に入る気がなかったんだ……

 

直感で、海に何か住んでるんじゃないかって思って……

 

 

けど、それはすぐに的中した。海に入ったクラスの友達が、海に引きずり込まれるようにして、消えちまったんだ……

俺はそん時見たんだ。海の中から手を伸ばして、そいつを引きずり込んだ妖怪の姿が……」

 

「それ、クラスの奴等に言ったのか?」

 

「言えるわけねぇだろ……

 

いなくなったことを知った先生達は、俺達と一緒に海を捜し続けた。けど、その日一日中探しても、友達は発見できなかった。

 

 

俺もその日、諦めかけてたんだ……けど、アイツは見つけてくれた」

 

 

思い出す、四年前の出来事……

 

友達がいなくなった翌日……友達は、近くの浜で発見された。

同時にその日、麗華はびしょ濡れで家に帰ってきた。体中に、引っ掻き傷が所々にあり母は、すぐに怪我の手当てをした。

 

 

「あの時、麗華に聞いたんだ。友達を奪ったのは、妖怪なのかって。

 

そしたらアイツ、寂しがり屋で遊び相手が欲しかっただけの妖怪だったって言ったんだ。自分が毎日海に行って、そいつと遊ぶって約束したら返してくれたんだとさ」

 

「相変わらずだな、麗華の奴」

 

「それから、もう一つ。

 

その妖怪、本当は見えてた俺を連れてこうとしたんだけど、間違えて俺の隣にいた友達の脚を掴んじまったんだとさ」

 

「そりゃあ、笑いもんだな!」

 

「全く、笑えたぜ!

 

その日から、俺もなるべく見える妖怪には、声を掛けるようにしたんだ。ここに住んでる妖怪は、皆悪気のない昔から、この島を守ってる奴等だから」

 

「そういう奴がいてくれて安心したよ。

 

正直、こっちで麗華が上手くやってんのかいつも心配でさ……だから、龍実や大空みたいに見える奴がいて、本当よかったよ」

 

「見える奴っていえば、アイツのクラスにも一人いたなぁ」

 

「いたのか?」

 

「あぁ。友達だったかは知らねぇけど、一人いたんだよ。

 

死んだ祖母が、昔霊媒師やってたか何かで、その血を引いてて見えるって……」

 

 

龍実から話を聞いた龍二は、ふと麗華に届いた一通の手紙を思い出した。彼女が家へ帰ってきた一週間後に、クラスの友達から一通だけ手紙が届いた。

 

 

(あの手紙を出した奴なのかな……)




夕方……


釣り場で、足を海へと出し座る郷子と広……そこへ昼間にあった、七海と男の子が二人の元へとやってきた。


「お前等、昼間の」

「ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」


深々と頭を下げ、謝る二人の態度に広と郷子は戸惑い互いの顔を見合った。深々と下げていた頭を上げ、七海は口を開いた。


「久留美があんな事言って……

本当にごめんなさい!」

「申し訳ないと思って、九条さんの代わりに謝りに来たんだ……」

「そうだったのか……」

「いいのよ。気にしてないから」

「でも……」

「いいって!だって、あの時二人の態度見てて分かるもん。それに、こうやって謝りに来てくれたじゃない」


笑顔を浮かべる七海と男の子……

二人は、広達と同じ場所に腰を下ろし話をし出した。


「そういえば、名前まだだったよな?

俺は立野広」

「私は稲葉郷子」

「私は、飯塚七海!」

「僕、渡部遙(ワタベハルカ)と云います!」

「七海ちゃんと遙かぁ。よろしくな!」

「よろしく!」
「よろしくです!」

「なぁ、二人は麗華の友達なのか?」


その言葉を聞いた遙と七海は、暗い顔になってしまった。


「あれ?俺、何かいけない事聞いちゃった?」

「あんたねぇ!!」

「いいんです。気にして……ませんから……」

「友達…か。

言えてた頃もあったよ……神崎さんと」

「僕等がいけないんです……」


広はそう呟く遙の腕にあった傷跡に気付き、ハッと思い出した。
ぬ~べ~から聞いた、以前麗華が起こした事件……男子達と担任に、全治一か月の怪我を負わされたこと。


「私達のクラスってね、皆幼馴染なんだ。

十人ちょっとの少ない教室なんだけど、皆顔見知り。けど神崎さんだけが、新顔だったんだよねぇ」

「思い出すなぁ……初めて、神崎さんが島に来た時のこと」

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