地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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学校の隅に、木の釘を打つぬ~べ~達……

打つ前に、麗華と龍二彼等に説明した。


「まず、学校の隅計四か所に、この札の着いた木の釘を打って貰う。

打ち終えたら、俺と麗華で結界を張る」

「ちょっと待て。

結界を張っては、鎌鬼は入って来れないんじゃ……」

「大丈夫。

この結界は、一度入ったら出られなくなるものだ」

「だから、奴が入ればもう袋の鼠……

逃げることも、隠れることもできない……


もし失敗すれば、全員に命の保証はない」

「……」


奇跡

木の釘を打ち終わり、校庭へ集まるぬ~べ~達……

 

 

「釘打ち終わったけど……何が始まるんだ?これから」

 

「結界張るのは分かってるけど」

 

「いいから見てて。

 

アンタ達は、危険だから校舎の中に。雷光、氷鸞こいつ等に付いてて」

 

「承知」

「承知」

 

「後、何があってもそいつ等の傍から離れないこと。いいね」

 

「し、しかし」

 

「それでは麗殿が」

 

「私の命令が、聞けないの?」

 

「っ……」

 

 

麗華の迫力に負け、二人は口応えができず互いを見合い渋々承諾した。

 

 

 

「鵺野、お前にはこの結界を張る手伝いを頼む。

 

霊力の強いお前だ。強力な結界ができる」

 

「分かった」

 

 

郷子達が、校舎の中へと入ったのを確認すると、三人はそれぞれの位置へ着いた。それを見守るかのように、屋上から麗華達を見る焔と渚……

 

 

息を吐き、三人は手を合わせた。すると、三人が立っている場から風が起き、周りを光で包みだした。

 

 

 

そんな光を、遠くの木の上から見る鎌鬼……

 

 

(あぁ……見つけた。

 

麗華)

 

 

 

光は消え、学校全体に何かが覆い被さったかの様になった。ぬ~べ~は手を放し、学校に張られた結界を見上げた。

 

 

「凄いな、この結界……」

 

「強力な霊力を持った妖怪を、閉じ込める際に使う特別な結界だ。

 

先代達は、この結界を張って妖怪達と闘ってきたんだとさ」

 

「そうなのか……?!」

 

 

校庭へ入ってきた一つの黒い影……

 

 

「来た……」

 

 

地面に刺していた薙刀と剣を構える龍二と麗華……ぬ~べ~は鬼の手を出し、二人に並んで立った。

 

 

その様子を見る郷子達……

 

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「へっちゃらだ!あのぬ~べ~と陰陽師兄妹だぜ?」

 

「最強チームじゃねぇか!」

 

 

興奮する三人に対して、郷子はただ不安げな表情で校庭を観た。

 

 

 

 

三人に近付いて来る鎌鬼……

 

 

「いやぁ麗華……またここに来るとはね」

 

「入ってきてくれて、どうもありがとう」

 

「歓迎してくれるのかい?嬉しいなぁ……

 

でも、君にはここで死んでもらうよ。

 

 

これは、定めだからね」

 

 

一瞬で麗華に近付いた鎌鬼は、手に持っていた鎌を振り下ろした。振り下ろしてきた鎌を麗華は薙刀で受け止め、その隙にぬ~べ~と龍二が攻撃してきた。

 

二人の攻撃を、鎌鬼は彼女から鎌を放し、二人に向かって振り回した。龍二は持っていた剣でその攻撃を防ぎ、ぬ~べ~は間一髪避けた。

 

 

「君は、また殺られたいのかい?」

 

「次は殺られねぇ!」

 

「いい目付きだねぇ……

 

あの時とは比べ物にならないくらい、成長したみたいだね。龍二」

 

「気安く、俺の名を呼ぶな!」

 

「おぉ。怖い。

 

 

ま、君は麗華を殺した後に、殺してあげるよ。

 

そうすれば、仲良くあの世で家族と一緒に過ごせるだろ?」

 

「生憎、俺はまだ死ぬ気はねぇ。もちろん麗華もだ」

 

「へぇ……そうかい」

 

 

鎌鬼が一歩踏み出した時……

 

突然地面が光り、鎌鬼の体に光る呪印の触手が絡みついた。

 

 

「よし!!

 

麗華!!鵺野!!」

 

 

龍二の掛け声と共に、それぞれの位置に着く二人……

 

麗華は懐から一枚の紙を取り出した。息を整えながら、その紙に自分の髪の毛を結び、露出していた腕を薙刀で軽く斬り、血を流しその地を紙に触れさせた。紙は麗華の血に反応し、煙を出しその中から弓と矢が出てきた。矢の箆にはお経であろう文字が、びっしりと書かれていた。

 

 

「兄貴、準備できた!」

 

「了解!」

 

 

鎌鬼から離れた龍二は、既に構えていたぬ~べ~に合図を送った。ぬ~べ~は印を結び、お経を唱え始めた。それに合わせるかのようにして、龍二もお経を唱え始めた。すると、鎌鬼の体に絡みついていた呪印が強まり彼の体は麗華の方へと向かれた。

 

 

弦に矢筈を嵌め、狙いを定めたかのようにして、弓を引く麗華……

 

 

(これで……終わりだ)

 

 

弦を放そうとした時だった……

 

突然、鎌鬼から黒いオーラが放たれ、体に絡んでいた触手は光の粒となり消えた。それと共に、彼は黒いオーラを全開にしたかのように、波動を起こした。

 

 

波動から起きた風で、ぬ~べ~達は吹き飛ばされてしまい、更にその波動は鎌鬼が振り回す鎌により、鎌鼬のような風となり三人の体を傷つけた。

 

 

「?!」

 

「麗!!」

「龍!!」

 

 

人から狼の姿へとなった渚と焔は、光のスピードで屋上から飛び降り、二人の元へと急いだ。

 

 

鎌鬼は次第に黒いオーラを抑え、飛び散った三人を眺めながら笑みを溢し言った。

 

 

「まだ、分からないみたいだね。

 

君達に、僕は倒せない……

 

 

でも喜んで……

 

この手で僕が、君達……いや、この世にいる者全てを殺してやるから」

 

 

倒れていた麗華と龍二は、体に出来た傷を押えながらゆっくりと体を起こした。その傍へ駆けつけてくる焔と渚……

 

 

「君達は、邪魔なんだよ……」

 

 

渚と焔目掛けて、鎌鬼は鎌を振り回し鎌鼬を放った。その風を受けた焔達は、傷を負い木にぶつかり倒れた。

 

 

「焔!!」

「渚!!」

 

 

焔の元へと行こうと、麗華は立ち上がった。その時目の前へ寄ってきた鎌鬼は、彼女の腕を掴みその行為を阻止した。

 

 

「麗華……

 

 

これで、やっと殺せる」

 

「何が殺せるだ……

 

 

私を見つけるまでの間、どれだけの人を殺した!?

 

私だけを狙えばいいものを、何で他の人達まで!?」

 

「霊力を戻すには、人の魂を食らい、その魂に宿っている霊気を奪う必要があったんだ。

 

輝二は、僕の霊力を自分の身体へと封印して死んだ。元の霊力を戻すには、人を殺す他なかったんだよ」

 

「じゃあ、諦めればよかったじゃない!!」

 

「諦める……

 

 

嫌だね…

 

 

僕は……僕は」

 

 

麗華の腕を掴む鎌鬼の手が震え出し、次第に力が強くなっていった。

 

 

(な、何?!この力)

 

「あの時僕を虐めて、のうのうと生きている奴等に復讐を誓った!!そして、助けを求めていた僕に、気付いてくれなかったこの世全ての人にも、復讐を誓った!!

 

だから、諦めることはできないんだよ!!

 

 

この地から、神様が僕の為に与えてくれた力!!だから、この世にいる者全員を殺すのが、僕の役目!!」

 

「鎌鬼……」

 

「だから!!」

 

 

掴んでいた腕を両手で掴んだ鎌鬼は、麗華を地面へ倒した。抵抗することができなかった彼女は、そのまま地面へ倒れすぐに起き上ろうとしたが、鎌鬼は彼女の上に跨り笑みを溢した。

 

 

「君を殺した後は、さっきも言ったように龍二を殺す!そうすれば、寂しくないだろ?」

 

「麗華!!」

「麗!!」

 

「ほら、聞こえるかい?

 

君の名を呼ぶ声が」

 

「……」

 

「じゃあ、死んでもらうよ」

 

 

鎌を振り上げる鎌鬼……

 

 

(なす術無しか……

 

 

ごめん……皆)

 

 

目を閉じ、死を覚悟した麗華……

 

 

「死ねぇぇええ!!」




“バーン”

一筋の光が、結界を破り中へと入った来た。その光は麗華に当たり、光を嫌ったのか鎌鬼は彼女から離れ、左腕を押えながら息を切らしていた。

光は次第に、人の形へとなりその姿を現した。


(まさか……)

(こんなのって……)


その姿を見た龍二と渚は、驚きの顔を隠せないでいた。渚は口に手を当て、泣き出そうとする声を抑えた。


固く眼を閉じていた麗華は、自分に何が起きたのか分からず眩しく光っている光景が気になり、ゆっくりとその眼を開いた。

自分の前に立つ一人の男性……白い単の上から青い狩衣を着、手には槍を持っていた。髪は自分と同じ紺色の髪を、耳下で束ねていた。その男性の傍に、立つ白い毛並みに赤い目を持った一匹の狼……


「大丈夫か?


麗華」


男は振り返り、麗華を見た。その顔を見た瞬間、麗華はやっとの思いで口を動かしたかのように、声を出した。


「と……父さん?」

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