地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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休み時間……


「ぬ~べ~!頼まれてたもの、持ってきたわよぉ!」


クラスで集めたであろうノートを、郷子は広と一緒に職員室へと運んできた。ぬ~べ~は、山積みになっている資料から、顔を出し答えた。


「あぁ!そこに置いといてくれ!ありがとな……って、おわあぁ!!」


指を差そうと、腕を伸ばしたとき山積みになっていた資料が崩れ落ちてしまった。


「あ~もう!何やってんのよ!」

「少しは片付けろよな!」

「うるさい!」

「全く……?」


崩れ落ちた資料の中から、郷子は一枚の紙を見つけ手に取った。それは麗華の写真が貼られた環境調査書であった。


「?どうしたんだ?郷子?」

「これ、麗華の調査書よね?」

「あぁ。みてぇだな。

え~っと、誕生日は……七月七日……


え?!」

「れ、麗華の誕生日って、七月七日なの?!」

「うわぁ…合わねぇ…」

「コラ!

でもこれが本当なら来週じゃん、麗華の誕生日」

「そうだよな。

けどさ、アイツ七日は家の用事があるとか言ってたじゃねぇか」

「まさか、お兄さんと二人っきりで、誕生日を祝うとか?」

「ないない!

アイツ、そんなガラじゃねぇし!」

「だよねぇ!」


「コラ!!他人の調査書、勝手に見るな!!」


郷子が持っていた調査書をぬ~べ~は取り上げ、二人の頭に拳骨を食らわせた。


「痛った~い!!」

「何も、殴ることねぇだろ?!」

「当然だ!人様の情報を読むなんて、失礼にもほどがあるぞ!!」

「だったら、ちゃんと整理しろよな!!」

「だから、今してるでしょうが!!」

「ねぇ、ぬ~べ~は知ってる?」

「何をだ?」

「七月七日に、麗華が学校休むってこと」

「あぁ。それがどうかしたか?」

「何で休むの?麗華からは、家の用事だって聞いてるけど……」

「ならそれでいい。

お前等がそれ以上詳しく知る必要はない」

「えぇ?!」

「えぇ、じゃない!!

ほら、早く教室戻れ!!」


捜し物

放課後……

 

 

雨が降る道を麗華は、郷子達と一緒に帰っていた。だが彼女は今朝の事を気にしてか、落ち着きがない様子で、辺りを警戒していた。その様子に隣を歩いていた郷子は、前を歩く三人に聞こえないように、小声で声をかけた。

 

 

「大丈夫?」

 

「え?」

 

「何か、ずっと落ち着きがないっていうか……

 

また、喘息?」

 

「ち、違うよ。

 

ちょっと、考えことしてただけ」

 

「ならいいけど……」

 

「気にしなくてもいいよ。

 

平気だから」

 

 

作り笑いを浮かべる麗華……

 

そんな彼女に、郷子は不安と心配で心の中が渦巻いていた。

 

 

土手の階段を上った時だった……広達の前に、あの黒いマントの男が現れたのは。

 

 

「?!」

 

「き、昨日の殺人鬼!!」

 

 

逃げようとするが、広達は恐怖のあまり足が竦んでしまい、逃げられなかった。男は血塗れになっていた口元を、舌で拭うと広達の間を通り、後ろにいた麗華の前に立った。

 

 

「やぁ。また君に会えるとはね……」

 

「……」

 

「君は無口なんだねぇ……

 

輝二とそっくりだ……」

 

「麗華から、離れろ!!」

 

 

後ろにいた広が、意思を男に向けて投げその隙に美樹と郷子が麗華の元へと駆け付け、その場から離した。三人の前に立ち広は石を、克也は傘を広げた状態で構えた。

 

すると男は、広達を見て笑みを溢しながら言った。

 

 

「君の名前は、麗華っていうのかい?」

 

「……だから何?」

 

「そうか……

 

 

君が、輝二の子供だったのか……

 

だから、彼と同じ髪の色をしていたのかぁ……」

 

 

不敵に笑みを溢し、広達に近付く男……

 

男はマントの中から、鎌を取りだし笑みを溢しながら広達目掛けて鎌を振りかざした。

 

 

「君達は邪魔なんだよぉ!!」

 

「キャァアア!!」

 

 

振り下ろしてきた瞬間、目の前にいたはずの広達が突然と姿を消し、代わりに白衣観音経が男に絡み動きを封じてきた。

 

 

広達は、男から離れた場所で下され、助けてくれたであろ後ろにいた者を観た。広達を助けたのは、焔だった。

 

 

「焔!!」

 

「麗、悪い!

 

身を案じて、やっぱり今朝の事あの教師に」

 

 

広達の前にいたのは、お経を唱えるぬ~べ~の姿があった。

 

 

「ぬ、ぬ~べ~!!」

 

「全く…襲われたんなら、早く言わなきゃダメじゃないか!!麗華!!」

 

「ハハ…どうもすんません」

 

 

引き攣った顔で謝る麗華に、ぬ~べ~は呆れてため息を吐いた。

 

 

「こんなもので、この僕を抑えられるとでも思っているのかい?」

 

 

その声と共に、男は体に絡んでいた白衣観音経を解いた。解いた男は、顔を上げ麗華に向かって微笑んだ。

 

 

「麗華……

 

君が輝二の子供なら、そこにいる焔は迦楼羅の子供だね?」

 

「だから、何でテメェは父上の事を知ってんだ!?」

 

「そりゃあそうだよ……僕はあの日にいたんだんだから……

 

 

その二人は君達が生まれてくる前に、この僕が殺したのだからね」

 

「?!」

 

「さぁ、始めよう……

 

 

十年前の続きを!!」

 

 

一瞬のスピードで、麗華の前へと降り立った男は鎌を振り下ろしてきた。瞬時に彼女は、その攻撃を避けポーチから一枚の紙を取り出し、自分の血を触れさせ薙刀を取り出した。

 

 

「麗華!!」

 

「はぁ…はぁ…はぁ」

 

 

間一髪広達を、ぬ~べ~の元へと連れてきた焔……

 

焔の腕には、振り下ろしてきた男の鎌が掠り、血を流していた。郷子と美樹は焔の元へ行き、広と克也はぬ~べ~に駆け寄りながら、男と二人っきりになってしまった麗華の名を呼んだ。彼女は息を切らし、薙刀を構えた状態で男を睨んでいた。

 

 

「麗!!」

 

 

郷子達から離れた焔は、危険を察してか麗華の所へと駆け寄った。そんな焔を、男は彼女に向かって笑みを溢すと、麗華の前からいなくなり一瞬で焔の後ろへ回り鎌を振り下ろした。

 

 

「焔!!後ろ!!」

 

 

麗華に言われ焔は、後ろを振り返り下ろしてきた鎌を飛び上がり避け、麗華の前に着地したが、胸を斬られたのかそこから血を流し痛みから地面に膝を着いた。

 

 

「焔!!」

 

 

呼び叫びながら、麗華は焔の元へと駆け寄った。そんな光景を見る男を、後ろからぬ~べ~は鬼の手を出し、攻撃してきた。だがその鬼の手を男は、マントから出した片手で受け止めゆっくりと、振り返り彼を見た。

 

 

「君は、鬼の主かい?」

 

「?!」

 

「実はね……

 

僕も鬼なんだよ?」

 

 

笑みを溢し、受け止めた鬼の手を鎌で切り裂いた。鬼の手は血を噴出し、激痛からぬ~べ~は声を上げて、鬼の手を押えその場に蹲ってしまった

 

 

「ぬ~べ~!!」

「鵺野!!」

 

 

蹲ったぬ~べ~の元へと、郷子達は慌てて駆け寄った。男は振り返り麗華を見た。彼女は息を整えながら、焔の前に立ち薙刀を構えた。

 

 

「輝二は槍だったけど、君は薙刀なのか……

 

やっぱり親子だね」

 

「うるさい……」

 

「そう言う戦いの目付き……

 

 

輝二とそっくりだね」

 

「黙れ!!」

 

「?!」

 

 

薙刀を振り上げた瞬間、麗華は突然胸を掴みながら膝を付き咳き込んでしまった。

 

 

「麗!!」

 

 

咳き込む麗華に、焔は駆け寄った。そんな二人の前に男は立ち、鎌を振り上げた。

 

 

「さぁ、死んでもらうよ!!麗華!!」

 

 

鎌を振り下ろす男……その攻撃から庇おうと、焔は麗華の上を覆った。

 

 

その時、麗華の首から下がっていた勾玉が突然光り出した。その光を嫌うかのようにして、男は振り下ろした鎌を地面へ落し、手で目を塞ぎながらその場から姿を消した。

 

しばらくして、その光は消え焔は顔を上げ男を探すかのようにして見回した。

 

 

(た、助かったのか…)

 

「な、何?今の光」

 

 

ぬ~べ~の傍にいた郷子達は起き上がり、辺りを見回しながら立ち上がった。ぬ~べ~は鬼の手にできた傷口がようやく塞ぎ、彼等と一緒に立ち上がった。

 

 

「あの光のおかげで、さっきの殺人鬼いなくなったみたいだな……」

 

「……」

 

「麗!!しっかりしろ!!麗!!」

 

 

麗華の名をび叫ぶ焔……

 

彼女の方を振り向くと、息苦しそうに息をしながらその場に倒れていた。

 

 

「麗華!!」

 

「ぬ…鵺ゲホゲホゲホゲホゲホ!!」

 

「喘息が、酷くなってんだ……

 

急いで病院へ連れて行くぞ!!」

 

「うん!!」

 

 

麗華を抱き上げ、ぬ~べ~達は病院へと向かった。焔は狼へと姿を変え、龍二達に知らせようと、彼等の元へと急いだ。




どこかの電信柱に手を着き、息を整える男……


(輝二……あの光は、何だい?)


高笑いをした男の声に反応してか、雷が鳴り響いた。

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