地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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桜雅の過去を聞いた龍二達……


皐月丸の住家

「……

 

 

以上、これが俺の過去だ」

 

「……そんな過去が、あったとは」

 

「……?

 

ちょっと待て、お前の過去は分かったけど、皐月丸とはどういった関係なんだ?

 

 

さっきの話を聞いた限り、皐月丸なんて出来なかったぜ?」

 

「そう言えば、そうよね。

 

ねぇ、どういうこと?桜雅さん」

 

 

話を聞いていた二人は、いつの間にか手に持っていた煙管に火玉を入れている桜雅に質問した。桜雅は煙管を銜えながら口を開いた。

 

 

「皐月丸は、その城に仕えていた頃の同期だ。

 

だがアイツは、戦で見かけたのを最期に、会うことは無かった」

 

「だから、古い知り合いなのね」

 

「そうだ」

 

「けど、知り合いで同期なら、どうしてお前を恨むんだ?」

 

「……」

 

「焔達から聞いた話じゃ、力は圧倒的だ。

 

 

丙はともかく、焔は白狼一族の者で火の使い。氷鸞は山の神。雷光は島の神。

 

さらに、猿猴達はこの山の主だ。

 

 

そんな奴等が、簡単に倒されたってことは、相当な恨みを持っていることになる」

 

「……

 

その事は、俺にも分からない。

 

 

何も、心当たりが無いのだ」

 

「えぇ?!」

 

「じゃ、じゃあ麗華はどうなるの?!」

 

「恨みの理由が、本人が分かんなきゃ、麗華は一体何のために魂を抜き取られたが分かんねぇじゃん?!」

 

 

「だったら、その皐月丸の住家を探し出すまでだ!」

 

 

その声がした方に振り向くと、そこには包帯を巻いた焔と氷鸞、雷光が人の姿へとなり、起き上がっていた。

 

 

「お前等!しばらくは安静に」

「主が大変な時に、寝てなどいられるか!」

 

「魂を取られたのは、私達にも責任がある!」

 

「お前等……」

 

「……

 

 

さすが、桜巫女ですな?

 

ここまで信頼されているのは、桜巫女の妖怪達に対する優しさからだろうな」

 

「桜雅……」

 

「俺は、先代の桜巫女に恩がある。

 

皐月丸の住家を探そう、神主」

 

「え?!」

 

「俺達も手伝うぜ!お兄さん!」

 

「クラスの仲間が大変な時に、ジッとなんかしていられないわ!」

 

「生徒を守るのが、教師の役目だ!」

 

「龍、俺達にも探させてくれ!」

 

「龍殿!」

 

「龍様!」

 

 

皆の麗華に対する思いを聞いた龍二は、キョトンとした顔を浮かべていたが、一瞬で真剣な顔をしながら郷子達を見た。

 

 

「命の保証はない。それでもやるか?」

 

 

その言葉を聞いた郷子達は、互いの顔を見合わせ、そして龍二に向かって迷いなく頷いた。

 

返事を聞いた龍二は、真剣な表情で薄く笑い、全員を見回した。

 

 

「それじゃあ、早速明日か捜索を始める。氷鸞と雷光、桜雅と雛菊はこの神社を中心にした周囲の森や廃墟、社を探してくれ。

 

俺と渚は、祠を探す」

 

「祠?」

 

「皐月丸は、昔親父が退治した妖怪だ。どこかに皐月丸を封印した祠があるはずだ。

 

 

俺は、朝から探しに行く。

 

お前等三人は、学校終わってから俺達二人と同じように、祠を探してくれ」

 

「分かった」

「分かった」

「分かった」

 

「おい龍、俺はどうすればいいんだよ?」

 

「お前は、怪我が酷過ぎる。

 

ここで、丙と一緒に麗華の傍にいろ」

 

「けど!」

 

「主から離れない……

 

それが、私達白狼一族と陰陽師家にかわされた契約でしょ?焔」

 

「……

 

分かったよ」

 

「任せな焔!」

 

「某達が、すぐに住家を探し出してやるから!」

 

「そう言うお前等が、心配なんだよ」

 

「それは、どういう意味だ?」

 

「自分で考えろ」

 

「しかし龍様、焔に任せるより、この拙者が麗様の御傍についていた方が、よっぽど安全なのでは?」

 

「氷鸞!どういう意味だ!!」

 

「力の差ですよ?何か間違っていますか?」

 

「もういっぺん、言ってみろ!このアホ鳥!」

 

「えぇ、言いますとも負け犬さん?」

 

「だったら、ここで力の差とやらを試すか?」

 

「構いませんよ?どうせ、あなたが負けるのですから」

 

 

互いに睨み合う二人は、いつでも攻撃を出来る様に構えていた。そんな二人を見た龍二は慌てて、二人の間に割り込んだ。

 

 

「辞めろ!!こんな時、喧嘩は!」

 

「こいつが俺を侮辱するからだ!!龍は引っ込んでろ!」

 

「事実を言ったまでです。何かご不満でも?」

 

「この野郎!!許さねぇ!!

 

 

火術!火炎」

「水術!水鉄」

 

 

技を放とうとした時、二人の頭を誰かが殴り、その反動で技が消え二人は頭を抑えながら、その場に座り込んだ。

 

 

「こんな一大事に、喧嘩するとはいい度胸してるじゃない?焔、氷鸞」

 

 

聞き覚えのある声に、二人は体をビクつかせ恐る恐る後ろを振り向いた。

 

 

そこには、フラフラな足取りでどこからか持ってきた竹刀を肩に乗せて持つ麗華の姿があった。

 

 

「れ、麗」

「れ、麗様」

 

「しばらく、喧嘩してなかったから、ようやく仲良くなったかと思ってたけど、そうじゃないみたいだね?」

 

「このアホ鳥が!!」

 

「違う!この負け犬が!」

 

「いい加減にしろ!!」

 

「!!」

「!!」

 

「ったく……

 

只でさえ、体動かすのきついんだから、こんな時に喧嘩はやめろ」

 

「……はい」

「……はい」

 

「す、すげぇ……」

 

「麗華相手だと、あの二人も手が出せなくなっちゃうんだ……」

 

「それほど、麗華を信用し、主と認めているからだろう……」




その光景を、部屋の天井の隅から見つめる一つの目……


その目を通して、どこかから手に持っている水晶から見る皐月丸……


「……


まさか、魂の一部を霊体化していたとは、驚きです」


後ろに生えている樹の幹に、根で縛られている半透明の麗華に、皐月丸は話しかけた。半透明になっている彼女は、皐月丸の言葉に反応し、顔を上げて皐月丸を睨んだ。


「兄貴に聞いた事がある……

私が生まれる前、父さんがお前をどこかに封じたって……それがまさか、童守町から離れたこの洞窟だったとはね……」

「あの神主が、分かればよいのですがねぇ……

見ている限り、ここを捜すかどうかは分かりません」

「?それって……」

「この洞窟に拙僧を封じたのは事実……

しかし、先代の神主はここに魂を封じ、体をこの地のある山に封じた」

「それを兄貴は知らないってわけ?」

「そうなります」

「……」

「言っときますが、ここからあなたの本体に今の事を伝えるのは不可能です。

この洞窟には、結界が張っておりあなたの意識を伝えるのを防ぎます」

「完璧な拉致ってことか」

「人間の世界では、そうなりますね」

「ムカつく妖怪だ」

「それはどうも。

(さぁ桜雅……

あなたは、どうやって大切なものを取り返しますか……)」

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