地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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「皆!!大変よ!!郷子ちゃんが、送らずの桜の中に!!」

「何!?」

「郷子ちゃんが?!」


法子に呼ばれたクラス一同は、彼女に続いて桜の木の元へと急いだ。


木の前で狼狽える麗華とぬ~べ~……


「魂が完全に木と繋がっている……」

「無理に引き剝がせば、稲葉は死ぬ」

「ぬ~べ~!!麗華!!郷子を助けてくれ!!」

「この木に宿るのは、強い団結力で繋がった、五年生のクラス四十人の集合霊だ!」

「一人一人の霊はそんなに強くないけど……心のきずなで、何条にも力が上がってる。外から除霊するの無理」

「外から無理なら、中に入ったら?」

「そうだ!鬼の手で、俺達の魂を木の中に入れてくれ!俺達が助け出す!」

「ダメだ!!そんな危険な事はさせられない!」

「ええい!まどろっこしい!!」

「え」

「ぬ~べ~、麗華!

私等が、死なないように見張っててよ!!」

「ちょっと!」


地面に転がっていた彫刻刀も拾い、広達は自身の名前を木に彫った。


「アンタ等!……ったく。

焔、アンタはここで待機!」

「え?!麗!!」


ポーチから小太刀を取り出し、麗華は木の幹に自身の名前を彫った。


「これで、帰の中に入れる……後は頼んだぜ、ぬ~べ~」


木の幹の中から、根が伸び彼等に巻き付いた。


クラスの絆

暗い廊下……その中を、郷子は走っていた。

 

 

「私……間違っていたわ!こんなの、偽物の世界よ!

 

外に出なくちゃ……皆のいる、本当の世界へ」

 

「ヒッヒッヒ!そうはさせないよ」

 

「お前はもう、この世界の住人に決定なんだよ」

 

「キャア!!」

 

 

人の姿をした木が郷子を囲う様にして伸び立った。

 

 

「嫌ぁあ!!」

 

「ここは止まった時の世界……卒業も進級もしない。

 

楽しかった時間を、永遠に繰り返すの。

 

 

アナタもそれを望んだのでしょう?だから私達は、もう仲間よ……さぁ、融合して一つになるのよ」

 

「そうだ……桜の言う通りだ」

 

「さすが、学級委員。良い事言うね」

 

「嫌よ!!私はアンタ達の仲間になんか、ならない!!

 

私の仲間は五年三組、ぬ~べ~クラスよ!!この一年間を一緒に過ごして、一緒に成長してきたわ!!

 

私は皆の所に帰るの!!止まった時間(とき)の世界になんか、住みたくない!!」

 

「ククク……その後年三組の連中は、クラス替えを寂しいとも思わない薄情者じゃないか!

 

そんな奴等の事は忘れなよ……私達が仲間になってあげる。新しい五年三組に」

 

 

「待て!!」

 

 

突然背後から声が聞こえ、桜と郷子は声がした方を向いた。そこには広を先頭に五年三組全員が立ち構えていた。

 

 

「俺達が……五年三組だ!!」

 

「広!!美樹!!皆!!」

 

「な……ど……どうやって、ここに!?」

 

「俺達はクラスの仲間を見捨てない……命を懸けてもな!」

 

「そうか……全員で、名前を彫って木の中に入ってきたわけね。

 

フン!何が仲間よ。クラス替えで、バラバラになるのを何とも思わないくせに……そんなクラス、私達の敵じゃないわ!死ね!!」

 

 

桜は自身の手の音を鋭く尖らせ、広達に攻撃をしてきた。その瞬間、麗華と後から駆けつけてきたぬ~べ~が、その攻撃を防いだ。

 

 

「全く、無茶な事をする……戻れなくなったら、どうする気だ」

 

「ぬ~べ~!!」

 

「来てくれたんだね!」

 

「当たり前だ!お前達だけ、危険な目に合わせられるか」

 

「遅れてくる何とやらね」

 

「まぁな!

 

 

 

 

桜といったな……郷子はこの子達の、とても大切な仲間なんだ。今からそれを見せてやる。

 

さあ、皆!俺達の一年間を見せてやろう」

 

「ここは魂の世界だ。念じれば、相手に伝わる」

 

(思い出そう)

 

(俺達の……一年を)

 

 

目を閉じ、思い出を引っ張り出す広達……すると彼等の背後から、走馬灯の様に映像が流れてきた。

 

 

転校してきた広と麗華……

 

忘れん坊のまこと……

 

仲の良い美樹と郷子……

 

影では優しい妹想いの克也……

 

騎座でウザいが、オカルトに関しては熱心の秀一……

 

 

『お前達は最高の生徒だ』

 

 

思い出を一つ一つ思い出した広達は、知らぬ間に眼から涙を流していた。彼等に釣られて、桜も目から涙を流しそして口を開いた。

 

 

「こんな……こんな暖かくて楽しくて皆が思いやっているクラスがあるなんて……

 

伝わってくる……この子達、本当に五年三組を愛してる。

 

 

だがそれならなぜ、クラス替えを悲しまないの!?なぜ私達の様に、ずっと一緒にいたいと思わないの?」

 

「それはな、俺達五年三組の友情が、クラス替えくらいじゃなくならないって信じているからさ!」

 

「クラスが変わっても、学校が変わっても、ずっとずっと友達でいられるって信じてるから」

 

「そういう友情を……俺達五年三組は、一年かけて築き上げたんだ」

 

 

皆の言葉を聞く桜……すると、郷子を縛っていた木の根が緩み彼女を離した。郷子はすぐに皆の元へ駆け寄り、広に抱き着いた。

 

 

「……本当に、素晴らしいクラスだったのね。そこまで深くお互いを信じあえるなんて。

 

私達はきっと、臆病だっただけ。居心地のいい時間を失うのが怖くて逃げていただけ。

 

 

私達もそろそろ……進級します……

 

 

さようなら」

 

 

そう言い、桜は向こうで待っているクラスメイトと先生の元へと帰って行った。




意識を戻す広達……目覚めた場所はあの咲かない桜の木の下だった。


「皆、無事か?!」

「大丈夫!全員、生き返ったわ!!」


「麗ぃ!!」


木の傍で待っていた焔は、人の姿のまま麗華に抱き着き、彼の肩に乗っていたシガンは彼女の肩へと飛び移り頬擦りした。


「郷子!」


広の隣りにいた郷子は、ぬ~べ~を見ると彼に飛び付いた。


「ぬ~べ~!!

私、分かったよ!!この一年間の事は、かけがえのない宝物なんだって!


ずっとずっと心の中で、大切にするものなんだって……」


喜ぶ一同……ふと上を見上げると、風に乗って桜の花びらが舞った。


「ああ!」

「わあ!」

「咲かない桜が……」


振り返り桜を見ると、あの咲かない桜の木が綺麗なピンク色の花を咲かしていた。


「綺麗……」

「止まっていた時間(とき)が動いた……あの子達が成仏したんだ」

「俺達も進級だな」

「でも、五年三組は永遠よ!」

「そうだな」

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