地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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火に包まれた街を、上空からヘリコプターが飛び、中ではカメラマンとリポーターが状況を伝えていた。


「非常事態!!童守町郊外の山中に、巨大怪獣出現!!市街を攻撃中!!」


火に包まれた街付近に住む住人は、慌ててその場から逃げだし、そんな住民たちを警察は誘導していた。


「慌てないで!落ち着いてください!」


そんな中、玉藻(京太)とぬ~べ~(明)と麗華(司)は辺りを気にしながら、物家の空になった病院へ行き元の体へと戻った。


「戻ったはいいが、問題はこれからだ……」

「アイツをどうするか……」

「凄い破壊力……京都にいた大蛇より、かなり強力だ」

「まるで、怪獣映画を見ている様だ……馬鹿げている。こんなものが世界を滅ぼすとは……

鵺野先生、あれはもはや妖怪などではない。この世の終わりを告げる天変地異だ……我々に勝ち目はない」

「分かっている……しかし……

それでも、あの子達は命懸けで戦ったんだ……生徒達が命をかけて守ろうとしたものを……この俺がこの手で守って見せる」


そう言うと、ぬ~べ~は鬼の手を出し病院を出ようとした時、天井から突如光線が落ち彼を攻撃した。ボロボロになったぬ~べ~の元へ、玉藻は駆けより支えた。


「桁が違い過ぎる……終わりだ」

「終わりかどうかは……こっちが決めることだ」

「麗華?」

「氷鸞!!雷光!!」


二匹を紙から出し、それと同時に彼女の傍へ牛鬼達が降り立った。


「お前等……」

「やはりここにいたか……」

「ショウと瞬火、氷鸞は兄貴達の所へ行って!

牛鬼と安土と時雨、雷光は大蛇に攻撃!」

「了解!」
「承知!」


麗華の命に、ショウと瞬火は猫の姿へとなり氷鸞は巨鳥の姿へとなり、彼の背にショウ達は乗りそれを知ると氷鸞は翼は羽ばたかせ飛んで行った。牛鬼達はそれぞれの技で大蛇を攻撃し、麗華は狼姿になった焔の背に飛び乗り、紙を出した。


「大地の神に次ぐ!汝の力、我に受け渡せ!!

いでよ!火之迦具土神!!」



麗華が持つ紙が赤く光り出した。そして紙は炎を作り出し、目の前にいる妖怪を攻撃した。その炎を援護するかのように、焔は口から炎を放った。炎は巨大化し大蛇を頭へ当たった。大蛇は悲鳴を上げると、焔から離れていた麗華目掛けて光線を放った。


「麗!!」
「麗殿!!」
「麗華!!」


焔は人の姿へとなり、彼女を庇うようにして抱きその二人の前に、雷光と牛鬼が立ちそれぞれの技を攻撃した……だが、二人の攻撃はあっけなく跳ね返され四人はそのまま攻撃を喰らってしまった。


「兄貴!!麗華!!」
「お嬢!!」


雷光達はボロボロの姿で宙に浮き、二人はすぐに彼等の元へ駆け寄った。


「兄貴!!」

「あ……安土」

「兄貴……」

「大丈夫か……お前等」


時雨を見たら以降は、力なく彼に寄り掛かるように倒れ、麗華を抱いた焔は彼女を抱いたまま、下へと降りて行った。焔に続いて安土達も地面へと降りて行った。


「麗華!!」
「麗華君!!」


ぬ~べ~と玉藻は降りてきた彼等の元へと駆け寄り、雷光達を支え下ろし座らせた。焔に抱かれていた麗華は、焔を見上げ焔は無事だった彼女の姿を見ると、安心したかのようにして笑みを浮かべそのまま麗華に寄り掛かる様にして倒れてしまった。


「焔ぁ!!」

「け……桁が違い……過ぎる」

「牛鬼……(やっぱり、あの最終手段を使うしか……

立野…稲葉……皆、頼む!)」


最後の言葉

館内で、機会を弄る久作……

 

 

「ば、馬鹿な……おかしい……変だ……

 

 

大蛇の制御ができない……古文書では大蛇は製造者の意のままに操れ……妻を生き返らせることもできるはず」

 

「無駄です」

 

「恵子……」

 

「あれはあなたの、狂気の心を反映した化け物……

 

制御などできるはずがありません」

 

「ば…馬鹿を言うな!!あれは……私達を救ってくれる唯一の……!!」

 

 

その時、天井が崩れ瓦礫が久作の頭へと落ち彼は下敷きになってしまった。

 

 

「あなた!!」

 

「……これまでか……

 

しかし復讐は果たすぞ……世界に……破滅を」

 

「可哀想なあなた……もうこれ以上、罪を重ねるのはやめて……

 

大丈夫……あの子達が止めてくれる」

 

 

久作はふと前を見ると、設置されていた石の真ん中に広達が円を囲むようにして手を繋ぎ立っていた。

 

 

「あのガキ共は……何をしているんだ。逃げたんじゃなかったのか」

 

「あなたを救うための……最後の呪文を唱えようとしているのよ」

 

「ま、まさか……」

 

 

「いいか?」

 

「心を一つに合わせるのよ。そしてあの呪文を叫ぶ」

 

 

「大蛇は悪の救国妖怪……

 

しかし、同じ装置で同じ様に中央に立ち、その名を呼びことで大蛇を滅ぼす……善の究極妖怪を生み出すことが出来る……」

 

「まさか奴等、善の究極妖怪の名を!?」

 

「そう……あの子達は知っている。

 

 

そして、それを使う勇気と正しい心を持っている」

 

 

(これが最後のチャンスだ……)

 

(もう私達しか、童守町を救えない……)

 

(責任重大だぞ……)

 

(守ってみせるのだ……)

 

(やるっきゃない)

 

「いでよ!善の究極妖怪!

 

ケサランパサラン!」

 

 

広達の思いに応えるかのように、石が白く輝きだし大蛇がいる下から白い光が放たれた。その光を、逃げ惑う人々は足を止め見上げた。病院からはぬ~べ~達は空を見上げ、その光を見た。

 

 

「一体、何が……」

 

「悪の究極妖怪が大蛇……

 

そして、善の究極妖怪が……ケサランパサラン」

 

 

大蛇の真上に、巨大なケサランパサランが現れた。ケサランパサランは大蛇を押しつぶすように降り立ち、そして大蛇を倒した。ケサランパサランは大蛇を倒すと共に、粉々にばらついた。

 

 

「超古代文明が作り出した、合成妖怪だったのか……

 

それが現代にも残って、人々に降伏する毛玉として伝えられたのだ」

 

 

ケサランパサランの力か、傷だらけだった焔達は回復し焔は意識を取り戻し起き上がった。起き上がった彼を見た麗華は、安心したかのように目から涙を流し彼に抱き着いた。抱き着いてきた麗華を、焔は笑みを浮かべ強く抱きしめ、彼女の元へ傷が癒えた雷光は寄り、起き上がった牛鬼に安土は笑みを浮かべて抱き着いた。




瓦礫の下敷きになった久作は、目から涙を流していた。


「あたたかい……このあたたかさは……もうとっくに忘れてしまった何か」

「あなた……」


懐かしき声……ふと目を向けると、そこには生前の姿になった妻・恵子の姿があった。


「け、恵子!!ど、どうして!?」

「フフ……あなただって」


彼女の言う通り、久作の姿も大やけどを負う前の姿に戻っていた。


「そうか……これはケサランパサランの力なのだ。

傷を癒してくれたのか……」

「いいえ……ケサランパサランが癒したのは、あなたの心の傷よ」

「……そうか。

思い出したよ、このあたたかさ……


子供の頃、私を愛してくれた父さん…母さん…そして……
恵子、君が傍にいる時に、いつも感じていたあたたかさなんだ。

私は……間違っていた……もう許されないだろう……」

「いいえ……大丈夫よ……

さあ……行きましょう」


ケサランパサランに包まれ、二人は天へと昇って行った。


「成仏していく……ケサランパサランの力が、魂を浄化したんだ」


その声に、広達は後ろを振り向いた。そこには元に戻った晶とぬ~べ~がいた。


「ぬ~べ~!!」
「晶!!」

「よかった……戻って」

「先生!!俺達、一生懸命闘ったぜ!!」

「ああ……知っているよ」

「私なんか、妖怪百匹以上やっつけたわよ!」

「僕なんか、妖怪を家来にしたのだ!!」

「俺なんか、無免でバイク乗った!!」

「ああ……ああ!!知ってるとも!

お前達は最高の生徒達だ!!」


喜びながら、ぬ~べ~は広達を抱き締めた。


「聞いてよ!この古代のお守りが変形してさぁ……あれ?」


美樹がポケットから出したお守りは、皹が入り割れてしまった。それは広達が持っていたお守りをも同じだった。


「それは強力過ぎる。争いの道具だ。

ケサランパサランが壊したんだ」

「ちぇ」

「大丈夫。そんなものなくても、お前達は十分強いさ」

「そういえば、麗華は?」

「アイツは大丈夫だ。

無事を確認したい人がいるんだ」


その頃麗華は、龍二達がいる高校へ行き教室の中へ入った。中では元に戻った龍二達がおり、麗華の姿を見ると、彼の傍にいたシガンは鳴き声を上げ一目散に彼女の肩へと飛び乗り頬擦りした。シガンの頭を一撫ですると、麗華は一目散に龍二に駆け寄り飛び付いた。龍二は飛び付いてきた彼女を受け止め、力強く抱きしめた。


ふと広達は、町を眺めた。町には何事も無かったかのようにして明かりが灯っていた。


「町の灯りも元に戻った」

「ケサランパサランが直したのね」

「また、平和な日常に戻るんだ」

「何だか、とても綺麗」

「お前達が、闘って守った町だ……

さあ、帰ろう」


灯りが灯る町へ、ぬ~べ~達は帰って行った。帰りを待つ家族の元へと……

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