地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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呪いの館・百刻館……

広達がこの館に入ってから、既に八時間が経過していた。


そして今……地下数十メートルに作られた大蛇発生装置のドーム内では、妖怪博士との最後の戦いが繰り広げられている。


復活の大蛇

竜の様な鱗を身にまとった久作は、唸り声をあげ今にも暴れようとしていた。

 

 

「うわあああ!!」

 

「く、くそぉ!!」

 

「そのまま抑えててください!!

 

焔!」

 

「無理だ!これ以上使ったら、お前の霊気が無くなって危険な状態になる!!」

 

「そんな!!(こんな時に、霊気切れかよ……くそ!!)」

 

「陽神君!早く止めを刺して!

 

また、再生してしまうわ!!」

 

 

郷子に言われ、ぬ~べ~(明)は殺生石を玉藻(京太)は首さすまたを構えた。

 

 

「余計な事をするな!!陽神!!

 

テメェの力なんざ、借りるもんか!!」

 

「何言ってんのと馬鹿広!!こいつ倒さないと、大蛇が誕生しちゃうのよ!!」

 

「う、うるせぇ!!」

 

 

その時、久作は郷子を持ち上げた。

 

 

「きゃあああ!!」

 

「郷子!!」

 

「動き出したのだ!!」

 

「広君!!」

 

「ち、畜生!!

 

 

陽神!!南雲!!頼む!!とどめを!!」

 

 

彼の叫び声に、二人は一斉に飛び出し久作目掛けて武器を振り下ろした。

 

 

「最期だ!!妖怪博士!!」

 

 

二人の攻撃をもろに喰らった久作の体の鎧は、粉々に砕かれてしまった。

 

 

「馬鹿な……こんな馬鹿なぁ!!

 

わ、私の超古代兵器が敗れるとはぁ!!」

 

「その兵器は使う者の心を反映するらしいな!」

 

「お前の意志は、俺達より弱かったという事だ!!」

 

 

鎧が壊された久作は、そのまま力なく倒れてしまった。

 

 

「し…死んだのか!?」

 

「いや……気を失っただけだ……」

 

「けどもう、闘う力は残ってないでしょう」

 

「あれだけ大量の妖気を放射能の様に浴びていたのだから……」

 

「か……勝ったのね…私達」

 

「う、うん」

 

「これで家に、帰れる……」

 

 

喜ぶ美樹と克也とまこと……麗華(司)二人の後ろに立ち、地面にいた焔を肩に乗せ彼の頭を撫でた。すると広は前に立ち、ぬ~べ~(明)と玉藻(京太)を睨んだ。

 

 

「フン……良かったな。最後の止めがさせて……」

 

「広!」

 

「また「お前等だけじゃ何もできないだろ」って顔だな」

 

 

その言葉に、三人は互いの顔を見合い、二人の顔を見た麗華(司)笑みを浮かべて頷いた。

 

 

「それは逆だよ……広君。

 

 

君達は凄いよ……今まで馬鹿にして悪かった。君達は勇気と強い心を持ったスーパーチルドレンだよ!

 

ぬ~べ~先生が見ていたら……きっと全員、百点満点をくれると思うよ。

 

 

なぁ、南雲!神原!」

 

「え、えぇ」

 

「当然ですよ」

 

 

睨んでいた広は、彼の言葉を聞くと緩くなり、手を上げた。

 

 

「お前等こそ、凄過ぎだぜ!」

 

 

二人は互いを認め合ったかのようにして、ハイタッチをした。

 

 

「よかったよかった」

 

「仲良くなったのだ!」

 

「そうよねぇ……元後言えば、アンタが両方に気が有る素振りするから仲が悪かったのよねぇ」

 

「おいおい……」

 

 

《大蛇誕生まで、後八分》

 

 

「おっといけない……早く装置を止めなくちゃ……」

 

 

《後七分》

 

 

 

「え?」

 

 

《後六分》

 

 

「何で?」

 

 

《後五分……後四分……

 

最終段階へ入ります》

 

 

「な!速過ぎるぞ!!」

 

「妖怪博士!!」

 

 

機械の方を振り向くと、そこには気を失っていたはずの久作が意識を取り戻し、キーボードを弄っていた。

 

 

「クックックック……油断したな。

 

短縮モードに切り替えて誕生を早めたのさ……

 

 

既に大蛇のエネルギーは、九十パーセント以上まで溜まっている……百パーセントを待たずとも誕生させることはできるのだ……」

 

「何!?」

 

「最早誰にも、大蛇の誕生は止められんぞ!!ハハハハハハ!!」

 

「畜生!!」

 

 

《大蛇誕生まで、後二分……一分》

 

 

天井に浮かんでいた黒い球を止めようとしたが、黒い球は光り出し中から八つの首を持った大蛇が誕生してしまった。

 

 

「きゃー!!」

 

「いかん……天井が崩れ出したぞ!」

 

「ハハハハハ!!何て可愛いんだ!!

 

さあ大蛇よ!!産声を童守町に轟かせろ!!」

 

「生まれちゃった……」

 

「最悪のシナリオだ……」

 

「このままじゃ、瓦礫の下敷きになって生き埋めだ!!

 

この通路から外へ出よう!!」

 

「大蛇はどうするんだ!?」

 

「脱出するのが先よ!!」

 

 

入り口付近へ行き、克也の石の力でバイクを作りその上へ広達は乗った。

 

 

「郷子のバリアで岩を塞ぎながら逃げるんだ!!」

 

「陽神君達は!?」

 

「俺達は別ルートで逃げる!神原来い!」

 

「ハイ!」

 

「待て!どこ行くんだ!」

 

「陽神君!」

 

 

追い駆けようとしたが、三人が入って行った道は瓦礫で塞がれてしまった。

 

 

「よし!今のうちに元の体に戻るぞ!!」

 

「しかし……元に戻ったところで、あの化けものに勝つ見込みは」

 

「ある」

 

「?」

 

「アンタ達が勝てなくとも、こっちは一回大蛇を倒して封印してるんだ。

 

知ってる妖怪達に力借りて、倒せばいい。それにまだ最終手段はある」

 

 

その頃、久作は地下シェルターへ行き妻・恵子の魂と体を出した。

 

 

「おお恵子やったぞ……ついにお前を、生き返らせられる時が来たのだ……

 

長い事、待たせたね。今……楽にしてあげるよ」

 

「あなた……ああ……

 

あの子達の力でも、止めることはできなかったのですね」

 

「ば、馬鹿な!!お前があの子達に古代兵器を与えたのか!?」

 

「そうよ、あなた。

 

あなたは間違っているわ……もう復讐はやめて……一時の憎しみのために、未来永劫、消えない大罪を犯すというの」

 

「クックック……はっはっは」

 

「あなた……」

 

「恵子、お前は優し過ぎて、何も見えていない」

 

「……」

 

「思い出すんだよ……二人で行った南の島のあの夕陽を。

 

思い出すんだ。初めて指輪を渡した二人だけのクリスマス……

 

 

愛しているよ恵子……さあ、今こそ大蛇の力であの時を取り戻そう。そしてそれを奪った奴等に復讐を!!」

 

 

しばらくして、大蛇は館を崩し遂に誕生してしまった。広達は間一髪抜け出すことが出来、彼等は飢えを見上げ大蛇を見た。

 

 

「大蛇……(封印した奴より高い……ヤバい……こんなのが、童守町で暴れたら、京都の二の舞えになる)」

 

 

目覚めた大蛇は、口から町目掛けて光線を放った。町は一瞬で木端微塵になってしまった。

 

 

「町が!!」

 

「こ、これが究極妖怪大蛇……こんなもの倒せる訳が無い!

 

京都で倒したとはいえ、あまりにも違い過ぎる」




大蛇の妖気に、ショウ達は木の上へと登り大蛇の姿を見ていた。


「嘘だろ……」

「こんなのって有りかよ」

「京都で倒したはずの、ウザい妖怪がまさかこの童守町でご対面するとは」

「ありゃ、昔の奴らが妖気を使って作り出した大蛇だな。若干前のウザい奴と比べて霊力が高過ぎる」

「そんなことはどうでもいい……

さっさと、麗華の所に行くぞ!」


傍にいた牛鬼の呼び掛けに、ショウ達は一斉に移動した。

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