地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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水槽を眺める広達……


「酷い怪我……死んでるのかしら?」

「バストは八十五ってとこか」

「あなたは、何を言っているんです?」


水槽の近くには、光を放つ白い玉が置いてあった。


「この玉、何だ!?」

「突いてみるのだ」

「触らないで!!」


光の玉から、突然あの時聞こえた声が聞こえた。


「私は……百鬼恵子(ナキリケイコ)。

妖怪博士……百鬼久作の妻です」

「えぇ!!!?」

「夫が夫なら、妻も妻よねぇ」

「結婚式とか凄かったんでしょうねぇ!」

「そんなはずないじゃないですか!!」

「……あら?」


傍に置いてあった机の上に、写真立てが置いてあり、郷子はそれを手に取り写真を見た。写真には若い男女が映っていた。


「……私達は、童守遺跡の研究をしていた学者夫婦でした。

そして、そこで発見した超古代の装置を学会で発表したのです……


あなた達も見た、あの妖怪を作る装置です……しかし」

「インチキだって言って、他の学者たちはその装置を壊そうとした……それを阻止しようと、妻が入ったがその途端、電気が流れ妻はそれをもろに喰らい、死亡……そんな妻を助けようとした夫も、重傷を負った」

「そうです……

夫は、死んだ私の体を持ち帰り、古代の技術と現代の科学を使って……何とか生き返らせようとしました。

しかし、私の魂はもう、肉体には戻りませんでした」

「当たり前だ。

一度抜けた魂を戻すなど、不可能に近い……」

「そして、夫は変わったのです……」


『フハハハハハ!!見ているがいい!世間の奴等め!!

私は誓う!!例え悪魔に心を売ってもでも、貴様等に復讐し……妻を生き返らせてみせるぞ!!』


「俺から夫は、憑りつかれたかのように、古代の文書を解読を続け、ついに……


超古代文明が生み出した、最強の人造妖怪大蛇。

その圧倒的な、妖怪を使えば妻の私を生き返らせることもできるし……究極の破壊兵器としても使える……
夫は、とうとう大蛇を作り始めました。まず、この館の地下に巨大な大蛇発生装置を作り……

大蛇の核となる、若く新鮮な魂を集めるため、呪いのゲームを作り子供達の魂を奪い始めたの……それが呪いのゲームの正体よ」

「クッ……それで、晶やたくさんの子供達が」

「大蛇の魂を作るための、生贄にされたのね!」

(ついこないだ、その大蛇に殺され掛けて、危うく京都が消えかけたのに……)

(また殺され掛けるのかよ……)

「子供達だけではありません……

もしも大蛇が誕生すれば、その圧倒的な妖力で……日本は三日で廃墟になるでしょう」

「でもさー、オバサン……何で妖怪博士の妻のあんたが、そんなことを教えてくれるんだ?」

「オバ……


あの人を、助けたいの。可哀想なあの人を……


私は、あの人を助けたい……歴史上最大の悪人になってしまう前に……

お願いです……あの人の計画を止めてくれませんか……」

「え……」

「ど、どうやって」

「方法は一つだけ……

悪の妖気の究極の妖怪が大蛇なら、それに対極する正義の究極妖怪がいるのです。


超古代……大蛇を打ち破るために作られた……もう一つの究極妖怪……それをあなた達が作るのです!
難しくはありません。それは夫が地下に作った大蛇発生装置で作れます。あなた達は、装置の上に立ち心を一つにして、究極妖怪生成の呪文を唱えればいいのです」

「よ、よし!それくらいならできそうだ!」

「うん!やるわ!」

(そんな究極妖怪いるなら、私達の時に助けてもらいたかったわ……)

「何て唱えればいいのだ?」

「それが……

夫は、その呪文を書斎の金庫に隠しているのです。書斎は北館の最上階です」

「と、遠いなぁ……」

「けどやりましょう!」

「そうだな!やろう!

それで晶やぬ~べ~、麗華が助かるなら」

「うん!やろうやろう!」

「ありがとう…いい子達。


その机の引き出しに、古代のお守りが入っています。持っていきなさい……きっと約立つはずです」

「へぇ」


机の引き出しを開けると、中には五つの勾玉が入っていた。


「きっと俺達が」

「解決するわ」

「ありがとう!オバサン」

「お、オバ……」


勾玉を個々に持ち、部屋を出て行った。出る前に麗華(司)は、後ろを振り返り稽古の魂を見た。


「……やはり、あなたは」

「もし、究極妖怪が役に立たなかったら、私達が倒してあげる。一度倒したことがあるから」

「お願します……」


笑みを浮かべると、麗華(司)は広達の後を追いかけて行った。


大反撃

「我が計画の邪魔はさせん!!」

 

 

久作は腕から光線をぬ~べ~(明)と玉藻(京太)目掛けて放った。二人は素早く避け、久作の前に立った。

 

 

「ちょこまかと逃げ回っても、もう打つ手はないはずだ。

 

観念しろ」

 

「どうする、陽神君」

 

「うん……

 

神原から、もしもの時にって持たされたものがあるんだ」

 

 

言いながらぬ~べ~(明)は、ポケットから筒を出した。

 

 

「調伏焔(チョウブクノホムラ)。

 

これは炎の神……不動明王の印を込めた火薬で、霊能力者じゃなくても、炎で悪霊を退治できるグッズ」

 

 

説明すると、ぬ~べ~(明)調伏焔を久作目掛けて投げた。すると調伏焔は火を放ち、久作の腕の妖怪を攻撃した。

 

 

「何だ!このちんけんな炎は」

 

 

腕に着いた炎を振り消しながら、久作は嘲笑った。

 

 

「使えそうですね」

 

 

互いの顔を見合うと、二人は振り返り別の部屋へと移動した。その後を久作は追いかけて行った。中へ逃げた後、ぬ~べ~(明)は天井に上り、玉藻(京太)はそのまま走って行った。

 

 

「調伏焔を殺生石とくっ付けてと……

 

見てろ、妖怪博士」

 

 

着け終るとぬ~べ~(明)、走ってきた久作の背中に飛び乗った。久作は背中に乗ったぬ~べ~(明)の事に気付かず、玉藻(京太)を追い駆けた。

 

 

「待てというのに!!逃げても無駄だ!!」

 

 

走っていた玉藻(京太)は、急に立ち止まり久作の方を振り向いた。

 

 

「もういいだろ。後ろを見てごらん」

 

「何……!?」

 

 

後ろを振り返ると、背中に乗り笑みを見せるぬ~べ~(明)が乗っていた

 

 

「発射!!」

 

 

そう言うと、ぬ~べ~(明)の伸びていた人差し指を動かすと、先程天井に仕掛けていた殺生石が動き、引っ張られる勢いのまま、久作の背中に当たった。彼の背中に当たるとともに爆発し、する寸前にぬ~べ~(明)は素早く飛び上がり離れた。

 

 

「油断大敵って奴だ」

 

「お、己ぇ……

 

子供のくせに、図に乗りおって」

 

「子供じゃないんだよね……実は」

 

「僕なんか、四百歳だよ」

 

「己……己ぇ!!はああ!!」

 

「げ……また妖気を吸収しているぞ」

 

「再生していく……きりがない」

 

 

妖気を集める久作は、姿を変えた。

 

 

「何と」

 

「言ったはずだ……この石は超古代の兵器、妖気を吸収して攻撃力を得る……

 

闘いの状況に合わせて、変形することもできるのだ!

 

 

死霊砲!!」

 

 

背中に出来た砲から、人魂を放ち二人に攻撃した。圧倒的に威力の違う魂を、二人は避けることが出来ずに喰らった。

 

 

「く……命中率が、上がってる……」

 

「畜生……こんなことしている間にも広達は……

 

神原だけじゃ対処しきれない……

 

 

広達……あの子達は霊能力がない……早く助けに行かないと(あの子たちは、無力なんだ……)」

 

 

 

その頃、広達は北館の最上階にある書斎へ向かっていた。

 

 

「ようし!やるぞ!

 

俺達で、この事件を解決するんだ!見てろ、陽神!!」

 

「ねぇ広、ちゃんと道考えて走ってる?

 

広!?」

 

「行っくぜぇ!!」

 

 

走って行こうとした広の服の襟を、郷子は掴み彼を止めた。

 

 

「あんたは猪か!!ただでさえ、迷路のような館なのに!!

 

 

まず、二階にある階段を探すのよ!そして渡り廊下で、隣の建物に移る」

 

「ほうほう」

 

「あの北館の最上階に、正義の究極妖怪の呪文が隠されているのよ!」

 

「なるほど階段ね!

 

階段、ほな行きまひょう」

 

「能天気ねぇ」

 

「だってよぉ、妖怪博士の奥さんがくれたヒントで、もう勝ったも同然だろ?」

 

「も!何、安心しきってるのよ!」

 

「言っときますけど、絶対勝てるなんて保証はありませんよ。

 

麗華さんから聞きましたけど、京都で起きた事件……あれも確か、大昔に先祖が封印された大蛇が復活して、危うく死にかけたと言っていましたし」

 

「嘘!」

 

「事実です。

 

それに、あなた達は霊能力がない……」

 

「っ……何だよ!

 

お前まで、陽神達と同じ事言うのかよ!!後輩のくせして!!」

 

「そういう意味で、言ってるんじゃありません!

 

陽神や南雲の言い方は確かに酷いと思います……けど、二人はあなた方に怪我をさせたくないんです!」

 

「怪我を……」

 

「大怪我を負って、もしあなた方の誰か取り返しのつかない怪我をして……

 

そんな目に合わせたくないから……二人はあのような言い方をしたんです」

 

「っ……」

 

 

その時、妖気を感じ取った麗華(司)は、薙刀を構え後ろを振り返った。そこには全身毛だらけの妖怪が、襲い掛かろうとしていた。

 

 

「わあああああ!!」

 

「忘れてた!この館、妖怪が出てくるのよ!」

 

「やっぱ、何にも状況変わってねぇじゃねぇか!

 

無理だよ、俺達には……に、逃げよう」

 

「待てよ!!

 

いつもいつも、逃げ回るだけで……俺達は何もできない、このままじゃ陽神達の言う通りだぞ!!

 

 

ここまで来て、引き返せるか!!闘って、超高突破するんだよ!!」

 

(さすが、立野……)

 

「ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ!!

 

お前はいつもそうだ!!行き当たりばったりでよぉ!!

前々から、思ってたんだ!!ついて行けねぇんだよ!!お前には」

 

「何だと……晶やぬ~べ~、それに麗華が助けられなくてもいいのかよ!」

 

(私の場合、山口や鵺野以外にも、助けなきゃいけない奴がいるんだけど……数名ほど)

 

 

麗華(司)の頭に過る人物……石になった龍二と真二と二人のクラスメイト。そして龍二についていた渚と彼と共に来ていたシガン。

晶が石化する前日、真二達とゲームをしたせいで龍二から禁止を出された麗華は、緋音と彼女の友達がいる調理室にいた。

龍二達は学校の一室を借りクラスメイトが持ってきていたゲームのカセットをやろうと思っていたをゲーム機の中に入れた途端、あの映像が流れクリアが出来ず石化してしまった。それを緋音から聞いた麗華はすぐに駆け付け、状態を見たが何も分からなかった……そしてその翌日、晶が石化したと連絡があり、何とか解決しようと思い、病院へ来た。

 

 

「い、いいさ……自分が命を落とすぐらいなら……

 

お、俺はお前と違うんだ」

 

「克也……」

 

「馬鹿野郎!!」

 

 

克也の胸倉を掴み上げ、広は殴ろうと拳を上げた。だが殴ることが出来ず、手を離した。

 

 

「ついて行けねぇよ」

 

 

そう言い放つと、克也は振り返り逃げ出した。

 

 

「克也!!」

 

 

振り返り、襲って来ている毛だらけの妖怪が、既に目の前まで迫っていた。

 

 

「コイツの動きは鈍い……よし、俺が食い止めるから、その隙に擦りぬけて前へ進め」

 

「広」

 

「司ちゃん、先輩の俺が言うのもなんだけど……皆をお願いするよ」

 

「……はい」

 

「行けぇ!!」

 

 

突進した広だったが、妖怪は指を弾いて、広に攻撃した。飛ばされた広は、鼻から血を流して郷子達の方へ転がり倒れた。

 

 

「広!!」

 

「早く行け!

 

ちょっと遊んで、後からすぐ追うからよ」

 

「郷子、行こうよ!」

 

「うわあああ!!」

 

 

突進するが、何度も弾き飛ばされていく広……そのたんびに、ぬ~べ~(明)達の言葉を思い出した。

 

 

『ハハハ、止せ止せ……命落とすぜ。

 

君等の手に負える、相手じゃないぜ』

 

『力合わせだと?くだらん、笑わせるな』

 

『あなた方には、霊能力がない……それで、どうやって闘うんですか?』

 

「畜生!!俺達は無力じゃねぇ!!」

 

 

その思いに応えるかのように、広のポケットに入れていた勾玉が光り出し、彼の腕に巨大な武器が装備された。

 

 

『勇気』

 

 

どこからか聞こえた声……

広は装備した武器で、妖怪に攻撃した退治した。

 

 

「凄……」

 

 

地面に着地した広は、腕を上げつけられた武器を見て驚いていた。

 

 

「ど、どうしたの広、それ!!」

 

「知らねぇよ……急にあの、お守りが光って……」

 

「どうやら、それは超古代の兵器の様ね。

 

身に着けて、何かのきっかけで変化するんだわ」

 

「きっかけ?」

 

「そういえば以前、童守遺跡で見つかったオーパーツが、人の心の気を読み取って動いたって、麗華さんから聞きましたけど」

 

「そうよ!きっと心で強く思ったことが作用するのよ!」

 

「よーし!私も、美樹ちゃんゴージャスアーマ!!」

 

「変身なのだぁ!!」

 

 

そう叫び、勾玉を上に翳すが何も反応はしなかった。

 

 

「変化しねぇじゃねぇの!ズルい、広だけ!」

 

「僕に貸すのだぁ!」

 

「へ!心の汚い奴は駄目なのさ!」

 

「何ぃ!!それ寄こしなさいよぉ!!」

 

「喧嘩すんなぁ!!」

「この一大事に、喧嘩してる場合じゃありません!!」

 

「さぁ、先を急ぐよ」

 

「あ、元に戻った。必要な時だけ、変化するんだ」

 

 

先に進み、廊下を歩く広達……

 

 

「克也はどこに行っちゃったのかしら」

 

「心配なのだ」

 

「ほっとけ。どっかに隠れてるさ」

 

「……あ!見て、階段は無いけど、エレベーターが。

 

文明の利器で上りましょうよ!」

 

「あ!美樹、不用意に一人にならない方が」

 

「あら?」

 

「スイッチも何もない」

 

 

美樹と郷子がエレベータの中へ入った途端、何かのスイッチが入ったかのように、天井から棘だらけの板が降りてきた。逃げようと振り返り、出入り口を見たがそこにすぐに格子が伸び、道を塞いでしまった。

 

 

「これは罠よ!!」

 

「広!!その武器で、ぶった斬って!」

 

「……ダメだ!!妖怪は良く斬れたのに」

 

「嫌ぁ!!死にたくない!!」

 

「立野さん、下がってください!」

 

 

広を下げ麗華(司)は、薙刀に霊気を纏わせ、振り下ろしたが格子は傷一つついていなかった。

 

 

「特別な妖気を纏ってる……」

 

 

部屋を見回していた郷子は、ふと床に窪んでいる部分を見つけた。

 

 

「美樹!床に一人分窪みがあるわ!!

 

あそこに入れば助かる!」

 

「お!

 

ハーイ!入りまーす……って、郷子はどうすんの?」

 

「ダメよ、一人だけしか助からない……」

 

「ば、馬鹿言ってんじゃないわよ、郷子!」

 

「美樹……馬鹿な男子達の事頼んだわよ!」

 

「こ、コラ何言ってんのよ!

 

何でそこまでするのよ!郷子!」

 

「何って……親友でしょ……

 

私にとって、一番大事なものだから」

 

「郷子……」

 

 

『友情』

 

 

どこからか聞こえた声……すると郷子のポケットに入っていた勾玉が、広と同様に光り背中に翼が生えバリアを張り、迫っていた棘だらけの天井から自分達を守った。

 

 

「私のはバリアの様ね」

 

「あ~ん……私も欲しい~。

 

それ欲しい~」

 

「フッ、欲しいか?ほーれほーれ」

 

「きーっ!!」

 

「よし!北館へ急ぐぞ!!」

 

 

廊下を走り出す広達……そんな彼等を、逃げた克也は眺めていた。後ろから見ていた克也に、麗華は(司)気付きながらも、広達の後をついて行った。


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