地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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妖怪博士の秘密

「ここは妖怪博士の館だ。

 

早く脱出した方がいい」

 

「はあ!?妖怪博士!?」

 

「な、何者よあんた」

 

「僕は……

 

南雲京太(ナグモケイタ)。陽神君達とまあ、友達ってとこだ」

 

「そうなのか?」

 

「あ、あぁ。まぁな」

 

「文通相手の一人です、彼は」

 

 

そう答えながら、ぬ~べ~(明)と麗華(司)は京太の傍へ行き耳元で囁いた。

 

 

「フッ……しかしお前にも、陽神の術が使えるとは思いもしなかったぜ。

 

 

玉藻」

 

「やっぱり玉藻か」

 

「気に魂をくるんで固定化する……鵺野先生が以前やっていたのを見て真似たのですよ。

 

しかし、あの呪いのゲームに襲われな時は、余りに急だったため、子供の姿までしか気を練る時間が無かった。

 

先生も麗華君もそうなのでしょう?」

 

「あぁ」

 

「まぁね(おかげで焔は、狐の姿にしかなれてないし)」

 

 

「しかし……ププッ!

お前が……ククッ!

半ズボン……ウププ!

 

よく似合うぜ、たーまちゃん」

 

「無礼な!」

 

 

持っていた首さすまたで、玉藻(京太)は、ぬ~べ~(明)を殴った。そんな彼を麗華(司)辞めろと言うように玉藻に話し掛けているようだった。

 

 

「何か、仲悪そう……」

 

 

廊下にいた広達を、玉藻(京太)はダイニングへ入りながら話した。

 

 

「とにかく、君達をこの館から出してやろう。

 

その後で僕と陽神君、そして神原さんがこの館で妖怪博士の謎を解く」

 

「お前といい陽神といい、どうして俺達を邪魔者扱いするんだ!!

 

まるで俺達じゃ何も出来ないみたいに!!」

 

「君等だって同じ小学生なのだ!!」

 

「そうよ!!皆で力を合わせて解決しましょうよ!!」

 

「フッ……力を合わせるだと?

 

くだらん、笑わせるな」

 

「何だと!?

 

俺達とお前等で、実力が違うとでも言うのかよ!!」

 

「そうだ!」

 

「おい、よせ!」

 

「彼等がいた方が、私はいいと思う。

 

麗華さんの話によりますと、彼等はとても勇敢だと聞いていますが」

 

「その勇敢が、邪魔なのです」

 

「テメェ!!五年三組を舐めるな」

「待て!あれは!」

 

 

殴ろうとした広を止め、ぬ~べ~はダイニングの二階のテラスにいる人影を見た。

 

 

「君達……私の館で……何を騒いでいるのかね」

 

「あ、あれが!!」

 

「妖怪博士……」

 

「ククク……私の館に入った以上、命は無いぞ」

 

「お前か!

 

あのゲームを作ったのは!子供達の命を奪う呪いのゲームを!!」

 

「ククク……その通り。

 

あのゲームでもう、全国で百人が死んだ……原因不明ということでね。

 

だが……私の計画には、もっともっとたくさんの子供の命が必要だ……ハハハハハ!!」

 

「鎌鬼よりはマシか」

 

「コラ!」

 

「くそ!許せねぇ!

 

妖怪博士!俺達と勝負しろ!」

 

「よせ広君!!」

 

「クックック……勝負だと?」

 

「いくぞ!」

 

「よせ!」

(何か、凄い嫌な予感が……)

 

「ひょうすべ!!」

 

「だいだらぼっち!」

 

「ぬらりひょん!」

 

「ねねこがっぱ!」

 

「べとべとさん!」

 

「口裂け女!」

 

「どうだ?!参ったか!

 

俺達の方が、妖怪博士だろう!」

 

「だてにぬ~べ~クラスにいないのだ!」

 

「見て!かなり怯んでるわよ!」

 

 

彼等の攻撃に、ぬ~べ~(明)達は呆れて頭を抱えた。

 

 

「広君……僕はそんな意味で、奴を妖怪博士と言ったのではない。奴は……」

 

「えっ」

 

「ククク……そうかね。口裂け女がリクエストか。

 

ヴェロキラススマアユヌフラママニチチチカカフ……フユラユラマニラメヌルヲルラ」

 

 

呪文を唱えると、全員の後ろに置かれていた岩が光り出した。

 

 

「見ろ!あの床にある装置を」

 

「彼は、超古代文明の研究から、妖気を操る術を解決したんです」

 

「何だって!!」

 

「空気中にある妖気が、みるみる凝縮されていく……」

 

「ククク……我が憎しみよ形となれ!

 

ハハハハハ!!」

 

 

光り出した岩から口裂け女が姿を現し、彼等に攻撃した。

 

 

「ワタシ、キレイ?」

 

「口裂け女を作った!?」

 

「しかもでかい!!」

 

「ポマードポマード!」

 

「陽神君!神原さん!」

 

「おう!」

「了解」

 

 

首さすまたを振り回し、玉藻(京太)は攻撃しその後に続くかのようにして、麗華(司)も薙刀で攻撃した。

 

 

「陽神の術では、私の妖力も普段の二十分の一ほどしか無い。しかしこの、妖狐一族に代々伝わるさすまたは小物妖怪を倒すぐらいの力はある」

 

「口を動かしている暇があるなら、攻撃に集中しな。

 

ただでさえ二人共、霊力は私より低いんだから」

 

「何者だ?」

 

 

二人に続いて、ぬ~べ~(明)も麗華(司)から借りた霊殺石の玉を振り攻撃した。彼の攻撃で口裂け女は難なく倒され、三人はハイタッチした。

 

 

「す、すげぇ……」

 

「僕達の実力が、はっきり分かっただろう」

 

「うるせぇ!」

 

 

妖怪博士はしばらく三人を見詰めると、すぐに別室へ入った。

 

 

「あ!」

 

「逃げるか!待て!」

「追い掛けるな!罠かも」

 

 

博士は部屋へ入る寸前に、何かのリモコンのスイッチを押した。すると追い掛けてきたぬ~べ~(明)と玉藻(京太)が立つ床が開き、彼等はそのまま地下へ落ちていった。

 

 

「あの二人……人の忠告を聞かないから」

 

「陽神君!!」

 

「実力あるんじゃ無かったのかよ」

 

「大丈夫……こんな事で死にませんよ。彼等は」

 

「しかしこれで、俺達だけになっちまったぜ!」

 

「どうすんのよ!どうすんのよ!」

 

「お前等、あんだけあの二人に馬鹿にされて悔しくねぇのかよ!俺達だけで解こうぜ!」

 

「そ、そうだよな……」

 

「そうだそうだ!

 

僕等ぬ~べ~くらすなのだ!」

 

「ちょっと、皆本気?」

 

「司ちゃん、俺達に力を貸してくれ」

 

「もちろんです。

 

二人に見返してやりましょう」

 

「おうよ!」

 

 

ダイニングから出た郷子達は廊下を歩いた。

 

 

「なぁ、司ちゃん」

 

「はい?」

 

「何で、こんなに俺等に協力してくれるんだ?

 

陽神や南雲は、俺等のこと邪魔者扱いしたのに」

 

「あなた方が闘えると判断したからです。

 

クラスの仲間のため、命を賭けてこのボスがいる館へ来た勇気……それを見てあなた方なら負けない!そう思ったからです」

 

「な、何か照れるな」

 

「後輩なのに、何か同い年に言われているみたい」

 

「ねぇ、本当に小四なの?司ちゃん」

 

「はい。小四です(実際は、アンタ等と歳一緒だけどな)」

 

 

廊下を歩く広達……すると麗華(司)と焔は、妖気を察知し素早く薙刀を構え後ろを見た。廊下の角から、妖怪の大軍が広達に押し寄せてきた。

 

 

「で、出たぁ!!」

 

「速く逃げて下さい!!」

 

 

広達は一斉に走り出し、麗華(司)は薙刀を使い追い付いてくる妖怪を退治するが対応が追い付かなかった。

 

 

(数が多過ぎる!!

 

これじゃあ、間に合わない!)

 

 

 

その頃、ぬ~べ~(明)達は……

 

落ちた穴にあった石柱に串刺しになっていた。

 

 

「油断しましたね」

 

「陽神の体じゃなかったら、即死だったな。

 

しかしまずいな……広達と離れてしまった」

 

「あの子達は普通の人間ですからね……

 

けど、彼等には司君がいます。何とかなりますよ」

 

「そうだが……

 

 

とにかく急いで戻ろう」

 

「妖力もロクに使えない……全く不自由な体です」

 

「あの横穴から出られそうだ」

 

 

登っていた壁にあった穴に入り、ぬ~べ~(明)と玉藻(京太)は穴の中を歩き出した。

 

 

「ところで、あの妖怪博士のことを調べたと言ってたな」

 

「えぇ。百刻館の持主は学会の記録に載っていましてね。

 

 

本名、百鬼久作(ナキリキュウサク)。

十年前、童守遺跡の調査のため妻と共にこの館に移り住んだ。童守遺跡はご存知の通り、超古代文明の遺跡です。

彼の研究によれば、超古代文明は「気」を科学的エネルギーとして捉え、これを利用して現代とは全く異なった文明を築いていたというのです。

 

彼はそれを学会で発表したかった……しかし「気」は目に見えない。

そこで彼が考えたのは、比較的目に見えやすい「妖気」を空中から集めて妖怪を作る装置でした……

 

しかし、学会に参加した科学者達は彼等をインチキだと言い、作動中の石に触れようとしたんです。妻はそんな彼等に注意しようと駆け寄った時、電磁波にやられ妻を助けようと博士もその中へ飛び込みました。

 

 

彼の妻は死に、彼自身も大怪我を負った……そして」

 

 

「そして彼は、妖怪博士と呼ばれるようになり……人々の前から姿を消した。

 

世間に残っている記録は、そこまでかな。

 

 

私の恨みの深さ……分かってもらえたかな?」

 

 

後ろを振り向くとそこには、顔を覆っていた包帯と帽子を取る妖怪博士……久作が立っていた。

 

 

「分からないな……

 

それと呪いのゲームで、子供達の命を奪っていくのと……どう関係があるのか」

 

「ククク……それを聞くに必要はあるまい……

 

君達と一緒に来たガキ共はもう死んだ頃だ……そして、少しばかり手強い君達もここで死んで貰う。

 

 

この石はね、超古代の軍事兵器だ。一種の鎧のようなものと言ってもいい」

 

 

懐から取り出したオカリナの形をした翡翠を手にしながら、久作は二人にそれを見せ説明した。

 

 

「だが、石は常に大気中の妖気を吸収し続け、その力で恐ろしい攻撃力と防御力を持つ……これを纏った者は、最強の妖怪ソルジャーとなれるのだ。

 

ヘキト!」

 

 

呪文を唱えると、石は輝きそして大気中に漂っていた妖気を吸収していった。

 

 

「凄い妖気だ!!」

 

「きますよ、陽神君!!」

 

 

久作は石の鎧に身を包み、二人を見下ろした。

 

 

「クックック!!

 

妖怪博士の力、思い知れ!!」


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