地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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※関西弁を使おうと思っています。

使い方が間違っていたりするかもしれません。よろしくお願いします


本家からやって来た家族

固まる麗華……咄嗟に、傍にいた焔の後ろへ隠れた。

 

 

「おい、そんな隠れなくても」

「出てって……」

 

「?」

 

「出てって!!

 

アンタの顔なんか、見たくもない!!」

 

「麗華ちゃん……」

 

 

「ほら、言わんこっちゃない!」

 

 

関西弁の女性の声が聞こえ、そっと顔を出すと輝一の後ろから彼の頭を軽く扇子で叩きながら、母・優華に似た女性が現れた。

 

 

「アンタが出ると、麗華ちゃん毛嫌いするって言い張ったろ?

 

だから、私が出るって言うたのに」

 

「すまん……」

 

「麗華ちゃん、大きくなったなぁ!だんだん、優華に似てきたね!」

 

「あ、彩華伯母さん……(相変わらず、元気だなぁ)」

 

「ヤッホー!麗華ちゃん、久しぶり!」

 

 

彩華の後ろから、黒髪を一つお下げに結い、白い七分のワンピースに茶色いコートに身を包み茶色いロングブーツを履いた女性が顔を出してきた。

 

 

「……」

 

「コラ!アンタが出てくると、麗華ちゃん頭混乱しちゃうやろ!」

 

「え~!ええやない!」

 

 

「ただいまぁ…って、何だ?!」

 

 

学校から帰ってきた龍二は、外で伯父達を見て驚きのあまり声を上げた。彼の声に彩華の後ろにいた女性は、後ろを振り向き龍二に飛び付いた。

 

 

「龍二!久しぶり~!」

 

「み、美幸(ミユキ)?!」

 

「あら龍二君、大きくなったなぁ!昔の輝二君にそっくり!」

 

「伯母さん、それに伯父さん……何で?」

 

 

輝一と彩華の顔を交互に見た龍二は、ふと家の中で焔の後ろに隠れ怯える麗華が見えた。そんな彼女を目にした龍二は、美幸を離し輝一と彩華を退かし家に入り、麗華を自分に抱き寄せ小声で言った。

 

 

「大丈夫だ……もうどこにも行かせねぇから、怯えるな」

 

「うん……」

 

 

龍二が着ていたブレザーを握り締め、麗華は小声で返事した。

 

 

「麗!おるかぁ!

 

いや~、オーナーの息子って証明すんの大変やったわ~」

 

 

元気のいい声が聞こえ、美幸は後ろを振り返り、呆れ顔で後ろにいた者を見た。

 

 

「何やってたん?……てか、何買ってきたん?!」

 

「え?そりゃあ、麗の大好物、桜雨堂の饅頭!」

 

 

白い歯を見せ笑いながら、手に持っていた袋を差し出した。

 

 

「……陽一(ヨウイチ)、お前なぁ」

 

「どうりでさっきから、姿が見えなかった訳ね」

 

「ええやないか!」

 

 

袋を持ち、彩華と輝一を退かして陽一は玄関を上がり、龍二に抱き着いている麗華の所へ行った。

 

 

「なぁなぁ、早う茶入れて饅頭食おうで!俺、腹減って死にそうや。龍二兄ちゃんも!」

 

 

「あ、あぁ…そうだな。

 

麗華、お茶入れてこい」

 

「うん」

 

 

龍二から離れた麗華は、陽一から袋を受け取り、台所へ向かった。陽一は喜び飛び跳ねながら、手伝うと言って台所へ向かった。

 

 

「相変わらず、元気ですね……陽一の奴」

 

「元気だけが、取り柄なもんやからな」

 

「……ところで、なぜ来たんです。

 

あなた方が来るのは、大抵依頼か、本家から呼び出されたかの二つ……」

 

「鋭いわね……」

 

「二人が最後に来たのは、麗華を島に行かせる前日。それ以降は、来ていませんから。

 

まぁ、美幸と陽一は三年前に一度来てますし」

 

 

龍二の言葉に、二人は顔を曇らせた。そして意を決意したかのように、輝一は口を開いた。

 

 

「実は、本家の方から一族の召集がかかったんだ」

 

「召集?何で」

 

「それは……」

 

 

「兄貴、お茶入れたよ」

 

 

寄ってきた麗華の姿に、輝一は口を閉じた。父親の姿を見た陽一は何かを察したのか、麗華に声を掛けた。

 

 

「なぁ、麗。童守町案内してや!」

 

「え?」

 

「龍二兄ちゃんに用があって、今日来たんや。なぁ!」

 

「え、えぇ」

 

「難しい話は大人に任せて、俺等は遊びに行こうや!な!」

 

「……けど」

 

「ええから!ええから!」

 

 

陽一に背中を押され、麗華は仕方なく玄関へ行き下駄をはき外へ出た。

 

 

「ほな、俺等遊びに行って来る。夕飯までには帰るさかい!じゃ!」

 

 

引き戸を閉め、陽一は麗華の手を引き境内を飛び出して行った。二人の後を、焔と白い髪を結い丈が短い赤い着物に身を包んだ女性が心配そうに眺めながらついて行った。

 

 

「全く、気の利く子なんやから」

 

「では、話そう。龍二君。

 

俺達がここに来たわけを」

 

 

 

道を歩く陽一……麗華は、そんな陽一を見て少し笑った。

 

 

「あ!やっと見せたな!その笑顔」

 

「え」

 

「だって、父ちゃんと母ちゃんの前じゃお前、全然笑おうとしなかったやろ?」

 

「まさか、そんな理由で外に出たの?」

 

「おぉ!その通りや」

 

 

歯を見せ親指を立てながら、陽一はドヤ顔を見せた。麗華は呆れてため息を吐いたが、すぐに笑顔になり陽一を見た。

 

 

「全く、全然変わらないね」

 

「そういうお前も、変わらないやん!

 

それより、夕飯までどうする?まだ時間結構あるで」

 

「だったら、この辺り案内するけど」

 

「ホンマか!?」

 

「本当」

 

「じゃあ、お願いするわ!」

 

 

嬉しそうな顔で、陽一は麗華の手を引き駆けていった。童守商店街を歩きながら、麗華は陽一の質問に答えていた。

 

 

そんな二人を目撃した郷子達は、電信柱から覗き見ながら二人を見ていた。

 

 

「ちょっと!誰よあの男の子!」

 

「俺等の小学校に、あんな奴いなかったはずだぜ」

 

「というより、麗華の奴巫女の格好して、歩いてるよ」

 

「とにかく、ついて行きましょう!」

 

「おー!」

 

 

陽一と一緒に歩く麗華は、どこか楽しそうに笑いながら、自分達には見せない顔で話していた。陽一は手で何かを表現しながら離し、笑う麗華に釣られて一緒に笑っていた。

 

 

「あんな顔、見たことないぜ」

 

「あの人、何者なのかしら」

 

「麗華をあんな顔にさせるんだから……広と郷子みたいな関係じゃないかしら。あの二人」

 

「コラ!」

「コラ!」

 

 

二人の声に、麗華と陽一は足を止め後ろを振り返った。四人は見つかってしまい、苦笑いしながら頭を掻いた。陽一は首を傾げ、麗華は深くため息を吐いた。




その頃、龍二は居間で伯父達の話を聞いていた。


「……え?本家に?」

「そうだ……


全ての家系に、召集がかかった。ここ童守町で感じる数々の妖気と、ここ最近妖怪達の動きの活発化……そいつ等の今後の対処と……」

「対処と?」

「……今後、山桜神社と君達二人をどうするかの話だ」

「……へ?」

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