地獄先生と陰陽師少女   作:花札

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とある屋敷……


寝殿の中、一人の者を真ん中に、左右に数人の男女が座っていた。


「一体、東京の童守町はどうなっているんでしょう……」

「こうも毎度毎度、強力な霊気を感じる何ぞ、初めてだ」

「確か、あそこの守り族は……」

「神崎家だ」

「確か、神崎輝三の弟との輝二とか言う奴だったな」

「しかし輝二は、妻であった優華と共に亡くなったと聞いていますが……」

「今は子供達が、童守町を守っていると、輝三から聞きましたが」

「子供……それは心配ですな。

いくら子供とは言え、力は我等本家より乏しい……


当主、二人を呼び、会議を開きませぬか?」

「……なぜだ?」

「今後、あの山桜神社と二人をどうするかが問題です。

第一、まだ成人にもなっていないのに、子供二人で住ませるのはどうかと思います」

「それもそうだな……

今後の、妖達をどうするかも検討せねばならぬし……近頃、妖達の動きが活発化している。


全一族に、召集じゃ!」

「神崎家の向かいは、三神家に行ってもらおう」

「分かりました」


古き都
好きな和菓子と嫌いな伯父


ある日の夜……

 

 

縁側で麗華は、龍二と一緒にお饅頭を食べていた。手にしたお饅頭を食べる麗華を、龍二は鼻で笑いながら彼女の頭を撫でた。

 

 

「何?」

 

「変わんねぇなぁって思って」

 

「何が変わらないの?」

 

「ガキの頃から、お前桜雨堂(オウサメドウ)の和菓子好きだよなぁって」

 

「他の店だと、甘過ぎたり生地がもっちりしてなかったりしてて、美味しくない。それにデザインもイマイチ。

 

けど桜雨堂は、全部心を込めて一から作ってるから、凄い美味しい!それにデザインも綺麗だし色も綺麗」

 

 

嬉しそうに、麗華は手に持っていたお饅頭を口に頬張り、幸せそうな表情を浮かべながら食べた。そんな彼女の幸せそうな表情を見て、龍二は嬉しく手に持っていたお饅頭を麗華と同じようにして、口に頬張った。

 

 

翌朝……

 

 

学校が終わると、麗華はどこか嬉しそうな表情を浮かべて校舎を飛び出しどこかへと向かった。そんな彼女が気になった郷子達は、こっそりと後をついて行った。

 

センター街へと来た麗華は、どんどん奥へと行きある店の中へと入った。郷子達はその店の前に立ち店の看板を見た。

 

 

「さくらあめどう?」

 

「違うわよ!桜雨堂(オウサメドウ)って読むの!」

 

「ここって確か、超高級和菓子店よね?」

 

「確かそうだぜ。雑誌やテレビでよく上げられてたから」

 

「何で麗華が、そんな高級和菓子店の中に入ったの?」

 

「それは分かんないけど……

 

あ、出てくるよ」

 

 

引き戸が開きなから、麗華は中の人に礼を言いながら紙袋を持って出て行った。すると彼女は、少し歩いて立ち止まり、ため息を吐きながら口を開いた。

 

 

「そこで何コソコソしてるの?」

 

「い!」

 

「用があるなら、出て来なさい!」

 

 

麗華に言われて、郷子達は苦笑いしながら出て来た。

 

 

「麗華って、本当はお金持ちなんだね!」

 

 

歩きながら、美樹は麗華にそう言った。

 

 

「は?お金持ち?

 

何で?」

 

「だって、あの高級和菓子店である、桜雨堂の和菓子買ってるじゃん」

 

「買ってないよ」

 

「え?買ってないって……まさか」

 

「盗んでませんし、脅してません。

 

貰ってんの。時々」

 

「貰ってる?」

 

「あの和菓子店のオーナーが、私の伯父でその家族ぐるみで時々、私達にってとっといてくれるんだ」

 

「伯父さんって、あの怖い人?」

 

「(怖いって……)違うよ。

 

もう一人の伯父さん。ま、私は嫌いだけど」

 

「え?何で?」

 

「……

 

なぁ、食うか?」

 

「え?」

 

「店の人に頼んで、アンタ達の分貰っといたから、よかったら」

 

「え、でも」

「頂きます!!」

 

「コラ!」

 

 

公園のベンチに腰を下ろし、麗華は紙袋か小さい箱を出し蓋を開けた。中には秋をイメージした柄のお饅頭が、六つ入っていた。

 

 

「わー!綺麗!」

 

「ねぇ、食べていい?」

 

「いいよ、ほら」

 

 

差し出された箱から郷子達は一個ずつ取り、麗華は二つの取りその内の一つを傍にいた焔に渡した。全員が取るとほぼ同時に口に入れた。

 

 

「美味しい~!」

 

「さすが、高級和菓子店!」

 

「麗華、いつもこんな美味しいの貰ってるの?」

 

「まぁね。昔っから私のおやつ、これだったし」

 

「へ~」

 

「そういえば、麗華って普通のお菓子あんまり食べないよね」

 

「そうそう。スナック菓子やケーキとか、あんまり食べたところ見たことないし」

 

「ケーキはともかく、スナック菓子はあんまり食べないよ。ほとんど和菓子しか食べない」

 

「へ~」

 

「ねぇ麗華、さっきの質問の答え、聞いてないんだけど」

 

「え?さっきの質問?」

 

「だから、オーナーの伯父さんの事、何で嫌ってるの?」

 

「……嫌いだから嫌いなの。

 

もう帰るね」

 

 

空になった箱を潰しゴミ箱へ捨てた麗華は、焔と共に帰って行った。

 

 

階段を上りながら、麗華は昔の事を思い出した。優華の膝に座り、伯父が持ってきた和菓子を食べる自分……

 

 

(昔は好きだった……伯父も)

 

 

階段を登り切り、家へと帰ってきた麗華は、自身の部屋へ行き巫女の格好になり、縁側で貰ってきた和菓子を口にしながら、庭を眺めがらまた昔の事を思い出した。

 

 

『麗華は、本当に義兄さんの和菓子好きだね』

 

 

幼い頃、伯父が持ってきたお饅頭を食べていた自分に、母・優華は頭を撫でながらそう言った。するとそこへ、遊びに来ていた伯父が隣に座り、嬉しそうに笑いながら自分の頭を撫でてくれた。

 

 

『輝二も、麗華ちゃんと同じ様に、和菓子が大好きだったんだよ。

 

だから、輝二に喜んで貰いたくって、和菓子を作り出したんだ』

 

 

そう言ってくれた……しかし、優華が死んだ時、あの言葉を発した。

 

 

『川島さん達の言葉に甘えて、麗華ちゃんをそこに置いて貰おう』

 

『え?』

 

『そうすれば、龍二君の負担は減る。第一、まだ成人でもないのに、こんな小さい子を育てるなんて、大変だよ』

 

『そんな……ちゃんと面倒みるから!』

 

『龍二君、子供を育てるっていうのは、漫画やドラマのように上手くいかないんだ。

 

君が学校に行っている間、誰が麗華ちゃんの面倒を見るんだい?小学校に行き出したら、もっと問題は増えるんだよ』

 

『……けど』

 

『そんなに心配なら、お前が引き取ればいいだろ』

 

『俺には家族がいるし……二人いっぺんには無理だよ』

 

『無責任な言い方だな』

 

『何だと!!』

 

『よしなさい!子供達の前で!

 

龍二君、麗華ちゃんを外に出して』

 

『あ、ハイ。麗華』

 

『嫌だ!!』

 

 

そう言い叫びながら、先喚く麗華を、龍二は外へ出した。そこへ自信と同い年の女の事、麗華と同い年の男の子が駆け寄り、男の子は泣き喚く麗華の手を引き、どこかへ行ってしまった。二人の後を、女の子は龍二に頷き追いかけて行った。




「おーい!誰か、いないのかぁ!」


その声に気付き、麗華は目を覚まし目を擦りながら体を起こした。


「いつの間にか、眠ってたんだ……」

「おーい!」

「あ、ハーイ!今行きまーす!」


立ち上がり、袴を叩きながら麗華は廊下を歩き、玄関へ行った。


「何かご用……」


玄関に立っていたのは、父・輝二と同じ顔だちをした男性だった。彼を見た瞬間、麗華はその場に立ち尽くしてしまった。


「大きくなったな、麗華ちゃん」

「こ……輝一…伯父さん」

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