デート・ア・DRIVE リメイク   作:鎧武 極

8 / 9
仮面の戦士は何者か

ゆっくりとこちらへ近寄ってくるアイアン・ロイミュード。ロイミュードの起こす『重加速』の中では、一部を除いて人間は動くことはできない。だがそれは、()()を連れていない場合の話だ。

太陽の沈む彼方から、3つの光が飛んでくると、進介の腰に銀色のホルダーと共にセットされる。

 

「うおっ! 遅いぜお前ら」

 

ホルダーについたシフトカー、マックスフレア、ファンキースパイク、ミッドナイトシャドーに話しかける。

 

『何? なぜ人間が・・・』

 

驚くアイアン・ロイミュード。普通の人間は、重加速の中では満足に動くことすらできない。だが、目の前の少年は何食わぬ顔をして普通に動いている。

そこまで考えたアイアン・ロイミュードの頭に、()()()から聞いた言葉が浮かんだ。

 

 

()()()は重加速の中でも普通に動ける。凍り付いた時間の中で、たった一人で僕たちに刃向かうあいつの名前は・・・』

 

 

『仮面ライダー・・・!』

 

口から絞り出された言葉に、進介は「おっ」と反応を示す。

 

「やっぱり()()()も知ってたか」

 

『数年前、我らが実行したグローバルフリーズをたった一人で鎮静し、我らの魂をネットワークに追いやった忌まわしき悪魔っ!』

 

悪魔(おまえら)に悪魔呼ばわりされるなんて心外だな。お前らのせいで、一体何億の人間が死んだと思ってる」

 

『黙れッ! 貴様ら人間など、所詮その程度の存在でしかないッ!』

 

進介の発言に激怒した下級ロイミュード一体が指先からマシンガンを放つ。進介は避けることはできるが、それでは横にいる十香に銃弾が当たってしまう。銃弾が目の前まで迫ってきた時、派手なクラクション音と共に新たなシフトカーたちがやってくると、銃弾を全て弾き飛ばした。

 

『なんだと!?』

 

「助かったぜ、ジャスティス、モンスター、ミキサー」

 

銃弾をはじき返したパトカー型のジャスティスハンター、顔の描かれたモンスタートラック型のマッシブモンスター、ミキサー車型のスピンミキサーにお礼を言う進介。シフトカーたちはそれに答えるように各々クラクションを鳴らす。

 

『進介ええええええええええええええええ!!!』

 

豪快な音と共に背後の崖から飛び上がってきたトライドロンとベルトさんの声に、その場にいた全員の視線が釘付けになる。地面に着地をしたトライドロンは、そのまま下級ロイミュード2体を跳ね飛ばし、アイアンに向かって車両前部に備えられた機関砲で攻撃をする。

 

『ちっ! やはり協力者がいたか』

 

攻撃を受けたアイアンは軽く舌打ちをすると、後方に飛んで攻撃を回避する。

進介が唖然としていると、トライドロンの中からベルトさんが飛び出して進介の腰に巻き付く。

 

『間一髪だったかな?』

 

「ベルトさん。俺、いまとんでもない光景を見た気がするんだけど・・・ここ天宮市見渡せるぐらい高い場所にあるんだけど」

 

『フフフ、やってやれないことはないさ。それよりも進介、十香を裸で放置するのはどうかと思うぞ?』

 

ベルトさんに言われ、「あっ」と声を漏らす進介。自分はシフトカーの力で動けているが、今は重加速が発生している最中。当然十香も例外ではなく、先程から時間が止まったかのように体が動いていない。というより、自分が十香から離れたせいで素っ裸のままでその場に放置してしまっていたため、振り向いた瞬間に進介は十香の体を(勿論包み隠さず全部)見て鼻から血が吹き出しそうになってしまった。

 

「ご、ごめん十香! ベルトさん、なんか服ない!?」

 

『トライドロンに替えの服ならあるが・・・』

 

「よしそれだ! レッカー、早く持ってきて!」

 

近くにいたレッカー車型のフッキングレッカーに命じて服を取りに行かせる進介。その間に十香の裸体をこれ以上晒さないようにするために思わず多い被るが、それが逆効果だということも十香の顏が真っ赤になっている事にも焦って気付いていない様だ。

 

『女の心配より、自分の心配をしたらどうだ!』

 

「危ないっ!」

 

アイアンの攻撃を咄嗟に避ける進介。その時に十香の体を自分の方に抱き寄せたのだが、その時に誤って胸のところを触ってしまう。ただし、それに気付いたのは触られた本人の十香とベルトさんだけだった。

硬い拳から繰り出されたパンチに、先ほどまで進介たちがいた場所には数メートル程度の深さのクレーターが出来上がっていた。それを見た進介は、息をのむ。

 

『あんまり気を抜いてると、死ぬぞ?』

 

「本当に気が抜けないな・・・・・」

 

『仕方がない。少し調整が終わってないが、ぶっつけ本番だ!』

 

ベルトさんが叫ぶと同時に、進介の手元に赤いシフトカー―—シフトスピードが飛んでくる。ベルトのイグニッションキーを捻り、シフトスピードをレバーに変形させると、シフトブレスに差し込む。

 

「変身ッ!」

 

『ドラーイブ! ターイプ、スピード!』

 

掛け声とともにシフトカーを前に倒すと、ベルトからの音声が鳴り響き、進介の体に赤い装甲が装着される。近くに停車してあったトライドロンの左前輪から別のタイヤが生成されると、それは進介の体へタスキの様に装備される。

 

「さあ、ひとっ走り付き合ってもらおうか」

 

その掛け声とともに、仮面ライダードライブはロイミュードたちへ向けて走り出した。

 

 

 

 

同時刻。天宮市上空にある〈フラクシナス〉の指令室。空中に映し出されているモニターの映像に、クルーの面々は度肝を抜かれていた。死人が生き返って十香の霊力を封印したことも驚きだったが、問題はそのあとだった。突如現れたロイミュードに、それと同時に発生した『どんより』。そして何より、再び現れたあの()()()()()。あのロイミュードたちの言葉を借りるのなら、『仮面ライダー』と呼ばれる者に、進介が変身をしたのだ。わずか数分の間に起きた出来事だが、肝心の内容は数分間の出来事にしてはあまりにも濃すぎた。実際、先ほどまで十香の霊力の観測を行っていたメンバーは全員開いた口が塞がっておらず、普段は冷静な令音までもが、一切動けずにいた。

 

「あれが、進介の言ってて役目ってやつね・・・」

 

唯一言葉を発した琴里の声音は、恐ろしく低かった。最愛の兄が、自分に隠してまでやっていたこと。それは、かつて世界を崩壊寸前にまで追い込んだ機械生命体、ロイミュードと戦うことだった。

 

「ちっ」

 

怒りのまま口の中のチュッパチャプスを嚙み砕く琴里。いまモニターに映っている兄は、ロイミュードと戦っている。だが、その戦闘スタイルは素人がやる力任せの戦い方ではない。相手の攻撃を見極め、上手く受け流しながらも相手の急所を突く。もはやベテランのやる戦い方だ。一体彼は、この戦いのためにどんな苦しい訓練をしてきたのだろう。一体どれだけの痛みを味わってきたのだろう。それを知る術はない。だが琴里には一つの確信があった。今の兄の姿は、今まで見てきた中でも一番輝いていたということを

 

 

 

 

「はっ!」

 

アイアンの腕を脇で挟み込み、不意を突こうと迫ってきた下級ロイミュード2体に蹴りを入れる。ロイミュードと戦うのはこれが初めてではなかったが、3体同時に相手をすることはなかったため、予想以上に手間がかかる。

 

『やはりこの数を相手にするのは限界があるか』

 

「ならタイヤの交換と行きますか」

 

そう言うと、ドライブはベルトのキーを回してシフトブレスからスピードを引き抜くと、腰のホルダーからフレアを手に取り変形させると、ブレスにセットし前に倒す。

 

『タイヤコウカーン! マックスフレア!』

 

トライドロンからオレンジ色のマックスフレアタイヤが射出され、ドライブのタイヤと入れ替わるようにドライブに装備されると、燃え上がるような形状に変化する。

それを気にも留めずに背後から殴りかかろうとする下級ロイミュードに、先程取り外されたタイプスピードのタイヤを掴んでその顔へと叩き込む。

 

「おりゃっ!」

 

空中で態勢を崩された下級ロイミュードへ向けて、すかさずマックスフレアの能力で炎を纏った拳を突き出す。灼熱の炎を纏ったドライブの拳は、金属でできたロイミュードの体をいとも簡単につき破り、ロイミュードのコアを突き出た手で握っている。

 

『き、貴様あああああ!!』

 

「これで終わりだ」

 

握っていたコアを握りつぶすと同時に、ロイミュードの体が爆散する。その光景にあっけにとられるアイアンと下級ロイミュード。炎の中から出てきたドライブの手には、既に変形したスパイクが握られていた。ベルトのキーを捻り、フレアとスパイクを入れ替え、タイヤコウカンを行う。

 

『タイヤコウカーン! ファンキースパイク!』

 

ドライブのタイヤが棘のついた緑のタイヤに入れ替わると、もう一方の下級ロイミュードに向かってドライブは走り出す。

身構えるロイミュードだったが、ドライブは攻撃をすることはなく、ロイミュードの腕を掴んで後ろに組み伏せるだけだった。その行動に理解をできなかったロイミュードだったが、次の瞬間、その意味を身をもって理解した。

 

「これでも喰らいな!」

 

『スパ・スパ・スパイク!』

 

ブレスのスパイクを3回前に倒すと、タイヤが棘を伸ばして回転を始める。伸びた棘がロイミュードの体を徐々に抉り取っていく。悲鳴を上げながら暴れるロイミュードを抑えるよう、抑える力を強めるドライブ。

 

「貫け、ファンキースパイク!」

 

ドライブの掛け声とともに、ファンキースパイクタイヤから無数の棘がロイミュードの削り取られた傷口へと吸い込まれていく。そして、先程とは比べ物にならないまでに伸びた棘がロイミュードの体をコアごと貫く。

棘が元の長さまで戻ると、ドライブはロイミュードから離れる。その数秒後、貫かれたロイミュードは爆散し、残るはアイアン一体のみとなった。

 

『貴様・・・よくも我らの仲間を・・・っ!!!』

 

「安心しろ、貴様もすぐに同じ場所に送ってやる」

 

仮面の下から低い声を出す進介。その威圧に一瞬押されながらも、ひるまずに向かっていくアイアン。ドライブは数歩後ろに下がると、すかさずシフトカーを入れ替える。

 

『タイヤコウカーン! ミッドナイトシャドー!』

 

手裏剣のような紫のミッドナイトシャドータイヤに変わると、すぐさまシフトカーを3回倒す。

 

『シャ・シャ・シャドー』

 

タイヤが回転するとともに、ドライブが2人、4人、そして8人へと分身する。その様はまるでニンジャの様だった。

 

『なに!? 一体どれが本物だ!』

 

分身したドライブに焦るアイアン。だが、いくら見てもどれが本物かなど分かるはずもなく、手当たり次第に攻撃を仕掛けていく。

しかし、どれを倒そうとも感触が全くない。ついにはすべての分身体を消し去るが、どれも正解ではなかった。では一体、どこに?

 

『ヒッサーツ!』

 

そう思っていたアイアンの頭上からベルトの声が音声が聞こえてくる。それと同時に、自身の周りを取り囲むかのように巨大な4つのタイヤが出現する。

 

『フルスロットール! スピード!』

 

アイアンの上空から、スピードタイヤにタイヤコウカンしたドライブがトライドロンと共に落ちてくる。先ほどからタイヤコウカンをしていたのは、トライドロンの動きを敵に悟られないようにするためと、ロイミュードの爆発によってトライドロンを上空まで吹き飛ばすための作戦だったのだ。

4つの巨大なタイヤに拘束されたアイアンの体は、そのまま大きな円を描くように回転しているトライドロンの中心に弾き飛ばされる。ドライブはトライドロンのボンネット部分を蹴りアイアンに一撃を決めると、同じ要領を何度も繰り返し、アイアンへ攻撃を加えていく。

 

「おりゃああああああああ!!!」

 

アイアンに最後の一撃を決めるドライブ。地面を滑りながら着地すると、ドライブの後ろにトライドロンが停車をする。

 

『こ、こんなバカなあああああああ!!!』

 

最後の断末魔とともに、アイアンの体は空中で爆散する。コアが完全に砕け散ったのを確認すると、ドライブはシフトカーを引き抜きブレスのボタンを押す。

 

『Nice DRIVE!』

 

変身が解除されると、お腹の部分が丸見えの血に汚れた制服を着た汗まみれの進介が素顔を出す。その直後、全身の力が抜けた進介は膝から崩れ落ちる。

 

「つ、疲れたー・・・」

 

『良い戦いだったぞ進介。十香の霊力の封印、ロイミュードの消去。結果は上出来だ!』

 

「で、出来ればもう二度と3対1だなんて闘いはしたくねぇ・・・・・」

 

笑顔のベルトさんとは対照的に、苦笑いの進介。すると進介は、十香の事を思い出しあたりを見渡すが、それらしき影は見えない。一瞬また消えたのかと思ったが、霊力を封印した十香にそんな力があるとは思えない。となると、考えられる可能性は一つ。

進介はトライドロンの助手席部分を覗き込む。

 

「あちゃーやっぱり目が回ってる」

 

案の定、必殺技の時のトライドロンの回転で目が回った十香がそこにいた。無論全裸で

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで! 今日から世話になる夜刀神十香だ!」

 

あれから数日後、何事もなく送っていた学校生活に大きな変化が舞い降りた。今教卓の前で話をしているのは、来禅高校の女子の制服を身にまとった十香の姿だった。突然の転校生に驚くクラスだが、一番驚いてるのは進介だ。なにしろ、この件の当事者である琴里からは、何の連絡も受けてなかったからだ。

 

「ん? おおぉーシンスケ! 同じクラスだったか!」

 

「ちょっ! こんなところで名前を叫ぶなっ!」

 

十香の一声に、クラスの面々がざわめき始める。

「なになに五河君あの子と知り合い?」「えぇーうそー」「なあ、そういや前に五河が女と歩いてたって聞いたけど・・・」「それ俺も聞いた。もしかしてあの子?」

まずい、非常にまずい。なんとかしてクラスの意識を別の事に向けようと頭の中で模索する進介だったが、そんなこと知る由もない十香が更なる爆弾を投下した。

 

「どうしたのだ急に叫んで? もしかして、私としたキスが忘れられないのか? まあ私も初めてで少し驚きはしたが、あれはとても良いものだった。だがシンスケ、舌を入れるのはなしだぞ? あれはその、なんというかゴワゴワして気持ち悪い」

 

その言葉に、クラスの雰囲気が凍り付いた。今進介に向けられている視線は、女子からの軽蔑と男子からの嫉妬の2種類のみだった。

すると突然、隣にいた折紙が進介を床に押し倒した。

 

「いでっ! と、鳶一さん!?」

 

「今のはどういうこと」

 

「い、今のって・・・」

 

「どういうこと」

 

無表情な顔で迫ってくる折紙。十香と戦った時の負傷で片腕が使えないはずなのに、全く体が動けない。その威圧的な雰囲気に、進介は思わず口を開いてしまった。

 

「ハイ、十香とキスをしました・・・・・」

 

その瞬間、クラスから悲鳴の声が上がる。女子からは罵声が、男子からは怨嗟の声が聞こえてくる。だが、折紙は別だった。十香とキスをしたと聞くなり、自ら顔を近づけて進介の唇に自分の唇を重ねようとする。

 

「おい貴様! 一体何をしようとしている!」

 

その直前、十香に首根っこを掴まれ無理やり離される折紙。

 

「貴女には関係ない」

 

「関係ないわけないだろうが! シンスケのキスは私のものだ!」

 

「そんな根拠はどこにもない。彼の唇は私のもの。貴女に汚された彼の唇を私の唇で上書きする」

 

「そんなことさせるものかあああああああ!!!」

 

言い争う十香と折紙。その様をみていろいろと噂をするクラスメイト。もう何が何だかわからなくてあたふたしているタマちゃん。そして何事かと見物に来る別のクラスの先生や生徒たち。

進介の高校2年の生活は、こうして波乱の幕開けをした




遅れてすみません。運動会、文化祭、中間テスト、その他もろもろが重なりおくれました。

デート・ア・ライブのスピンオフが発表されましたね。正直アニメ3期希望していた僕としては知った瞬間椅子から転げ落ちましたが、まあいいでしょう。というか、同時に発表されたハイスクールD×Dが4期制作決まったのになんで?って腑に落ちない点が心の中に残ってる。まあこれが人気の差ってやつっすかね~
デートももう少し(あと5巻ぐらいかな?)で終わりそうですし、まあ頑張って今年中には凜祢まで進みたい。
というわけで、また今度~



やっぱりエグゼイドのレベル1はかわいい!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。