デート・ア・DRIVE リメイク   作:鎧武 極

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このたびは、私事の事情で作品をリメイクすることになり、誠に申し訳ございません。詳しい事情はあとがきにて説明します

では、リメイクしたデート・ア・DRIVE第1話、どうぞ


十香デッドエンド編
なぜ彼女は悲しい眼をするのか


転生してから数年。小学生だった少年――五河進介は今日から高校二年生になる。前日に始業式の準備を済ませた進介は、その特徴的な紫と黒の髪を揺らしながら自室のベッドで静かな眠りについていた。

 

「アーフゥッ!」

 

訂正。彼の静かな眠りは今しがた崩壊した。中学の制服を着た赤い髪を白いリボンでツインテールに括っている進介の義妹、五河琴里が寝ている進介の上でサンバを踊りだしたからだ。それはもう情熱的なサンバを。一部の特殊な性癖を持つ以外の人が受けたのなら、確実に不快に思うであろうその行為を平然とやっている琴里に対して、進介は寝起きのせいで低く唸るような声を出した。

 

「こ、琴里・・・我が愛しの妹よ」

 

「おぉ!? なんだ、我が愛しのお兄ちゃんよ!」

 

クルリと可愛く進介の方を振り向いて笑顔で答える琴里。地味に白いパンツが見えているのは言うべきなのか一瞬迷ったが、言った後に起こる琴里の鉄拳が飛んでくるのを考えると控えた方が良いという考えが勝った。決して進介が琴里のパンツを眺めていたいというわけではない。

 

「た、頼むから降りてください・・・」

 

「お兄ちゃんの頼みなら仕方がない」

 

聞き分けはいい琴里なので、「えぇー」や「いやだー」などと言わずに素直に言うことを聞いてくれるのが幸いだ。これでまたぐっすりと眠りにつける

 

「だが断る!」

 

ベッドのバネを使って高く飛び上がる琴里。空中で右足を突き出すと、突き出した右足は進介の腹の中へと吸い込まれていくように進んでいく。

 

「甘いわ!」

 

ベッドから起き上がった進介は叫ぶと同時に向かってきた琴里の右足をつかみ取ると、そのまま琴里を逆さまにしたまま欠伸をする。

 

「ふあぁ~まだ眠い・・・」

 

「お、お兄ちゃん! ぱ、パンツ! パンツ見えちゃうから下して!」

 

欠伸をしながら目をこする進介に逆さまにされている琴里。パンツが見えないようスカートを抑えてはいるが、前ばっかりを隠しているから後ろがめくれて普通にパンツは見えているわけなのだが。そんな騒がしい部屋に一つの人影が現れる。

 

「あ、あの・・・ご飯出来たよ」

 

「おぉ! お姉ちゃんいいところに来たのだ! お兄ちゃんに琴里を下してくれるよう頼んでほしいのだ!」

 

現れたのは、青く長い髪で目元を隠した進介と琴里の姉、五河士織。内気な性格で進介以外では家族とすら目が合わせられないほどの美少女である。昔はこんな性格ではなかったようだが、とある理由からこんな性格になってしまったらしい。

 

「し、進君・・・琴里ちゃん下してあげて?」

 

「はぁ・・・分かったよ」

 

琴里の背中に手を回して一度お姫様抱っこをすると、士織に言われた通りに琴里を床に下す。

時計の方に目を向けると、時刻はまだ6時。始業式が始まるのは9時からなのでまだ時間はたっぷりあるが、それまで寝ていても仕方がないのでとりあえず3人で朝食をすませようと、琴里と士織と共に1階のリビングに降りて朝食をとる進介たち。

今五河家には両親はいない。仕事の都合で、数日前から海外へと長期出張に行っているのだ。少なくとも、来年までは帰ってこれないらしい。無論、女性2人と男性1人を残して海外出張に行く親はいない。一応この家には、進介たちの他にもう1人、正確にはもう1台の男性?が住んでいるのだ。

 

『Goodmorning! 随分騒がしいお目覚めなようだね、進介』

 

「おかげでいい迷惑だよ、ベルトさん」

 

現れたのは、人の背の高さぐらいある台についた銀色のベルト。これが、進介が転生した際に貰った特典の一つ「ドライブドライバー」である。時折付き合ってくれる愚痴相手であり、彼の一番の理解者でもある。一応、進介たちの保護者代理でもある。

 

「ベルトさんよ、お兄ちゃんたら私の事逆さまにしてパンツを見ようとしてきたのだぞ!」

 

『なんと。進介、さすがに義理とはいえ妹のパンツを見るのはいささか・・・』

 

「ちょっと琴里ぃ~! 嘘を言うんじゃない!」

 

義妹とベルトに引かれる進介。そんな賑わしい中で、士織は一人静かに朝食をとっていた。

これが、五河家の日常である。

 

 

 

 

 

昼にファミレスに3人で行くという約束を琴里としてから学校に登校した進介と士織は、廊下に張り出されたクラス表を見ながら自分のクラスを確認していた。時刻はまだ8時よりも少し前だが、人と目を合わせることができない士織のために、こうして早くからクラスを確認してその教室に行くというのが、海外出張に行く前に両親と約束したことだ。

 

「姉ちゃんも俺も同じ2年4組だってさ」

 

「う、うん。進君がいるなら、安心かも」

 

士織とは誕生日が数カ月違うだけで学年は一緒なので、同じクラスにいるのは何かと好都合だ。それに、席も士織の後ろなので、人見知りの士織のサポートもできる。教師陣も、そのあたりの事を考えてクラス編成をしてくれたのかもしれない。

 

「よお五河姉弟! 3学期ぶりだな!」

 

「ひうっ!」

 

「おう、殿町」

 

いくら人が少ないとはいえ、廊下で人の名前を大声で呼ぶ迷惑な男子生徒の名前は殿町宏人。進介の中学時代からの友人だ。何かと友達が少ない進介の貴重な親友と呼べる人だ。

 

「俺も同じクラスだぞ五河~! それにしても、相変わらず士織ちゃんは俺に目も向けてくれないな~」

 

進介の後ろに隠れるように震えている士織。殿町は何度か経験しているはずの事なのだが、まだ慣れないのか目元にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 

 

「それよりも殿町、まさかお前がこんな朝早くから来てるとはな」

 

「はっはっは! こうして早く来てれば、愛しのお前の顔が見れると思ったからな!」

 

「気持ち悪い、今すぐ俺の視界から消えろ」

 

「ちょっ!? ただのジョークだから、俺から遠ざからないでくれー!」

 

徐々に遠ざかっていく進介に焦って手を伸ばす殿町。多少ふざけた言動をするのが難点だが、それ以外は大方普通である。

 

「――五河進介」

 

廊下に再び響き渡る声。殿町とは違い、今度は全く抑揚のない声だった。名前を呼ばれた進介は、殿町の後方にいる少女に目を向けた。

 

「えっと・・・鳶一折紙さんだっけ?」

 

記憶を掘り返し、その少女の名前を思い出す進介。細身の体に肩にかかる程度の髪、そして人形のように表情がないその顔をした少女の名は鳶一折紙。いま進介たちがいる都立雷禅高校に通う生徒であり、学年一の秀才という天才少女。だが、進介はその名前を聞いたことがあるだけで実際に話したことはなく、ましてや顔を合わせたことすらない。まあ、この特徴的な紫と黒のハネ毛の髪型をしているのは進介だけなので彼女の方からすれば一目でわかるのだが。

 

「なにか俺に用?」

 

「久しぶり」

 

鳶一に声をかけてみるも、返ってきたのは「久しぶり」という、まるでずっと前に会っていたかのような返答だった。再び記憶を掘り返してみるも、やはり彼女と会った事のない進介は申し訳なさそうに言葉をかける。

 

「ごめん、俺たち前にどっかであったっけ?」

 

「覚えてないの?」

 

不思議そうに首をかしげる鳶一。

 

「まあ、覚えていないのなら別にいい」

 

進介が謝る隙も与えず、鳶一は自教室へと向かっていった。拍子抜けした進介に、殿町はその右手で進介の腹を叩く。

 

「おいおい五河! お前いつの間に鳶一折紙と仲良くなったんだよ!?」

 

「い、いや、俺も何のことかさっぱり。てか、名前だけしか聞いたことなかったから正直あの子の事何も知らないし」

 

「な、ないにいいいいいい!?」

 

頭に手を置いてつま先でその場で回転するという少々オーバーなリアクションをとった殿町は、すぐさま自分のポケットの中に入れてあったメモ帳を取り出し、とあるページを開いた。

 

「お前、『恋人にしたい女子ランキング・ベスト13』のベスト3位の鳶一折紙のことを何も知らないというのか!?」

 

「いや、なんだよそのランキング。てか、なんでベスト13?」

 

「主催者が13位だったからだ」

 

「あぁ~」

 

何となくだが、自分が主催したのに自分がベスト10に入っていなかったから無理やりにでもランキング入りをしたい女の意地というのが分かった進介だった。

 

「ちなみに士織ちゃんはベスト1位だ。家庭的で内気、そして何よりそのかわいさが男子たちの心を鷲掴みにしたんだろうな」

 

「ひうっ!」

 

「おいおい殿町、姉ちゃんが怖がってるからあまり大声出すな」

 

震える士織を背中に隠すように前にでる進介。

 

「おおっとすまないな五河。ちなみに、男子はベスト358まであるぞ」

 

「ちょっ、それ全校の男子生徒の数とほぼ同じじゃねか! もしかして、主催者お前か?」

 

「もちのろんさ!」

 

笑顔でサムズアップをする殿町だが、心なしか目元にはうっすらと涙のようなものが浮かんでいる。

 

「ちなみに、選ばれた理由は『毛深かそう』『一緒にいるとめんどくさそう』『キモイ』だからだ」

 

「最後それ悪口だよな!?」

 

「ちなみに五河は匿名希望さんの票も入れて9位だ。理由は『顔がカッコいい』『ワイルドそうに見えるけど実は優しくて胸キュン!』『髪型が変なのと茄子みたいな色をしてる』からだ」

 

「それ、最後の書いたやつ絶対悪口だろ!」

 

「あと、『腐女子が選んだ校内ベストカップル』では俺とペアで2位と圧倒的な差をつけて1位になってるぞ」

 

「嬉しくねえランキング1位がこの世になるとは思わなかったよ!」

 

そんな漫才をつづけながら、進介たちは2年4組の教室へと向かう。教室に入って一番最初に驚いたのは、件の鳶一折紙が進介の隣の席だったということだ。

 

 

 

 

始業式もすべて終了し、放課後になった教室は、朝よりも賑わいを増していた。

 

「進君、一緒にファミレス行こ?」

 

「あ、そういえば琴里とファミレス行く約束してたの忘れてた」

 

士織に言われて思い出した進介は、携帯を取り出して琴里に電話を掛けようとする。今日は中学校も始業式なので、おそらくこの時間帯には終わっているはずだ。進介が携帯の画面に映し出された『琴里 携帯』の文字を押そうとした瞬間、街の方からサイレンの音が聞こえてきた。

 

「うそだろ!?」

 

「始業式の日に空間震とか!?」

 

教室内に残っていた生徒が慌てだす。

空間震。それは、『空間の地震』とも言われる自然災害の事だ。発生原因も不明ならば対処方法もない、全く持って謎の自然災害。それから身を守るためには、地下奥深くにあるシェルターへと逃げなければならない。そう小さいころから進介たちは習ってきたのだ。

進介も士織と一緒にシェルターに逃げようとしたその時、携帯に着信が入り、慌てて進介は携帯の通話ボタンを押した。

 

「もしもし!?」

 

『進介! 空間震の中悪いが、奴ら(・・)の反応があった!』

 

「ロイミュードか」

 

どうやら面倒くさい事は一つではないらしい。進介は軽く舌打ちをすると、ベルトさんからの合流場所を聞いて携帯の電話を切る。

 

「殿町、悪いが姉ちゃんの事少し頼むわ!」

 

「えっ!? お前、どこに行く気だよ!」

 

「ちょっくらファミレスで待ってるバカな妹を叱ってくる!」

 

「し、進君・・っ! や、やめて! いかないで!」

 

琴里がファミレスにいると嘘をついて、殿町に士織の事を任せる進介。士織はそれを聞いていくのを止めようとしたが、進介はそれに耳を傾けずに学校の外へと出て行った。

学校から数百メートル離れた場所で、進介は人のいないスーパーの駐車場に停められていた、荷台にタイヤが付いた赤いスポーツカー――トライドロンに乗り込んだ。

 

「待たせて悪かったなベルトさん」

 

トライドロンの助手席と運転席の真ん中あたりにあるカーナビの上につけられたベルトさんに謝る進介。

 

『NoProblem! それより、奴らは空間震の震源近くにいる。少し危険だが、心の準備はいいかね?』

 

「元から危険と隣り合わせなんだ。そんな覚悟、とっくにできてる」

 

先ほどまでとは違い、鋭い目つきでハンドルを握る進介。車内の中央にセットされているベルトさんを引き抜いて腰に巻き付けると、進介はポケットから大きなブレスを取り出し左手首に装着する。

 

「それじゃあ行こうか、ロイミュードを倒しに」

 

『OK! StartYourEngine!』

 

ベルトさんの掛け声とともに、進介はトライドロンを空間震の震源地へと走らせた。

 

 

空間震の震源地へと着いた進介たちが見た光景は、悲惨なものだった。先ほどまで建っていたであろう建物はすべて吹き飛ばされており、地面にも大きな亀裂が入っている。離れたところでは火災も発生しており、まさに地獄ともいうべき状況になっていた。

亀裂に沿ってトライドロンを進めていく進介。近づいていくごとに亀裂の穴は徐々に大きくなっており、それにつれて周りにある建物の残骸もなくなってきている。そして、その亀裂の発生源であり、空間震の震源地にきた進介は、トライドロンから降りるとその光景に絶句した。

 

「酷いありさまだな」

 

その一帯だけが、まるで何かで掬ったかのように綺麗に抉り取られており、深さで言えば10mはあるであろうその大穴。空間震が直撃した証拠だろう。この付近に進介たちの目当てがいる筈なのだが、やはりロイミュードたちも空間震を喰らってまともにはいられないのか、姿形は見受けられない。

 

『別のところに逃げたか?』

 

「いや、もしかしたらこの大穴の中にいるかもしれない。土煙でよく見えないが、晴れて逃げられるより先にこっちから仕掛ける」

 

『OK。ならば、慎重に行こう。周りは私のセンサーで何かいないか調べておく』

 

大穴に沿ってゆっくりと滑り下りていく。土煙ですぐに周りが見えなくなったが、ベルトさんが周りを警戒してセンサーを発動させているので、安心して行動することができる。こういう時に、頼りになる仲間がいるというのは実に安心できる。

一番奥深くまで滑り下りてきた進介は、足音を立てないようにゆっくりと前に向かって歩いていく。

 

『待て、進介! 人の反応がある!』

 

「人? こんなところに、俺たち以外に人がいるのか?」

 

ベルトさんに呼び止められて足を止める進介。こんな危険な場所に、一般人が来るわけがない。だが、人がいると言ったベルトさんの容姿が少しばかりおかしい。

 

「どうかしたか?」

 

『この反応。人間に似ているが少し違う。この反応はまさか!?』

 

ベルトさんが何かに気付いた瞬間、進介の目の前から斬撃が飛んできた。

咄嗟に左に避けてそれを回避した進介は、斬撃が放たれたであろうその場所に視線を向けた。先ほどの斬撃の勢いで土煙が晴れたその場所にいたのは、一人の美少女だった。

中世の鎧のようなドレスを着た、神に愛されたといっても過言ではない黒髪の少女。そして、その少女の手に握られている、巨大な剣とその後ろにある巨大な金色の玉座。恐らく、先程の斬撃は彼女が放ったのだろう。握っている剣に、虹色に輝く光が見える。

 

「貴様も、私を殺しに来たのか」

 

少女が呟いたその言葉。その悲しげな視線と美しい容姿も相まってか、進介の眼は彼女に奪われていた。




一応この時点で進介はドライブに変身できます。グローバルフリーズについての説明は、次話かその次の話で書きます。

兄の結婚式があり、テストもあり、なにかと書く時間がなく、気が付けば最終投稿から2ヶ月経っており、「このままだとマジで完結させれねえ」と思い原作通りに進めることを決めました。進級したらさらに時間が無くなり、オリジナルストーリーで進めることができなくなるため、このような形でリメイクしたこと、大変申し訳ございませんでした。
幸い、3月には時間がたっぷりあるので、その間に話を進められたらいいと思っております。一部、士織の性格やマッハとチェイサーの処遇など設定変更がありますが、リメイク前と大まかな話は変わりませんのでご安心ください。
今後とも、デート・ア・DRIVEをよろしくお願いします

では、また今度

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