嫌な予感がした。ただそれだけで学校へと向かう僕を馬鹿だと思う奴はいるのかもしれない。
胸騒ぎがした。ただそれだけなのに危険地帯へ向かう僕を貶す奴はいるのかもしれない。
それでも、僕は向かう
「view map()」
魔力を消費し魔術の発動。周囲の情報が頭のなかに現れる。2つ並んで動く物体がある。遠坂凛とアーチャーだ。
方角的に見て遠坂邸に向かっているようだ。それよりも学校に近い位置に衛宮の反応がある。どうやら特に問題はなかったらしい。
いや、負傷しているのか?酷く歪な歩きだ。まさか遠坂が?
それはないか。一般人を巻き込むような真似は遠坂はしないだろう。じゃあどうして負傷している?聖杯関係ではないとすれば御の字だけど…
「様子を見に行ったほうが良さそうだな」
衛宮と敵対するつもりは今のところはないが、もしサーヴァントを召喚して攻撃してきたのなら応戦する必要がある。極力魔力消費を抑えるしかないか。
ここにはエリクサーみたいな便利アイテムなんか存在しないのだから
" "
「ああ、様子見が主な目的だよ。」
" "
「お前がそれを言うか?」
" "
「事実だ、受け入れろ」
魔術がきれる前に桜の居場所を特定する。
間桐の屋敷へ向かっているようだな。ライダーも傍らにいる事から危険は無さそうだな。
衛宮の家に向かう。もし、衛宮の負傷がサーヴァントによるものだったとしたら、目撃者である衛宮を消しにくる可能性は高い。まったく、損な役回りだね
◇
衛宮の家の前で衛宮と出会う。タイミングは良かったようだね、案の定負傷していた。
心臓部に当たる場所に穴、その周りに血がある。間違いなくサーヴァントのしわざだ。
「慎二、こんな遅くにどうした?」
「衛宮こそ、随分遅かったようだな。今まで道場を掃除していたのかい?」
その言葉に苦い顔をする衛宮。なんだ?僕を疑っているのか?失礼なやつだな
「ところでさ、その傷は大丈夫なのか?血がついてるけど」
「あ、ああ。平気だ」
嘘が下手だなこいつは。視線があからさまに泳いでいるぞ
「た、立ち話もなんだ。入れよ、茶くらい出す」
話をぶった切る衛宮。よほど聞いてほしくないように見える。
ここで追求するのは逆効果だな。
「まあ、そうだね。お邪魔させてもらうよ」
衛宮は中に入る途中、少し顔を歪めるとそれを振り払うかのように中へ入った。
どうやら、僕のサーヴァントに反応したんだろうな。これでさらに警戒されるか…まあ、いいけど
衛宮の家には侵入者探知用の結界が張られているのは知っている。何度か訪れた際に気付いたが中々に高度な魔術だ。
こんなもの、衛宮に使えるとは思わないが……今は助かっている。侵入者に気付けるのなら不意打ちはされないから。
「で、慎二はどうしてこんな時間にうろついてたんだ?」
「ああ、少し桜と喧嘩してね。今日一日は誰かの家に泊まろうかと思っていたのさ」
「誰かって……」
「そう、お前だよ。だってお前の家広いし」
「まあ、いいんだけどよ」
後で桜にメールしておかないとな。じゃないと怒ってきそうだ。
ふと、机の上にある皿に目が行く。どうやら桜が用意したものみたいだな。僕の妹ながら献身的だな
「まあ、夕食は気にしないでくれ。既に軽くすましてきたから」
「俺の家にくるのなら別に食わしてやったのに」
流石に桜に悪いからな。断らせてもらうよ
「ーーっ!!」
突然衛宮が何かに反応した。
誰か侵入してきたのか?悪い予感はあたってほしくなかったんだけど。一体何時から僕は未来が読めるようになったんだ
「慎二、どこかへ隠れているんだ」
こいつは何を言っているんだ?ああ、僕が魔術師だって知らないのか。知ってるのはこっちだけと。
まあ、どうでもいい。こいつが死ぬのは少しばかり困るからね。
競争相手がいなくなるのもそうだけど、なによりも桜が悲しむだろうな。せっかく戻った感情を悲しみで埋めるなんてあんまりじゃないか
「いいや、隠れるのはお前のほうだよ。衛宮」
その言葉に衛宮は立ち上がり、興奮して叫ぶ
「冗談じゃないぞ!今この家には」
「胸の傷を付けた奴がいる…」
「っ!!!」
ビンゴ。図星というか正解をつかれてたじろく人ってのは滑稽だね。まあ、そんな事よりも
「あーあ、本当はあたってほしくなかったんだけどね。まあ、僕の予想が外れるなんてそうそう無いけど」
「慎二、お前は…」
「生憎と僕は関係者なんでね。こうして無関係者である衛宮が狙われると踏んで助けに来たってわけ。感謝しろよ?」
「いったい、何の…」
こんな悠長に話してる余裕なんて無いだろうに。
衛宮を蹴り飛ばし、僕もその反動で後ろに下がる。
「ぐあっ!」
先程まで衛宮が立っていた場所に槍が刺さっていた。本当に勘弁してくれよな
「衛宮、お前は何処かへ行っていろ。こいつの相手は僕がする」
「慎二、お前は!!」
「僕は大丈夫だから、寧ろお前が邪魔なんだよ」
「なっ!!」
なんで驚いてるんだよ。当たり前だろ?一魔術師がサーヴァントに敵うわけがない。むしろ足手まといだ。
サーヴァントを従えてる奴じゃないと話にならないよ
「まあ、お前が逃げるくらいの時間は稼いでやるよ。その隙に準備するとかしてな。今のお前にここにいる価値はない」
「くっ!!!」
走り去る衛宮。どうやら蔵に向かうようだな。何か隠し球でもあるのか…気にしてもしょうがないか
「というわけで、僕が相手だけどいいかい?」
「本当はあの坊主を先に始末したいんだけどなぁ。まあ、2人目のマスターの情報が手に入るのなら少しくらい順番が変わっても構わないだろ!」
「随分と好戦的だね。その槍を見る限りランサーと見たけど…」
「正解だ!」
獰猛な目でこちらを見てくるランサー。僕だったら1合も打ち合えないであろう、その胆力は計り知れない。
まあ、僕が戦うわけじゃないからいいんだけど
「じゃあ、庭に出ようか。無駄に物を壊すよりはマシさ」
「へっ、好きにしろ」
結構いいやつだな。こいつのマスターは正直腹が立つけど
◇
「とっととサーヴァントを出しな。それくらいは待ってやる」
この言葉、戦いが好きな戦闘狂か。こういう相手だと策略で倒すほうが楽なんだけど……
仕方ない。ここは純粋に戦うとしよう。頼むよ
「こい、"セイバー"」
魔法陣が現れその中心にサーヴァントが現れる。赤い服に身を包んだ男装の少女…
セイバーが剣を構えて立っていた
「うむ!余に任せておけ」
「はっ、よりによって最良のサーヴァント、セイバーか。相手にとって不足なし!」
「此度は余の独壇場である。一度倒した貴様などに負けるわけがなかろう!」
「意味がわかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」
両者は同時に地面を蹴り敵へと接近する