霊夢Sido
私は携帯の一覧をざっと見る。
ダメだ。『常識を失わせるような』ことをするやつはいない。
記憶を探れ。何処かにいるはず———。
「じゅうだいめぇええ!!!」
・・・そこで私の集中力はプツリときれた。
携帯を思い切りベッドへ投げ捨てる。獄寺うるさい・・・!
私はとりあえずそのまま携帯を放置してリビングへと降りた。
今、沢田は確かリボーンさんと一緒に山本の元へ行っていたはず。おそらく、妖夢もそちらへ向かったんだろう、ここには沢田母と私しかいないはずだ。
そこには、金髪の幼女を抱え上げた獄寺がボロボロになって駆け込んでいた。
・・・誘拐ダメ絶対。
と、その幼女には見覚えがあった。
「あら、フランじゃない」
「あー。れーむー。このお兄さんがね、なんかねー」
「こら!お前なぁ、勝手なこと言うなよ!」
「むぐぐー?」
誘拐したの?という疑念のこもった私の視線に耐えきれず、獄寺はその手を離した。
自らは潔白であり、何の罪もないと言っているようだ。
「こいつが風紀委員の連中にいびられてた気がしたから連れてきたんすよ」
「うー?ふーきいーんちょーさん・・・だっけ?に直接、道を聞いただけだよ?」
「確かフランも並盛中に入るのよね」
「うん!だから職員室どこかなーって」
獄寺は一気に脱力した。それで風紀委員に目を付けられて・・・ってもともとか。そもそもあんな真面目な奴らがいびる、なんてするはずがないと思う。
私はフランを抱き寄せてその頭を撫でながら、獄寺へ向けてため息をつく。
フランはあり得ない。獄寺と初対面の様子からして、そうなのであろう。
記憶喪失(物理)でなんか忘れさせそうだが、それ以前にフランなら殺せそうだから、それは無いだろう。
そこへ魔理沙が訪れる。
魔理沙は獄寺を見て一瞬気まずそうに顔をうつむかせると、フランを見つけたかそちらへ駆けていった。
・・・獄寺の顔が、また渋いように顰められる。
私は気にしていないふりをして、フランを魔理沙へ引き渡す。
「さて、獄寺。その風紀委員長さんの元へ行きたいのだけど」
「なんでだ?」
「いいえ?ただの好奇心。・・・私は私で、行動させてもらうわ」
獄寺を引きずって私は歩き出す。
・・・そして並盛中。その屋上。探しつかれたからとりあえず来て見た。
獄寺はもう帰っている。
風がサァッと抜けた。
殺意らしき感情が向けられる。私は咄嗟に体制を低くした。
先ほどまで頭があったところをトンファーが通り抜けていく。
危ないわね、まったく。
「わぁお、これを避けたのは君が二人目だよ」
「あらそう。後ろの知り合いは避けれなかったわけ?」
「当たらなさそうで当たった。それだけだよ」
とても着崩している男を見てただ思ったこと。
こいつは、おそらくフランが言っていたやつである。
雰囲気というか・・・なんというか、まあそんな感じがしたから。
トンファーを構え直したそいつはまた突進してくる。
懐からお祓い棒を取り出して何回か振ってトンファーを受け流す。
私はそいつの横っ腹に蹴りをいれてやった。
フン、と鼻を鳴らして、私はそいつを見下ろした。
「・・・結構やるね。群れなくて、強い・・・理想だね」
「うるさい。で?まだやるの?」
「赤ん坊が君の実力を見たいって言ってたから付き合ってあげてただけだよ。ほら、咲夜。帰ろう」
そいつは知り合い——咲夜を一瞥したら帰って行く。
群れる?・・・なんのことやら。
「赤ん坊」と言われて思い浮かぶのはリボーンさんしかいない。
リボーンさんが私の肩に乗っていた。
「流石だな博麗」
「どーも、お褒めに預かり光栄にございます・・・んで、秘密事はよろしくないので?」
「そうだな・・・。お前が俺に一本とれたらいいだろう」
「なによそれ。無理難題でしょう」
私はリボーンさんが肩から降りるのを、呆れながら見ていた。
刹那、パァン!と破裂音が響く。その弾丸は私の真横を通って行った。
『見切り』。私はこれをそう呼んでいる。
「ふむ・・・。お前、確か結界を張れるといっていたな」
「あのねぇ。それずいぶん前のお話よ?今引っ張ってきてどうするの?」
「その結界を張って、三弾、耐えられたらいいだろう」
「・・・それ、負けたら巫女としての面目丸潰れよ」
「そうだな」
リボーンさんはニィッとだけ笑った。
これは少し面倒臭いことになりそうだ。
私はその場で正座し陰陽玉をイメージする。
それに近しい色・形をした結界が形成される。
「・・・」
リボーンさんがガン見・・・ええい!気にするな!
すると、チャッと銃が構えられる音がする。
パァン!
・・・一発。
パァン!
・・・二発。
パァン!
・・・三発。
結界はまだ無事である。
少々怖かった、というのはここだけの秘密としておこう。
「・・・よし、よくやった、博麗」
「ふぅ。で?これでどうなるのよ?」
「さぁな?・・・これからも頑張れ。ダメツナをよろしくな」
「なんで沢田が・・・あっ?!リボーンさん!!」
リボーンさんはトンッと屋上から飛び降りて行った。
私はきっと顔を赤くしているだろう。
「・・・っ!なんでそんなリボーンさんは・・・!」
カァーーン!
おそらく山本がホームランを打ったのだろう、そんな音が屋上まで響いてきた。
対して雲雀さんデテナイヨー。
そして名前すらデテナイヨー。
え?あ、最後?
別に霊夢さん赤ん坊(リボーン)が好きなんじゃないですよ?
ほら、『ツンデ霊夢』って言葉、あるでしょ?
滅多にそんなシーン無いんで「いつのまに?!」感が半端ないですがご愛嬌で。
獄寺と魔理沙、このままお互いズルズル引きずってたらどうしよう。
そして山本と妖夢さんマジ空気。
・・・では、また次回!
前話までを読み直し、ふと、炎真くんとアリス書いてねぇよ!!
・・・と思い、三話に追加しました。
本当に申し訳ありませんでした。