目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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タイタンズハンド

 

二日後の47層。

 

「そこに隠れてる奴、出てこいよ」

 

キリトの声で、ぞろぞろと姿を表すオレンジカーソルのプレイヤー。そしてロザリア。

 

「私のハイディングを見破るなんて、中々高い索敵ね」

 

そりゃそうだろ。相手を誰だと思ってんだババァ。俺はキリトの声では現れずに今だ隠れている。

まさか、狙ってるのがキリトとシリカだったなんて…。

どうして俺はこんなことに…。

 

 

___________

 

 

一時間前。

ロザリアからメッセージが届いた。

 

『門の外を着なさい。ロザリア』

 

門の外は着れませんよロザリアさん…。と、思ったらまたメッセージが届いた。

 

『門の外に来なさい(このメールは一通目です)。ロザリア』

 

丸々さっきのメールなかったことにしてるよ…恥ずかしかったんだろーなー…。

と、こんなことしてる場合じゃない。ホントは行きたくなかったが、俺は潜入中なのであって逆らえば信頼を失いかねない。向かうか…。

門から出ると、何人かの気配を感知した。なんのつもりだ?

 

「いるなら出て来てもらえないですかね。待ち合わせ場所に人がいないとか不安になるんで」

 

そして姿を表す7人のオレンジカーソルプレイヤーとロザリアさん。

 

「へぇ、なかなかやるじゃない。合格、てことにしといてあげるわ」

 

警戒心無さ過ぎろ…そんな簡単に人を信用するなよ。

 

「なんのようですか」

 

「仕事よ。盗賊のね」

 

「は?」

 

「だから、今からターゲットがアイテムを持って戻ってくる。それを襲うの。いいね?」

 

本当は死ぬほど行きたくなかったが、仕事に連れて行かされるというのは信頼の証と言ってもいいだろう。

 

「はぁ。で、場所はどこっすか?」

 

「場所は…」

 

 

______________

 

 

で、47層である。

無理無理無理無理無理無理無理ですよ。こんなザルじゃキリトは倒せないって!

だが、不思議なことにロザリオ一派は余裕の表情。お前らアリがライオンに勝てるとでも思ってんのかよ。

まずい…俺でもキリトに勝てるかなんて危ういのにそれに消しカスが着いたところでなんも変わらねぇよ!

心なしかキリトも不機嫌に見えるし。昨日のことまだ起こってんのかな…。

俺がパニクってる時も、こいつらは冷静に会話をしている。そんな中、聞き捨てならない声が聞こえた。

 

「いや、タイタンズハンドのリーダーと呼んだ方が言いかな?」

 

……?

今なんつった?こいつ、まさか全く俺と同じ目的でここに来たのか?

俺、これ詰んでね?しかも役回り損だし…。

どうにか脱出する方法を考えてる間にロザリアの部下はキリトに斬りかかる。で、自動回復でHPが減らないことに気付いて戦意喪失。

あ、ダメなパターンだこれ帰ろう。そう思った時だ。

 

「観念するんだロザリアさん」

 

「こ、こっちにはまだ秘密兵器があるんだ!おい!いつまでも隠れてないで出てこい!」

 

なんで呼んじゃうんですかねー…。ていうか秘密兵器ってほど大層なもんじゃないんだけど。

仕方ない、どうにかキリトに気付かせるか。そしてなんとか殺されないようにするしかない。

腹を括ろう。

 

「なっ…!」

 

「え、エイトマンさん!?」

 

俺の登場に二人は驚愕する。ロザリアはなぜか勝ち気だが、今にもぶん殴ってやりたいです。

 

「エイトマン…てめぇ」

 

キリトが怒りによってなにかに覚醒しそうな顔で俺を睨む。ハッキリ言ってすごく怖い。今にも土下座しそうだ。

だが、俺は俺でとあるギルドの仇打ちをしなければならない。

はぁ…結局、俺の役回りはこーなるのか。ホントに嫌になる。こんな方法ばかり思い付く自分が。結局のところ、俺は潜入であれなんであれ、誰かと協力することは出来ないようだ。

 

「ロザリアさん、悪いけどあんたは部下を連れてアジトに戻っててくれないか?」

 

「なにをいきなり…」

 

「キリトは強い。あんたじゃ戦力の足しにもならない」

 

「はぁ?あんたはどうなんだ?」

 

「あんたの隠蔽見抜いてる時点で俺もあいつもあんたより強いよ。大丈夫、絶対に花はとって来てやる」

 

「…っ!仕方ないね」

 

よし、ロザリアは行った。あとはむこうだ。キリトは俺に言う。

 

「本気なんだなエイトマン」

 

「あぁ。一度お前と戦ってみたかったんだ」

 

「片方は必ず死ぬことになるぞ」

 

「知るか、最強は一人で十分だ」

 

俺は剣を抜く。それに応じるようにキリトも剣を抜いた。

 

「シリカ、下がってろ」

 

「は、はい…」

 

で、お互い隙を伺うようににらみ合う。その瞬間、俺は煙玉を投げた。

 

「なっ…煙幕!?」

 

そう、俺は戦うとは言ったがデュエル申請をした覚えはない。つまり、この戦いにおいて俺はシリカからプネウマの花を奪った時点で勝ちだ。

そして、索敵を使ってシリカからプネウマの花を奪う。

 

「きゃっ!」

 

「シリカっ!」

 

そして、さっさと転移結晶を取り出す。

 

「じゃあな、黒の剣士」

 

その捨て台詞を吐いて俺は転移した。

 

 

____________

 

 

ロザリア達が待つアジトに入る。

 

「あ、あんた!どうだった!?」

 

「すまん、殺し損ねたが花はもらってきた」

 

「へ、へぇ…やるじゃない。じゃあ早速その花を見せてもらえる?」

 

アイテムストレージから花を取り出す。そして、それをロザリア達は眺める。

 

「ふぅん、中々じゃない。よくやったわねあんた」

 

「まぁ、な」

 

気分は最悪だけどな。まぁ、これからが俺の狙いだ。俺は立ち上がってロザリアの前に行く。

 

「な、なんだい?」

 

「はっ」

 

薄く笑うと、ロザリアの頭を掴み壁に叩きつけた。そして首元に剣を当てる。

 

「な、何の真似よ!」

 

ロザリアを助けようと部下達が動くが、それに一言言ってやった。

 

「動くな、動いたらこの女を殺す」

 

「……っ!」

 

全員が止まったのを確認するとロザリアに質問する。

 

「お前らの他、もしくは後ろにはなにか組織があるのか?何組ある?そしてバックの組織の名前はなんだ?答えろ」

 

「な、なにを…」

 

「いいから答えろ。死にたかったら黙秘でもなんでもしてな」

 

「……っ!他の組織のことなんて知らない。でも私達の後ろにはある」

 

「組織名は?」

 

「ら、ラフィンコフィン…」

 

「…ラフィンコフィン」

 

聞いたことあるな。レッドやオレンジが集まった殺人ギルドだったか…とにかく、正直に話した以上は解放してやらねぇと。

ど、思うじゃん?

俺はロザリアの口に麻痺毒をぶち込んだ。

で、プネウマの花を回収する。

 

「おいお前ら、今から10秒いないにこの転移結晶で牢獄へ飛べさもないとこいつを殺す」

 

「……」

 

「一人でも逃げたら全員殺すからな。覚えとけよ」

 

で、俺は無事にタイタンズハンドを解体した。

さぁ、最後の締めだ。

 

 

_____________

 

 

47層の門の前。

そこに俺はキリトを呼び出した。

 

「なんのようだタイタンズハンド」

 

「シリカは置いて来たんだろうな」

 

 

キリトは答えない。俺のオレンジカーソルに気付いたか。

 

「お前まさか…」

 

俺は無言でプネウマの花をキリトに投げる。

 

「なんのつもりだ?」

 

「タイタンズハンドなら俺が解体した」

 

「!お前そのオレンジカーソル…」

 

「殺しちゃいねぇよ。ただ剣で脅したあとに麻痺毒を口に突っ込んだだけだ」

 

「また、助けられたな…」

 

「それは違う。女の子泣かしてアイテム取り上げてギルド解体しただけだ。お前のためになることなんてなんもしてねぇよ」

 

「それも、汚れ役を自分が受け持った、とでも言いたいのか?」

 

「……」

 

思わず黙り込んでしまう。

 

「なんで、お前はそこまで自分を追い込む」

 

「そうじゃない。ただ、シリカみたいな子供は俺と関わるべきじゃないから関係をリセットしただけだ」

 

「なんでお前と関わるべきじゃないと言い切れるんだ!?」

 

「知ってるだろ。俺のやり方はいつも斜め下過ぎるからだ」

 

「分かってるならなんでやり方を変えようと思わないんだよ!」

 

「前にも言っただろ。なにかを解決するには誰かが犠牲にならなければならない。でも俺が犠牲になっても誰も傷付かない。実質ノーリスクで問題を解決出来る」

 

「……」

 

今度はキリトが黙り込む。そこに声が聞こえた。

 

「そ、そんなことないです!」

 

なんでシリカがここにいるんだよ。

 

「え、なんで…」

 

「いるの?、だろ?」

 

「連れて来るなって言ったよな?」

 

「俺がお前の言うこと聞くと思うか?」

 

あーあ、こんなこと初めてだよ。どーすんのこれ。ぼっちは同じミスは繰り返さないが初体験には弱いんだよな。

 

「ダメだぞシリカ。良い子は寝る時間だ」

 

「こ、子ども扱いしないでください!ってそんなことじゃなくて!」

 

ぷんすか!って音が聞こえそうなくらい怒ったあとに話題を変えるシリカ。

 

「え、エイトマンさんがもし傷付いたら悲しむ人だっているはずです!」

 

「19年生きててそんな人は家族含めて現れなかったけどな」

 

「お、お友達とか!」

 

「いないな。一人野球を開発してたくらいぼっちだった」

 

「ひ、一人野球…?」

 

キリトが戸惑ったように言う。シリカはまだ諦めない。

 

「た、タイタンズハンドの人達!」

 

「たった今、牢獄にぶち込んできたばっかだ」

 

この子、さっきまでの話し聞いてたの?それともアホなの?

 

「な、なら私がいます!」

 

「は?」

 

「私がエイトマンさんが傷付けられたりしたら….なんか、こう、嫌な気持ちになります!だから、だから…」

 

おいおいなんでまた泣くんだよ。

 

「あー分かった!分かったから泣くなって!」

 

 

俺みたいに目の腐った奴の前で女の子に泣かれると色々とまずいんだよ。特に周りの視線が刺さるように痛い。

必死に泣き止まそうとすると、シリカは涙目で俺を見てくる。

 

「ほ、ホントですか?もうあのやり方やめてくれますか?」

 

「ぜ、善処します」

 

その言葉を口にすると、キリトがニヤニヤした様子で俺を見る。

 

「…んだよ」

 

「別に?ただ、これでとりあえず矯正は出来たかなって」

 

「あっそ。でもソロはやめる気ないぞ」

 

「それに関してはとやかく言うつもりないよ。俺もソロだし」

 

「そーですか。あ、最後に一つ」

 

「…?」

 

「ラフィンコフィンっつー殺人ギルドに気を付けろ。タイタンズハンドのバックにいる連中だ」

 

「!」

 

「そんだけ。じゃな」

 

さて、しばらく攻略サボってたからな。久々に最前線に顔出しますか。

 

 

 

 


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