目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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プネウマの花

 

 

俺はあの後、二層に入った瞬間に後ろから声を掛けられた。アスナとキリトだ。

 

「まずはキバオウさんから」

 

「ちょっと待てキバオウ誰?」

 

「あのもやっとボールみたいな頭の人よ。『ワイは自分のこと許さんからな!そして絶対認めへんからな!』」

 

いやお前に許して欲しくないし認められたくもねぇから。

 

「で、私から。あんな臭い演技、一発で嘘だって分かるから。私は全部分かってるから、だから、次の攻略も参加しなさいよね」

 

「お前が許しても他のやつが入れてくれないだろ。それ以前にまずパーティ組む奴がいない」

 

「その時は私が入れてあげる」

 

で、微笑むアスナ。

 

「次は俺だ」

 

キリトが険しい表情で口を開く。

 

「まずは、サンキューな。俺はβテスターなんだ。助けられた」

 

黙って聞いてる。

 

「でも、素直にお礼を言う気にはなれない」

 

「別にお礼なんて言わなくていいだろ。俺が好きでやったことだし、むしろ勝ったのに悪い雰囲気にしちまって申し訳ない」

 

「そういうことじゃない。どうしてお前が泥を被らないといけない?他に方法はあったはずだ。誰も傷付かない方法が。それなのに」

 

「誰も傷付かない方法なんてねぇよ。問題を解決するには誰かが傷を負わなければ解決しない。争いを収めるにはそいつら共通の敵を作ってやればいい。その敵を俺が演じてやれば」

 

「だからなんでそれをお前がやらなきゃいけないんだ」

 

「決まってるだろ。リアルで俺がそういう役回りだからだ」

 

「ここはリアルじゃない」

 

「でも傷を負う奴のダメージも最小限に抑えなきゃいけない。自慢じゃないが俺は傷を負うのは馴れてる」

 

「ホントに自慢じゃない…」

 

アスナが呆れたようにこめかみを抑える。

 

「だからって…」

 

キリトは納得いかない様子だ。これ以上は水掛け論だな。

 

「とりあえず、俺は先を進むしこの方法はこれからも変えるつもりはない。お前らも元気でな」

 

「最後に言わせてもらうぞ」

 

キリトは重々しく言う。

 

「お前のやり方は間違っている」

 

「……」

 

「それをお前にいつか、いつか教えてやる」

 

「いつか、か。期待しないで待ってるよ。じゃあな」

 

そう言うと、俺は二人の前から立ち去った。

って言うのが二年くらい前の話。で、俺は今35層の迷いの森にいる。なぜ俺が攻略を中断してこんな所にいるか、それはあるギルドを追っているからだ。オレンジギルドのタイタンズハンドに潜入し、内部からそいつらを叩く。

すでに潜入には成功しているが、これがまた面倒なことになってる。

 

「そういうあなたこそ!碌に前衛に出てないのにクリスタルが必要なんですか!?」

 

今、怒ってるのはシリカという明らかに小学生くらいの女の子だ。そしてケンカの相手は、

 

「もちろんよぉ。おこちゃまアイドルのシリカちゃんみたいに男達が回復してくれるわけでもないもの」

 

こっちはロザリア。ぶっちゃければ、俺が潜入しているオレンジギルドの頭だ。

喧嘩の内容は回復アイテムの取り合い。お前らいい歳なんだからそのくらいで喧嘩するな、と言いたいがこのゲームに限ってそうは行かない。死んだら、リアルでも死んでしまうからだ。

まぁ、だからこそお互い仲良く分け合うべきなのだが、シリカは明らかに小学生だし、そんなことで文句を言ってしまうのも幼さから来ているものだろう。

俺は内輪揉めは好きだが、それは俺が内輪にいないことが大前提となっている。つまり、今この状況は俺の中の最悪の事態である。

 

「わかりました!アイテムなんていりません!」

 

おお!小学生のがおとなだ!

 

「その代わりあなたとはもう組まない!私を欲しいというパーティは、他にも山ほどいるんですからね!」

 

あ、そっちね…妥協ね。

シリカはそのまま森の中に行ってしまった。っていやいやいや、お前バカなの?それとも自殺志願でもしてるわけ?ほっといてもいいのだが、さっきも言った通りこのゲームは死んだら終わりだ。見捨てるわけにもいかない。

 

「悪い、ちとあいつ追うわ」

 

俺はパーティメンバーの返事を待たずにシリカを追う。

確か、こっちの方に行ったはずなんだが見当たらない。マジかよあいつどこまで行ったんだよ。

すると、「ピナァァァッッ!」と、声が聞こえた。ピナって確か…シリカのトカゲだったな。声から察するにピナが攻撃を受けたか、最悪死んだかだろう。ならのんびりしてる暇はないようだ。

ダッシュで声の聞こえた方向へ走る。……いた。ゴリラに囲まれてる。

俺は剣を構えてエクシアの特攻みたいに突っ込む。これなら間に合いそうだ…と、思ったら目の前にみたことある影がゴリラを全滅させてしまった。

特攻の目標であるゴリラが消えたってことは、俺の目標は消滅したことになる。つまり、俺はそのまま通り過ぎ、シリカが座り込んでいた木に特攻。お陰で剣の耐久値が0になり、消滅してしまった。

あぁ…結構気に入ってたのに…誰だ俺の邪魔をしやがってと思いながらゴリラを殺した奴の方を睨むと、

 

「エイトマンか?」

 

「キリト…」

 

お前かよ….と、思ってるうちにキリトが声を掛けてくる。

 

「なにしてんだこんな所で」

 

えーなにそのすっとぼけた顔。ちょっとイラっとしちゃったゾ☆

 

「なにしてんだじゃねぇよ。お前のおかげで俺は剣をおじゃんにしたんだぞ」

 

「あ、あの…」

 

「え?俺のせい?なんで?」

 

「お前さ、自覚ないってのが一番問題なのわかんない?」

 

「あのぉ…」

 

「エイトマンには言われたくないな」

 

「あ?どういう意味だ」

 

「あのぉっ!」

 

突然声がして俺もキリトもビクッとする。なに、シーブック?と思ったが違った。シリカが涙目でこっちをマジマジとみつめていた。

 

「お二人とも、助けていただきありがとうございました」

 

「いやいいって」

 

「そうだな、俺はなにもしてねぇしな。剣をどっかの黒いのに折られたくらいだ」

 

「そーいえばエイトマン。剣どうしたんだ?」

 

「…お前それ本気で言ってんの?」

 

「……なにが?」

 

この野郎…まぁいいそんなことより大事なことがある。

 

「それよりシリカ。お前たかだかクリスタルくらいで切れて森へ一人で突っ込むってどーいうことだ」

 

「う…」

 

「別に自殺願望なら構わないけどお前が死んだら悲しむ奴がいるのも忘れんじゃねぇよ」

 

「はい、すいません…」

 

「俺は別に悲しまないけど」

 

「え?」

 

「ちょっ…エイトマン…」

 

あ、やっべ…つい本音が…。

恐る恐るシリカを見ると、目に涙が浮かんでる。やっべー泣かせちゃった?

 

「ふぇ…ふぇぇぇ……」

 

あーあ…泣いちゃったよ。

 

「エイトマン」

 

キリトが怒ってる…やべっ、殺される…。

 

「泣き止むまで俺はお前を許さないぞ」

 

「り、了解しました…」

 

と、言っても俺は人を煽るのは得意だが泣き止ますのは得意じゃない。どうしたもんかね…。

 

「あ、そういえばシリカ。あのブルーアイズみたいな奴はどうした?」

 

「ふぇ?ぴ、ピナは死んじゃいました…うぅ…ピナぁ…」

 

「なら吉報だ。47層にプネウマの花っつーなんか色々生き返らせるアイテムがあるぞ」

 

「え?」

 

「ピナを生き返らせたいなら、そこに行けばいいんじゃねぇの?」

 

「で、でも…47層なんてとても私では…」

 

「大丈夫、我らがヒーローキリトさんが着いてってくれるって」

 

「え?」

 

「え?」

 

「そいつは攻略組でもトップレベルのプレイヤーだ。47層なんて目じゃない」

 

「ちょっとエイトマン!そこはお前が行くべきなんじゃ…」

 

「い、いいんですかキリトさん…」

 

「え?」

 

シリカの上目遣い×涙目、これで断ったら今度はお前に涙が浮かぶぞ。俺はドヤ顔でキリトを見る。キリトは怒りを隠そうともせずに俺を金剛力士像並の形相で睨んでくるが、シリカの前だ。なにも言えまい。

キリトは諦めたようにため息を付くと、シリカに微笑んだ。

 

「分かった。付き合うよシリカ」

 

「ありがとうございます!」

 

「じゃ、がんばれよ」

 

俺がそのままフェードアウトしようとした時だ。すれ違い様にキリトが俺にしか聞こえない声で言った。

 

「あとで覚えてろ」

 

キリトさん、怖いです。まぁ、俺にはそれよりも大事な用がある。ここで足止めされるわけには行かない。

 

 

 




なんか話が進むたびに長くなるな…

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