俺はメッセージを送り終えると、キリト、リーファ、ユイの元へ。二人は手を重ね、ジッと俺を見ている。…なんだよ。
「ほら、手!」
「手がなんだよ」
「出すんだよ」
「え、俺逮捕されるようなことした?」
「違うよ。普通分かるでしょ?重ねるの」
「普通の学生生活を遅れてなかった俺にお前らの普通は通用しねぇ」
「いいから、ほら早く」
言われて手を重ねる俺。その上にユイが乗った。……。で、どうすんの?
「…どうすんだよ」
「エイトマンが言えよ。リーダーだろ?」
「俺をリーダーにしても碌なことがないぞ」
「いいから、早くしなさいよ」
「お願いします!パパ二号!」
って言われてもなんて言えばいいか分からない。ま、テキトーに言うか。
「か、勝つぞー!」
「えー…」
「うわあ…」
「なんか、覇気の欠片もないですね」
なんだよその反応、お前らが言えって言ったんだろ。
「…行こうぜ」
「うん…」
なんでこんな空気になったんだろう…。
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中に入ると、周りにはまだ誰もいない。どうやら、ある程度進むとガーディアンが出現するらしい。囮の俺が先行する。その瞬間、出てくるガーディアン。攻撃してくるが俺は逃げ回った。
そして、俺の動きにガーディアンが翻弄されている間にキリトが一気に加速してゴールを目指す。
当然、キリトの前にもガーディアンが現れるが、リーファやら俺が魔法で潰し、道を作る。だが、それでもガーディアンは現れる。
「パパ!ダメです敵が多過ぎます!」
「分かってる!これ完全にクリアさせる気ないだろ!」
くっ、思ったより早いな…。それに敵の視線がリーファに向かないように暴れるにも限界がある。どうする…。だが、そこで門から新たなプレイヤーが来た。
「さ、サラマンダー!?どうしてここに!?」
リーファが驚愕の声を上げるが、そいつは敵じゃない。
「剣豪将軍!ただいま参上!」
その鬱陶しい声と共に突入してくるサラマンダーの皆様。そう、俺が応援を呼んだのは材木座だ。俺が頼み易く、尚且つ確実に俺の頼みを聞いてくれるのはこいつしかいない。
その材木座は自分の部下に指令を出す。
「ロンドベル隊はこの女性を援護!ニュータイプ部隊はなるべく敵を引きつけろっ!」
「「おうっ!」」
うわー…どっかで聞いたことあるよその部隊名…と、思ってると材木座が俺の横に来た。
「すまない八幡。遅れた」
「いや、ナイスタイミングだ材木座。お前は俺と一緒にキリトの援護頼めるか?」
「キリト?あのスプリガンか?よかろう!同行しようではないか」
相変わらず鬱陶しい奴だ。だが、気がしないな、
「なぁ材木座、しねぇなぁ…」
「あぁ、しない…」
「「負ける気がしない!」」
「エイトくんとあの人仲良いなー」
リーファからそんな呆れ声が聞こえたが無視。俺と材木座は一気にキリトの援護に向かう。材木座はそのままガーディアンに突っ込んだ。
「るふん!当たらなければどうということはない…あっ!あふん…か、掠った…あっば、倍返しだぁぁぁっっ‼︎‼︎」
グダグダ過ぎるぞ材木座…大体シャアとシローは所属が違うだろ。そんな材木座を見てキリトは言った。
「鬱陶しいな…エイトマンの友達は…」
「だろ?あれと付き合ってるとろくな目に合わねぇんだ。あと、友達じゃねぇ」
「パパ達!もうすぐ天井です!」
ユイに言われて俺とキリトは天井に着く。だが、そこにゴールはなかった。
「おいこれ…」
「天井!?なんだよ、通す気ないじゃないか!」
「パパ、ママにもらったカードを貸してください」
ユイはそれを持って解析する。だが、後ろからガーディアンが迫る。俺が行くしかない!
「キリト、アスナ助けろよ」
「エイトマン…!」
俺は無視してガーディアンを倒す。そして、
「パパ!ゲート開きます!」
ユイの声で開くゲート。それにキリトが入る。あとはあいつの仕事だ、キリトに任せよう。と、思ったのに、
「エイトマン!早く!」
「え、俺も?」
「早く!」
「お、おう」
仕方なく俺もゲートに入った。で、ギリギリ閉まるゲート。なんで俺も…と、言ってやろうと思ったが、今は文句を言うべき時じゃない。
「キリト、ここからは別行動だ」
「え…?」
「この迷宮区みてぇな所を別々で探すのは時間の無駄だ。ユイはキリトをサポートしてくれ」
「りょーかいです!でも、パパ二号は?」
「勘だ。俺の勘はよく当たるんだ。特に、嫌な予感はな」
「ダメじゃん」
「まぁな…あ、でもアスナのカードキーだけ貸してくれないか?」
「どうしてですか?」
「…ちょっとな」
で、俺はカードキーを受け取る。
「いいから。またな」
俺はキリトと別れ、別方向に進む。俺のエクストラスキルはなにも先読みするための物だけではなかった。俺が指定した相手の数分後の未来も見ることが出来るのだ。そして、俺がキリトに見えた数分後の未来は、キリトがオベイロンに捕まっているところだ。なら、俺は別行動をしないとキリトと同じ未来になる。
つまり、俺がこっそりオベイロンを倒すか俺がゲームマスターと同等以上の力を得なければならない。前者はまず不可能だろう。SAOのヒースクリフはシステム的不死だった。つまり、オベイロンがそうであってもおかしくない。
だが、後者は可能性がないこともない。ここは奴の拠点だから、どこかにゲームマスター室的なものがあってもおかしくない。
どこだ、どこにある…?と、思って探すこと10分。いい加減帰りたくなって来た所で見つけた。俺はアスナのカードをスキャンし、ゲームマスター室に入る。
「やったぜ…」
いや、安心するのは早い。もしかしたらオベイロンに気付かれているかもしれない。そう思ってとりあえず監査カメラを確認することにした。
『ふはははっ!甘い!甘いぞぉ!』
うーわ…マニアックな変態だ。とりあえず、どこかをいじらないと…。ここにいればゲームマスターになれるというわけではないだろうから、どこかにスイッチがあるはずだ。と思って探してると、あった。
俺はそれを押す。変化はあったかと監視カメラを見るが、オベイロンは気付かずにアスナとキャンディを間違えてる。
この調子で片っ端から今入ってるスイッチをOFFにした。
『貴様ァッ!きさ…あれ?動ける…』
『え…?』
『キリトく…きゃあっ!』
アスナが繋がれてた紐から解放される。
『さぁて、須郷。覚悟は出来てるな?』
『ば、バカな!私はゲームマスt…あれ?管理者権限が変えられてる?いつの間に…』
『死ねぇぇぇっっ‼︎‼︎』
『ぎゃあぁぁぁっっ‼︎‼︎』
まさか…管理者権限書き換えただけでこうなるとは…いや、まだ俺の仕事は終わってない。アスナがログアウト出来なかった理由を探さないと…。
と、いうわけで、俺は裏で誰にも気付かれることなくすべてを終わらせた。