目の腐ったSAO   作:ウルトラマンイザーク

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アスナ

 

 

アルンに着いたあと、メンテナンスにより一時的に俺達はログアウトした。メンテナンスがあると知った時は俺達の動きが勘付かれたと思ったが、半日ほどで終わるのでホントに普通のメンテナンスだと推測した。で、小町の作った飯を食べながらテレビを見る。もしかしたら、まだ帰還していないプレイヤーのことがニュースでやるかもなんて淡い期待をしながらぼんやり見ている。そんな俺に電話が掛かって来た。

 

「もしもし?」

 

『桐ヶ谷だ』

 

「お前、どこで俺の電話番号を…」

 

『エギルから聞いた』

 

あの、エギルさんて本当になんなんですか?ハッキングとかそーいう感じの人ですか?

 

「で、なんか用か?」

 

『アスナのお見舞いに行かないか?』

 

「アスナの?」

 

『うん。池袋なんだけど』

 

「おい待て。ここから何時間掛かると思ってんだ」

 

『いいだろ?俺はこれでもほぼ毎日行ってる』

 

「……わーったよ」

 

『すまん。じゃあ、あと二時間後に千葉駅の改札にいるから』

 

「え?お前がこっちに来るの?」

 

『じゃあな』

 

切りやがった。てかなんでわざわざこっち来るんだよ。池袋ならそこで待ってろよ。あと二時間とかこっち暇じゃん。仕方なく色々準備して、終わったらソファーに寝っ転がりながら漫画を読み、一時間くらい経った頃。

 

「そろそろかな…」

 

家を出て千葉駅を目指す。改札に来たら、キリトとウルトラ美人の人が立っていた。で、誰なんですかねその人。

 

「おう」

 

「あぁ、来たか。紹介するよ、妹のスグ」

 

紹介されて、スグって人はぺこりと会釈する。

 

「え?妹?姉じゃないの?」

 

「ちょっとそれどういう意味!?」

 

突っ掛かって来るが、誰が見ても妹には見えねぇって。主にどことは言わないけど。小町や雪ノ下にはないなにかが二つのマウント富士を形成している。

 

「えっと…はじめまして。桐ヶ谷直葉、です」

 

あーそれでスグね。なるほど。

 

「あ、ども。比企谷八幡です。てか桐ヶ谷、なんでこいつ連れて来たの?俺を気まずさで圧迫死させたいの?」

 

「や、エイトマンも来るって言ったら行くって聞かなくて」

 

なに、俺に文句でも言いに来たの?と、思ったが顔を若干赤らめて視線を逸らしながらモジモジしている。ゲームの世界と違ってヤケに女の子らしいので対応に困る。

 

「で、もう行かなくていいのか?」

 

「あぁそうだった。行こうか」

 

話を振ると、それに乗ってくれるから助かった。電車の中は無言だった。桐ヶ谷はずっと地平線の彼方を見るような目をしていたし、妹の方は俺をチラチラ見て話し掛けようとするが、俺の話し掛けるなオーラに負けてすぐに引っ込める。だが、俺の話し掛けるなオーラは二年前と違って弱まってるのか、二時間も持たない。

 

「あの、八幡さん?」

 

「八万三?なんの数字?」

 

「あ、あんた仮想世界でもリアルでも変わらないのね…」

 

あ、口調が戻った。お前も変わってねぇから安心しろ。

 

「人はそうそう変わらねぇだろ」

 

「比企谷、その台詞お前から三回くらい聞いた気がするけど」

 

お前、黄昏てたわけじゃねぇのかよ。

 

「で、なんか用か直葉?」

 

「い、いきなり名前呼び?」

 

「兄貴もいるだろ?この三人の内二人は桐ヶ谷なんだよ。嫌だったらお前を桐ヶ谷にしてもいいけど」

 

ていうかお前も名前呼びだろ。

 

「べ、別に嫌なんて言ってないでしょ!?」

 

ならなんで文句言ったんだよ…。ようやく本題に入る。

 

「あの、アスナさんのこと好きだったりする?」

 

「お前なに言ってんの?」

 

こいつ頭飛んでんのかよ…。

 

「だ、だってよくお兄ちゃんとアスナさんの三人でいたんでしょ?しかも現にお兄ちゃんはアスナさんのこと好きだし…」

 

「一緒にいたのは攻略の時だけだ。この二人と一緒にいる時ほど安全なことなかったからな。利用してただけだ」

 

そう言うと、直葉はクスッと笑う。

 

「なんだよ…」

 

「ホントに捻デレさんだ」

 

「お前までそれを言うか…あと桐ヶ谷、お前本当に覚えてろ」

 

「仕方ないだろ、お前は捻デレまんまなんだから」

 

「……」

 

捻くれてるけどデレてはない。ハズだ。でも妹以外の奴にまで言われると若干心配になるな…。

 

「とにかく、俺はアスナのことは好きでもないし捻デレでもない」

 

「ふーん、そ」

 

聞いてきた割りに興味無さそうだな。まぁそういうのも馴れてる。そして、結局そのまま会話は持たず二時間経ち池袋に着いた。

 

「随分広いんだな池袋の駅は」

 

「行くぞ」

 

キリトについて行くこと10分ほど、ようやく病院に着いた。

 

「ここだ」

 

中に入ると、ナーヴギアを被ったまんまのアスナが死んでいるように目を閉じていた。本当に帰ってきてなかったのか…。桐ヶ谷は俺と直葉にアスナ…結城明日奈を紹介し、アスナの手を握る。そんな桐ヶ谷の目はひどく虚ろだった。

俺はといえばなにも言えずにいた。あれだけ苦労してようやく解放されたと思ったら今度はこの様である。これでは女性代表で戦ってきたアスナが報われない。彼女の婚約者がどんな奴かは知らんが、ゲーム内で彼女を監禁している以上はロクでもない男だろう。

なら、俺としては一分一秒でも早く現実に返してやりたい。すると、桐ヶ谷が立ち上がった。

 

「帰ろう。二人とも」

 

「もう、いいのか?」

 

「あぁ、あと二時間半くらいでメンテナンスも終わる。早く帰ってALOに入ろう」

 

まぁ、妥当だな。実際、俺達がこんな所にいてもしてやれることはなにもない。なら、メンテナンス終了直後に入ってさっさと攻略しちまった方がいいだろう。

 

「分かった」

 

「うん」

 

そして、俺達は病室を出る。桐ヶ谷と直葉が出口へ向かう中、俺はもう一度アスナの病室を見た。そして、桐ヶ谷達の後を追った。

 

 

 


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