あとシリアスもありません
その頃、俺キリトはアルンに向かっていた。そして、街が見えてきた辺りで戦闘音がした。なんだ?と思って下を見ると、ケットシーの女の子が数人のサラマンダー相手に2人で囲まれていた。
助けに入ろうか迷っていたが、ちょっと様子がおかしい。てっきり、絡まれているのかと思ったら聞こえてくる声は
「だから何度も言わせないで。それともその小さな脳に何度言ってもわからないの?私達はあなた達のような類人猿に構っている暇はないの。そんなにナンパがしたいのならあなた達の妄想の中だけにしなさい」
「お友達になってあげてもいいよ?霊長類ヒト科オトモダチ」
うわー…きっついなーあの二人。サラマンダーの人達涙目じゃん。これは俺必要ないかな。と、思ったら羽がどんどんと弱まって行く。
「あ、タイムオーバー?」
間抜けな声を出しながら俺は真下に落下した。落下した先はあのどぎついケットシー二人の前。サラマンダーに見事に頭突きを決めてしまい、悶える俺。しかも全員が全員、俺の登場に静まり返る。
うわー…どうすんのこの空気…と、思ってたらサラマンダーが、
「おい!こいつカゲムネさんの隊を全滅させた奴じゃないか!?」
「こんなのに勝てるわけねぇ!」
「逃げろ!」
と、喧嘩も売ってないのに去っていった。で、残された俺と二人のケットシー。なに言われるんだろ…と、思ってた予想外のことを言われた。
「よくわからないけれど、あなたのおかげで助かったわ。ありがとう」
「あ、いえ俺なんもしてないんで…たまたま滞空制限時間が過ぎちゃっただけなんで」
「例えたまたまであってもあなたの功績は認められるべきだわ。だから、ありがとう」
なんか、怖いな…まるで義務的にお礼を言われてるようで怖い。もしかしてNPCか?と、思ったがもう片方のケットシーの子は俺のことをじーっと見ている。
「あの、なに…かな?」
「いえ、どこかで見た気がするんですよねーあなた。あ、私はコマチです!」
「あ、俺はキリトです。よろしく…」
「キリト?あなたがあのSAO事件を終わらせた英雄さん?あ、ごめんなさい。私はユキノよ」
「あ、まぁそうですね。一応俺ともう一人がヒース…ラスボスを倒しましたね…」
「ふーん、あんな目にあったのにまたVRMMOをやってるのね。学習能力がないのかしら?」
やっぱキツイわこの子。だが、俺にはちゃんとした理由がある。
「いや、俺には目的があるんです」
「目的?」
「そんなほいほい言えることじゃないので言いません。だけど、俺はそこへ行かなきゃいけないんです」
「なるほど、私と同じね」
「へ?」
「私もゲームに興味はないのだけれど、少しこの妖精王オベイロンという人と会えって姉さんから言われてね」
「それで、コマチもお手伝いしてるんです!」
なるほどな…。じゃあ、
「なら、あの上に鳥籠があるのを知ってますか?」
「え、えぇ。それがなにか?」
「中に人がいるんです」
「……その話、詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「いえ、俺も詳しくは知りません。写真を見ただけです」
「そう…なら、しばらく私達と一緒にいない?多分、目的は同じだから」
「え、えぇ。そちらがいいなら」
「いいかしらコマチさん?」
「えぇ、ユキノさんと一緒なら大丈夫です!」
「そ、なら行きましょう」
こうして俺にまた仲間が出来たのだが、このユキノという人がひどく弱い。モンスター相手に説教を始めるわ猫っぽいモンスターを見付けてわ勝手に動いて謎の採点をするわ逆に犬のモンスターが出ると涙目で腰が抜けるわ足手まといもいいとこだ。
その癖、文句を言うと10分くらい完全論破してくるしなんなのマジで。あのエイトマンが可愛く感じるほどだ。マジであの二人早く来ないかな。てか追い抜かれてるかもしれない。
で、今は猫っぽいモンスターに猫じゃらしで遊んでいる。
「あの、もう行きたいんですけど…」
「もう少し…」
かれこれ10分はこの状態だ。ていうかこの人がケットシー選んだのって猫だからじゃないのか?ようやく立ち上がってくれた。
「40点」
10分も検討しといて40点かよ…さっきから点が辛過ぎるこの人。
「さ、行きましょ」
そうユキノさんが立ち上がった時だ。彼女の胸を赤い閃光が貫いた。
「!?」
「ユキノさん!?」
くっ!まるで気付かなかった!
「コマチ!ユキノさんの蘇生をたのむ!」
「はい!」
俺は攻撃して来た方向へ走る。だが、見つからなかった。赤い閃光ってことはサラマンダーか?たかまたサラマンダーか。
とりあえず、ユキノさんの所に戻る。無事に復活しているものの、随分とご立腹のようだ。
「ふふふ、私を殺すなんていい度胸してるじゃない…」
「ゆ、ユキノさん…?」
こ、怖い!後ろに吹雪が見える!コマチの方を見るとあちゃーって感じで顔を押さえている。なんか地雷踏んだらしい。
「あの、ユキノさん落ち着いて」
「無理ね、今私を殺した相手を私が此の手で殺さないと無理。目には目を、歯には歯を。それが私の流儀」
「そ、それマグナカルタだっけ?」
「ハムラビ法典よ」
…なんかさらりと切り返されてしまった…。
「キリトくん。今の私でさっきの奴を倒せる可能性は?」
「あ、あります!俺が手助けすれば!」
「私はトドメさえ刺せればそれでいいわ」
さらりと怖いこと言ったよ…ふえぇなにこの人。なんか変な人と絡むことになっちゃったな…。
______________
俺の索敵をフルに使ってようやく、さっきユキノさんを殺したと思われる場所に着いた。
「ここね。さ、行くわよ」
「は、はい…」
怖くて従うしかない。コマチはそんなユキノさんをニコニコと見つめてるし。この子もこの子で怖いな。
俺達が入ると中には誰もいない。だが、
「殺される前に出てきなさい」
ユキノさんがそう言うだけで、全員出てきた。心なしか全員の額に汗が浮かび、目に至っては涙が浮かんでる。
「私をさっき殺した人は10秒以内に前に出なさい。じゃないと全員殺す」
そして、サラマンダー側は「お前だろ!」「いやお前だった!」「いやあれはわざとじゃない!」とかやってる。
「わざとじゃなかろうがわざとだろうが関係ないわ」
無言で一歩出るサラマンダーの男。ユキノさんは剣を握った。
「最後に言い残すことは?」
「ごめんなさい」
で、頭を吹っ飛ばすユキノさん。全員なにも言わない。ただ、コマチ以外が涙を堪えている。
「行きましょうキリトくん」
「はい!」
結局、俺達はサラマンダーの一人を殺して帰った。もうステータス関係ねぇじゃん。
「ありがとうキリトくん。あなたはあの男より遥かに役に立つわ」
「い、いえ!お褒めにいただき光栄です!」
「その喋り方気持ち悪いからやめて」
相変わらず辛辣な人だ。
「じゃ、急ぎますよ!そろそろアルンですからね!」
「えぇ」
「はい!」
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ようやくアルンに到着した。
「キリトくん。どうもありがとう、じゃあ私達は行くから」
「えぇ、ではまた」
「ばいばい!桐ヶ谷さん!」
「え?君は…」
「エイトマンの妹だよ!」
「え…?」
そのまま二人は行ってしまった。なんだったんだ一体…。そこに、後ろから聞き覚えのある声が。
「キリトくーん!」
「!」
振り返ると、エイトマンとリーファが飛んで来ている。
「お待たせ!」
「どうだった?会談は」
「エイトくんが倒してくれたよ。しかもなんか知り合いだったみたい」
「へぇーすごいなエイトマン!」
「別に、向こうが油断してたからだよ」
で、三人で微笑む。
「さ、行こうか。アスナ助けに」
「うん!」
「お、おう」
さぁ、これで終わる。すべてが片付けられる。今行くからな、アスナ。
ちなみに、この後に三人で宿でログアウトするが、アップデートが入ってゲームに入れなくなった。
なんかグダグダしてすいません